のり巻き のりのり

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父と慰霊の旅 心の遺産

2016年08月11日 | つれづれ日記
お盆休み、夏休みに入りました。家族が集い、絆を感じるとき。

両親はもういませんが、父のことを思い出して書いた文が新聞に掲載されました。
400字の短い文ですが、「戦跡を訪ねて」のテーマだったので、父と訪ねた思い出を書いたのです。

お墓参りをして父や母に話してきました。奇しくも、今日は母の誕生日でした。
思い出は心の遺産です。ありがとう。



(掲載文)
フィリピンの野戦病院で兵役についていたという亡き父は、
言い表せないほど悲惨な死を数限りなく見てきたことでしょう。
退職後、何度も慰霊の旅に出かけていました。

一緒に行ったのは20年ほど前。
カリラヤの慰霊碑、ケソンの元陸軍病院、コレヒドール島などを訪ねました。
慰霊碑の緑がかったコケを丁寧に洗い落とし、香華を手向ける。
読経とともに静かにこうべを垂れる父。

退避行をしたという行路をたどりながら、車窓からヤシ林を見つめる父。
今も残る兵舎や砲台、トンネルなどを言葉少なに語る父。
今も父の姿が鮮明に浮かびます。
娘や孫を交代で伴って訪れ、戦争の愚かさや平和の尊さを伝えてくれたことは、
父からの心の遺産だと思っています。

帰路、マニラ湾の船上から見た真っ赤な夕焼けや海面で跳ね上がるトビウオが
私には平和の象徴に思えました。
だが父には火炎地獄から脱出し、一緒に帰る戦友の魂に思えたかもしれません。