のり巻き のりのり

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幸田文の作品

2016年08月05日 | 読書
久しぶりに流麗で深い日本語の文章を読みました。

幸田文 

幸田文は、言わずもがな幸田露伴の長女であり、作家、随筆家です。
明治37年に生まれ、平成6年に亡くなっています。

昭和22年露伴が亡くなった43歳から文筆活動を始め、「弟」「流れる」などの小説のほか、数々の名エッセイを残しています。
名前は知っていても読まずにいたのですが、「幸田家のしつけ」を読んで興味を引かれました。

「木」は著者が50代から70代にかけて全国の森を訪ね、樹と対峙しその生命力をうたったエッセイです。
樹が生きる意味から人間の生き方を問い、ずっしりと手ごたえを感じたエッセイでした。

また、幸田文は衣・食・住の家事に長け、「家事の手帖」「台所帖」「「きもの帖」などの作品も有名です。

実母は病死、不良の弟、病気の継母をもち、14歳の頃から家事一切を父露伴に教えられ、身に付けたこと。
家庭環境からやらざるを得なかったのですが、その結果身に付けた美しい所作や深い洞察力、自然に対する畏敬の念。

心の強さと美しさを備えた日本人女性は、こんな人なんだと思いました。
注釈のつく言葉がたくさん出てきますが、私にはそれがいいんです。新鮮に感じます。

     



内容的には今の時代に合わないところもあるかもしれませんが、豊かな日本語があふれています。

最近の小説は、やたら会話が多かったり、カタカナ語があふれていたり、一文が短すぎて走り読みで終わってしまったり・・・
ストーリー性も大切だけれど、珠玉の言葉が欲しいと思います。

折しも、教育審議会では英語を教科とし、「アクティブラーニング」を推進するという。
今後、英語教育は必須となるでしょうが、その前に、同時進行でもかまいません、日本語を正しく使うことがもっと大切なように思います。
もちろん、日本人としての所作もふくめてです。

幸田文の作品を教科書に取り上げてほしいですね。
美しい日本語が、使われないままどんどん希釈され、やがて消えていくという現実を憂うのは、年を重ねたからでしょうか。

燃やすに一番いいのは老木、飲むには古酒、信頼するには古友、読むには古い著者 ーベーコンー