「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

流通経済大学 vs 日本大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.02)の感想

2022-10-06 00:13:28 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今や大学ラグビーのメッカとなった感があるセナリオハウスフィールド三郷。陸上トラック付きで観客席ができたと言ってもコンクリートだから、真冬の観戦(があったらだが)は底冷えとの戦いになる。自慢できるのは立派な電光掲示板くらいで、けして整った競技場ではない。

でも、ここで観るラグビーが魅力的ではないのか?と問われたら、けしてそうではないと答えたい。秩父宮や熊谷のような整った競技場では、とくに学生の場合、よそいきのラグビーになってしまうことがままあると感じる。大学選手権のような大舞台ならそれがいい方に作用するかも知れないが、普段の力を出せずに試合が終わってしまうこともあるだろう。

セナリオHFのような(ピッチと観客席の間が)バリアフリーの競技場の場合は、選手達がホームグランドでの雰囲気と近い感覚でプレーすることができるように思われる。逆に言えば、普段着の力を正直に曝け出してしまう恐ろしい競技場とも言える。観戦する側として、畏まった会場では得にくいいろんな情報が伝わってくるところが面白かったりする。

さて、第一試合(東洋大vs大東文化大)での大どんでん返しの余韻が残る中で迎える第二試合は、流通経済大学と日本大学の戦い。チームカラーが対照的で、長いリーグ戦の観戦歴のなかでも印象に残る試合が多い対戦カード。今シーズンは開幕2連勝で好調の流通経済大に対し、緒戦の立正大に苦しみながら勝利し、2戦目の法政には敗れた日大と明暗が分かれてはいる。連敗は避けたい日大の奮起に期待しながらキックオフを待った。

◆前半の戦い

大接戦となったものの、どこかもたついた印象があった第一試合とはうって変わり、序盤からボールが大きく動く攻防が繰り広げられる。ピッチから聞こえてくる選手達の声も明らかに多く活気が感じられる。FWに大型の選手を揃えた流経大の地道な組立に対し、バックスリー(水間、トゥポウ、普久原)に決定力のある選手が揃う日大はバックドア、飛ばしパスなどを駆使したワイドな展開ラグビー。そんあアタッキングラグビーは観ていて楽しい。

7分、日大が流経大陣22m手前のゴールやや左でPKのチャンスを得る。SH前川がGKを難なく決めて日大が幸先よく3点を先制。しかし、流経大もすぐに反撃。9分にゴール前のラックからLOアピサロメ・ポギドラウが一瞬の隙を突き、正面突破でボールをインゴールに力強く運ぶ。GKも決まり流経大が7-3と逆転に成功。

ここから流経大がペースを掴み、ボールを確実に保持しながらFW中心で前進を図る。しかしながら、ここ一番でノット・リリース・ザ・ボールの反則を犯し、チャンスを潰すことが多い。ラックでのノット・ロール・アウェイも含め、流経大は試合終了まで反則の多さに悩まされることになる。因みにこの日流経大が記録したペナルティは前半9個、後半10個の計19個だった。

日大は対照的に自陣からもキックはあまり使わず、パス中心のランニングラグビーでゴールを目指すスタイルで徹底されている。これはこれで面白いのだが、実はFWがファースト・レシーバーになることが殆どない、一時代前のラグビーを思い起こさせるラグビーであることに気付く。流経大が「FWで堅実に前へ」を貫いているし、それが最近のラグビーのトレンドなので(ノスタルジーはさておき)逆に新しさを感じたりもする。

話が逸れた。流経大にとって痛いのは自陣での反則が多いこと。18分に日大が7分の時と同じ位置でペナルティを得、ここでもショットを選択するが惜しくも外れる。直後の23分、流経大は日大ゴール前のラインアウトからモールを形成して前進し、ラックから左サイドに展開して左WTB堀井がトライ。GKは失敗するが流経大はリードを9点(12-3)に拡げる。

27分にも日大は流経大陣22m手前で得たペナルティでショットを選択するが、GKは右に大きく外れる。確実に点差を詰めておきたいところだったが、チャンスはその直後にやって来る。自陣22m付近からBKでボールをワイドに展開し流経大ゴールに迫る。パスミスを拾われてインターセプトに遭うのも束の間、流経大のキックをチャージダウンしてさらにゴールが近づく。ここからボールを大きく右に展開してWTB水間がゴールラインを突破。GKは失敗するが日大のビハインドは4点(8-12)に縮まる。

流経大の負けていない。37分、日大ゴール前でターンオーバーに成功し、CTBリアクタ・テアウパがトライ。GK成功でリードを11点(19-8)に再び拡げる。流経大は42分にハイタックル(イエローカード)で14人となりながらも何とか凌ぎきり前半が終了。ただ、反則の多さを修正しない限り後半も厳しい展開となることが予想された。



◆後半の戦い

後半もノットリリース病を克服できない流経大。必然的に日大が攻める時間帯が長くなり、流経大が耐える展開。日大は流経大ゴール前のスクラムから素早く左に展開してWTBトゥポウがゴールラインを越える。GKも成功して15-19となり、逆転まであと1本に迫る。

日大には運も味方した。流経大ゴール前ラインアウトでボールをタップされて被スティール。と思われたがイレギュラーバウンドしたボールは日大選手の手に収まりそのままインゴールへ。GKは失敗するが20-19と1点差ながらついに再逆転に成功。

勢いに乗る日大がゲームの流れを掴む。流経大は相変わらず反則が多いが、日大もキックミスが響きなかなか得点に繋がるアタックが出来ない状態。両チームが繰り広げる激しい攻防の中でゲームが膠着状態に陥る。流経大は28分に日大陣ゴール前のラインアウトからモールを押し込んでトライ。やや難しい位置からのGKも成功し、26-20と再々逆転に成功。

ただ、流経大のリードは1T1Gで逆転可能な6点。時間も10分以上残っており、日大には十分時間がある。さらに、自陣での反則が多いことも不安材料。ここから、日大の死力を尽くした反撃が始まり、流経大は殆どの時間帯を自陣で戦う苦しい展開となる。第一試合同様に最後までどちらに転ぶか分からない展開に、スタンドは大いに沸き立つ。「流経、ノーペナ!」の檄は祈るような気持ちで発せられている。

流経大は正に背水の陣。自陣ゴール前、それも(GKが決まりやすい)正面付近で何度も「あと一歩」まで迫られる。タックルに次ぐタックルでとにかく凌ぐ。そして、何とかターンオーバーに成功し、ボールを真後ろにキックアウト。試合終了のホイッスルが吹かれたとき、電光掲示板の時計表示は91分だった。



◆試合後の雑感

流経大が本来目指しているラグビーは(指導体制に変更がないし)ブレイクダウンに時間をかけずテンポよくボールを動かすダイナミック・ラグビーだと思う。この日のラグビーはFWで着実にボールを前に運ぶラグビーで、フェイズを重ねたところで変化技が入る。昨シーズンは5位となり、今シーズンも夏合宿では練習試合に全敗で前途多難が予想されたと聞く。それを思えば、昨年度上位陣を相手に開幕3連勝は嬉しい誤算。もちろん反則の多さは大反省材料だが、ディフェンスで粘れたことは大きな収穫と言えそう。

一方の日大。流経大の反則数を考えれば優位に試合を進められたはずという想いを禁じ得ない。また、ヘッドコーチの変更があったとは言え、目指すラグビーがかなり変わったという印象を拭えない。流経大のようにFWで身体を張ってボールを前に運ぶ場面がどれだけあっただろうか。長短の工夫を凝らしたパス攻撃は見応え十分ながら、相手のディフェンスが揃った状態(とくに流経大のように組織されたチームが相手)では一次突破は難しいように見えた。今後、どのように戦術を立て直していくのだろうか。BKに魅力的なアタッカーが揃うだけに気になるところだ。
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東洋大学 vs 大東文化大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.02)の感想

2022-10-04 02:09:16 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


本当に久しぶりのセナリオハウスフィールド三郷。コロナ禍もあって、リーグ戦グループの試合観戦からも遠ざかっていたことも思い出す。2018年度のシーズンが最後で、そのころは競技場の道路側は芝生の土手だったのだ。

有料試合開催ということで、スタンドはどうなっているのだろうか?とか、道路側は(外から丸見えなので)目隠しフェンスを作ったのだろうか?とか想いをめぐらしながら試合会場に向かう。着いてみると、バックスタンド側にコンクリートの座席が設けられていたことを知る。熊谷ラグビー場のBグランドや明治大学を訪れたことがある人にはお馴染みの形。(目隠しフェンスはなかったが、会場スタッフが通行する人に立ち止まらないように通行する人に促していることを観戦中に知る)。

以前は、メインの座席が観にくいため、チームのテントがある側に立ち、選手目線で観戦していたが、今シーズンからは落ち着いて観戦できる。実はバリアフリーの競技場は、チームや選手の状態、ゲームの流れがダイレクトに伝わってくるのが面白い。試合に纏わる色々な思い出が頭の中を走馬灯のように駆け巡る(テンションが高まった状態で)キックオフを待った。

◆前半の戦い

1部リーグ昇格の緒戦で東海大を破り、2戦目の関東学院戦にも圧勝して勢いに乗る東洋大。それに対し、開幕2連敗でなかなか調子が上がらない大東大。そんな状況もあり、東洋大優位の予想も立っていたことは否めない。

しかしながら、元気いっぱいのはずの東洋大の状態がおかしい。キックオフから全体的に身体が重そうに見える。アタックでもなかなか前進できず、ボールキャッチでのノックオンなどイージーなミスが多い。キックチェイスも中途半端に見える。極めつけはラインアウト。211cmのウーストハイゼンが居るので圧倒的に優位に立っているはずなのだがマイボール獲得に窮する状態。

このような状況が続けば、自ずと試合の流れは相手に傾く。LOサイモニ、No.8リサラ、CTBラトゥらの強力なランナー達にボールを集める大東大の攻めが功を奏し、東洋大が防戦一方となる。大東大は17分、25分、30分に3連続トライを挙げ、ゴールキックもCTB戸野部のGKもすべて成功で21-0とリードを拡げる。

ゴール前まで攻め上がってもなかなか1本が取れない、東洋大ファンにとってはフラストレーションが溜まる試合展開。ただ、大東大も前半だけで3人の選手が負傷交代と後半戦に不安が残る状況ではある。東洋大が建て直せずこのままずるずる行きそうな内容ではあるが、大東大にとってもけして安心はできない状況の中で前半の戦いが終了した。



◆後半の戦い/東洋大の大逆転も束の間、

前半、精彩を欠いたとは言っても開幕2連勝のチームがこのまま引き下がる訳にはいかない。LOのウーストハイゼンに替えて森山を起用。これでFWの2列、3列はすべて180cm台の選手になったが逆に前半あれだけ苦労したラインアウトが安定するから不思議。

この選手交替もあり、後半は東洋大に積極性が加わったように見えた。ただ、ゴール前まで攻め上がるものの、あと一歩が届かずなかなか意気が上がらない。そうこうするうちに、15分に大東大が東洋大陣22m付近でPKのチャンスを得る。後半、大東大が先に1本取れば(東洋大は意気消沈し)ほぼ試合が決まるような状況で、ゴール前でのラインアウト選択も考えられた。

が、ここで大東大の選択はPGによる3点。24-0とすることは理に適っていると思うものの、東洋大の息の根を止めるためにも積極的に行ってもいいかなと思ったのだ。その理由の1つとして、前半に負傷交代が相次いだことと終盤戦でのフィットネスの不安が挙げられる。

果たして、この失点を機に東洋大が息を吹き返したような形で19分に反撃の狼煙を上げる。大東大の選手達の足が止まり始め、あっさりとラインブレイクを許す場面も。東洋大の勢いは止まらず、29分、34分にトライを挙げて19-24。あと1トライ挙げてGKが成功すれば大逆転勝利というところまできてしまった。3連敗はしたくない大東大との死力を尽くした攻防が展開される。

そして終了間際の44分、ついに東洋大は4連続トライで逆転に成功。ロスタイムが長めに取られているとは言え、大東大のキックオフを凌げば3連勝達成。しかし、運命は残酷。自陣で一番やってはいけない反則を犯してしまった。PGが決まれば大東大のサヨナラ勝ちになる。ここまで4本のGKすべてを難しい位置からも決めている戸野部が慎重に慎重を期して蹴ったボールは2本のゴールポストの中央を通過。大東大応援席から大歓声が上がったことは言うまでもない。

結果論(前言を翻す?)だが、15分にPGを1本決めていたことが大きかった。大東大は戸野部のスーパーブーツのおかげで勝てたとも言えるが、勝機を逃した東洋大にとっては悔やんでも悔やみきれない敗戦となってしまった。



◆試合後の雑感/大学ラグビーの怖さと難しさ

大学ラグビーで指導者の方がもっとも苦労されるのは、おそらく選手達のメンタルコントロールではないだろうか。たった1週間で絶好調から絶不調に陥ったチームを何度も観ているのでそう思う。いい結果を得たときの達成感は往々にして気持ちの緩みを生みやすい。テンションが緩むことで蓄積された疲労感が一気に吹き出してくることはあるかも知れない。

とくに前半に精彩を欠いた東洋大の選手達は「こんなはずでは…」と感じるくらいに身体が重かったのではないだろうか。また、相手が3連敗していることも心の片隅にあったかも知れない。そういった意味でも、後半に建て直せたことは今後の戦いでは大きな財産になると思う。緒戦で勝利した東海大にしても、この状況を経験するまでに数年間を必要とした。

大学ラグビーの面白さは1週間でチーム状態がガラッと変わって良くなるというのもある。東洋大は(流通経済大や東海大が1部昇格後に何年も要した)上位校に対する勝利を既に達成している。2週間でしっかり切り替えてリーグ戦グループ活性化の起爆剤であり続けて欲しいと願う。
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第60回 YC&ACセブンズ(2019.4.7)の感想

2019-04-14 10:20:52 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今年で60回目となるYC&ACセブンズ。この大会の魅力は長い歴史に違わぬ高いレベルを保っていること。出場チームの多彩さからお祭り的な要素もないわけではないが、チャンピオンシップの決勝戦は手に汗握る好ゲームとなる。日和にも恵まれ、サクラも満開の中で、記念大会にふさわしい思わぬファンへの贈り物が準備されていた。

■出場チーム

出場チームは例年通りで、社会人/クラブ8チームと大学8チームの計16チーム。大学は関東の対抗戦Gとリーグ戦Gからそれぞれ4校ずつで、顔ぶれは固定されている。また、社会人/クラブもほぼ常連チームの出場となった。ここ数年は大学チームが優勢だが、社会人/クラブが意地を見せるかも見どころ。

[社会人] ビッグブルーズ(IBM)、神奈川県選抜。千葉県選抜
[クラブ] 北海道バーバリアンズ、神奈川タマリバクラブ、湘南ベルマーレ、サムライセブン、
YC&AC
[大学(関東・対抗戦G)] 早稲田大学、慶應義塾大学、筑波大学、青山学院大学
[大学(関東・リーグ戦G)] 東海大学、流通経済大学、日本大学、中央大学

会場で配られたプログラムでまずは関東大学のリーグ戦Gのメンバーを確認。4チームともこの大会にはほぼ1本目でチームを構成しているが、1年生の有望選手を加えていることも多い。テビタ・タタフとアタアタ・モエアキオラが卒業した東海大学だが、バリバリのレギュラーに加えて新たな名前が2つ(ワイサケ・ララプトゥアとレキマ・ナサミラ)加わった。流通経済大には新たな名前はないが、こちらも1本目で固めた優勝が狙える陣容。

今年も多くの有望新人獲得に成功した日本大学には昨シーズンデビューを飾ったフレイザー・クワークらに加え、多くの新人が加わっている。中央大学は、成田と侭田のHB団など有力選手がズラリと勢揃いした陣容。ただ、この大会でスピードスターとして衝撃のデビューを飾った住吉のような人材を含んでいるかは不明。

そんな中、オープニングゲームを戦うホームチームのYC&ACと北海道バーバリアンズの選手達がピッチに登場し、第60回大会の火蓋が切って落とされた。

■1回戦8試合

[No.01]  ○YC&AC 42-12(前半14-5) ●北海道バーバリアンズ

優勝回数4回を誇るYC&ACもここ数年の戦績は冴えない。着実に力を付けている北海道バーバリアンズが優勢と会場の誰もが予想したが、メンバーを一新した強力チームになっていてあちらこちらで驚きの声が上がる。対戦相手の北海道バーバリアンズの選手達も「いつもとは全然違う」と面食らったに違いない。42-12の圧勝劇は想定外だったが、今大会、強力メンバーを揃えてもっとも注目を集めたチームにしては穏やかなデビュー戦だったことが後からわかる。



[No.02]  ○東海大学 24-17(前半19-0) ●日本大学

ピッチに登場した東海大の選手達を見て、強力な2人(テビタとアタアタ)の卒業による不在を感じさせない位に大型な選手達が加わったことがわかった。実際に彼らは本当に1年生なのかと思わせるくらいにパワフルな突破と身体能力の高さを見せつけた。対する日大も2年生のフレーザーが一回り分厚くなった姿で登場したのが目を惹いた。前半はいいところがなかった日大もメンバーを替えた後半に立て直しに成功。スコアを7点差まで詰めたものの、実質は前半で勝負を決めた東海大の圧勝だった。



[No.03]  ○神奈川タマリバクラブ 33-5(前半21-0) ●湘南ベルマーレ

監督兼任の福田恒輝や主将の竹山将史といったベテランが引っ張る神奈川タマリバクラブは、新たなメンバーを加えて今年も気合い十分でピッチに登場。対する湘南ベルマーレは登録メンバーがわずか9人で苦しい戦いを強いられる。後半に1トライ挙げるのがやっとで、前後半で5トライを挙げた神奈川タマリバクラブの圧勝だった。



[No.04]  ○筑波大学 28-12(前半14-7) ●義塾大学

対抗戦グループで組織的に戦う2チームの注目対決。慶應が先制した後、筑波が2トライを挙げて逆転に成功し前半は14-7で折り返し。後半は筑波が調子を挙げて2連続トライを奪い試合を決めた。なかなかのタレント揃いで楽しみ。慶應も1トライを返して意地を見せた。



[No.05]  ○サムライセブン 28-5(前半7-5) ●神奈川県選抜

アスリート軍団のサムライセブンに対し、林謙太、山本逸平、茂野圭輝といった拓殖大学で活躍した選手達を含む神奈川県選抜の対戦。ファエアマニ・オペティも懐かしい名前。試合はそんな選手達を揃える神奈川選抜の圧勝かと思ったが、力を発揮したのはサムライセブンだった。前半こそ7-5の互角だったが後半にサムライセブンが3トライ連取で圧勝と意外な結果となった。

[No.06]  ○青山学院大学 38-12(前半17-5) ●早稲田大学

メンバー起用が注目を集めた早稲田だったが、序盤からかみ合わずに青山学院に3トライを先行される苦しい展開。早稲田は前半の終盤に1トライを返すものの、後半も2トライを先行されて万事休した。青山学院もなかなかのタレント揃いで連携もよく圧勝も納得。今シーズンの飛躍も期待される上場のスタートとなった。



[No.07]  ○千葉県選抜 26-12(前半19-0) ●ビッグブルーズ

毎年、国体開催県の選抜チームが招待されるこの大会。今年は千葉県選抜が出場したがメンバーが分からない。周囲より聞こえてきた声からNECが主体らしいとわかる。一方のビッグブルーズはIBMのロゴを胸に戦う。千葉県選抜が混成チームとは思えないくらいに連携を良さを見せ、前半に3トライを先行。後半はビッグブルーズが反撃して2トライを返し緊迫した展開となるが、千葉県選抜が最後に1トライを追加して突き放し勝利を収めた。



[No.08]  ○流通経済大学 40-5(前半14-5) ●中央大学

中央大学に圧勝した流通経済大学はジャパンのCTBの期待も高まるタカヤワが看板スター。粥塚や積も成長が楽しみな選手達だ。しかし、この日注目を集めたのは成長著しいタマ・カペネだった。上位浮上を目指す中央大学だが、今年は成田と侭田のHB団で臨む模様。総力のあるレギュラー陣で戦いに望んだが、タカヤワとカペネに翻弄される形で6トライを奪われ厳しいスタートとなった。



■コンソレーション・トーナメント1回戦[4試合]

[No.09] ○日本大学 38-14(前半17-7) ●北海道バーバリアンズ

この大会での日大の伝統と言ったら関係者の方に叱られるかも知れないが、日大は午前中の試合が苦手。しかし、コンソレーションでは力を発揮するチームでもある。果たして、七戸、平川、黒川ラフィと言った俊足ランナー達にパワフルなジョセ・セルが居る北海道バーバリアンズを圧倒して、「コンソレーションの日大」をアピールした。北海道バーバリアンズは1回戦の予期せぬ敗戦のショックを受けていたのかも知れない。



[No.10] ○慶應義塾大学 33-15(前半12-5) ●湘南ベルマーレ

登録メンバーが少なくパワー不足の感があった湘南ベルマーレだが、前半は1トライを挙げて5-12と健闘を見せる。後半は慶應大に3トライを許し力尽きた感はあったものの、2トライを返す粘りを見せて場内を沸かせた。若い選手が多いだけに、経験を積めば強くなる可能性があることを感じさせた。



[No.11] ○神奈川県選抜 26-19(前半19-7) ●早稲田大学

曲者揃いの感がある神奈川選抜も日大と同じく朝の寝覚めが悪かったのだろうか。後半に息切れ感はあったものの、前半に挙げた3トライが効いて勝利を収めた。後半に盛り返したとは言え、早稲田の反撃は7-26と試合がほぼ決まってから。1回戦での完敗のショックを引きずっていたのかも知れないが元気がないのが気になった。


[No.12] ○中央大学 28-14 ●(前半14-7)ビッグブルーズ

先制は中央大学で、ビッグブルーズも1トライを返して拮抗した展開。しかし、中央大学はその後3連続トライを挙げて試合を決めた。キック、パスなど随所に巧さをみせた侭田の健闘が光った。とくにゴールキックは難しい位置からも含めて4本をすべて成功と、今シーズンこそは中央大のキーマンとしての活躍が期待される。



■チャンピオンシップ・トーナメント1回戦[4試合]

[No.13] ○YC&AC 33-5(前半19-0) ●東海大学

今年のYC&ACは別のチームとの警戒感を抱いて戦いに臨んだ東海大だが、どこかに大学屈指の強力な選手がいるという気持ちもあったと思う。しかしながら、YC&ACはそんな東海大のプライドを打ち砕くかのようにアタックを完全に封じ込め、前半に挙げた3トライで勝負を決めた。東海大は終了間際に1トライを挙げるのがやっとだった。ここで、YC&ACがとんでもないチームである(らしい)ことが明らかとなる。



[No.14] ○筑波大学 24-7(前半12-7) ●神奈川タマリバクラブ

神奈川タマリバクラブに名を連ねる名選手達(竹山将史、福田恒輝ら)は今年も健在。ここ数年も老獪さというかいやらしさで大学生を翻弄してきた感がある。先制は筑波大だったが、タマリバのすかさず1トライ返して7-5と逆転。しかし、その後は筑波大が3連続トライを挙げて圧勝した。突出した選手はいなくも筑波大のバランスの良さと若さが上回った感があった。

[No.15] ○サムライセブン 26-17(前半7-17) ●青山学院大学

社会人/クラブ勢が今年も苦杯を嘗める中で元気いっぱいだったのがサムライセブン。日本初の7人制専門チームとして他競技経験者などのトップアスリートを集めたことに偽りはなく、アタックでは運動能力の高さを見せる。前半に3トライを挙げて試合を優位に進めたかに見えた青山学院だったが、後半は2連続トライを奪われて逆転を許す。粘る青山学院は1トライを返して2点差に迫るが、サムライセブンが1トライを挙げて止めを刺した。



[No.16] ○流通経済大学 45-14(前半17-7) ●千葉県選抜

大学生屈指の選手となったタカヤワが看板の流通経済大学だが、この試合でも目を惹いたのは緒戦と同じくタマ・カペネの成長ぶり。アメフトのような自由奔放なパスなど随所に見どころを作った。緒戦でビッグブルーズを圧倒した千葉県選抜だったが、前後半に1トライずつ挙げるのがやっと。前後半で合計7トライを挙げた流経大の圧勝だった。



■コンソレーション・トーナメント 準決勝

[No.17] ○慶應義塾大学 24-21(前半17-14) ●日本大学

慶應大と日大の戦いは手に汗握る攻防となった。日大がフレイザーやハラシリらが個の強さを発揮したのに対し、慶應大は組織で対抗。日大先制のあと慶應大が2連続トライで逆転。その後は日大と慶應大が1トライずつ挙げて慶應大が17-14のリードで折り返す。後半、慶應大がさらに1トライを挙げて逃げ切り体制に入るが、粘る日大も1トライを挙げてビハインドは僅かに3点。しかし、日大の渾身のアタックも実らずそのまま試合終了となった。



[No.18] ○中央大学 14-12(前半7-12) ●神奈川県選抜

中央大と神奈川県選抜も緊迫した好ゲームとなった。前半はまず中央大が先制しGK成功で7-0。神奈川選抜も巧さを発揮して2トライを連取し12-7と逆転に成功する。後半は中央大が1トライを挙げて14-12。僅差の手に汗握る展開も神奈川選抜が攻めきれずに試合終了。明暗を分けたのがGKで2本を確実に決めた侭田のキック力が決め手となったことだった。

■チャンピオンシップ・トーナメント 準決勝

[No.19] ○YC&AC 33-7(前半21-0) ●筑波大学

ホストチームであることはさておき、2試合で半端ない強さを見せて大会の主役に躍り出たYC&ACはどこも止められない。筑波大との対戦でも東海大とまったく同じように前半に3トライを挙げて試合を優位に進める。ファイナルスコアも東海大とほぼ同じ33-7だったが、東海大戦よりも対抗出来ていた感があるのは、組織的な対応が出来ていたためかも知れない。



[No.20] ○流通経済大学 33-12(前半12-5) ●サムライセブン

YC&ACの対抗馬として期待が高まった流経大だが、サムライセブンも2連勝で自信を付けている。流経大が2連続トライを挙げたことで一方的な展開となるかと思われた前半だったが、サムライセブンが1トライ返して気を吐く。後半も流経大が1トライ挙げた後、サムライセブンが1トライ返して7点のビハインドをキープ。しかし、ここでサムライセブンが力尽き、2連続トライを奪われて試合終了。結果は完敗だが、サムライセブンの健闘が光った戦いだった。



■コンソレーション・トーナメント 決勝
[No.21] ○慶應義塾大学 15-7(前半15-0) ●中央大学

敗者戦とは言え、勝利を重ねて決勝戦まで勝ち上がった2チームの戦いも見応えがあるものとなった。前半は慶應大が3連続トライでGKをすべて失敗ながらも15-0。後半は中央大が1トライを返しGK成功で7-15。しかし、中央大には1トライ挙げてGKを成功させても1点届かない8点のビハインドは大きかった。YC&ACの戦いもそうだったが、GK失敗でもいいので先に3トライを挙げて(2トライ2ゴールでは追いつけない)15点差以上のすることが必勝セオリーなのかも知れない。慶應大が見事コンソレーショントーナメントの覇者となった。



■チャンピオンシップ・トーナメント 決勝

[No.22] ○YC&AC 36-5(前半24-0) ●流通経済大学

いよいよファイナル。試合前のインターバルの間にも、グランド半面を使ったYC&ACの気迫のこもった練習が目を惹く。振り返ってみれば、YC&ACはここまでミスらしいミスがなく勝ち進んできた。個々の技術の高さとパワーもさることながら、組織的な連携も完璧。それは惚れ惚れするような練習風景からも伝わってくる。

そしてキックオフ。観戦位置をバック側の仮設スタンドからメイン側に移動し選手目線での観戦に変えたのだが、ピッチから伝わってくる気迫はここまでの戦いと明らかに違って感じられた。物騒な表現だが、YC&ACの選手達の表情からは殺気のような感情が伝わってくる。相手のアタックは一切許さないと言わんばかりに、キックオフから激しいプレッシャーで流経大の選手達に襲いかかってチョーク。あるいはブレイクダウンでボールを奪い取り、攻撃の糸口すら掴ませない。

流経大はボールを持っても前に出ることができず、敵陣に入ることも殆どないままに4トライを奪われて0-24。こんなに情け容赦なく厳しいセブンズはまったく観た記憶にないくらいの完璧な前半だった。YC&ACはアタックでもお手本のようにスペースを作ってキックパスからトライと世界の技を次々と披露する。

しかし、一方的な展開のはずなのに、テンションが全く落ちないのも不思議。その原因は、実力では及ばないと分かっても諦めずに闘志で応戦した流経大の選手達の気迫にあると気付く。後半はYC&ACのテンションが少し緩んだこともあり、何度か流経大があともう少しでトライという場面もあった。流経大がゴールラインに到達したのは試合終了間際だったが、感動的な幕切れでもあった。今まで観たセブンズで最高に記憶に残る試合と言っても過言ではない。



■ホストチームからの最高のプレゼント

YC&ACに始まり、YC&ACに終わった感が強い第60回大会。このとんでもないチームは、その後の情報でNZのセブンズ元代表など強力な選手達によって構成されていたことが分かった。しかも、彼らは数日前に香港で行われていた香港10s(10人制ラグビー)に参戦し、プレートトーナメントで優勝を果たしたばかり。6戦して1敗で、その敗れた相手はチャンピオンに輝いていることから優勝する力はあったことになる。

素晴らしいプレーと圧倒的な強さで観客を魅了したチームは、対戦相手のとくに大学3チームとってもかけがえのない経験を与えたことになる。また、日本では観ることの出来ない10人制ラグビーのことをもっと知りたいという気持ちにもなる。セブンズの試合形式に近いが、アタッカーが増えると捉えれば、より厳しいディフェンスが求められる。しかしながら組織での対応ならセブンズよりも15人制に近いとも言える。束の間のYC&ACの選手達のプレーからいろいろなことが連想される。1日間に亘る濃厚なストーリー展開に、ラグビーの奥深さを学んだという意味でも忘れられない体験となった。
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関東大学ラグビー・リーグ戦G(1部)2018 第7週の試合結果

2018-11-25 09:01:54 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


リーグ戦Gも大詰めの7週目。11月17日と18日の両日に入替戦回避をかけたサバイバルグループの重要な2試合が行われた。今シーズンから新たな試合会場として使用が始まったセナリオハウスフィールド三郷。先だっての日大と法政の試合は自動車ルートの選択を誤り遅刻の失態を演じてしまったが、今回は東北自動車道から外環を使ったため余裕で会場に到着し第一関門はクリア。

ただ、ここの第2関門は観客席。陸上トラックがあることはさておいても座っての観戦は臨場感が乏しい。2日間ともにチームテントが立っている側から選手目線で観戦することにしたが正解だった。秩父宮で試合ができる上位グループの試合のような整った環境ではないものの、ベンチからの熱い激励(もちろん心ない野次や叱責は一切なし)に観戦している私も元気を貰うことができた。



■第7週(11月10日)の試合結果

11/17(土) ○日本大学 47-10 ●専修大学 セナリオハウスフィールド三郷
11/18(日) ○拓殖大学 12- 7 ●中央大学 セナリオハウスフィールド三郷





第1日目は日大と専修の対戦。ここまで既に2勝を挙げてアドバンテージがある専修に対し、日大は敗れると入替戦が濃厚となり負けられない。余裕を持つ専修にお尻に火が付いた日大がチャレンジという形で、闘志満々で試合に臨むことは十分に予想できた。キックオフから僅か3分でその日大がFWのパワーを見せつけてアサエリがトライ。その後、専修が反撃に出て1トライを返すものの、アドバンテージの逆効果でテンションが落ちていたのか専修はチームに勢いがない。

FWでアサエリ、BKではフレイザーが元気いっぱいの日大がFW戦を制し、その後着々と加点し試合を優位に進めた。そして最終スコアは47-10の思わぬ大差。この勝利により、日大の6位以上が確定したのに対し、専修は最終戦に敗れると7位で入替戦。それ以上に元気が観られないのが気になる。昨年のほぼ同じ時期に1部再昇格に向けて気持ちを高めていたことを思いだして欲しい。





第2日目はここまで全敗同士の言わば最下位決定戦。あとがなくなった形の中央大も拓大も気合十分でそれはピッチサイドで観ていてもひしひしと伝わってくる。まずはパワーで勝る拓大がに中央大陣で攻め続ける。スクラムやラインアウトなどFWのセットプレーでは圧倒できるものの全般的に選手が硬く成っている印象。中央大の執拗な抵抗もありブレイクダウンで時間をかけてしまうことと、アタックのテンポも単調なためゴールラインが遠い状態。中央大がペースを掴む形となり、BKでボールを前に運ぶ場面が増えていく。しかし中央大も決め手を欠き、前半は両チームともに無得点で終了。

後半はディフェンスで自信を掴んだ形の中央大が拓大陣深くで攻め込む状況。ここは拓大が粘り強いディフェンスで耐える。そして7分、自陣でのターンオーバーからタテに抜けてボールを繋ぎマヒナがようやく先制トライ。その後も両チームによる激しい攻防が続くが30分に拓大が追加点を奪って勝負あったかと思われた。しかしながら中央大も粘りを見せて36分にトライ(ゴール成功)を奪い7-12で僅かに5点のビハインド。本当にどちらに転ぶかわからない状況で拓大が中央大の猛攻を凌ぎきり、最下位転落のピンチから逃れた。



■第8週(11月25日)の試合予定

第8週(11月25日)は秩父宮と前橋(敷島公園)に分かれてのリーグ最終戦で、全ての試合が注目カード。各チームのラストファイトをしっかり見届けたい。

11/25(日) 流通経済 vs 法政大学 11:30 秩父宮ラグビー場
11/25(日) 大東文化 vs 東海大学 14:00 秩父宮ラグビー場
11/25(日) 拓殖大学 vs 専修大学 11:30 前橋・敷島公園サッカーラグビー場
11/25(日) 中央大学 vs 日本大学 14:00 前橋・敷島公園サッカーラグビー場
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関東学院大学vs 東洋大学(関東大学リーグ戦G2部-2018.11.04)の感想

2018-11-16 02:06:51 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


國學院大の逆転勝利の余韻覚めやらぬここ国士舘大学のグラウンド。第1試合は立正大サイドで観戦したが、今度は東洋大サイドに移動する。そこはまだ國學院大学の関係者による大きな歓喜の輪があり、1部昇格に向けて一歩前進を果たしたチームを讃える熱気に包まれていた。さて、第2試合は関東学院と東洋大学の全勝対決。ここで勝利を収めたチームがまず1部リーグ昇格チャレンジへの1枚目の切符を獲得する。いつしか雨も止み、秋晴れとはいかないもののまずまずのコンディションとなった。

関東学院は昨シーズン1部リーグで戦いながらも無念の入替戦敗戦となりここに居る。入替戦ではパワー不足を露呈して前半は圧倒されたものの、後半にサイズのある選手を投入してからは勢いを得て5点差まで肉薄したが一歩届かなかった。降格が決まったあと、女子マネージャー達が大粒の涙を流して泣きはらしていたことが今でも心に深く残っている。そんな悔し涙を流さないためにも戦力アップを図ってきた関東学院。春シーズンから好調が伝えられ、全勝でここまで来た。ただ、前節の國學院大戦では2点差の薄氷を踏むような勝利だったことに一抹の不安を抱かせる。一方の東洋大もここまで全勝。かつて1部で戦った経験を持つこのチームも昇格への熱い想いがマグマのように堪っているはず。



◆前半の戦い/2部リーグとは思えないスピーディーな展開に舌を巻く

颯爽とピッチに登場した両チームだったが、困ったことに遠目ではジャージーの見分けがつかない。関東学院は濃い緑で東洋大は濃紺なのだが同じ色に見えてしまう。辛うじてパンツの色(関東学院が白)で識別できる感じだから、キックの時のオフサイドを判定にも支障を来すのでは?と思われたくらい。どちらかがセカンドジャージーならば問題ないように思われたのだが。

そんなちょっとしたモヤモヤ感の中で試合が始まったが、キックオフから目の覚めるようなゲーム展開に目を奪われた。ボールがスピーディーかつワイドの展開される中での攻守の切り替えもありどんどん目の前の選手達のプレーに引き込まれていく。関東学院ならこれくらいできておかしくはない。しかし、東洋大もまったく遜色ないくらいにボールを動かすことができている。そもそも、これだけ統一された意思のもと、組織的にボールが動かせるチームが1部リーグに何チームあるか?というのが現状であることに一抹の寂しさを感じる。



そんな中での3分に早くも東洋大に激しいディフェンスからのターンオーバーにより先制点が生まれる。GKは失敗したものの、5-0での東洋大リードに早くも関東学院はピリピリしたムードに包まれる。8分、今度は関東学院が東洋大陣22m付近でのラインアウトを起点として右オープンに展開し右WTBがトライ。GK成功で7-5と逆転に成功。両チームによって繰り広げられる激しい攻防に観戦している方もヒートアップの状態になってしまった。

このトライに勢いを得た関東学院がペースを掴む。13分にも東洋大陣でのラインアウトを起点として絶妙のウラチョン(ウラへのチョン蹴り)をCTB12の選手が拾ってトライ。GK成功で14-5と関東学院がリードを拡げる。しかし東洋大も負けていない。18分、関東学院ゴール前のラインアウトを起点としてモールを形成しゴールラインを超えたもののグラウンディングできずにパイルアップ。東洋大は直後の5mスクラムからオープン展開でトライを奪う。GKも成功で12-14とビハインドを2点に縮めたところで東洋大応援席が大いに盛り上がる。「行けるぞ!」というムードがピッチ上に充満するような感じ。関東学院サイドの様子は推し量るしかないのだが、危機意識を抱いたファンも多かったのではないだろうか。

このトライに勢いを得て、前半の後半は東洋大のペースで試合が進む。とくに30分を過ぎたあたりでは関東学院は自陣ゴールを背に守勢に回る苦しい展開。しかし、ここで、あと一歩のところを踏みとどまれたことが大きかった。前半は一進一退の攻防の中、関東学院が2点のリードで終わるものの、内容的には東洋大がやや押し気味の印象。HB団がテンポよくボールを動かす東洋大恐るべし! それと同時に関東学院危うし?の前半でもあった。



◆後半の戦い/前半とはうって変わり完璧な出来を見せた関東学院

前半は東洋大の食い下がりを許した形の関東学院。しかし、後半はマイボールキックオフからギアを一気にトップに上げて東洋大陣に襲いかかる。相手の蹴り返しに対するカウンターアタックからボールを繋いで一気にトライラインまでボールを運んだ。開始から1分が経ったかどうかのタイミングでの鮮やかなノーホイッスルトライだった。関東学院は畳みかける。4分にもトライを挙げて28-12とリードを拡げる。このキックオフ早々のワンツーパンチは確実に効いた。

関東学院の試合は昨シーズンの入替戦以来。それからもうすぐ1年が経とうとしているわけだが、もしも?が許されたとして、昨年がこのチームだったら最下位になることもなかったのではと思わせる位に選手達の体格が一回り大きくなっていることが目を惹いた。とくに新人FBの川崎清純の191cm、105kgは1部リーグの15番の選手達を見回してもないサイズ。結果的に何度もキックオフの時に関東学院の選手達を間近で見る形になったのだが、既に1部リーグの面構えになっているように感じられた。1部を経験している選手が少ないとは言え、王者のDNAはしっかり受け継がれているとみるべきか。



その後も関東学院のアタックが冴えて15分に再びウラへのキックからトライを追加する。さらに20分、今度は相手ボールスクラムを強力にプッシュしてターンオーバーに成功してBKに展開してトライ。前半はやや劣勢とみられたスクラムもしっかり立て直した。42-12と関東学院がリードを大きく拡げたところでほぼ勝敗の行方は決まった。20分から30分にかけての時間帯には東洋大が攻勢に出て関東学院陣内で得点を伺う展開となるものの、惜しいミスもありなかなかトライラインを超えるまでに至らない。アタックもさることながら、関東学院の伝統といってもいい組織的なディフェンスが見事だった。

ゲームも終盤に近づいた30分以降の時間帯になると東洋大の選手達に明らかに疲れが見え、関東学院の自在にボールを操る展開となる。これも伝統と言っていいと思うが、関東学院の選手はボールを持った段階で必ず個々の判断が入る。ルーティーンワークでボールを回すことはなく、また、パス自体もオフロードのような「結果オーライ系」のものはまず使わない。パスの方向、長さ、速さにタイミングを工夫すれば相手ディフェンスを突破出来ることをお手本のように示してくれる。1部上位チームでもノールックパスやオフロードがかなり流行しており、その失敗がピンチを招く場面が多いことに改めて気付かされた。

関東学院は32分と42分にも得点を追加。やはり大型FBの川崎がライン参加すると関東学院のアタックは迫力を増す。また、この日光ったのがルーキーで司令塔を務めたSO芳崎のゴールキック。右隅や左隅といった難しい位置からも確実に決めて8/8のパーフェクトを達成。1部2部を通じてももっとも安定したプレースキッカーと言っていいだろう。前半とうって変わって、後半の関東学院は6トライを奪い無失点の完璧な内容。と同時に入替戦の切符ゲットも決めた。この内容なら来る入替戦も不安なく戦えるだろう。



◆試合後の雑感/1部チーム偵察隊には戦慄の内容

入替戦も近づいた時期での2部リーグの4強対決とあって、間違いなく1部リーグでこの中のチームと戦う可能性があるチームからはビデオを抱えた偵察隊が派遣されていたはず。自分達のチームと見比べながらも試合が進むにつれて(とくに第2試合は)危機感が募っていったのではないだろうか。「絶対に最下位になってはならない。」はおそらく各チームの共通認識だったと思われる。相手が東洋大あるいは國學院大にしても、パワーで対抗できたとして早いテンポのラグビーに巻き込まれたら厳しい戦いを余儀なくされる。それくらい1部リーグの関係者にとっては身の引き締まる試合内容だったと思われる。

逆に気楽な偵察隊気分で観ていた私にとっては、より楽しみが増したと言える。はっきり言ってしまうと観に来て良かった(一度は必ず観るべきだ)という気持ちで一杯。関東学院と東洋大あるいは國學院大のファンやチーム関係者の方々にとって気になる実力がどのくらいあるのか?だが、関東学院は現段階で1部リーグに所属したとしても上位の一角に食い込む力はあるように見えた。ただし、入替戦で戦うチームは強度の高いチームとの試合経験を積んでいる。2部リーグのチームにとっての不安材料はここだと思われ、また1部のチームはパワーで圧倒する戦いを挑んでくるはず。

内容は良くてもそれだけでは勝てないのがラグビーの理不尽なところ。それと、大学ラグビーにおいてもっとも恐ろしい敵は「己自身」であることは長い観戦歴のなかでも度々感じている。チームは1週間で(とくに悪い方に)変わってしまうことは普通に起こる。まだ少し先だが、自分達のラグビーに自信を持ち、そして慢心を抑えて戦って欲しいと切に願う。
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