ミャンマー・日本語学校ブログ

ミャンマーでの生活、教育、ビジネスなど
ヤンゴン在住12年の作者がお届けします。

新憲法の日本語訳(3)

2006年01月02日 | ミャンマー新憲法
第1章
国家の基本的原則

国家
1.ミャンマー国は国家の主権を持った完全に独立した国家である。
2.国家をミャンマー連邦共和国と呼ぶ。
3.国家は各民族が共存している国家である。
4.国家の主権は国民によって起因し、国の領土全てにその主権が及ぶ。
5.国家の領土、領海、領空を含む支配圏はこの憲法が確定する日の範囲の通りである。

基本原則
6.国家は
(ア)連邦が崩壊しないこと。
(イ)全民族の団結を維持すること。
(ウ)国家の主権を永久のものにすること。
(エ)真の秩序ある複数政党制民主主義を発展させること。
(オ)国内において法の下における公正、自由、平等を実現すること。
(カ)国内において国民政治を運営するに際して、国軍が参加主導すること。
7.国家は真の秩序ある複数政党制を行なうこと。
8.国家は連邦制により組織される。
9.
(ア)現存の7管区と7州は現行の境界線のまま維持され、それぞれの管区と州は平等に扱われる。
(イ)現存の7管区と7州は既存の名称のまま維持される。
(ウ)現存の7管区と7州の名称を変更する場合は、管区または州に住む住民による住民投票により決められ、法律により変更される。
10. 国家に所属する管区、州、連邦の領土、自治権などの国家に所属するもの全てはいかなるときにおいても国家から分離しない。
11.
(ア)国家の3権である立法権、行政権、司法権は可能である限り独立して存在し、お互いに影響を与える。
(イ)しかし、独立した3権は連邦を構成する管区、州、自治区などに委任される。
12
(ア)国家の立法権は連邦議会、管区議会、州議会に委任される。自治区に対してはこの憲法が規定する立法権を委任する。
(イ)連邦議会は、各郡区または人口に基づいて選挙された議会と、各管区、各州から同等の代議員数を選挙された議会の2院によって構成される。
13 7管区にはそれぞれの管区議会と、7州にはそれぞれの州議会を設ける。
14 連邦議会、管区議会、州議会の代議員には、この憲法が定める定員に従って、国軍最高司令官が提出する名簿により軍人が含まれる。
15 相応で一定の人口を持つ少数民族は関係する管区または州の立法に参加する権利がある。
16 国家の元首と国家主権の行使者は大統領である。
17 
(ア)国家の行政権を連邦、管区、州にそれぞれ委任する。自治権に関してはこの憲法が規定するとおりに委任する。
(イ)連邦、管区、州、国境、自治区および県における防衛、治安、国境警備などの職務を遂行する者には、国軍最高司令官が提出する名簿により軍人が含まれる。
(ウ)第15項により、関係する管区または州、自治区の立法権の行使に当たっては、議会に参加できる権利を持った少数民族であれば、その管区または州、自治区の行政権の行使に当たっては主に少数民族に関わる事項を行なうために少数民族の代表が参加する権利を認めなければならない。
18
(ア)国家の司法権については、連邦裁判所、管区裁判所、州裁判所、自治区裁判所の各裁判所に委任する。
(イ)連邦において連邦裁判所を設ける。連邦裁判所は国家において最高位の裁判所である。
(ウ)連邦裁判所は命令を発する権利を有する。
(エ)各管区には管区裁判所、各州には州裁判所を設ける。
19 以下は司法権の基本的原則である。
(ア)法律に従い自由に裁判を行なうこと。
(イ)法律に従い、制限される条件以外では国民に公開して裁判を行なうこと。
(ウ)裁判の判決に対して、異議申し立てや控訴する権利を与えること。
20 
(ア)国軍は勢力が強大で戦闘能力が整った近代的な唯一の愛国的な軍隊である。
(イ)国軍は軍事に関するあらゆる事項を自由に企画、実行する権利を有する。
(ウ)国軍最高司令官は兵器、武器を持つ全ての軍隊、兵士の総指揮官である。
(エ)国軍は国家の治安、防衛に関して国民全てが参加することを企画、実行する権利がある。
(オ)連邦を崩壊させないこと、各民族の団結を維持すること、国家の主権を永久のものとすること、などを守り遂行することに国軍は主な責任を持つ。
(カ)国軍は憲法を遵守することに主な責任を持つ。
21 
(ア)全ての国民はこの憲法に規定されている平等権、自由権、機会均等権を享受する権利がある。
(イ)裁判所の許可なしで国民を24時間以上拘束できない。
(ウ)国民の平和的生存と法の支配の実行は国民全ての責任である。
(エ)国民の自由権、権利、享受する権利、責任、禁止事項などは必要な法律により定   めること。
22 国家は、
(ア)国民の言語、文学、芸術、文化が発展するように支援する。
(イ)各民族同士の団結、友好、協力を増進するように支援する。
(ウ)遅れている各少数民族の教育、保健、経済、通信、交通などの社会的基盤の発展のために支援する。
23 国家は農民のために
(ア)農民の権利を保護するために必要な法律を定める。
(イ)収穫した作物が適正な価格になるように支援する。
24 国家は労働者の権利を保護するために必要な法律を定める。
25 国家は知識人、学者などの権利を保護するために支援する。
26 
(ア)国家公務員は政党政治に関与してはならない。
(イ)国家は国家公務員の職場における保証、衣食住の福利厚生、女性職員のために出産に際して便宜を与えること、退職した公務員の衣食住の福利厚生など必要な法律を定める。
27 国家は国民の文化が発展し強固なものになるように保護、支援する。
28 国家は
(ア)国民の教育と健康を増進させることを重点的に行なうこと。
(イ)国民の教育と健康を増進させることに際して、少数民族も参加できるように必要な法律を定める。
(ウ)無償による小学校の義務教育を実現させること。
(エ)国家を建設するために正しい思想と良い人格を養う、近代的教育制度を実現する。
29 国家は手作業による農業から機械化された農業へ転換するために技術、資金、機械、原料などを出来る限り補助する。
30 国家は工業が発展するように必要な技術、資金、機械、原料などを出来る限り補助  する。
31 国家は失業者を減らすために出来る限りの援助を行なう。
32 国家は
(ア)母子家庭、孤児、戦死した兵士の遺族、老人、障害者などを保護する。
(イ)障害者となった国軍の兵士に対して、適度な生活ができるように職業訓練を無償で行なう。
33 国家は子どもの愛国心を育み、正しい思想を持ち、知覚を発展させるように政策を行なう。
34 秩序の維持において、また国民性の維持において、また国民の健康において、この憲法やその他の規定に反しない限り、国民は自由に宗教を信じる権利を有する。
35 国家の経済制度は市場経済制度である。
36 国家は
(ア)国民の経済活動を発展向上させるために国家、各地域の組織、協同組合、合弁組織、民間などの経済活動団体全てが経済活動を行なう権利を与える。
(イ)経済活動を行なう際、公正な競争を妨げる個人であれ、組織であれ、独占または不当な価格の釣り上げなどを防止すること。
(ウ)国民の生活水準を向上すること及び民族資本を蓄積することを目指す。
(エ)経済活動事業を国家による国有化はしない。
(オ)正式に発行された紙幣を廃止しない。
37 国家は
(ア)国内の全ての土地、地上・地下、海上・海面下、空中に存在する天然資源全ての第一所有者である。
(イ)国家が所有する天然資源に関して、経済活動企業が掘り出し使用するに際して、管理するために必要な法律を規定する。
(ウ)国民に財産を所有する権利、財産を相続する権利、個人事業を行なう権利、開発する権利、特許の権利などを法律の規定により許可する。
38 
(ア)全ての国民は法律に従い、選挙権と被選挙権を有する。
(イ)選挙により選ばれた代議員を関係する選挙区の選挙民が憲法の規定に従い、罷免することができる。
39 国家は真の秩序正しい複数政党制を発展させるための政党を組織できるように必要な法律を定める。
40
(ア)管区、州または自治区において行政権を行使するにあたり、この憲法の定める規定を実行できない非常事態が発生した場合、大統領がその管区、州または自治区の行政権を行使できる。その際、必要であれば、その管区、州または自治区に関する立法権をこの憲法の規定に従って大統領が行使できる。
(イ)管区、州または自治区において国民の財産や幸福を脅かす非常事態が発生した場合、またはそれに足りる十分は事情があると認められた場合、この憲法の規定に従い、国軍がその危険から国民を保護し危険を排除する権利を有する。
(ウ)国家の主権を騒乱、騒擾や暴力的行為によって奪取すること、またはそれらを試みることにより、連邦の崩壊、全民族の団結の破壊、または国家の主権を脅かす非常事態が発生した場合、国軍最高司令官が国家の全権をこの憲法の規定に従って掌握する権利を有する。
41 国家は自由な立場で独立し、どの陣営にも属さない中立的な立場の外交路線をとる。世界平和と各国との友好を目指す。各国との平和的な共存を維持する。
42
(ア)国家はいかなる外国にも先制により侵略しない。
(イ)国内においていかなる外国の軍隊を駐留させない。
43 いかなる刑事法も過去にさかのぼって効力を及ぼす規定を設けない。
44 人間の尊厳を貶める刑事罰を定めることを禁止する。
45 国家は自然環境の保護に努めること。
46 この憲法に含まれる項目についての解釈、連邦議会、管区議会、州議会が定める法律、連邦、管区、州及び自治区の行政権の行使について、憲法の規定に合致するかしないかについて、連邦と管区の間、連邦と州との間、管区と管区との間、州と州の間、管区または州と自治区との間、自治区と自治区の間、などに起こったこの憲法の規定に関しての紛争は仲裁により、またこの憲法が委任するその他の規定を運用するにあたって憲法に関する聴聞会を組織する。

47 この章に含まれる基本的原則と第8章の国家と国民の基本的権利と義務に含まれる「国家」という言葉はこの憲法の立法権と行政権を行使する組織または人物を意味す  る。
48 国家の基本的原則の規定は国会が法律の定める際、またはこの憲法やその他の法律の規定を関係当局が解釈する場合に従うべきガイドラインである。