映画とライフデザイン

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映画「異動辞令は音楽隊」 阿部寛

2022-08-28 19:01:44 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「異動辞令は音楽隊」を映画館で観てきました。


「異動辞令は音楽隊」阿部寛主演で「ミッドナイトスワン」内田英治監督がメガホンを持つ。こういうタイプの日本映画はあまり観に行かない。それでも、えげつない雰囲気の作品を避け、ほのぼのハッピーエンドが予測されるこの映画を選択する気分だった。まさに直球のわかりやすい題名で、その通りストーリーが進んでいく。

はぐれ刑事で県警幹部に対して反抗的な態度をとる成瀬刑事(阿部寛)は、凶悪犯に対して強引な捜査をしてきた。同僚や後輩刑事(磯村勇斗)に対してきびしく接してきたが、パワハラのタレコミも本部に入っていた。そんな成瀬刑事に県警本部長(光石研)から広報付音楽隊勤務という異動辞令が下る。


命令なので、やむなく警察音楽隊の練習場に通うことになる。隊員たちは、いずれも通常業務と兼務で統制が取れていない。小学生の頃、和太鼓をやっていたので、ドラムを任せられる。しかし、これまで追いかけていた事件が気になって仕方がない。すでに所管外なのでアドバイスを拒まれる。戻る場所もなくドラムの練習に励むという話である。

心がやわらぐ成長物語である。
元来日本が得意とする結末が読めるような話であっても、自分にとっては心地よく時間が過ごせた。地方都市(豊橋とその郊外)が舞台で、時間がゆったり流れている雰囲気をもつ。若手の高杉真宙や磯村勇斗では役不足で、阿部寛の対になるような俳優がいない。阿部寛のワンマンショー的要素も強い。並行して捜査が進む事件の解決についても、ご都合主義で話が出来過ぎに見える。それでも好印象で映画を見終えた

⒈阿部寛
最初は護られなかった者たちへと同じような阿部寛スタイルで捜査を強引に進める刑事を演じている。1人暮らしの老人を狙って電話をかけて、家の中のどこに金があるのかを確認して強盗に入る事件が町で続いている。その主犯を追いかけていくのに、犯人につながる重要人物の家に令状もなく強引に入って痛めつけるのだ。

しかも、県警の本部長の訓示があっても、新聞を読んでいたり言うことを聞かない。若手には会議をやっても時間の無駄だから現場に出ろとアタマを叩きながら指導する。挙げ句の果て、本部もどこかに異動させざるを得ないのだ。


その後、認知症の母親の面倒を見ながら、ドラムの練習をスタートする。最初は停滞の様相が強いけど、徐々にいい感じになっていく。ある意味、年はくっていても成長物語でもある。この映画のためにドラムの猛練習をしたという阿部寛が試写会で初めて泣けたと言う記事を見た。自分自身の努力に対して感極まるのであろう。

⒉倍賞美津子
護られなかった者たちへのいずれも老婆役で出演していて、その老けぶりには驚いた今村昌平監督作品「復讐するは我にあり」では見事な入浴ヌードシーンを見せたり、神代辰巳作品での艶やかさなど誰もが認めるいい女だった。その過去の輝きにとらわれずに普通の老人役ができるのもすごいなと思った。

ここでは認知症を患っている母親役だ。すでに離婚している成瀬刑事の妻や亡くなった自分の夫が家に帰ってこないと家の前に出て待っている。忘れてはいけないことが家のあちらこちらに貼り紙してある。それでもダメだ。見せ場の一つに用意したのであろう。


⒊印象的なシーン
音楽を基軸に人間が成長していく。素敵な成長だ。そこでエピソードとしていくつかのセッションを映す。同じように練習を重ねたという清野菜名のトランペットと阿部寛の打楽器のからみあいが聴いていて瑞々しい響きを感じる。


刑事で犯人を追いかけることしか頭にない父親なので、離婚した妻とともに暮らす娘の頼み事もすぐ忘れる。娘がギターを弾くバンドの文化祭での発表も忘れていた。そんな娘とドラムの練習場でばったり会う。ラインの通信も断られて分断寸前だった2人の仲だったのに、バンド仲間と一緒にセッションをする。ここで聴く聖者の行進がいい感じだ。


音楽隊の演奏会で奏でる曲を聴いていると、名作「スイングガールズ」を思わせる高揚感があった。後味がいい映画だ。
コメント
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