映画「ベイビーブローカー」を映画館で観てきました。
「ベイビーブローカー」は是枝裕和監督が韓国でメガホンをとった新作である。カンヌ映画祭では「パラサイト」で大活躍した人気者ソンガンホが主演男優賞を受賞していて、韓国映画の主演級が脇を固めている。是枝裕和監督作品はほとんど観ているし、好きな方だ。捨てられた乳幼児の人身売買が題材ということは分かっていたが、先入観なく期待感をもって映画館に向かう。
ある若い女性(IU:イ・ジウン)が赤ちゃんを教会にある安置ボックスの前に置いていく。その姿を張っている女性刑事(ぺ・ドゥナ)がパトカーから眺めている。その後、教会で働くドンス(カン・ドンウォン)とコンビを組むクリーニング屋を営むソンヒョン(ソン・ガンホ)の2人が赤ちゃんをひそかに連れ去る。子どもを必要とする親と売買取引をするためだ。
ところが、預けた女ソヨンが気が変わって教会に戻って引き取ろうとするが、見当たらない。それを見たドンスはややこしくなると感じて、ソヨンに事情を話して、一緒に良い引き取り手を探すことになる。それを現行犯逮捕を狙う刑事コンビが追跡するという話である。
確かにおもしろい。
伏線をばらまいて、途中で回収するセオリーに従っているにもかかわらず、ストーリーの最終場面の落ち着きどころは読みづらい。ただ、ものすごく期待していたことからすると、両手をあげてすばらしいというほどではない。5点はつけられず、4点プラスアルファのレベルだなあ。是枝裕和監督が無難にまとめた感が強く、韓国クライムサスペンス特有の緊張感が少ない。刺激あふれるシーンや超絶ハプニングがない。自分にはそんな感じがする。ただ、その中でもIU(イジウン)は絶賛したい。
⒈IU(イジウン)
IUが韓国の若手アイドルスターであることをシリーズ「マイディアミスター」をつい先日見て初めて知った。このドラマで大筋に大きくかかわる貧困育ちの派遣社員を演じた。これがまた実に上手かった。この映画では、いったん産んだ赤ちゃんを捨てた後に舞い戻り、ブローカーと引き取り手を一緒に探す旅に出る母親の役柄だ。IUのメイクは少し濃い目でいかにも日本の身近なオフィスにいそうな「マイディアミスター」とイメージが違う。
天才的応酬話法を見せつけた「マイディアミスター」同様、ここでもトークが冴え渡る。乳幼児の買い手が値切ったり、分割払いにしようとした時に、相手に突っかかる勢いあるセリフに迫力を感じる。いかにも母親がもつ母性を感じさせるシーンも用意されている。ネタバレなので言わないが、2つの作品の役柄に1つ共通点がある。エグい話だ。今後もこういったサスペンス系での映画出演に期待する。
⒉ソンガンホ
この映画の登場人物はウソばかり話すインチキの塊のような連中ばかりだ。例えば、施設で育っていると兵役が免除されるとか、え!そうなの?というセリフが充満している。軍隊に行ったというが、実はその時は刑務所に入っているからとからかわれる。育ちが良いかどうかとウソをつかないかはあまり関係ないかもしれない。それでも虚構に生きるブローカーたちの育ちの悪さが各場面で強調される。
ソンガンホはカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したけど、これまでのすばらしいキャリアからすると、びっくりするような立ち回りを見せるわけではない。むしろ相棒のカンドンウォンの方がいい味を出している気がする。脚本でソンガンホの存在感を強調するような展開でもないので、格の違いに功労賞といったパターンかな。
⒊ぺドゥナ
是枝裕和監督とは以前「空気人形」でコンビを組んでいる。この女性刑事というのもおもしろい存在だ。警察がそれなりに活躍しないとサスペンスはひきしまらない。子どもを教会に置いていく時点から、ずっとベイビーブローカーになるであろう男たちと、産みの親をマークする。まさに張り込みで、家には帰らないで、コンビの女刑事と現行犯逮捕するまで粘ろうとずっとにらみを効かせている。でも、ずっと張り込んでシャワーも浴びていないようだ。本当にこんなことできるかしら?とも思ってしまうが、まあいいか。
ぺドゥナ刑事はおとり捜査で、高い金を出して子どもを引き取る夫婦に演技をさせたり、やりたい放題だ。でも、単純な罠に引っかからないのが、ソンガンホのブローカーたちだ。悪知恵が働くやつは、自分が悪事を働いているので、相手の悪さも見抜く。この掛け合いの知恵くらべは最終の結末を読みづらくする面でおもしろい。
ただ、1つ疑問なのは実の母親がいて、金銭で相手先の親に売却するってダメなことなのかしら?映画「朝が来る」も似たような気がするけど。これって人身売買というのと違う気もする。境目はブローカーの介在ということ?捨てられた子どもを売却するのはだめっていうことなんだろうなあ。
「ベイビーブローカー」は是枝裕和監督が韓国でメガホンをとった新作である。カンヌ映画祭では「パラサイト」で大活躍した人気者ソンガンホが主演男優賞を受賞していて、韓国映画の主演級が脇を固めている。是枝裕和監督作品はほとんど観ているし、好きな方だ。捨てられた乳幼児の人身売買が題材ということは分かっていたが、先入観なく期待感をもって映画館に向かう。
ある若い女性(IU:イ・ジウン)が赤ちゃんを教会にある安置ボックスの前に置いていく。その姿を張っている女性刑事(ぺ・ドゥナ)がパトカーから眺めている。その後、教会で働くドンス(カン・ドンウォン)とコンビを組むクリーニング屋を営むソンヒョン(ソン・ガンホ)の2人が赤ちゃんをひそかに連れ去る。子どもを必要とする親と売買取引をするためだ。
ところが、預けた女ソヨンが気が変わって教会に戻って引き取ろうとするが、見当たらない。それを見たドンスはややこしくなると感じて、ソヨンに事情を話して、一緒に良い引き取り手を探すことになる。それを現行犯逮捕を狙う刑事コンビが追跡するという話である。
確かにおもしろい。
伏線をばらまいて、途中で回収するセオリーに従っているにもかかわらず、ストーリーの最終場面の落ち着きどころは読みづらい。ただ、ものすごく期待していたことからすると、両手をあげてすばらしいというほどではない。5点はつけられず、4点プラスアルファのレベルだなあ。是枝裕和監督が無難にまとめた感が強く、韓国クライムサスペンス特有の緊張感が少ない。刺激あふれるシーンや超絶ハプニングがない。自分にはそんな感じがする。ただ、その中でもIU(イジウン)は絶賛したい。
⒈IU(イジウン)
IUが韓国の若手アイドルスターであることをシリーズ「マイディアミスター」をつい先日見て初めて知った。このドラマで大筋に大きくかかわる貧困育ちの派遣社員を演じた。これがまた実に上手かった。この映画では、いったん産んだ赤ちゃんを捨てた後に舞い戻り、ブローカーと引き取り手を一緒に探す旅に出る母親の役柄だ。IUのメイクは少し濃い目でいかにも日本の身近なオフィスにいそうな「マイディアミスター」とイメージが違う。
天才的応酬話法を見せつけた「マイディアミスター」同様、ここでもトークが冴え渡る。乳幼児の買い手が値切ったり、分割払いにしようとした時に、相手に突っかかる勢いあるセリフに迫力を感じる。いかにも母親がもつ母性を感じさせるシーンも用意されている。ネタバレなので言わないが、2つの作品の役柄に1つ共通点がある。エグい話だ。今後もこういったサスペンス系での映画出演に期待する。
⒉ソンガンホ
この映画の登場人物はウソばかり話すインチキの塊のような連中ばかりだ。例えば、施設で育っていると兵役が免除されるとか、え!そうなの?というセリフが充満している。軍隊に行ったというが、実はその時は刑務所に入っているからとからかわれる。育ちが良いかどうかとウソをつかないかはあまり関係ないかもしれない。それでも虚構に生きるブローカーたちの育ちの悪さが各場面で強調される。
ソンガンホはカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したけど、これまでのすばらしいキャリアからすると、びっくりするような立ち回りを見せるわけではない。むしろ相棒のカンドンウォンの方がいい味を出している気がする。脚本でソンガンホの存在感を強調するような展開でもないので、格の違いに功労賞といったパターンかな。
⒊ぺドゥナ
是枝裕和監督とは以前「空気人形」でコンビを組んでいる。この女性刑事というのもおもしろい存在だ。警察がそれなりに活躍しないとサスペンスはひきしまらない。子どもを教会に置いていく時点から、ずっとベイビーブローカーになるであろう男たちと、産みの親をマークする。まさに張り込みで、家には帰らないで、コンビの女刑事と現行犯逮捕するまで粘ろうとずっとにらみを効かせている。でも、ずっと張り込んでシャワーも浴びていないようだ。本当にこんなことできるかしら?とも思ってしまうが、まあいいか。
ぺドゥナ刑事はおとり捜査で、高い金を出して子どもを引き取る夫婦に演技をさせたり、やりたい放題だ。でも、単純な罠に引っかからないのが、ソンガンホのブローカーたちだ。悪知恵が働くやつは、自分が悪事を働いているので、相手の悪さも見抜く。この掛け合いの知恵くらべは最終の結末を読みづらくする面でおもしろい。
ただ、1つ疑問なのは実の母親がいて、金銭で相手先の親に売却するってダメなことなのかしら?映画「朝が来る」も似たような気がするけど。これって人身売買というのと違う気もする。境目はブローカーの介在ということ?捨てられた子どもを売却するのはだめっていうことなんだろうなあ。