随分昔のことです
母は私が持っている着物を見て“いざというとき”に困るからと言って(というのは
私が持っている着物が幼げな若者風と言う意味だったようです)
加賀友禅の付け下げの着物を買ってくれたのです
私は母が言う“いざというとき”とはどんな時のことだろうかとおもったものです
たとえば息子の結納のようなときかな
そんな時にはもう自分が健在でないかも知れないから
私が困らないように準備をしてやらなくてはと思ったのかもしれない
私はその頃はよく母のお伴をして着物を着こんでお茶会にも出かけたものです
でもそうは言ってもその後に母は受験生の子供を持つ私に対して
陣中見舞いといって絞りのきものも買ってくれたのですが
それだって結構綸子の地に赤や紺色黄色の小花が染められた絞紋様で
若い年代から着れるものでした
だから母にとって私は何時までも子供のままだったのかなと
今年も文化祭で詩吟に出場する際皆さん和服を着らます
今年は母からプレゼントされた加賀友禅の付け下げを着ようかとおもっています
これも〝いざというとき“になるものかどうか
他の山茶花よりひと足早く咲く花です
一輪だけ咲きました
母が亡くなった朝にも咲いていました
悲嘆の涙をして見つめたものです
もう散るかも