あまりに突然の事でした。
何の前触れも、予兆も無く…。
パセリは工房&アトリエに住んでいる長毛ゴージャスな猫で
セイレムという黒猫の自分の子供と住んでいました。( 母と娘 )
仲良し親子のパーちゃんとセーちゃん
『 生きているモノは必ず死ぬ 』のだけれど、私は
パーちゃんは死なないんじゃないかと心のどこかで思っていた。
歳を重ねるにつれ、パセリの体は変化していった。
若い頃のように毛並みに艶がなくなり、長毛のせいで大きく見えるが筋肉は衰え脂肪はなくなり痩せて軽くなっていった。
少しの段差も上がるのにもやっとというくらいだったけれど、それでも尻尾をピンと立てていつも人の後を付いて来た。
私たちの所に来る前に、数件の所を渡り歩きパセリという名の他に『 ボス・もじゃ 』と呼ばれていたのだ。
多分、生きてきた年数はかるく20年は超えている。
まだ、ママさんが喫茶店( 今の工房で )を経営していた頃に妊婦姿で現れたのだ。
その後も何度か出産した。
動物病院の先生からはお腹にいるのは4匹だろうと言われていたのに、いざ出産してみれば出るわ出るわで8匹を産んだ時には皆驚いた。
家族で手分けして喫茶店で『 8匹の育児奮闘 』がはじまった。 皆、育てるのに必死で

そんな忙しさも楽しく嬉しかった。
店の
看板猫だった

パセリはパセリ目当てで来てくれるお客もいて、パセリの子供8匹の子はみんな貰い手が決まった。
頭が良く、人が大好きで、心と愛情が深く広く大きな肝っ玉母ちゃんパセリ 
そんなパセリを溺愛していたママさん。
私から見ればママさんとパセリの関係は猫と人間関係なく対等な『 同士 』のように見えていた。
9月8日( 月曜日 )午後1時30分。
私は用事があり会社からママさんに電話をかけた。
すると慌てた様子で電話に出たママさん。
ママさん :
工房の前の道で猫が轢かれてたんやて!!
その近くにパセリの首輪が落ちてたって!! 今、役所の焼き場に向かっとるんや!!!
a :
焼き場ってどういうこと!?
ママさん :
猫の死体がすでに役所に回収されとったんや!!
2時までに行かんと焼かれてしまうんやっっ!!!
我が家から焼き場までは

車で40分の距離。
話によると…
早朝、工房の前の道で猫が轢かれていたそうで、道を挟んだ向かいの大きな鮮魚店の店員のおじさんが猫に気が付き道路脇に猫を寄せたそうな。
※ おじさんは我が家の猫とは知りませんでした。
しばらくして鮮魚店の娘さんが
パセリの首輪が切れて落ちている事に気が付き…。
その時にはすでに道路脇に猫の遺体は無く…業者が回収したあと。
これはえらいことや!大変や!!と連絡をくれたのです。
連絡を受けたママさんは急ぎ役場に連絡をしたものの確認がとれず、確認が取れた時にはすでに焼かれる寸前

この時はまだパセリなのかどうかさえわかりませんでした。
待って!!! 自分の猫かどうか確認させてほしい!!!
業者には無理だと言われたが、もしも猫の遺体が自分家の猫でなくとも引き取るので焼くのを待ってほしい!!とママさんの必死で訴えで2時まで待ってくれることに。
2時ギリギリで到着したママさんが目にしたものは、黒いごみ袋に同じように轢かれ亡くなってた子供のタヌキと一緒に入っていたパセリでした。
すぐにパセリと分らぬほどに長毛のはずのパセリが何度も車に轢かれ、雨に濡れ、ボロ雑巾のように変わり果てた姿だったそうです。
『 どうかパセリではありませんように 』と願いながらママさんは向かったので、溺愛していた者の変わり果てたその姿を見た瞬間の絶望は計り知れず…。
けれどママさんは気丈にも
パセリを連れて帰り、泥と血にまみれた体を洗い流し、乾かし、顔も綺麗に拭いて私が到着した時にはいつものふわふわ毛並みの綺麗なパセリでした。
何度も車に轢かれたようで切り傷と背骨・腕・足・尻尾にいたるまで骨折していた。
太モモは肉と骨が剥き出しで形を無くし、足はいまにも取れそうなくらい皮一枚で繋がった状態。
けれど顔は綺麗なままで、眼もすごくキレイ

だった。 まだ生きていて眠っているように見えた。
車の怖さを知っているパセリ。
道路を横断する時には猫らしからぬ左右の車を確認してから渡っていた。
いつもは渡らない車通りの激しい前の道をなぜ渡ったのか?
もしかしたら
セイレムが道の向こう側にいたのかもしれない。
自分は渡り切れると思っていたけれど年齢のせいもあり思うように体がついて来ず、急いで急いで急いで渡ったけれど間に合わなかったのだろう。
けれど、本当に本当に間に合って良かった。
パセリが大好きなママさんが、ママさんが大好きなパセリが… ママさんが迎えに行けて良かった。
きっと
パセリもママさんが迎えに来るのを待ちわび喜んでいただろう。
いつか年老いて自由が利かなくなったパセリを介護する気でいたママさんは
ママさん :
あまりに呆気ないやんか…あんぽんたんやな…
あとどれだけ、涙を流すのだろう。
たぶん出逢った猫達の数だけ流すことになってもその分、その猫達から幸せをもらえたから( おあいこ )なのかもしれないな。
パセリ逝く、ママさんの誕生日の二日前の出来事でした。