野草園のミツバアケビです。
子供の頃アケビ採りに夢中になった時期がありました。
名前は、実が熟して割れたさまが、人の「あくび」 に似ていることから「あけび」に変化していきました。
また、実は熟してくるとぱっくり口をあけたように
裂けることから、「開け実」→「あけび」になった、
という説もあります。
愛媛県松山生まれの俳人、河東碧梧桐は芭蕉を意識して漂白のたびに出て、山形県上山市で次のような文章を「三千里」の中に残しています。
十月一日 晴れ
最上川を渡った清水という処で通草(あけび)を売ってる。三つ一銭である。通草は去年の秋から食いたいと思うておった。実が赤いという句を作って誰かに笑われたことがあるが、それでもまだ何やら色づいておるように思うて落着かなかった。ことし夏十和田で通草の花を教えられて、小さくはあるが紫色が如何にも濃いのを美しいと見て、通草の実もこのように紫であろうときめておった。そとの皮は想像通り紫色ではあるが、どこやら濁っておって打身の跡らしいイヤな処がある。中からは僧正の衣のような艶々する紫が現われると予期して二つに殻を割って見ると、禰宜の袖のような純白な実が出たので拍子抜けをする。実は軟かくて甘い。ただ黒い小さな種が無暗とあるだけが、バナナと趣きの違う処である。
十月三日。晴。
通草(あけび)は中の実よりも外の皮の方がうまいとのことで、きょう旧知己の数人寄った席上で、その馳走があった。油でいためて、中へ味つけ味嗜を詰めて焼いたものじゃ。柚味噌(ゆみそ)に似たこしらえかたであるが、別に通草味噌という名もないそうじゃ。已むなくんぽ名古屋の鰡饅頭(いなまんじゆう)にかたどって、通草饅頭とでも言えばよかろうと思う。少し苦味があって柔かい。到底脱俗なものである。
10月3日アケビを食べたと書いていますが、私のおふくろもアケビ料理が得意です。干したアケビの皮をゆでて、中に人参、ごぼう、油揚げの千切りと豆、きのこをいれて、干瓢で結びます。それをなべに油を引いた上にならべて少しいためてから水、しょうゆ、砂糖を入れて煮詰めます。皮の食感と苦味が大人の味で、さまざまな食材の味がしみて美味しいです。
アケビを生の状態で食べたいときは、中のゲル状の実を食べた後、皮を油で揚げます。次に油で揚げたアケビの中にいためた味噌、舞茸、ひき肉などを入れてO,Kです。香ばしく、苦味があって美味しいですよ。
実は種が多く食べずらいので、漬物を漬けるとき、甘みとして加えるのもいいでしょう。しかし夢中になって山で遊んだ少年の頃のようにしみじみと味わうのが最もいい選択です。