浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

文京シビックホール15周年記念公演 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 特別演奏会

2015-05-31 20:59:40 | 吹奏楽

2015年5月24日、日曜日。

文京シビックホール15周年記念公演として、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団が特別演奏会を開催しました。

昨年12月14日に川口リリアで行なわれた第49回定期演奏会の“次”ですから、50回目に当たるはずなんですが、どうも、“定期演奏会”ではないらしい。(だって、“第50回定期演奏会”は、今年の12月20日に川口リリア・メインホールでやるってプログラムに書いてありますもの…。)

ただ、毎年、“吹奏楽の響き”と題して行なわれる春の定期演奏会で、ここ数年、お馴染みとなっている埼玉県中学校選抜吹奏楽団の発表会は聴かせて頂けるようですね。

 

それにしても、文京シビックホール、恐るべし、です。

「響きの森」というだけあって、よく響く。

だから、プロの楽団やリベルテのようなレベルの高いバンドなら良いのですが、まだ、そこまで到達していない“発展途上”の団体がバランスも考えないで、がなりたてた日にゃ、“演奏”を聴いているんだか、“騒音”を耳にしているんだか、わからなくなってしまう。(実際、私自身そういう“経験”もしました。)

今回の演奏会は、中学生の皆さんも登場します。

このホールに“負けなければ”、いいんですが…。

でも、この考えは杞憂に終わりました。

良い意味で、大いに“裏切られ”ました!(詳しくは後ほど。)

 

それと、もうひとつ。

この日の特別演奏会は、選曲の点で、いつもとは違う。

リベルテと“共催”している文京シビックホール(厳密に言うと「公益財団法人 文京アカデミー」)の委嘱作品が目白押しなのです。

しかも、『世界初演』の曲が4曲もある。

それだけじゃ、ありませんよ。

委嘱作品を作曲している面子がスゴイ。

吹奏楽作品で大人気の長生淳、真島俊夫、天野正道、中橋愛生と言った先生方に加えて、あまり“吹奏楽”を感じない池辺晋一郎、西村朗といった日本を代表するクラシック音楽の作曲家の方々まで。(しかも、全員、会場にお見えになっておられました。)

これが、TKWOやシエナとかのプロの楽団だったら、わかりますよ。

でもね、実績はあると雖も、アマチュアバンドのリベルテなんです。

それなのに、この演奏会をやってのけるアンサンブルリベルテ。

あらためて、凄さを身にしみて感じざるを得ませんでした…。

 

【第Ⅰ部】演奏:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団

       指揮:福本 信太郎

 

五月の風《1997全日本吹奏楽コンクール課題曲》真島 俊夫)

暁闇の宴《2015全日本吹奏楽コンクール課題曲》朴 守賢)

Fanfare for the Coming Era for Brass Octet《文京シビックホール委嘱・世界初演》池辺 晋一郎)

次の時代のためのファンファーレ 金管八重奏のために

花鳥諷詠《文京シビックホール委嘱・世界初演》長生 淳)

 

【第Ⅱ部】演奏:埼玉県中学校選抜吹奏楽団 第4期生研修発表会

 

ヨークシャー序曲(P.スパーク)

指揮:中畑 裕太〈川口市立青木中学校教諭〉

太陽の讃歌 ― 大地の鼓動(八木澤 教司)

指揮:外崎 三吉〈朝霞市立朝霞第一中学校教諭〉

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲(P.マスカーニ/arr.建部 知弘)

指揮:鈴木 直樹〈志木市立志木第二中学校教諭〉

歌劇「運命の力」序曲(G.ヴェルディ/arr. F.チェザリーニ)

指揮:田中 秀和〈越谷市立大相模中学校教諭〉

 

【第Ⅲ部】演奏:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団

       指揮:福本 信太郎

 

Breezin’ 《文京シビックホール委嘱》(真島 俊夫)

SJ&P_16“Viva Bunkyo Civic” 《文京シビックホール委嘱》(天野 正道)

樹霊Ⅱ~5本のクラリネットのための~《文京シビックホール委嘱・世界初演》西村 朗)

Sonorific Detonation for Symphonic Band《文京シビックホール委嘱・世界初演》中橋 愛生)

 

演奏会は三部構成で、1と3がリベルテ、2が中学校選抜の演奏というプログラムになっています。

まずは、リベルテの演奏から。

最初の曲は、「五月の風」。

この曲は、1997年、第45回全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅲです。

残念なことに私が吹奏楽から全く関係のない生活をしていた時期なので個人的に印象が薄い。

真島先生らしい明るくて優しい曲ですね。

メロディを聴いているだけで爽やかな潮風を感じているような気持ちになりました…。

リベルテの演奏は…、もちろん、申し分のないものでした。

 

前半2番目の曲は、今年の課題曲Ⅴ。

冒頭の音の掛け合い部分だけでゾクッときましたねぇ。

こういうメロディラインで歌う事の出来ない曲は、実力不足の団体が演奏すると(素人からみても)“音楽の流れ”を感じにくいものなのですが、リベルテには“それ”が強く備わっていた。

というか、もう既に楽曲が完成していて、安心して聴けました。

心地よい“音圧”が会場いっぱいに広がる演奏でした…。

ちなみに作曲者の朴守賢氏も会場にお見えになっておられました。

 

続いては、池辺晋一郎先生の作品。

文京シビックホールの委嘱で、しかも“世界初演”です。

トランペット3、ホルン1、トロンボーン2、ユーフォニアム1、テューバ1という金管八重奏のために書かれた「次の時代のためのファンファーレ」。(舞台に上がっての池辺先生の“解説”付き、でした。)

曲名のように未来を感じさせる華やかな“音楽”でした。

それでいて、重厚な格調高さも“同居”している。

リベルテの素晴らしい演奏と相俟って、ステキなひと時を過ごせたと感じた次第。

 

Ⅰ部、最後の曲は、長生淳先生の「花鳥諷詠」。

舞台上に登壇された長生先生の“解説”と共に先生の“学者然”とした風貌も影響あってか、とても深遠な曲に感じました。

最初の低音部のロングトーン、リベルテ素晴らし。

曲を聴いての全体的な印象。

先生の作品に共通する“長生節”的な“流れ”はあるものの、より現代的な曲調で、また、激しい部分が多いように思いました。

調べてみますと曲名の「花鳥諷詠」とは、高浜虚子の造語で彼の俳句における根本理念であるようです。

俳句に疎い私にとっては、よくわからない理論ですが、人間の営みを客観的に描いている点において、新しさを感じる曲であり、演奏でした。

ちなみに、この曲も《文京シビックホール委嘱・世界初演》です。

 

いつもと多少違う雰囲気に戸惑いながらも演奏会は進行して行きます。

休憩の後、Ⅱ部は、「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の皆さんの登場です。

今回で第4期生になるのですね。

アンサンブルリベルテは、年2回の定期演奏会を行なっています。

その中で、毎年5~6月に“吹奏楽の響き”と題して行なわれるコンサートが2012年から埼玉県中学校選抜の研修発表会も兼ねて開催されるようになりました。

私は、「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の演奏を第1期生の時から拝見させて頂いております。(残念な事に昨年の第3期生の発表会には仕事の都合で行けませんでした。)

埼玉県内のオーディションによって選ばれた中学生の皆さんですから、それなりのレベルであるのは推察できますが、良く見ると、まだまだ、あどけない表情をした生徒さんが素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる。

年々、レベルが上がってきている印象がありますが、今年は、どうなのでしょう?!

 

最初は、スパークの曲です。

明るい曲で若い生徒さん達にはピッタリ。

人数は70名弱くらいでしょうか?

出だしがバッチリ決まりました!!

音に伸びがあるし、ダイナミクスのバランスが心地よかった。

余計な心配(例えば、“ピッチ”とか“アンサンブルの乱れ”とか…)をしなくて良い演奏で安心して聴けました。

 

次は人気作曲家、八木澤教司先生の「太陽の讃歌 ― 大地の鼓動」。

出だしの入り方は、全体的に“無造作に”感じました。

でも、曲が進むにつれて、ものすごく良くなってきました。

特に曲の合奏部のffの音圧がすごくて、中学生とは思えない迫力でした。

途中でハミングなんかも出てきて、ドラマチックな曲でしたが、じょうずに表現出来ていたと思います。

私のようなオヤジからしてみれば、子供のような年頃の生徒さん達の演奏は、微笑ましく、そっと見守ってやりたい衝動に駆られるのですが、この演奏を聴くと、そんな気持ちもどこかに吹き飛んでしまいますね。

「あたたかい目」で見るレベルじゃないんです。

既に完成された、ひとつのパフォーマンスですね。

 

3曲目は、オペラの名曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。

ゆったりとした美しい曲です。

この曲も出だしの入り方(木管楽器)がもう少しデリケートな入り方をすれば、良かったですかね。

丁寧に丁寧に演奏しようとする意思は、ものすごく観客に伝わったと思います。

とても美しい演奏でした。

ただ、精神的な表現のチカラは、もう少し大人にならないと無理なのかぁと思いました。(いわゆる「メロディを歌う」ってヤツですか。)

ダイナミクスの起伏も、もっとあれば良かったかも。

 

「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の皆さんの演奏も最後の曲となりました。

ヴェルディの「運命の力」。

司会の方も言っておられましたが、40~50代のかつて吹奏楽部員だった方にしてみれば、コンクール自由曲の代名詞のような曲です。

私も練習したことがあるような、ないような…。

全体的にひとつひとつの音符の処理の仕方がうまいと思いました。(同じ長さの音符だと均等に聴こえる…。)

金管低音部、とても良いパフォーマンスでバンド全体を支えているように感じました。

雰囲気を持った演奏でしたが、もう少し泥臭さがあったら、私の好みに近かったかも。

いずれにせよ“トリ”にふさわしい演奏であったことは間違いありません。

中学生の皆さんの演奏が終わりました。

思った以上のテクニックに“浦和のオヤジ”は大満足!

これで埼玉県吹奏楽界の未来も安泰ですね。(中学生の皆さん、都内の高校なんかに進学しないで下さいね…(笑))

さて、今年も「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」では、第5期生を募集しているようです。

興味のある生徒さんは応募してみては、どうでしょうか?

 

フレッシュな中学生の皆さんの後は、“熟練”のリベルテの演奏にもどります。

そして、Ⅲ部の1曲目と2曲目はⅠ部の演奏とは多少、趣が違います。

真島俊夫先生の「Breezin’」と天野正道先生の「SJ&P_16“Viva Bunkyo Civic”」(どちらも《文京シビックホール委嘱》)

最初は、まだ“エンジンが完全に動いてない”感じもしましたが、徐々に演奏に艶がましてきましたねぇ。

ソロパートもうまくて、色っぽいし、リベルテは、どんなジャンルの曲でもソツなくこなします。

本当に芸達者揃いです。(指揮の福本先生が最初から最後までノリノリだったのが印象的でした。)

 

ジャズやポップス系の曲を聴いて大いに盛り上がったあとに“クラリネット五重奏”の曲です。

「樹霊Ⅱ」(《文京シビックホール委嘱・世界初演》)という曲名が示す通り、「少しスピリチュアルな部分も感じとってほしい」と西村先生自身が曲の“生解説”でおっしゃっておられました。(それと前の曲とのある意味“落差”が大きかったせいか、よく聴いて下さい、と連発されていたのが面白かった。)

曲は、神秘性や神聖さを感じとれる静かだが激しいものでした。

わずか5本の楽器だけでそれを表現できる楽曲は素晴らしかった。

それと、何といってもリベルテのパフォーマンスの素晴らしいこと!

クラリネットパートの皆さんの演奏でしたがアマチュアの域を越えてましたね。

難解な曲に物おじせず立ち向かい、こなしているのには感動致しました。

少人数のアンサンブルではありましたが、この日のプログラムの中で個人的に最も優れた演奏だと思いました!(蛇足ながら…、本音で言うとせっかく、西村朗先生がお見えになっておられたのだから、出来ればリベルテには課題曲Ⅲを演奏してもらって、西村先生の“生解説”を聴きたかった…。)

 

さあ、お名残り惜しいですが、いよいよ最後の曲です。

NHK・FM「吹奏楽のひびき」のパーソナリティとしても有名な人気作曲家の中橋愛生先生の登場です。

「Sonorific Detonation for Symphonic Band」(《文京シビックホール委嘱・世界初演》)。

プログラムの解説には『「響轟」とでも訳せましょうか』とお書きになっておられます。

その通りにテンポが速くて激しい曲でした。

しかし、それは破壊的なものではなく、何事かのエネルギーが拡散する意味をこめられているようです。

リベルテの素晴らしい演奏にその“見えないもの”を強く認識できたような気がします。

とても、楽しめました。(個人的に言うと川越奏和にも演奏して頂いたら面白そうな曲でした。)

 

全部の演奏が終わりました。

本日の委嘱作品の作曲者の皆様がもう一度、ステージ上に上がって声援を受けられました。

でも、拍手は鳴りやまない。

そして、アンコール曲です。

異国情緒豊かな楽器スチールパンを使った「Caribbean Sundance」と「聖者の行進」。(いずれも真島先生の作品で“今年の”SJ&Pの課題曲です。)

スチールパンの音色は、南国気分を味あわせて頂きましたし、「聖者の行進」は、アメリカ南部の葬式の様子を再現しているらしくて、非常に趣のある曲でした。

そして、これは本当に最後でしたが、先程、素晴らしい演奏を聴かせて頂いた「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の皆さんが「花は咲く」を熱唱し、閉会となりました…。

 

この日の演奏会は、場所も文京シビックホールで、しかも“委嘱作品”だらけ。

リベルテの皆さんも、さぞやプレッシャーが…、と思っていましたが、今まで聴いてきた演奏会以上に気合いが入っているようで、期待以上のパフォーマンスを見せてくれました。

さすが、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団です。

ここ数年、埼玉県の高校のトップバンドの指導者が入れ替わったりして、ある意味、埼玉県吹奏楽界は“過渡期”にあるのではと思ってしまいます。

しかし、吹奏楽王国“埼玉県”をけん引するナンバーワンのバンドとしての自覚を持ち、頑張って頂く…、それを切に希望する次第です!!(千葉県には負けないで!!)


川越奏和奏友会吹奏楽団 第39回定期演奏会

2015-05-27 10:31:55 | 吹奏楽

2015年5月10日、日曜日。

川越奏和奏友会吹奏楽団の定期演奏会にやって参りました。

早いもので、3回目の川越訪問となります。(全て川越奏和の定期演奏会のためですが…。)

場所は、川越市市民会館。

残念な事に50年にわたって使用されてきた大ホールは、本年6月を持って閉館となるのだそうです。

つまり、川越奏和の定期演奏会も川越市市民会館での最後のステージとなると言う事です。

そのかわり、川越駅西口徒歩5分に“ウェスタ川越”という立派なホールが出来ます。(本年7月1日にオープン)

いずれにせよ、川越市市民会館、長きにわたり、お疲れさまでした…。

 

さて、今回の定期演奏会は、アルフレッド・リード、天野正道、岩井直溥という有名作曲家の特集をするとの事。

特に岩井先生の作・編曲の楽曲をどう演奏して下さるのか非常に楽しみです。

 

[演奏]川越奏和奏友会吹奏楽団

[指揮]佐藤 正人(音楽監督・常任指揮者)

[ゲスト]天野 正道

[司会]水野 潤子

 

【第1部】

 

アルメニアン・ダンス(パートⅠ)/A.リード

Armenian Dances PartⅠ/Alfred Reed

   杏の木 Tzirani Tzar(The Apricot Tree)

   ヤマウズラの歌 Gakavi Yerk(Partidge’s Song)

   おーい、僕のナザン Hoy, Nazan Eem(Hoy, My Nazan)

   アラギャズ山 Alagyaz(Alagyaz)

   行け、行け Gna, Gna(Go, Go)

アーデンの森のロザリンド/A.リード

Rosalind in the Forest of Arden/Alfred Reed

パッサカリア/A.リード

Passacaglia/Alfred Reed

 

【第2部】

 

そして静けさは森の中へ・・・/天野 正道 《吹奏楽版初演》

… and silence into forest/Masamicz Amano

Alas de Hierro ~ 虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)/天野 正道

Alas de Hierro/Masamicz Amano

 

【第3部】

 

ポップス描写曲 メイン・ストリートで/岩井 直溥

On Main Street/Naohiro Iwai

ディズニー・メドレー/岩井 直溥 編

Disney Medley/arr. Naohiro Iwai

ヘイ・ジュード/J.レノン&P.マッカートニー:岩井 直溥 編

Hey Jude/J. Lennon & P. McCartney : arr. Naohiro Iwai

エル・クンバンチェロ/R.エルナンデス:岩井 直溥 編

El Cumbanchero/Rafael Hernández : arr. Naohiro Iwai

 

さあ、いよいよ開演です!

まず、第1部は、今年で“没後10年”を迎えたアルフレッド・リードの特集から。

アルフレッド・リードの吹奏楽界に残した功績は大きいです。

特に私が若かりし頃は、吹奏楽に親しんでいる人間で、影響を受けなかった者はいないと断言しても良いでしょう。

それだけ偉大な作曲家でした…。

 

1曲目は「アルメニアン・ダンス(パートⅠ)」。

ホントにお馴染みの曲です。

もしかしたら、私がコンサートでイチバン多く聴いている楽曲かもしれません…。

川越奏和の音質が少し乾いた感じがします…。

いわゆるホールが響かないってことでしょうか?

でも、音は後ろまで抜けてきますねぇ。

さすが、川越奏和です。

多少、ミスはありましたが、音楽の流れと勢いを強く感じました。

安心して聴ける演奏でした。

 

次は、「アーデンの森のロザリンド」。

しっとりとした仕上がりで曲調を生かした丁寧な演奏のように思いました。

私の勝手な思い込みかも知れませんが、川越奏和の“激しさ”の表現は尋常じゃなく素晴らしい。

それとは、違った“美しさ”の表現も見せて頂き、非常に印象深く思いました。

ただ、少しだけダイナミクスの点で起伏が感じられたらと思った部分もありましたが。(決して単調だったという意味ではありません。)

 

第1部、最後の曲は、「パッサカリア」。

私なんぞは、吹奏楽で「パッサカリア」と言うと兼田敏先生の作品を思い浮かべてしまいますが、リードのそれも重厚で格調高い曲でした。

最初の金管のアンサンブルで心を引き込まれ、「パッサカリア」という音楽技法が流行った中世ヨーロッパの世界を味あわせて頂いたような気がしました。(私の“想像”の世界ですが…。)

荘厳な雰囲気の演奏は、この曲を第1部のメイン曲に持ってきた理由がわかるような気がしました。

 

さて、第2部は、この日のゲストでもある作曲家の天野正道先生の楽曲のステージです。

最初の曲は、「そして静けさは森の中へ・・・」。

この曲は、もともと埼玉栄高等学校吹奏楽部のアンサンブルコンテスト出場のために委嘱された楽曲です。(そして、2002年度アンサンブルコンテスト全国大会で“第1位”を獲得。)

原曲は、打楽器八重奏ですが、当時、埼玉栄の吹奏楽部顧問であった大滝実先生(西関東吹奏楽連盟理事長)の『ヴィブラフォーンで静かに始まって、静かに終わって』という指示を守りつつ、吹奏楽版では曲の“肉付け”をされたようです。

出だしのヴィブラフォーン、雰囲気良く始まりました。

でもね…、ホールの空調がうるさくて、よく聴こえなかった…。(とても、残念。曲、演奏者に罪は無し。)

多彩に打楽器を使った曲です。(もともと、打楽器の曲ですから、あたり前でしょうけど。)

と言うより、全ての楽器を“打楽器的”なニュアンスで使用してしているのではないかと錯覚する場面がありました。

アクセントの効いた川越奏和にマッチした曲だと思いました。

余談ですが、天野先生もステージ上にあがり、曲の解説をして下さったのですが、大滝先生の声真似をしたのが面白かった…。

ちなみにこの日の演奏の中で個人的にイチバン感銘を受けた演奏でした…。

 

第2部の2曲目は、「Alas de Hierro ~ 虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)。

この曲は、2004年に鹿児島県の一般バンド、J.S.B.吹奏楽団の第18回定期演奏会にて初演されました。

曲名からも推察されるように、爆弾を装着した戦闘機で敵の艦船に体当たりを仕掛けると言う、いわゆる“特攻隊”に散った若き命を題材にした楽曲です。

天野先生は、J.S.B.吹奏楽団の常任指揮者である東久照氏に鹿児島県南九州市(旧・知覧町)にある「知覧特攻平和会館」に案内されました。

その会館で死んでいった若者たちの残した遺書・手紙等にいたく感銘を受け、作曲に至った次第。

天野先生は、おっしゃっていました。

この曲には政治的な意図はなく、事実関係のみを“音楽”にした、とのこと。

それにもかかわらず、様々な思想の団体、個人の方から、抗議や誹謗中傷のメールが来たらしいです。(作曲意図を丁寧に説明することによって、ほとんどの方が分かってくれたそうですが…。)

トランペットのソロが物悲しかった…。

人間の深層心理が非常にわかりやすく描けている作品であり、演奏だったと思います。

 

休憩後、祝電紹介のあと、第3部です。

ここからは、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」という吹奏楽にとって“新境地”を開いて下さった岩井直溥先生の“特集”です。

プログラムの解説を見ますと岩井先生が90歳で亡くなられたのが昨年の5月10日。

そうです、ちょうど、このコンサートの1年前に亡くなられたのです。

もう、1年経つのかぁ、早いものですね…。

ステージ上では指揮台のすぐ脇に岩井先生の写真。

舞台上手(かみて)の脇には、大型テレビなのか、プロジェクターのスクリーンなのか、分かりませんが、大きな画像を映し出す“画面”が設置されています。

一体、何が始まるのでしょう?

 

まず、最初は、1976年第25回全日本吹奏楽コンクール、課題曲D「ポップス描写曲《メインストリートで》」。

岩井先生は課題曲をいくつか作曲されておりますが、個人的にその中で最も好きな曲です。

最近、岩井先生への追悼の意味を込めてなんでしょうが、比較的多くの演奏会でこの曲を聴く機会がありました。

嬉しい反面、岩井先生が亡くなられたことを実感させられ、複雑な心境ですね。

この日の演奏は…、心の底から、懐かしく、楽しく聴かせて頂きました。

続いて、岩井先生のアレンジした曲が3曲続きます。

1番目は、「ディズニー・メドレー」から。

これはもう、老若男女、どなたでも楽しめる内容でしょう。

続いては、ビートルズの名曲「ヘイ・ジュード」。

そして、その前にあの舞台上の大きなスクリーンに映像が映し出されました…。

岩井先生の若い頃から、晩年までの様々な写真。

それを指揮の佐藤先生やゲストの天野先生が楽しく“解説”して下さいました。

面白かったなぁ。

演奏は、この曲だけ、天野先生が指揮。(冗談で天野先生が「いろんなトークや解説まで、させられた上に指揮までしなくちゃならないなんて、人使い荒いなぁ」と笑っておられたのが面白かった。)

最後はラテンの名曲、「エル・クンバンチェロ」です。

この曲も、天野先生がヴィブラフォーンで参加し、大いに盛り上がりました!

 

とても、楽しい演奏会でした。

これだけの実力のある吹奏楽団だと安心して、観客が演奏に“没頭”することが出来ます。

来年の定期演奏会も行かせて頂きますね。

でも、その前にコンクールです。

10月25日、札幌コンサートホールKitaraでお会いしましょう!!

またまた、ブログの完成が遅れました…。(´Д`;)ヾ ドウモスミマセン


なにわ《オーケストラル》ウィンズ演奏会2015(東京芸術劇場)

2015-05-18 22:28:20 | 吹奏楽

毎年ゴールデンウィークに全国のオーケストラ団員を中心としたプロの管打楽器奏者が一同に会し、大阪と東京で吹奏楽のコンサートをやります。

そのスペシャルバンドの名称が「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」。

大阪フィルハーモニー交響楽団の第1クラリネット奏者、金井信之氏を中心に集まった“精鋭”の皆さんの演奏は、それはもう、身震いするほどのパフォーマンスの連続です。

私もこの日で東京公演を聴かせて頂くのは3回目となりました。

吹奏楽のコンサートで自分自身、最も行きたい演奏会のひとつです。

 

「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」には、いわゆる“正指揮者”というものは存在しません。

そのかわり、客演指揮者として、毎年2人の高校吹奏楽部指導者が棒を振ります。

ひとりは、“固定”されていて、いわゆる“レギュラー客演指揮者”の大阪府立淀川工科高等学校吹奏楽部顧問で全日本吹奏楽連盟の理事長でもある丸谷明夫氏。

今年の“もうひとり”は、ここのところの活躍が目覚ましい玉名女子高等学校吹奏楽部顧問の米田真一氏です。

米田先生は、1969年生まれ、熊本県出身。

武蔵野音楽大学でホルンを学ばれ、1992年より玉名女子高の吹奏楽部顧問として赴任なさったようですね。

 

高校吹奏楽部、ましてや有名校ともなりますと、日々、様々な活動をしていると思いますが、やっぱりコンクールでの活躍がイチバン目立つので少し、玉名女子高の“履歴”をひも解いてみたいと思います。

全国大会の初出場は、米田先生が赴任以前の1989年ですね。(結果は、「銅賞」。)

2回目は、米田先生が顧問就任後、わずか2年の1994年に「ローマの祭り」で出場されております。(こちらも結果は「銅賞」。)

そして、ここからは、“トンネル”に入っちゃいましたねぇ。

1995年から2009年までの15年間、九州大会では上位に入るものの全国大会とは無縁のバンドになってしまったのでした…。

ですが、2010年、奇しくも同じ「ローマの祭り」で全国大会「復活」を果たす!

この時は、たまたま普門館で生演奏を聴かせて頂きました。

課題曲の“汐風のマーチ”は、勢いが良すぎて“軍楽隊”みたいだし、自由曲に至っては“力でねじ伏せる”ようなパワーしか感じられない演奏のように思えたのを覚えています。(「銅賞」)

これじゃ来年はないなと思っていましたら、2年連続の全国出場。(ここからは、“生演奏”ではなく、“CD”で聴いたものの感想です。)

そうです。

去年とは「何かが違った」。

具体的に言うとサウンドに丸みが出て来たような…。

課題曲の「南風のマーチ」も自由曲の「ラッキードラゴン」も、まだまだ荒々しさを感じましたが着実に“進化”しているのがわかりました。(「銅賞」)

翌年、私の予想に反して、3年連続で九州代表です。

そして、またまた“進化”を遂げていたのです…。

より洗練された演奏を聴かせて頂いたような気がします。

結果は、初の「全国金賞」の獲得!(本音で言うとこの年の「金賞」は微妙な感じがしましたが…。特に課題曲が…、個人的感想です。)

3年連続で全国大会に出場したのですから、2013年は、「3出(さんしゅつ。吹奏楽全国大会に3年連続出場すると4年目は出られないという大会規定。現在は廃止。)」でコンクールはお休み。

せっかく登り調子の団体が、こういうふうに強制的にインターバルを入れられるとポシャってしまう場合が多いのでどうなる事かと…。

…、と思っておりましたら、「3出」なんぞ関係ないよと言わんばかりに昨年も全国大会の舞台に立ったのでした。

 

それにしても、昨年の全日本吹奏楽コンクール、高校の部での玉名女子高の演奏は素晴らしかった。

もちろん、生演奏で聴いたわけではないのですが、ソフトで温かいサウンドは課題曲の「コンサートマーチ“青葉の街で”」をこの上のない上品な演奏にしていました。

これが自由曲の「森の贈り物」に入るとますますサウンドに磨きが掛かってきたんです。

ソロパートは、極上に上手だし、マシュマロのようなふわふわしたサウンドは、全体的に見事に融合していて、この曲のメルヘンチックな世界を完璧に現出していました。

龍谷大学の委嘱、2003年全国大会で演奏され、根強い人気を誇る曲ですが、どちらかと言えば地味な感じなのに何ときらびやかでありながら、ソフトに演奏する事か。

あくまでも私個人の意見ですが、昨年の全国大会高校の部でナンバーワンの演奏であったと確信しています。(同じ、九州の某有名女子高吹奏楽部をはるかに凌駕していましたね。蛇足ながら、私はこの某女子高のサウンドがとても苦手なのです…。)

言い過ぎかもしれませんが、ここ数年のコンクールの演奏の中でも“名演”と言えるのではないでしょうか?!

 

あまりにも玉名女子高の演奏が素晴らしかったので熱くなってしまいました…。(ちなみに私は、玉名女子高の関係者ではありません。一切、縁のない人間です。)

話を「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」にもどしましょう。

開演前にステージ上では木管楽器を中心としたアンサンブルをやっています。

さすがプロですね。

ほんの数秒で自分たちの世界を作ってしまいました…。

2015年5月6日、15:00、東京芸術劇場。

そして、間もなく始まるようです。

 

[演奏]

なにわ《オーケストラル》ウィンズ

  (Flutes)

    上野 博昭   大阪フィルハーモニー交響楽団

    榎田 雅祥   元大阪フィルハーモニー交響楽団

    中村 淳二   NHK交響楽団契約団員

    中村 めぐみ  広島交響楽団

    三上 麻結   フリーランス

  (Oboes)

    浦 丈彦    読売日本交響楽団

    大島 弥州夫  大阪フィルハーモニー交響楽団

    加瀬 孝宏   東京フィルハーモニー交響楽団

  (Bassoons)

    岩佐 雅美   読売日本交響楽団

    藤崎 俊久   大阪交響楽団

    山田 知史   東京都交響楽団

  (Clarinets)

    梅本 貴子   関西フィルハーモニー管弦楽団

    加藤 明久   NHK交響楽団

    金井 信之   大阪フィルハーモニー交響楽団

    近藤 千花子  東京交響楽団

    品川 秀世   広島交響楽団

    白子 正樹   札幌交響楽団

    芹澤 美帆   フリーランス

    田本 摂理   大阪フィルハーモニー交響楽団

    橋本 眞介   広島交響楽団

    原田 美英子  大阪交響楽団

    船隈 慶    大阪フィルハーモニー交響楽団

    松尾 依子   オペラハウス管弦楽団

  (Saxophones)

    岩田 瑞和子  ミ・ベモルサクソフォンアンサンブル

    雲井 雅人   雲井雅人サックス四重奏団

    佐藤 渉    雲井雅人サックス四重奏団

    陣内 亜紀子  ミ・ベモルサクソフォンアンサンブル

    西尾 貴浩   雲井雅人サックス四重奏団

    林田 和之   雲井雅人サックス四重奏団

    平田 洋子   ミ・ベモルサクソフォンアンサンブル

    前田 幸弘   ミ・ベモルサクソフォンアンサンブル

  (Trumpets)

    岡崎 耕二   東京都交響楽団

    亀島 克敏   広島交響楽団

    白水 大介   関西フィルハーモニー管弦楽団

    茶屋 淳子   オペラハウス管弦楽団

    橋爪 伴之   大阪フィルハーモニー交響楽団

    長谷川 智之  東京フィルハーモニー交響楽団

    松田 貴之   大阪交響楽団

    横田 健徳   日本テレマン室内管弦楽団

  (Horns)

    上間 善之   東京交響楽団

    倉持 幸朋   広島交響楽団

    濱地 宗    群馬交響楽団

    久永 重明   読売日本交響楽団

    日高 剛    元NHK交響楽団

    丸山 勉    日本フィルハーモニー交響楽団

    向井 和久   日本センチュリー交響楽団

    村上 哲    元大阪フィルハーモニー交響楽団

  (Trombones&Euphoniums)

    笠野 望    日本センチュリー交響楽団

    風早 宏隆   関西フィルハーモニー管弦楽団

    清澄 貴之   広島交響楽団

    桑田 晃    読売日本交響楽団

    ロイド 高本  大阪フィルハーモニー交響楽団

    田中 宏史   名古屋フィルハーモニー交響楽団

    山口 尚人   新日本フィルハーモニー交響楽団

    吉田 勝博   大阪フィルハーモニー交響楽団

  (Tubas)

    大塚 哲也   東京フィルハーモニー交響楽団

    林 裕人    名古屋フィルハーモニー交響楽団

    渡辺 功    東京交響楽団

  (Contrabasses)

    市川 哲郎   群馬交響楽団

    内藤 謙一   日本センチュリー交響楽団

    長谷川 順子  神戸市室内合奏団

  (Harp)

    高野 麗音   フリーランス

  (Piano&Celesta)

    沼光 絵理佳  フリーランス

  (Organs)

    桑山 彩子(大阪)フリーランス

    川越 聡子(東京)フリーランス

  (Guitar)

    佐野 健二   フリーランス

  (Percussion)

    安藤 芳広   東京都交響楽団

    窪田 健志   名古屋フィルハーモニー交響楽団

    小林 巨明   東京都交響楽団

    高橋 篤史   フリーランス

    西久保 友広  読売日本交響楽団

    武藤 厚志   札幌交響楽団

    安永 早絵子  オペラハウス管弦楽団

    安永 友昭   日本センチュリー交響楽団

    山下 雅雄   フリーランス

  (Stage managers)

    小倉 康平   東京都交響楽団

    清水 直行   大阪フィルハーモニー交響楽団

    冨永 誠二   広島交響楽団

    山野 克朗   東京都交響楽団

 

[客演指揮]

   丸谷 明夫

   米田 真一

 

グレイアム*大学祝典ファンファーレ

Peter Graham/Akademishe Festfanfare

ネリベル*交響的断章

Vaclav Nelhybel/Symphonic Movement

石原 勇太郎*天空の旅-吹奏楽のための譚詩-(課題曲Ⅰ)

Yutarou Ishihara/Pilgrimage-Ballade for wind orchestra

田坂 直樹*マーチ「プロヴァンスの風」(課題曲Ⅳ)

Naoki Tasaka/March “Wind of Provence”

西村 朗*秘儀Ⅲ-旋回舞踏のためのヘテロフォニー(課題曲Ⅲ)

Akira Nishimura/Heterophony for Whirl Dance

オリヴァドーティ*序曲「林檎の谷」

Joseph Olivadoti/Apple Valley Overture

ヘス*シェイクスピア・ピクチャーズ

   Ⅰ 空騒ぎ

  Ⅱ 冬物語‐彫像

  Ⅲ ジュリアス・シーザー‐元老院への入場

Nigel Hess/Shakespeare Pictures

   Ⅰ Much Ado about Nothing

      Ⅱ A winter’s Tale – The Statue

      Ⅲ Julius Caesar – The Entry to the Senate

 

【休憩】

 

酒井 格*森の贈り物

Itaru Sakai/Legacy of the Woods

佐藤 邦宏*マーチ「春の道を歩こう」(課題曲Ⅱ)

Kunihiro Sato/Walk down the Spring Path March

朴 守賢*暁闇の宴(課題曲Ⅴ)

Soo-Hyun Park/The Scintillating Dawn

リード*アルメニアン・ダンス・パートⅡ

   Ⅰ 農民の訴え

  Ⅱ 婚礼の踊り

  Ⅲ ロリ地方の農耕歌

Alfred Reed/Armenian Dances PartⅡ

  Ⅰ Hov Arek (The Peasant’s Plea)

  Ⅱ Khoomar (Wedding Dance)

  Ⅲ Lorva Horovel (Songs from Lori)

アッペルモント*交響詩「エグモント」

   Ⅰ 婚礼

  Ⅱ フェリペⅡ世とエグモント

  Ⅲ 処刑

  Ⅳ ネーデルランド諸州対スペイン

Bert Appermont/Egmont

     Ⅰ The Wedding

  Ⅱ Filips&Egmont

  Ⅲ Fato Prudentia Minor

  Ⅳ United against Spain

 

《アンコール曲》

バーンズ*交響曲第3番〔抜粋〕

James Barnes/Third Symphony Op.89〔extracts〕

 

最初の曲は、お馴染みの作曲家グレイアムの「大学祝典ファンファーレ」。

金管主体の華やかで明るい曲調はコンサートの幕開けに相応しい雰囲気。

とても素晴らしい演奏でした!

続いては、ネリベルの「交響的断章」。

「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」(略してNOW)では、昨年は、「アンティフォナーレ」、一昨年は、「トリティコ」とネリベルの曲を取り上げています。(私も楽しく聴かせて頂きました。)

そして、今年はいよいよ「交響的断章」です。

これはもう、代表曲と言っても過言ではない。

それを『NOW』の演奏で聴けるなんて感激です!

また、この曲を丸谷先生が振ると言う。

この手の曲は、丸谷先生あまり『NOW』で、指揮しません。

演奏前の金井先生の“解説”によりますと丸谷先生の“挑戦”なのだそうですが…。

聴き慣れたというか、腐るほど聴いてきた(表現がキタナクてスミマセン)この曲をどのような演奏をして頂けるのか興味津々…。

やっぱり、この曲って“名曲”なんですね。

私の青春時代から聴いてきた“へっぽこ演奏”の数々の記憶を消し去ってしまうパフォーマンスに大感激!

特に鬼気迫る“音圧”が素晴らしい。

“迫力”とは、このようなものだと言うことを見せつけられた数分間でした。

 

続いては、今年の吹奏楽コンクール課題曲の演奏です。

まずは、コンサート前半は、Ⅰ、Ⅳ、Ⅲの3曲。

その前に丸谷先生が会場の中高生の皆さんに問いかけます。

「課題曲は、どの曲が好き?」

そして、課題曲の番号を言い、好きな曲のところで挙手。

結果は、課題曲Ⅳのマーチ「プロヴァンスの風」が圧倒的勝利。

ところが、丸谷先生、首をかしげます…。

この日の2日前、大阪でやった『NOW』のコンサートでは違った結果が…。

関西では、課題曲Ⅱマーチ「春の道を歩こう」が一番人気なのだそうです。

“地域性”があるのか非常に興味深い結果です。

 

さて、演奏です。

課題曲Ⅰから。

指揮は、米田先生にかわります。

演奏がステキなので何でも良く聴こえてしまうのですが、それにしても楽曲の雰囲気を良く掴んだまとまりを感じました。

この曲でコンクールを目指す学生の皆さんは、素晴らしいお手本となったことでしょう。

そして、『NOW』のコンサートでは“名物コーナー”、「実験的課題曲」。

通常の演奏が終わった後にその年の課題曲を様々な切り口で『料理』すると言う“お楽しみ”のコーナー。

課題曲Ⅰは、「やってはならないこと」をやりながら演奏するとのこと。

これがまた、会場の大きな笑いを誘っていました!!

無意味なベルアップ、過剰なスタンドプレー、ソロパートが勝手なリズムを取りながらの演奏、コテコテのジャズ風の演奏、米田先生までがしゃがんで指揮したり…、etc.

全てが面白く、会場が大いに盛り上がりました!

でもね、『NOW』の皆さんは、プロでしっかりとした技術を持っているからこそ出来るパフォーマンスなのでしょうね…。

 

続いての課題曲は、会場で最も人気の高かった課題曲Ⅳです。(指揮は再び、丸谷先生にもどります。)

大阪市音楽団(現・Osaka Shion Wind Orchestra)の模範演奏のCDに比べると出だしのテンポが若干、早いような…。

でも、軽快なリズムはステキです。

そして、実験。

この曲は、極少人数での演奏。

舞台上は、15人くらいでしょうか?

さすがに厚みはないものの、演奏は成立するんですね。

それと、あえて説明はしませんが、演奏中の打楽器の皆さんの“コント”には大爆笑?!

…、でした!!

 

さて、前半で披露して頂く最後の課題曲は、Ⅲ。(指揮は、米田先生。)

個人的にですが、私が今年の課題曲中でイチバン好きな曲です。(“熱狂的”といっても良いでしょう。)

いやあ、感動しました。

もう、多くを語りたくありません。

課題曲と言う枠を越えて、ただただ、ひとつの優れた楽曲として演奏を楽しませて頂きました…。(ちなみにⅢに関しては“実験”はありませんでした…。)

 

ここで、いったん課題曲の演奏は終了。

次は、ガラッと気分を変えて、懐かしの“オリヴァドーティ”です。(丸谷先生指揮)

私にとってオリヴァドーティといえば、「薔薇の謝肉祭」です。

それに比べて、この「林檎の谷」は、馴染みが薄い。

もちろん、曲は知っていますがね。

きっと、自分自身で演奏したことがないからでしょう。

いずれにせよ、とても懐かしく聴かせて頂きました。

 

ここで、米田先生と丸谷先生によるトーク。

色々な話をして下さいましたが、興味深かったのが、玉名女子高校吹奏楽部の話。

部員、100名の内、95名が寮生活なのだそうな。

すごいですねぇ。

 

前半、最後の曲は、ヘスの「シェイクスピア・ピクチャーズ」。(米田先生指揮)

パイプオルガンも加わった“大合奏”です。

この曲の成り立ちは、“プログラム・ノーツ”に詳しく載っており、分かりやすいので転記させて頂きます。(いいのかしら…。)

『バーミンガム市交響楽団委嘱で、2008年の作品。英国王立シェイクスピア劇団のために書いた原曲を、作曲者自身で補筆しながら3つの楽章に組み直し、吹奏楽の編成に直したもの。』

とても華麗な演奏でした…。

 

休憩です。

その間も舞台上では、ホルン8重奏+打楽器のアンサンブルをやって頂きました。(曲は、多分、“アフリカン・シンフォニー”?間違っていたら、ゴメンナサイ。)

何とサービス精神旺盛なことでしょう!

ここで、話は少し脱線しますが、客席の私の両側には男子高校生が座っていました。

一生懸命、全ての楽曲の演奏を聴いていましたが、特に課題曲、その中でもマーチであるⅡとⅣの時には身を乗り出して“没頭”している姿を非常に微笑ましく感じました。

今、この文章を表しながら、ふと、そんな光景を思い出してしまいました…。

 

後半最初の曲は、米田先生の指揮で「森の贈り物」です。

このブログの最初の方でも書きましたが、玉名女子高の演奏は素晴らしかった!

米田先生によると、この曲をコンクール自由曲として選んだ理由は、「サウンドに合っていたから」とのこと。

まさに絶妙な選曲でした。

さあ、『NOW』の演奏にも期待しましょう!

イメージどおりの演奏でした。

そして、清らかな演奏でした。

この曲、少し前の曲だけど、再ブレークします、きっと。

 

次は、前半に引き続いて課題曲の演奏。

最初は、課題曲Ⅱ。(丸谷先生指揮)

“ザ・マーチ”という感じで軽やかだし、リズミカルだし、言う事のない演奏でした。

続いて、“恒例”実験のコーナーです。

Ⅱに関しては、金管楽器を抜いた木管楽器&打楽器のみによる演奏。

マーチの花形である金管楽器がいないと、どのような事になるのでしょう?

やっぱり、さすがに華やかさには欠けますか。

でも、ある部分では上品に聴こえます。

まあ最大の弱点は、リズムの要である低音が響かないことでしょうな。

 

最後の課題曲の演奏は、Ⅴ。

毎年、課題曲Ⅴの演奏は、“指揮者なし”のパフォーマンスが多いのですが、今年は、“指揮者あり”でした。

結局、『NOW』の中心者である金井信之先生の指揮で(“実験コーナー”を兼ねて)、演奏されました。

 

課題曲の演奏が全て終わり、いよいよコンサートも佳境です。

巨匠、アルフレッド・リードの「アルメニアン・ダンス・パートⅡ」。(丸谷先生指揮)

吹奏楽を好きな人間なら知らない人はいないと言う大名曲です。

選曲の理由は、“リード没後10年”ということと、丸谷先生が提唱する“アルメニアン・ダンスを吹奏楽の第九に”というプロジェクトとの兼ね合いから決まったようです。(パートⅠは、既に2006年に取り上げているようですね。また、丸谷先生は上記のプロジェクトを行っているものの、パートⅡは、滅多にやらないようです…。)

明るく、表現力豊かな演奏でした!

 

いよいよプログラム、最後の曲。

アッペルモントの交響詩「エグモント」です。(米田先生指揮)

『「エグモント」はオランダ独立の「80年戦争」時代に実在した人物』で、スペインからの独立の『英雄』なのだそうです。

作曲者のアッペルモントは、あのヤン・ヴァン=デル=ローストのお弟子さんのベルギー人です。(近年、演奏会などでは、よく名前を耳にする作曲家ですね。)

この曲は、作曲者30歳の時の作品。

表題音楽だけあって、ドラマチックで奥深い曲調は傾聴に値する内容です。

それをまた、『NOW』の皆さんが“料理する”のがうまいこと…。

演奏者の技量が曲のグレードを引き上げる…、その典型例だと思いました。

いやぁ、堪能しました。

 

これで、プログラム上の曲は終了です。

ここで、丸谷先生がおもむろに口を開きます…。

「やらんわけには、いかんのや…。」

という事でアンコールとして、バーンズの「交響曲第3番」を演奏したのでした。

この曲は、まともに演奏すれば40分かかる吹奏楽の曲としては大曲です。

さすがにこれでは、長すぎるのか、この日は“抜粋”の演奏となりましたが。(と言っても20分以上の演奏でした。)

「交響曲第3番」は、バーンズが愛娘ナタリーを亡くした時期に書かれたもの。

特に第3楽章“幻想曲”は、『ナタリーのために』とわざわざ記載されているように愛にあふれた曲調です。(この楽章があまりに有名なために単独で演奏されることも多々あります。人の死や災害、不幸な出来事があった場合に、その傾向が強いです。)

この日の演奏も、この第3楽章を中心とした“カット”でした。

私が伺った5月6日の東京芸術劇場での“東京公演”の2日前、5月4日に大阪のザ・シンフォニーホールで“大阪公演”が行われました。

しかも、昼夜2回公演。(うらやましい…。)

『NOW』の演奏会は、非常に学生さんの観客が多い。

そこで大阪公演では、「大人の部」として夜公演が位置付けられているようですが、そのメイン曲として用意されたのが、この「交響曲第3番」。(つまり、大阪昼公演に行った方は、この曲は聴けなかったわけですね。東京公演ってお得かな…。)

そして、この曲は、日本との関わりも深い。

バーンズ作曲「交響曲第3番」は、もともとアメリカ空軍軍楽隊の委嘱により1994年に作曲されました。

1995年12月に同軍楽隊の初演予定でしたが、諸事情のために中止。

そして、翌年の1996年6月13日、木村吉宏指揮、大阪市音楽団(現・Osaka Shion Wind Orchestra)の第72回定期演奏会で“世界初演”となったのでした。

しかも、『NOW』の大阪公演があったザ・シンフォニーホールで。

また、大阪市音楽団(現・Osaka Shion Wind Orchestra)は、1997年の東京公演でも、この曲を取り上げています。

コンサートの場所は…、そう、ご推察どおり、東京芸術劇場なんです…。

ここまで来ると何か因縁を感じますね…。

 

演奏は…。

私の未熟な文章力では書いても書いても、表現しきれないくらい見所満載の演奏でした。

残念ながらこの日の演奏会に行けなかった方は、出来るならば、間もなく発売されるであろうCDを聴いて頂きたい。(ちなみに私は、ブレーンの回し者ではありません。悪しからず。)

そうすれば、わかります!!

 

比較的、吹奏楽のコンサートを聴かせて頂いて私ですが、100%満足できる時は、なかなか、ありません。

その数少ない“満足感”を得られるコンサートが、この「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」です。

今年で3回目の『NOW』ですが、いつも期待以上のパフォーマンスを見せて頂いております。

もちろん、来年も東京芸術劇場に通いたいですし、この演奏会が“永遠に”続いていってくれることを切に希望する次第です。

でも、“あんまり人気が出過ぎるとチケットが取りづらくなっちゃうなぁ”と埼京線の中で心配しながら家路に着く、“浦和のオヤジ”でした…。

 

また、ブログを書くのに時間がかかってしまいました。

スミマセンm(_ _)m


春日部共栄中学高等学校吹奏楽部 第29回定期演奏会

2015-05-08 09:40:36 | 吹奏楽

私も春日部共栄中学高等学校吹奏楽部の定期演奏会に訪れる様になって4回目の春を迎える事になりました。

早いもので、私が初めて伺わせて頂いた時の1年生部員の方は、既にOB OGになっているのですね…。

時の経つのは早いものです。

私にとって何の縁もゆかりもない高校吹奏楽部に4回も定期演奏会に通いつめている理由…。

それは、まず、技術力の高さ。

私の好きな神奈川大学吹奏楽部に何となくサウンドが似ているところ。

もちろん、私の地元、埼玉の学校であることも大きな理由のひとつ。

そして、ここがイチバン大事なところなのですが、その演奏会スタイルがとても、好きなのです。

じっくりと“音楽”を聴かせる体制が出来ている。

高校吹奏楽部は、ともすると“過度な”学芸会ばりのパフォーマンスに陥りがちです。(やってはいけないと言っているわけではありません。あくまでも“過度な”と言うことです。)

数年前、都下の吹奏楽の名門高校の演奏会に行ったことがあります。

演奏は素晴らしかったのですが、観客にまで何度も何度も様々な要求をしてきた。(振付まがいの事まで。)

折角の素晴らしい演奏がどっか行ってしまって、私は疲労困憊してしまったのです。

それ以来、その高校の演奏会には行ってません。(行く気にもならない。)

春日部共栄の演奏会は、じっくりと曲を味わえる…、だから、聴きに行くのです…。

コンサートの話にもどります。

 

そして、今回の演奏会は特別な意味を持つ演奏会なのですね。

顧問(正確にはこの日の時点で“だった”)の都賀城太郎先生が春日部共栄高校を退職され、今回の定期演奏会が最後の舞台となるからです。(定年退職なのか、何なのか私にはわかりませんが、個人的には非常に寂しく思います。)

今後は東京の藤村女子高校へ赴任されるようですが、場所が変わってもご活躍を期待したいと思います。

 

2015年4月29日、昭和の日。

場所は、大宮ソニックシティ大ホール。

13:30開演でしたが、所用があり、15分程前にやっと会場に到着。

しかし、ソニックシティの外には長蛇の列。

仕方がないので私も並びましたが、開演5分前になってもホールのロビーすら入れません。

それでも何とかホール内の座席に着席。(どうにか、ならんものですかな。)

まわりを見渡してみると、2505席の大宮ソニックシティの大ホールが超満員です。

と言うことで15分遅れの開演となったのでした。

 

[演奏]春日部共栄中学高等学校吹奏楽部

[指揮]都賀 城太郎

     織戸 祥子

[賛助出演]

 Trumpet  原田 照久(2005年度卒業)

       田本 一 (2009年度卒業)

 Euhonium  本橋 宏昭(2005年度卒業)

       中村 知弘(2008年度卒業)

 Drums      山本 真央樹(2010年度卒業)

 

グラデュエーション デイ マーチ/真島 俊夫

Graduation Day March/Toshio Mashima

2015年度全日本吹奏楽コンクール課題曲より

秘義Ⅲ-旋回舞踏のためのヘテロフォニー/西村 朗

HigiⅢ-Heterophony for Whirl Dance/Akira Nishimura

マーチ「プロヴァンスの風」/田坂 直樹

March “Wind of Provence”/Naoki Tasaka

飛行の幻想/R. シェルドン

Visions of Flight/Robert Sheldon

百年祭/福島 弘和

A Centenary Celebration/Hirokazu Fukushima

沢地萃/天野 正道

Taku Chi Sui/Masamicz Amano

 

【休憩】

 

喜歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲/O.ニコライ:福島 弘和 編曲

Die lustigen Weiber von Windsor/Otto Nicolai : arr. Hirokazu Fukushima

森の贈り物/酒井 格

Legacy of the Woods/Itaru Sakai

コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディ/P.ウィリアムズ:S.ネスティコ 編曲

Rhapsody for Concert Band and Jazz Ensemble/Patrick Williams : arr. Sammy Nestico

喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション/L.レハール:鈴木 英史 編曲

“The Merry Widow” selections/Franz Lehár : arr. Eiji Suzuki

愛の挨拶/E.エルガー:福島 弘和 編曲

Salut d’amour/Edward Elgar : arr. Hirokazu Fukushima

 

[司会]弦本 緑加

 

最初に生徒会長の“イイサカリュウスケ”さん(お名前がプログラムに載っていなかったので、間違っていたらゴメンナサイ)の挨拶の後、演奏会が始まりました。

休憩をはさんで前後半に分かれるプログラムでしたが、前半は今年度より高校生の指導もされることになった顧問の織戸祥子先生の指揮での演奏です。

織戸先生は、春日部共栄のOGで全国大会出場経験もある方です。

今までは中学校の吹奏楽部を指導されていたようですが、特に昨年は、「第20回西関東吹奏楽コンクール中学Bの部」で『金賞』、また、「第20回日本管楽合奏コンテスト全国大会中学校A部門」で『最優秀賞』と輝かしい成績を残されております。

 

最初の曲は、真島俊夫先生の作品で「グラデュエーション デイ マーチ」。

クラリネットのリードミスがあったかなぁ。

それは、“ご愛敬”として、物理的にも心理的にも実にテンポの“いい”演奏で最初から心を掴まれました。

真島先生特有の華やかさを如何なく発揮した好演だと思います。

ただ、トランペットパートの音が伸びてこないのと若干、雑味を感じました。

まあ、1曲目だから…。

 

続いては、課題曲Ⅲです。

個人的には、他の4つの課題曲より圧倒的に好きな曲です。

今年の課題曲Ⅲは、この日、初めて生演奏を聴いたんです。

そして、ひそかに期待しておりました。

だって、春日部共栄の例年のサウンドから推察すると絶対に合うと思ったから。

期待を裏切りませんでした!

確かにもう少し、“煮詰める”必要はあるかと思いますが、雰囲気とテクニックの面で素晴らしいパフォーマンスを見せて頂きました!

とっても、良かった!

確かに難解な感じがして課題曲として選択するのは躊躇する面があるかと思います。(もちろん、コンクールで“勝つ”という意味で。)

ただ、考えてみて下さい。

今年の5つの課題曲の中で唯一の委嘱作品。

しかも、現代クラシック音楽界で日本を代表する作曲家の西村朗先生の作品ですよ。

私には楽典的な難しいことは、分かりませんが作品としての完成度が高いのは間違いない。

高い技術と表現力で演奏すれば、イチバン優れた演奏になるのではと素人ながら考えてしまいます。

だから、願わくは、大好きな春日部共栄にコンクールで演奏してほしいなぁと勝手に思う“浦和のオヤジ”です…。

少し、熱くなってしまいました。

クールダウンしましょう…。

 

次も今年の課題曲。

Ⅳのマーチですね。

曲名の「プロヴァンスの風」というだけあって、南欧風のメロディもある。

明るく軽快な曲調にマッチした演奏でした。

ただ、少しサラッとし過ぎていたような、いないような…。

課題曲としては、お手本のような演奏でした。

コンクールでは、こういう演奏が高評価を得るのでしょうね、きっと。

これは、春日部共栄に問題があるのではなく、曲の構成からして、“こうせざるを得ない”のだと思います。

個人的意見ですが、最近というか、もっと前からかな、課題曲のマーチってライトすぎませんか?(下手すると、まるでポピュラー音楽みたい。)

やっぱり、いかにコンサートマーチと雖も“重厚さ”がないと。

誤解して頂きたくないのは、“重厚さ”って堅苦しさではないんです。

言い換えると“格調が高い”って事かなぁ。

昔のいわゆる軍隊が行進するようなマーチでなくても、“格調高い”ものはあります。(私がイチバン好きなマーチは、ヤン・ヴァン=デル=ローストの「アルセナール」ですが、これなんぞは、この典型です。)

その中で、最近の課題曲のマーチに限って言うならば、2012年度課題曲Ⅳの『行進曲「希望の空」』は、この条件を満たしていたように思います。(個人的意見です。)

この曲のようなマーチが課題曲であればと切に願う次第です。

余談ばかりでスミマセン。(ちなみにここまでが、3年生中心の演奏とのことでした。)

 

前半3曲目は、「飛行の幻想」。

春日部共栄吹奏楽部、毎年恒例の新1年生だけの演奏です。

数ヶ月前まで中学生だった皆さんの“デビュー”がこの曲によってなされる…、これが慣例となっているようですね。(そう言えば、私も、この曲を聴くのは4回目になるんですね。)

さすが、吹奏楽名門校、ざっと60名近くいるでしょうか?

演奏は、まだまだ未熟な面もあるとは思いますが、さすがに春日部共栄の未来を担う人材だけあって、芯のしっかりしたサウンドをしていると感じました。

 

次は、先程も申し上げた「西関東・金賞」「管楽コンテスト全国大会・最優秀賞」を獲得したメンバーでの演奏だそうです。

福島弘和先生の「百年祭」。

創立100年目の年に廃校になった奈良県立城内高校吹奏楽部の委嘱により、2005年に作曲された曲です。

少人数(10名)だった同校吹奏楽部員のために元々は小編成の楽曲として書かれています。

この日の演奏は20数名。

多少、ミスもありましたが、賞を獲っただけあって、しっかりとした演奏でした。

 

早いもので、前半最後の曲です。

天野正道先生の「沢地萃(たくちすい)」。

プログラムの解説が難解な曲名を的確に説明してあるので引用させて頂きます。

『「沢地萃」とは中国五経のひとつ「易経」45番目の卦で、人や物が集まり繁盛することを意味します。』

曲名からは想像しづらいロックテイストの雰囲気のある面白い曲でした。(実に天野先生らしい!)

2年生中心の演奏とのことでしたが、さすが上品にまとまっていたと思いました。

ただ、曲調からすると、もう少し躍動感があればなぁ。

それと、大昔、自分で吹いていたので気になってしまうのですが、もっと金管楽器に延び(響き)があれば、より効果的だったかも。

 

後半は、都賀先生が指揮をされました。(相変わらず、先生の“おじぎ”は、とても丁寧です。)

そして、演奏曲にちなんだエピソードを1曲ごとに話して下さいました。

最初の曲は、「ウィンザーの陽気な女房たち」。

なつかしいですね。

昔、コンクール自由曲として、すごく流行りました。(今の大・高・中生の皆さんが生まれる前の話です。)

私個人は、全国大会の名演としては、第27回(1979年)のブリヂストンタイヤ久留米工場吹奏楽団(当時は、この団体名だった。現・ブリヂストン吹奏楽団久留米)か第28回(1980年)の中村学園女子高校の印象が強い。

特に中村学園は衝撃的でした。

全国大会ではなく、九州大会で生演奏を聴かせて頂いたのですが、あどけない表情の女子高校生がこんなに艶っぽい音を出している。

目の前のことなのに信じられない想いで演奏を唖然として聴いたのを覚えています…。

話は、変わって都賀先生のこの曲にまつわる想い出。

30年くらい前、先生若かりし頃にこの曲でコンクールに出ようとしたことがあるそうです。

ところが吹奏楽部員たちは真面目に練習しようとせず、活を入れるつもりで「ヤメチマエ」と言ったら、本当にコンクールに出ませんと生徒たちが言ってきた。

何度か翻意を促すも結局、コンクールは不出場。

こんな苦い思い出があるのだそうです。(笑)

演奏の方は、細かい表現力が際立ち、個人の技量の高さが光りました。

流れにのった好演であったと思います。

ただ、個人的には春日部共栄は、吹奏楽オリジナル曲の方が合うと思いますが…。

 

2曲目は、「森の贈り物」。(昨年のコンクール全国大会、玉名女子高校の演奏は非常にステキでした!)

この曲には、春日部共栄OBで東京藝大卒のトランペット奏者、原田照久氏も加わります。

ちなみに原田氏は全国大会でこの曲を演奏した時、この曲のトランペット・ソロをされた方だそうです。

全体的な印象としては、よく曲のことを理解して、丁寧に丁寧にやろうという意図が前面に出ていた。

だから聴きやすいし、この曲の持つメルヘンチックな世界が十分、表現出来ていた。

とても素晴らしい演奏でした。

都賀先生によると、この曲は復活の曲。

2000年、「ローマの祭り」で全国大会初出場。

しかし、その後、自由曲をオケのアレンジ曲にこだわっていたためか、数年、全国までは進めなかった。

そこで、原点にもどり、本当にやりたい曲を…、ということで取り組んだのが「森の贈り物」。

ここから、春日部共栄の快進撃が始まるのです…。

 

続いては、「コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディ」。

コンクール自由曲としてやる場合は、コンサートバンドとジャズアンサンブルの棲み分けはないように思いますが、この日の演奏は、二つのグループの合同演奏と言う形で聴かせて頂きました。

ちなみに5人のOBも交えての演奏でした。(メンバーについては、上記参照。)

このようなジャズっぽい曲でも、行けるんだとあらためて春日部共栄のポテンシャルに感服する次第。

ここでまた、“都賀”解説。

この曲は、都賀先生がとても好きな曲なのだそうです。

コンクールで他の学校がやっているのを聴いて気に入ったそうな。(多分、同時に全国大会のステージに上がっている2005年のファンキー植田薫先生率いる武生東高校あたりの演奏でしょうか?)

そのため、「3出(さんしゅつ。全国大会に3回連続出場すると4年目は出られないという大会規定。現在は廃止。)」でコンクールに出場できなかった2007年に“招待演奏”のステージで演奏したのだとか。(たぶん、コンクール県大会なのでしょうか?)

 

さて、後半4曲目は、「メリー・ウィドウ」セレクション。

時々、コンクールでも取り上げる団体がある曲です。

都賀先生によりますと、とにかく明るい曲が好きなのだそうで、そのため、この曲を選んだと…。(いろんなところが明るい…、とご自分でおっしゃっておられましたけど。)

その通りで、明るく、軽快で楽しい演奏でした!!

さあ、いよいよトリの曲です。

エルガーの「愛の挨拶」。

兎にも角にも都賀先生がイチバン好きな曲なのだそうです。

とても、やさしい演奏でした。

そして、“愛にあふれた”演奏でした…。

 

アンコール曲は、下記の通りです。

定番の合唱曲と「フーテナニー」。

 

全ての演奏が終わりました。

織戸先生が都賀先生に花束を。

感動的な場面です。

でも何かアッサリし過ぎているような。

でも、都賀先生はきっと、湿っぽいのが嫌いなのでしょう。

 

今年の春日部共栄のコンクール自由曲って何なのでしょう?

ここ数年の既定路線、吹奏楽オリジナル曲委嘱作品を貫いて頂ければと部外者のオヤジながら切に願う次第であります。

これは、吹奏楽の発展のためにも非常に良いことです。

特に「ラッキードラゴン~第五福竜丸の記憶~」という名曲を世に送り出した功績は多大です!

そして、ここのところ、課題曲Ⅴをやる機会が多いようですが、今年はⅢをやってほしいなぁ。

 

織戸先生もこの吹奏楽名門校を率いていくのに相当なプレッシャーもあるかと思いますが、頑張って頂きたい。

応援しています!!

そして、都賀先生。

本当にお疲れ様でした!

どこに行かれても先生のご活躍を一吹奏楽ファンとして祈っています。

最後にひとつだけ。

あくまでも希望なのですが、都賀先生の一般バンドでのコンクール出場も見てみたい気がします…。

いずれにせよ、これからも“浦和のオヤジ”は勝手に春日部共栄中学高等学校吹奏楽部を応援しています!!

 

追伸

2年前の第27回定期演奏会の時の私のブログ記事に都賀先生より、コメントを頂いたことがあります。(私は、ご本人だと信じていますが、確かめようがないのも事実です…。)

温かいお言葉に大変感激したのを覚えておりますが、その時、私の住居に近い地域にすんでらっしゃるとお聞きしたような気がします。

もし、住まいがお変わりでなかったら、どこかでお会いするかもしれませんね。

そう言う機会があればと願う次第です。

[浦和河童]


東京佼成ウインドオーケストラ 第123回 定期演奏会

2015-05-06 02:11:33 | 吹奏楽

2015年(平成27年)4月26日、東京芸術劇場。

久々に「東京佼成ウインドオーケストラ」(TKWO)の演奏会にやってまいりました。

前回は、ちょうど1年前の4月27日、第119回定期演奏会以来です。

この時のブログを見てみますと『“古本まつり”というのをやっておりまして』なんて書いてありますが…。

今年もやってるんですね、『池袋西口公園古本まつり』(笑)。

毎年、同時期に行なう恒例行事なのでしょうか?

 

今回の定期演奏会は、個人的に指揮を正指揮者の大井剛史氏が振ると言う事と選曲が素晴らしく思い、伺うことにした次第です。(気のせいかも知れませんが、大井先生がTKWOを振ると、とても素晴らしく、私好みの演奏になるのです。)

そして、この後、これが“現実”となって私を非常に満足させてくれたのでした…。

 

[演奏]東京佼成ウインドオーケストラ

[指揮]大井 剛史(正指揮者)

[サクソフォン・ソロ]須川 展也

 

I Love the 207/酒井 格

I Love the 207/Itaru Sakai

スロヴァキアン・ラプソディ/加藤 昌則

Slovakian Rhapsody (2005/2015) for Alto Saxophone and Wind Orchestra/Masanori Kato

パガニーニ・リミックス/旭井 翔一

Paganini Remix for Alto Saxophone and Wind Orchestra/Shoichi Asai

 

【休憩-Intermission】

 

吹奏楽のためのナグスヘッドの追憶/一柳 慧

To the memory of Nugshead for Symphonic Band/Toshi Ichiyanagi

レント・ラメントーソ -すべての涙のなかに、希望がある(ボーヴォワール)-/真島 俊夫

Lento Lamentoso – Dans toutes les Larmes s’attarde un espoir (Beauvoir)-/Toshio Mashima

Mindscape for Wind Orchestra/高 昌帥

Mindscape for Wind Orchestra/Chang Su Koh

 

まず最初は、「I Love the 207」。

吹奏楽では人気の作曲家、酒井格先生の作品です。

2010年、京都の一般吹奏楽団、“大住シンフォニックバンド”の委嘱で作曲されました。

曲名の中の「207(“にーまるなな”と読むそうです。)」の意味するところは、酒井先生の住む枚方市やこの曲の委嘱団体の練習場の近くにも走行している電車の型番なのだそうです。(いわゆる“207系”。)

また、この207系は、JR福知山線脱線事故の際の電車でもあります。

そして、この曲は、福知山線事故自体を描いているのではなく、『電車が運ぶたくさんの人たち笑顔と夢を描いており、この電車への愛情が込められ』た楽曲なのだとのこと。

ですから、『終始華やかで明るい』。

私個人の印象としては、ミュージカルの音楽のように楽しい曲でした。

明るく、はずんだ感じが心地よい。

とても素晴らしい演奏で、私、久々にゾクゾクしましたねぇ。

特に冒頭のクラリネットのユニゾン。

曲が始まって、ものの数秒で“心を奪われました”…。

ちなみに会場には、作曲者の酒井先生もお見えになっておられました。

 

ここから、2曲は、日本を代表するサクソフォン奏者で2010年までTKWOのコンサートマスターを務められた須川展也先生がソリストとして参加されます。

最初の曲は、「スロヴァキアン・ラプソディ」。

この曲は、2005年に来日したスロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演のために須川先生の委嘱で作曲されました。(吹奏楽版の初演は2013年7月4日、須川先生&東京藝術大学ウィンドオーケストラによる。ただし、この日のTKWOの演奏は、“改訂版”。)

作曲者の加藤昌則氏は、東京藝大作曲科を首席で卒業され、同大学院に進まれた英才です。

須川先生とは、副科でサクソフォンを学んでいた時の師弟関係にあたるそうです。

曲は、『旧チェコスロヴァキア民謡「おお牧場はみどり」を主題とし、サクソフォンの表現力を最大限に引き出した作品』。

とても、明るい曲で、須川先生のテクニックも冴えわたり、楽しめました。

(作曲者の加藤氏も会場に来ておられました。)

 

続いての曲は「パガニーニ・リミックス」。

作曲者の旭井翔一氏は加藤氏と同じく東京藝大作曲科の出身。

様々な作曲コンクールで受賞歴のある新進気鋭の作曲家です。

クラシックだけではなく、ロックやジャズと言った分野にも造詣が深い方のようですね。

この曲は、2013年9月に“サクソフォン奏者松下洋氏と東洋英和女学院大学ウィンドアンサンブル”によって初演されました。(委嘱者は、松下洋氏)

この日の演奏は須川先生の依頼による“改訂版”です。

有名なパガニーニの無伴奏バイオリン独奏曲「24の奇想曲」の第24曲(Quasi Presto)の主題を多くの作曲家たちと同じく、取り上げています。(クラシック音楽に興味が無い方でも一度は耳にした事のあるメロディだと思います。)

須川先生の即興的な独奏部分(“カデンツァ”って言うんでしょうか…)は、素晴らしかったですねぇ。

曲は、ジャズっぽかったり、ロックぽかったりして、パガニーニはどこに行ってしまったんだろう、と思ったりもしましたが…。

TKWOの皆さんが途中で指をならす演出があったり、非常に面白く楽しく、素晴らしい演奏でした。

そして、須川先生の魅力を大いに堪能させて頂きました。

拍手に応えて須川先生が下記の曲を無伴奏でアンコール曲として演奏して下さいました。

(作曲者の旭井氏も会場に来ておられました。)

 

休憩の後、前半の須川先生の素晴らしいパーフォーマンスの余韻に浸る暇もなく、後半へ。

最初は著名な作曲家、一柳慧先生の「ナグスヘッドの追憶」。

中橋愛生先生によるプログラムの曲の解説には、こうあります。

『友人であるアメリカの画家、ジャスパー・ジョーンズの別荘のあるナグスヘッドに滞在した。そこがライト兄弟が初飛行を行った場所であることを知り、そこから感じた「芸術、自然、人間の営為」が曲に折り込まれて』いるとの事。

曲の題材が抽象的なものなので、私のような素人には、難しく感じました。

しかし、分からないなりにも“音楽”をヒシヒシと伝わってきました。

演奏人数は少し、少ないですかね。(40名弱)

最初の方で弦バスのソロがあって、めずらしいので興味深く思いました。

やっぱり、プロですね。

各個人の技量が素晴らしい。

感銘を受けました。(特にクラリネット・ソロ)

 

次は、「レント・ラメントーソ」。

この曲は、アマチュア吹奏楽団の中でも有名な“グラールウインドオーケストラ”の委嘱で2013年に作曲されました。

そして、その年の6月2日、世田谷の三軒茶屋にある昭和女子大学人見記念講堂で行なわれたグラールウインドオーケストラの第33回定期演奏会、佐川聖二先生の指揮で初演されました。

実は、私もこの時の初演を聴かせて頂いております。

その他でもグラールのコンクールでの演奏や昨年1月5日の神奈川大学の第49回定期演奏会、同じく昨年の第17回“響宴”でアンサンブルリベルテの演奏で楽しませて頂きました。

比較的、聴く機会が多かった曲です。

真島先生の曲は、どちらかと言うとキラキラした華やかな曲が多いように思うのですが、この曲は、しっとりとした美しい楽曲ですね。

表現力が素晴らしかったです。

まるで、小説の如く“劇的”なイメージを秘めている…。

プロなので当然ですが、今まで聴いた演奏とは“違う次元”の演奏のように感じました。

とても、心に沁み入りました…。(ちなみに作曲者の真島先生も来場されていました…。)

 

最後の曲は、「マインドスケープ」です。

非常に人気の曲です。

この曲は、“A-Winds奈良アマチュアウィンドオーケストラ”の委嘱で作曲され、2006年3月12日に作曲者の高昌帥先生の指揮で初演されました。

さまざまな吹奏楽団でこの曲の演奏を聴いてきましたが、もしかしたらプロの演奏を聴くのは初めてかも知れません。

私のような素人が何事か言えるような演奏ではありませんでした…。

何もかもが素晴らしい!

テクニック的なものも然ることながら、心地よい“音圧”がたまらなくイイ!

ブラヴォーです!

今まで聴いていた「マインドスケープ」は何だったのだろう?と思ってしまいました…。

(高先生も来場されておりました。)

 

いやあ、本当に素晴らしかった。

この日を含めて3度目のTKWOの演奏会でしたが、個人的に今までで、イチバン印象深い演奏会だった…。

鳴り止まぬ拍手の中で、そんな事を考えてコンサートの余韻を楽しむ“浦和のオヤジ”でした…。