浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

文京シビックホール15周年記念公演 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 特別演奏会

2015-05-31 20:59:40 | 吹奏楽

2015年5月24日、日曜日。

文京シビックホール15周年記念公演として、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団が特別演奏会を開催しました。

昨年12月14日に川口リリアで行なわれた第49回定期演奏会の“次”ですから、50回目に当たるはずなんですが、どうも、“定期演奏会”ではないらしい。(だって、“第50回定期演奏会”は、今年の12月20日に川口リリア・メインホールでやるってプログラムに書いてありますもの…。)

ただ、毎年、“吹奏楽の響き”と題して行なわれる春の定期演奏会で、ここ数年、お馴染みとなっている埼玉県中学校選抜吹奏楽団の発表会は聴かせて頂けるようですね。

 

それにしても、文京シビックホール、恐るべし、です。

「響きの森」というだけあって、よく響く。

だから、プロの楽団やリベルテのようなレベルの高いバンドなら良いのですが、まだ、そこまで到達していない“発展途上”の団体がバランスも考えないで、がなりたてた日にゃ、“演奏”を聴いているんだか、“騒音”を耳にしているんだか、わからなくなってしまう。(実際、私自身そういう“経験”もしました。)

今回の演奏会は、中学生の皆さんも登場します。

このホールに“負けなければ”、いいんですが…。

でも、この考えは杞憂に終わりました。

良い意味で、大いに“裏切られ”ました!(詳しくは後ほど。)

 

それと、もうひとつ。

この日の特別演奏会は、選曲の点で、いつもとは違う。

リベルテと“共催”している文京シビックホール(厳密に言うと「公益財団法人 文京アカデミー」)の委嘱作品が目白押しなのです。

しかも、『世界初演』の曲が4曲もある。

それだけじゃ、ありませんよ。

委嘱作品を作曲している面子がスゴイ。

吹奏楽作品で大人気の長生淳、真島俊夫、天野正道、中橋愛生と言った先生方に加えて、あまり“吹奏楽”を感じない池辺晋一郎、西村朗といった日本を代表するクラシック音楽の作曲家の方々まで。(しかも、全員、会場にお見えになっておられました。)

これが、TKWOやシエナとかのプロの楽団だったら、わかりますよ。

でもね、実績はあると雖も、アマチュアバンドのリベルテなんです。

それなのに、この演奏会をやってのけるアンサンブルリベルテ。

あらためて、凄さを身にしみて感じざるを得ませんでした…。

 

【第Ⅰ部】演奏:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団

       指揮:福本 信太郎

 

五月の風《1997全日本吹奏楽コンクール課題曲》真島 俊夫)

暁闇の宴《2015全日本吹奏楽コンクール課題曲》朴 守賢)

Fanfare for the Coming Era for Brass Octet《文京シビックホール委嘱・世界初演》池辺 晋一郎)

次の時代のためのファンファーレ 金管八重奏のために

花鳥諷詠《文京シビックホール委嘱・世界初演》長生 淳)

 

【第Ⅱ部】演奏:埼玉県中学校選抜吹奏楽団 第4期生研修発表会

 

ヨークシャー序曲(P.スパーク)

指揮:中畑 裕太〈川口市立青木中学校教諭〉

太陽の讃歌 ― 大地の鼓動(八木澤 教司)

指揮:外崎 三吉〈朝霞市立朝霞第一中学校教諭〉

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲(P.マスカーニ/arr.建部 知弘)

指揮:鈴木 直樹〈志木市立志木第二中学校教諭〉

歌劇「運命の力」序曲(G.ヴェルディ/arr. F.チェザリーニ)

指揮:田中 秀和〈越谷市立大相模中学校教諭〉

 

【第Ⅲ部】演奏:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団

       指揮:福本 信太郎

 

Breezin’ 《文京シビックホール委嘱》(真島 俊夫)

SJ&P_16“Viva Bunkyo Civic” 《文京シビックホール委嘱》(天野 正道)

樹霊Ⅱ~5本のクラリネットのための~《文京シビックホール委嘱・世界初演》西村 朗)

Sonorific Detonation for Symphonic Band《文京シビックホール委嘱・世界初演》中橋 愛生)

 

演奏会は三部構成で、1と3がリベルテ、2が中学校選抜の演奏というプログラムになっています。

まずは、リベルテの演奏から。

最初の曲は、「五月の風」。

この曲は、1997年、第45回全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅲです。

残念なことに私が吹奏楽から全く関係のない生活をしていた時期なので個人的に印象が薄い。

真島先生らしい明るくて優しい曲ですね。

メロディを聴いているだけで爽やかな潮風を感じているような気持ちになりました…。

リベルテの演奏は…、もちろん、申し分のないものでした。

 

前半2番目の曲は、今年の課題曲Ⅴ。

冒頭の音の掛け合い部分だけでゾクッときましたねぇ。

こういうメロディラインで歌う事の出来ない曲は、実力不足の団体が演奏すると(素人からみても)“音楽の流れ”を感じにくいものなのですが、リベルテには“それ”が強く備わっていた。

というか、もう既に楽曲が完成していて、安心して聴けました。

心地よい“音圧”が会場いっぱいに広がる演奏でした…。

ちなみに作曲者の朴守賢氏も会場にお見えになっておられました。

 

続いては、池辺晋一郎先生の作品。

文京シビックホールの委嘱で、しかも“世界初演”です。

トランペット3、ホルン1、トロンボーン2、ユーフォニアム1、テューバ1という金管八重奏のために書かれた「次の時代のためのファンファーレ」。(舞台に上がっての池辺先生の“解説”付き、でした。)

曲名のように未来を感じさせる華やかな“音楽”でした。

それでいて、重厚な格調高さも“同居”している。

リベルテの素晴らしい演奏と相俟って、ステキなひと時を過ごせたと感じた次第。

 

Ⅰ部、最後の曲は、長生淳先生の「花鳥諷詠」。

舞台上に登壇された長生先生の“解説”と共に先生の“学者然”とした風貌も影響あってか、とても深遠な曲に感じました。

最初の低音部のロングトーン、リベルテ素晴らし。

曲を聴いての全体的な印象。

先生の作品に共通する“長生節”的な“流れ”はあるものの、より現代的な曲調で、また、激しい部分が多いように思いました。

調べてみますと曲名の「花鳥諷詠」とは、高浜虚子の造語で彼の俳句における根本理念であるようです。

俳句に疎い私にとっては、よくわからない理論ですが、人間の営みを客観的に描いている点において、新しさを感じる曲であり、演奏でした。

ちなみに、この曲も《文京シビックホール委嘱・世界初演》です。

 

いつもと多少違う雰囲気に戸惑いながらも演奏会は進行して行きます。

休憩の後、Ⅱ部は、「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の皆さんの登場です。

今回で第4期生になるのですね。

アンサンブルリベルテは、年2回の定期演奏会を行なっています。

その中で、毎年5~6月に“吹奏楽の響き”と題して行なわれるコンサートが2012年から埼玉県中学校選抜の研修発表会も兼ねて開催されるようになりました。

私は、「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の演奏を第1期生の時から拝見させて頂いております。(残念な事に昨年の第3期生の発表会には仕事の都合で行けませんでした。)

埼玉県内のオーディションによって選ばれた中学生の皆さんですから、それなりのレベルであるのは推察できますが、良く見ると、まだまだ、あどけない表情をした生徒さんが素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる。

年々、レベルが上がってきている印象がありますが、今年は、どうなのでしょう?!

 

最初は、スパークの曲です。

明るい曲で若い生徒さん達にはピッタリ。

人数は70名弱くらいでしょうか?

出だしがバッチリ決まりました!!

音に伸びがあるし、ダイナミクスのバランスが心地よかった。

余計な心配(例えば、“ピッチ”とか“アンサンブルの乱れ”とか…)をしなくて良い演奏で安心して聴けました。

 

次は人気作曲家、八木澤教司先生の「太陽の讃歌 ― 大地の鼓動」。

出だしの入り方は、全体的に“無造作に”感じました。

でも、曲が進むにつれて、ものすごく良くなってきました。

特に曲の合奏部のffの音圧がすごくて、中学生とは思えない迫力でした。

途中でハミングなんかも出てきて、ドラマチックな曲でしたが、じょうずに表現出来ていたと思います。

私のようなオヤジからしてみれば、子供のような年頃の生徒さん達の演奏は、微笑ましく、そっと見守ってやりたい衝動に駆られるのですが、この演奏を聴くと、そんな気持ちもどこかに吹き飛んでしまいますね。

「あたたかい目」で見るレベルじゃないんです。

既に完成された、ひとつのパフォーマンスですね。

 

3曲目は、オペラの名曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。

ゆったりとした美しい曲です。

この曲も出だしの入り方(木管楽器)がもう少しデリケートな入り方をすれば、良かったですかね。

丁寧に丁寧に演奏しようとする意思は、ものすごく観客に伝わったと思います。

とても美しい演奏でした。

ただ、精神的な表現のチカラは、もう少し大人にならないと無理なのかぁと思いました。(いわゆる「メロディを歌う」ってヤツですか。)

ダイナミクスの起伏も、もっとあれば良かったかも。

 

「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の皆さんの演奏も最後の曲となりました。

ヴェルディの「運命の力」。

司会の方も言っておられましたが、40~50代のかつて吹奏楽部員だった方にしてみれば、コンクール自由曲の代名詞のような曲です。

私も練習したことがあるような、ないような…。

全体的にひとつひとつの音符の処理の仕方がうまいと思いました。(同じ長さの音符だと均等に聴こえる…。)

金管低音部、とても良いパフォーマンスでバンド全体を支えているように感じました。

雰囲気を持った演奏でしたが、もう少し泥臭さがあったら、私の好みに近かったかも。

いずれにせよ“トリ”にふさわしい演奏であったことは間違いありません。

中学生の皆さんの演奏が終わりました。

思った以上のテクニックに“浦和のオヤジ”は大満足!

これで埼玉県吹奏楽界の未来も安泰ですね。(中学生の皆さん、都内の高校なんかに進学しないで下さいね…(笑))

さて、今年も「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」では、第5期生を募集しているようです。

興味のある生徒さんは応募してみては、どうでしょうか?

 

フレッシュな中学生の皆さんの後は、“熟練”のリベルテの演奏にもどります。

そして、Ⅲ部の1曲目と2曲目はⅠ部の演奏とは多少、趣が違います。

真島俊夫先生の「Breezin’」と天野正道先生の「SJ&P_16“Viva Bunkyo Civic”」(どちらも《文京シビックホール委嘱》)

最初は、まだ“エンジンが完全に動いてない”感じもしましたが、徐々に演奏に艶がましてきましたねぇ。

ソロパートもうまくて、色っぽいし、リベルテは、どんなジャンルの曲でもソツなくこなします。

本当に芸達者揃いです。(指揮の福本先生が最初から最後までノリノリだったのが印象的でした。)

 

ジャズやポップス系の曲を聴いて大いに盛り上がったあとに“クラリネット五重奏”の曲です。

「樹霊Ⅱ」(《文京シビックホール委嘱・世界初演》)という曲名が示す通り、「少しスピリチュアルな部分も感じとってほしい」と西村先生自身が曲の“生解説”でおっしゃっておられました。(それと前の曲とのある意味“落差”が大きかったせいか、よく聴いて下さい、と連発されていたのが面白かった。)

曲は、神秘性や神聖さを感じとれる静かだが激しいものでした。

わずか5本の楽器だけでそれを表現できる楽曲は素晴らしかった。

それと、何といってもリベルテのパフォーマンスの素晴らしいこと!

クラリネットパートの皆さんの演奏でしたがアマチュアの域を越えてましたね。

難解な曲に物おじせず立ち向かい、こなしているのには感動致しました。

少人数のアンサンブルではありましたが、この日のプログラムの中で個人的に最も優れた演奏だと思いました!(蛇足ながら…、本音で言うとせっかく、西村朗先生がお見えになっておられたのだから、出来ればリベルテには課題曲Ⅲを演奏してもらって、西村先生の“生解説”を聴きたかった…。)

 

さあ、お名残り惜しいですが、いよいよ最後の曲です。

NHK・FM「吹奏楽のひびき」のパーソナリティとしても有名な人気作曲家の中橋愛生先生の登場です。

「Sonorific Detonation for Symphonic Band」(《文京シビックホール委嘱・世界初演》)。

プログラムの解説には『「響轟」とでも訳せましょうか』とお書きになっておられます。

その通りにテンポが速くて激しい曲でした。

しかし、それは破壊的なものではなく、何事かのエネルギーが拡散する意味をこめられているようです。

リベルテの素晴らしい演奏にその“見えないもの”を強く認識できたような気がします。

とても、楽しめました。(個人的に言うと川越奏和にも演奏して頂いたら面白そうな曲でした。)

 

全部の演奏が終わりました。

本日の委嘱作品の作曲者の皆様がもう一度、ステージ上に上がって声援を受けられました。

でも、拍手は鳴りやまない。

そして、アンコール曲です。

異国情緒豊かな楽器スチールパンを使った「Caribbean Sundance」と「聖者の行進」。(いずれも真島先生の作品で“今年の”SJ&Pの課題曲です。)

スチールパンの音色は、南国気分を味あわせて頂きましたし、「聖者の行進」は、アメリカ南部の葬式の様子を再現しているらしくて、非常に趣のある曲でした。

そして、これは本当に最後でしたが、先程、素晴らしい演奏を聴かせて頂いた「埼玉県中学校選抜吹奏楽団」の皆さんが「花は咲く」を熱唱し、閉会となりました…。

 

この日の演奏会は、場所も文京シビックホールで、しかも“委嘱作品”だらけ。

リベルテの皆さんも、さぞやプレッシャーが…、と思っていましたが、今まで聴いてきた演奏会以上に気合いが入っているようで、期待以上のパフォーマンスを見せてくれました。

さすが、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団です。

ここ数年、埼玉県の高校のトップバンドの指導者が入れ替わったりして、ある意味、埼玉県吹奏楽界は“過渡期”にあるのではと思ってしまいます。

しかし、吹奏楽王国“埼玉県”をけん引するナンバーワンのバンドとしての自覚を持ち、頑張って頂く…、それを切に希望する次第です!!(千葉県には負けないで!!)