浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

東京佼成ウインドオーケストラ 第123回 定期演奏会

2015-05-06 02:11:33 | 吹奏楽

2015年(平成27年)4月26日、東京芸術劇場。

久々に「東京佼成ウインドオーケストラ」(TKWO)の演奏会にやってまいりました。

前回は、ちょうど1年前の4月27日、第119回定期演奏会以来です。

この時のブログを見てみますと『“古本まつり”というのをやっておりまして』なんて書いてありますが…。

今年もやってるんですね、『池袋西口公園古本まつり』(笑)。

毎年、同時期に行なう恒例行事なのでしょうか?

 

今回の定期演奏会は、個人的に指揮を正指揮者の大井剛史氏が振ると言う事と選曲が素晴らしく思い、伺うことにした次第です。(気のせいかも知れませんが、大井先生がTKWOを振ると、とても素晴らしく、私好みの演奏になるのです。)

そして、この後、これが“現実”となって私を非常に満足させてくれたのでした…。

 

[演奏]東京佼成ウインドオーケストラ

[指揮]大井 剛史(正指揮者)

[サクソフォン・ソロ]須川 展也

 

I Love the 207/酒井 格

I Love the 207/Itaru Sakai

スロヴァキアン・ラプソディ/加藤 昌則

Slovakian Rhapsody (2005/2015) for Alto Saxophone and Wind Orchestra/Masanori Kato

パガニーニ・リミックス/旭井 翔一

Paganini Remix for Alto Saxophone and Wind Orchestra/Shoichi Asai

 

【休憩-Intermission】

 

吹奏楽のためのナグスヘッドの追憶/一柳 慧

To the memory of Nugshead for Symphonic Band/Toshi Ichiyanagi

レント・ラメントーソ -すべての涙のなかに、希望がある(ボーヴォワール)-/真島 俊夫

Lento Lamentoso – Dans toutes les Larmes s’attarde un espoir (Beauvoir)-/Toshio Mashima

Mindscape for Wind Orchestra/高 昌帥

Mindscape for Wind Orchestra/Chang Su Koh

 

まず最初は、「I Love the 207」。

吹奏楽では人気の作曲家、酒井格先生の作品です。

2010年、京都の一般吹奏楽団、“大住シンフォニックバンド”の委嘱で作曲されました。

曲名の中の「207(“にーまるなな”と読むそうです。)」の意味するところは、酒井先生の住む枚方市やこの曲の委嘱団体の練習場の近くにも走行している電車の型番なのだそうです。(いわゆる“207系”。)

また、この207系は、JR福知山線脱線事故の際の電車でもあります。

そして、この曲は、福知山線事故自体を描いているのではなく、『電車が運ぶたくさんの人たち笑顔と夢を描いており、この電車への愛情が込められ』た楽曲なのだとのこと。

ですから、『終始華やかで明るい』。

私個人の印象としては、ミュージカルの音楽のように楽しい曲でした。

明るく、はずんだ感じが心地よい。

とても素晴らしい演奏で、私、久々にゾクゾクしましたねぇ。

特に冒頭のクラリネットのユニゾン。

曲が始まって、ものの数秒で“心を奪われました”…。

ちなみに会場には、作曲者の酒井先生もお見えになっておられました。

 

ここから、2曲は、日本を代表するサクソフォン奏者で2010年までTKWOのコンサートマスターを務められた須川展也先生がソリストとして参加されます。

最初の曲は、「スロヴァキアン・ラプソディ」。

この曲は、2005年に来日したスロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演のために須川先生の委嘱で作曲されました。(吹奏楽版の初演は2013年7月4日、須川先生&東京藝術大学ウィンドオーケストラによる。ただし、この日のTKWOの演奏は、“改訂版”。)

作曲者の加藤昌則氏は、東京藝大作曲科を首席で卒業され、同大学院に進まれた英才です。

須川先生とは、副科でサクソフォンを学んでいた時の師弟関係にあたるそうです。

曲は、『旧チェコスロヴァキア民謡「おお牧場はみどり」を主題とし、サクソフォンの表現力を最大限に引き出した作品』。

とても、明るい曲で、須川先生のテクニックも冴えわたり、楽しめました。

(作曲者の加藤氏も会場に来ておられました。)

 

続いての曲は「パガニーニ・リミックス」。

作曲者の旭井翔一氏は加藤氏と同じく東京藝大作曲科の出身。

様々な作曲コンクールで受賞歴のある新進気鋭の作曲家です。

クラシックだけではなく、ロックやジャズと言った分野にも造詣が深い方のようですね。

この曲は、2013年9月に“サクソフォン奏者松下洋氏と東洋英和女学院大学ウィンドアンサンブル”によって初演されました。(委嘱者は、松下洋氏)

この日の演奏は須川先生の依頼による“改訂版”です。

有名なパガニーニの無伴奏バイオリン独奏曲「24の奇想曲」の第24曲(Quasi Presto)の主題を多くの作曲家たちと同じく、取り上げています。(クラシック音楽に興味が無い方でも一度は耳にした事のあるメロディだと思います。)

須川先生の即興的な独奏部分(“カデンツァ”って言うんでしょうか…)は、素晴らしかったですねぇ。

曲は、ジャズっぽかったり、ロックぽかったりして、パガニーニはどこに行ってしまったんだろう、と思ったりもしましたが…。

TKWOの皆さんが途中で指をならす演出があったり、非常に面白く楽しく、素晴らしい演奏でした。

そして、須川先生の魅力を大いに堪能させて頂きました。

拍手に応えて須川先生が下記の曲を無伴奏でアンコール曲として演奏して下さいました。

(作曲者の旭井氏も会場に来ておられました。)

 

休憩の後、前半の須川先生の素晴らしいパーフォーマンスの余韻に浸る暇もなく、後半へ。

最初は著名な作曲家、一柳慧先生の「ナグスヘッドの追憶」。

中橋愛生先生によるプログラムの曲の解説には、こうあります。

『友人であるアメリカの画家、ジャスパー・ジョーンズの別荘のあるナグスヘッドに滞在した。そこがライト兄弟が初飛行を行った場所であることを知り、そこから感じた「芸術、自然、人間の営為」が曲に折り込まれて』いるとの事。

曲の題材が抽象的なものなので、私のような素人には、難しく感じました。

しかし、分からないなりにも“音楽”をヒシヒシと伝わってきました。

演奏人数は少し、少ないですかね。(40名弱)

最初の方で弦バスのソロがあって、めずらしいので興味深く思いました。

やっぱり、プロですね。

各個人の技量が素晴らしい。

感銘を受けました。(特にクラリネット・ソロ)

 

次は、「レント・ラメントーソ」。

この曲は、アマチュア吹奏楽団の中でも有名な“グラールウインドオーケストラ”の委嘱で2013年に作曲されました。

そして、その年の6月2日、世田谷の三軒茶屋にある昭和女子大学人見記念講堂で行なわれたグラールウインドオーケストラの第33回定期演奏会、佐川聖二先生の指揮で初演されました。

実は、私もこの時の初演を聴かせて頂いております。

その他でもグラールのコンクールでの演奏や昨年1月5日の神奈川大学の第49回定期演奏会、同じく昨年の第17回“響宴”でアンサンブルリベルテの演奏で楽しませて頂きました。

比較的、聴く機会が多かった曲です。

真島先生の曲は、どちらかと言うとキラキラした華やかな曲が多いように思うのですが、この曲は、しっとりとした美しい楽曲ですね。

表現力が素晴らしかったです。

まるで、小説の如く“劇的”なイメージを秘めている…。

プロなので当然ですが、今まで聴いた演奏とは“違う次元”の演奏のように感じました。

とても、心に沁み入りました…。(ちなみに作曲者の真島先生も来場されていました…。)

 

最後の曲は、「マインドスケープ」です。

非常に人気の曲です。

この曲は、“A-Winds奈良アマチュアウィンドオーケストラ”の委嘱で作曲され、2006年3月12日に作曲者の高昌帥先生の指揮で初演されました。

さまざまな吹奏楽団でこの曲の演奏を聴いてきましたが、もしかしたらプロの演奏を聴くのは初めてかも知れません。

私のような素人が何事か言えるような演奏ではありませんでした…。

何もかもが素晴らしい!

テクニック的なものも然ることながら、心地よい“音圧”がたまらなくイイ!

ブラヴォーです!

今まで聴いていた「マインドスケープ」は何だったのだろう?と思ってしまいました…。

(高先生も来場されておりました。)

 

いやあ、本当に素晴らしかった。

この日を含めて3度目のTKWOの演奏会でしたが、個人的に今までで、イチバン印象深い演奏会だった…。

鳴り止まぬ拍手の中で、そんな事を考えてコンサートの余韻を楽しむ“浦和のオヤジ”でした…。