浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

読売日本交響楽団 第574回サントリーホール名曲シリーズ

2014-09-19 02:56:25 | オーケストラ

久し振りのコンサートです。
でも、吹奏楽じゃないんです。
今回は、2014年9月16日、火曜日の「第574回サントリーホール名曲シリーズ」に行かせて頂きました。


サントリーホール。
首都圏では、優れたホールが数多くありますが、素人目から見ても格調の高さは、このホールが一番ですね。
独特の雰囲気を持っています。
さて、私がこのコンサートを拝見させて頂こうと思ったのは、この日の演目に惹かれたからでした。
吹奏楽の世界では、著名なチェコ出身の作曲家カレル・フサの作品「この地球を神と崇める」の管弦楽版が演奏されると知ったからです。
もちろん、フサの吹奏楽曲では「プラハ1968年のための音楽」が一番、有名です。
いわゆる「プラハの春」と呼ばれるチェコスロヴァキアの社会主義改革運動がソビエト連邦の牛耳るワルシャワ条約機構軍の軍事進攻によって弾圧された「チェコ事件」に抗議して作曲された曲で、強い政治的メッセージ性を持っています。(吹奏楽の世界では、時折、演奏される曲なのでこのブログをお読みになっている方なら、ご存知だと思います。)
ところが、この「この地球を神と崇める」は、それよりも、もっと大きなテーマを扱った曲なのです。
地球上で今現在も起こっている戦争、天災、環境破壊などの出来事を憂い、また、そのような事象を誘発する愚かな人間の行為に“音楽”によって警告を発しているのです。
初めて、この曲の吹奏楽版を聴いたのは何時だったか忘れましたが、若かった私は、強い衝撃を受けたのを覚えています。(調べてみますと吹奏楽の全国大会でも4つの団体が演奏していますね。)
そのステキな曲がオーケストラと合唱で形を変えて演奏されるとのこと。
ワクワクせざるを得ません。


[演奏]読売日本交響楽団
[指揮]下野 竜也(首席客演指揮者)
[ピアノ]小川 典子
[合唱]上野学園大学合唱団
[コンサートマスター]ダニエル・ゲーテ



◆ 松村 禎三/ゲッセマネの夜に
TEIZO MATSUMURA/To the Night of Gethsemane
◆ モーツァルト/ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
MOZART/Piano Concerto No.24 in C minor,K.491
Ⅰ.Allegro
Ⅱ.Larghetto
Ⅲ.Allegretto



【休憩】


◆ J.S.バッハ(ストコフスキー編)/ゲッセマネのわが主よ BWV487
  J.S.BACH(arr.Stokowski)/
              Mein Jesu(Geistliches Lied from Schemelli’s Gesang-Buch),BMV487

◆ カレル・フサ/この地球を神と崇める(管弦楽版日本初演)
    KAREL HUSA/Apotheosis of this Earth
Ⅰ.Apotheosis
Ⅱ.Tragedy of Destruction
Ⅲ.Postscript



さあ、演奏会の始まりです。
指揮は下野竜也氏です。
このマエストロは、なかなか面白いプログラムを組んで下さるので大好きな指揮者のひとりですね。(今年の1月に横浜のみなとみらいホールで同じ読響の演奏会を聴かせて頂きましたが、ヘンリー・ウッド版の「展覧会の絵」は非常に感銘を受けました。)
広島ウィンドオーケストラの音楽監督もされていて吹奏楽にも造詣が深い事と推察されます。(昨年4月の広島ウィンドオーケストラ東京公演も行かせて頂き、非常に楽しいひと時を過ごさせて頂きました。)
だから、フサの曲と言う発想が出たのではないでしょうか?
推測ですが…。


最初の曲は、松村禎三先生の「ゲッセマネの夜に」。
素人のオヤジなので恥ずかしながら、松村先生の曲を真剣に聴いた事がありませんでした。(生演奏は初めてだと思います。)
少し、小さな楽器編成の曲ですね。
金管楽器などは、2管編成のように見えますが…。
プログラムの解説を読みますと編成の小さいオーケストラ、“アンサンブル金沢”のために作曲されたとのこと。
“ゲッセマネ”とは新約聖書に登場する地名で、キリストが、かの有名な“最後の晩餐”をした場所なんだそうです。
また、同時にキリストが捕えられた所でもあるのですが、ユダの裏切りによって捕縛される様を描いたジョット作「ユダの接吻」という絵画でこの時の様子を窺い知ることが出来るとのこと。(松村先生は、「ゲッセマネの夜に」を書く時に傍らにこの絵を置いていたそうです。)
いわゆる現代音楽ではありますが、流れの美しい上品な曲のように思えました。
神秘的でもありますよね。
宗教的な背景もあると思いますが、そんなところを越えた世界があるような気がしました。
続いては、小川典子氏の演奏によるモーツァルトのピアノ協奏曲。
なんと力強いピアノの音色でしょう!
何であんなに響くんだろうと感嘆してしまいます。
小川氏の素晴らしいパフォーマンスでした。
それにしても、モーツァルトって、何と心地よい気持ちにしてくれるのでしょうか。
良い意味で精神が弛緩していくのを感じます…。


休憩を挟んで後半の楽曲です。
バッハの「ゲッセマネのわが主よ」と、お待ちかね「この地球を神と崇める」です。
ところで、プログラムにわざわざ、以下のような文言が書かれているのを発見しました。
『指揮者・下野竜也氏の意向により、バッハとフサの両作品は続けて演奏されます。』
演奏を全て聴き終った時、何となくその意図がわかったような気がしました…。


最初は、バッハ。
また、“ゲッセマネ”ですか?
この日のプログラムは宗教を含めた精神世界がテーマなんでしょうか?
もともと“宗教的歌曲”を収録した「シェメッリ賛美歌集」の中の1曲だそうで、名指揮者ストコフスキーの編曲により、格調高い弦楽合奏曲として生まれ変わりました。
ゆったりとして深みのある弦楽器の響きは、私のような凡人の心の中まで沁み入ってきます。
キリストの苦悩に満ちた感情が素晴らしいほどの音の連鎖になって脳に伝わって来るようです。
そして、最後は、この日の目的でもあった「この地球を神と崇める」です。
吹奏楽版では、生演奏で聴いたことがありません。
ただ、レコードかCDの音源で聴いたのみです。(画像としては、youtubeで都立永山高校の全国大会での演奏を拝見したことがあります。)
吹奏楽版には、難解で迫力のある曲という印象が強く、この曲本来のメッセージ性とかに目を向けるまで至らなかった気がします。(私が、まだ若かったからかもしれませんが。)
ところが、今回の管弦楽・合唱版に関しては、曲に潜む作曲者フサの想いがガンガン心に響いてきました…。
と言うか、それがイチバン感じられた。
おそらく、その最大の要因は読響の演奏が素晴らしかったからだと思います。
同時に演奏に管弦楽と合唱になることによって、“演出効果”が上がったのではないでしょうか?
特に合唱が加わったのが効果バツグンでした!
本来の“声”だけではなく、“手拍子”や“足踏み”を交えたパフォーマンスは素晴らしかった!(上野学園大学合唱団の皆さん、ご苦労さまでした!)
いずれにせよ、“フサの世界”をじっくり堪能させて頂いた30分余でした…。
今年、聴いた中では、吹奏楽、オーケストラを問わず(私にとって)、一二を争う演奏だったと思います…。


サントリーホールより外に出ますと、目の前のカフェでは、まだ多くの客で席が埋まり、賑わっているようです。
そんな都会の喧騒も心地よくさえ感じられる幸せな気分になって、地下鉄南北線六本木一丁目駅から家路を急ぐ浦和のオヤジでした…。


追伸
この度、「OCNブログ人」サービス終了に伴い、“浦和河童便り”は、「gooブログ」に移らせて頂きました。

第3回 音楽大学フェスティバルオーケストラ(東京芸術劇場)

2014-04-26 19:45:30 | オーケストラ

この日は、第3回音楽大学フェスティバルオーケストラの演奏会を聴かせて頂くために(私にとっては)、お馴染みの東京芸術劇場まで参りました。
2014年(平成26年)3月28日、金曜日。
開演は、19:00からなのですが、仕事場が池袋に近いため、開演時間まで余裕があり、少し早目の夕食をとったりして時間つぶしです。

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以前にもこのブログでご紹介したことがあると思うのですが、東京芸術劇場は東京都豊島区の池袋駅西口を出てすぐの「池袋西口公園」の中にあります。

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池袋西口公園は、その昔、東京府豊島師範学校(のちに東京第二師範学校と改称、現在の東京学芸大学)があったところなのだそうです。
敷地的には、住宅地の公園よりは広いですが、代々木公園のようにバカでかくなく、そうですね、やはり、小学校か中学校がひとつ建てられるくらいの面積でしょうか?

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公園の中はキレイに整備されていますが、歌を歌っている者あり、様々なパフォーマンスを見せる者ありで、ある種の“文化の匂い”も感じられます。
と同時にケッコウな数のホームレスたちもたむろしており、「雑多の街、東京」という一面も見る事ができますね。

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そのような混沌とした西口公園の中に白亜の殿堂のように聳え立つ東京芸術劇場は、違和感を放つと思いきや、これが不思議と公園の中に融け込んでいるような感じがするのが不思議でなりません。
「何なんだろう?この感覚。」

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と、公園内を徘徊しながら、どうでもいいような事を考えておりましたら、開演が近づいてきました。
早く、大ホールにいかなくっちゃ!

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昨年末、「音楽大学オーケストラフェスティバル」2公演に行かせ頂きました。
弦楽器にはあまり、馴染みのない私でしたが、音大生の皆さんの熱い演奏を聴いて感銘を受けました。
しかも、今回は首都圏8大学の学生選抜による合同のスペシャルオーケストラです。
楽しみですね。
指揮は、ラドミル・エリシュカ氏。
元プラハ音楽大学教授で、チェコ音楽の巨匠です。
この日のプログラムは、十八番(おはこ)の曲でしょうから、非常に期待出来るし、学生さんの能力をどれ程、引き出して頂けるのか興味津々です。
マエストロ・エリシュカに期待しましょう!

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[演奏]音楽大学フェスティバル・オーケストラ
   【参加大学】国立音楽大学
         昭和音楽大学
         洗足学園音楽大学
         東京音楽大学
         東京藝術大学
         東邦音楽大学
         桐朋学園大学
         武蔵野音楽大学

[指揮]ラドミル・エリシュカ 

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◆ 連作交響詩『わが祖国』から(スメタナ)
    高い城
    モルダウ
    シャルカ

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【休憩】

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◆ 交響曲第9番ホ短調「新世界より」
  Ⅰ アダージョ-アレグロ・モルト
  Ⅱ ラルゴ
  Ⅲ スケルツォ モルト・ヴィヴァーチェ
  Ⅳ アレグロ・コン・フォーコ

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クラシック音楽をファンならば、知らぬ者はいないと思われるほどのポピュラーな曲、2曲です。
まずは、スメタナの「わが祖国」ですね。
全体的に情緒のある色彩豊かな演奏に感じました。
特に著名な曲、モルダウはスケール感が良く出ていたと思います。(3曲目の“シャルカ”の演奏が残っていたのにもかかわらず、“モルダウ”が終わった瞬間、拍手をした観客がいたのが印象的でした。)
ただ、今まで聴いたCDとかに比べて随分、テンポが速いんだなと思いましたが…。
本場では、そうなんでしょうか?

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実は、今回、1階最前列で聴かせて頂きました。(第一ヴァイオリンの皆さんに“かぶりつき”状態でした。)
こんな近くで数多くの弦楽器の音を聴いたのは初めてでした。
そこで、新たに発見したのですが、弦楽器って音に“うねり”があるんですね?
“ズレ”とは違う、何か大きな流れのような…。
そして、その“うねり”が響きを大きくしていると言うか、壮大な感じがする…。
素人ながら、そんな風に感じました。

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さて、休憩のあとはドヴォルザークの「新世界より」。
素朴ないい演奏のように感じました。
第2楽章では、気持ちが小学生の頃にもどって、家に帰りたくなっちゃったし…(笑)
心から癒されたように思います。
でも、ホントは8番の方が好きなんですけどね。

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アンコールもドヴォルザークです。

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吹奏楽もいいけど、オケも素晴らしい。
これからも、オーケストラの演奏を出来るだけ、聴いてみたいですね。

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また、約1ヵ月たってのご報告になってしまいました。
明日は、東京佼成ウインドの定期演奏会に行きます。
ブログ更新もスピードアップしますので、よろしくお願いします。


読売日本交響楽団 第69回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2014-01-28 01:51:13 | オーケストラ

  この日のコンサートに何故に訪れたかと言うと大きく三つの理由がありました。

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一つめの理由は、読響の演奏会だからです。
日本のオーケストラでトップ3の呼び声の高いN響、読響、都響のうち読響だけを聴く機会にこれまで恵まれなかった。
だから、演奏を聴きたかった、と言う事です。
二つめは指揮者が下野竜也氏であるからです。
昨年は、4月に音楽監督をされている広島ウインドオーケストラの東京公演、6月にNHK交響楽団の定期公演(ホルストの「惑星」がメインの曲でした。)と2度ほど下野氏の指揮で演奏を聴かせて頂きました。
いずれのコンサートも、非常に記憶に残る演奏会でしたので、今回も下野氏の指揮が楽しみです。
三つめ、これが最大の理由ですが、ラヴェルの編曲以外で「フルオーケストラ」の“展覧会の絵”が聴けるからです。
以前、NHKの教育テレビ(だったと思う…)で他の作曲家が編曲したオーケストラ版“展覧会の絵”を少しだけ聴いたことがあります。(この時の編曲者は残念ながら忘れてしまいました。曲の冒頭「プロムナード」が弦楽合奏で始まったのには非常に興味を惹かれましたね。)
恥ずかしながら、編曲者のヘンリー・ウッドのことはよく知りませんが、どんな編曲なのか、非常に“興味津々”でございます…。

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2014年(平成26年)1月19日、日曜日。
場所は、横浜みなとみらいホール(大ホール)です。
本当は、全く同じプログラムで前日の18日に東京芸術劇場(自宅の浦和や都内の職場からも近いので)でのコンサートの方に行きたかったのですが、仕事のため、横浜遠征となった次第です。

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今回は予算の問題もあるのですが、行きなれた“みなとみらいホール”で初めて3階席に挑戦してみました。
どのように聴こえるかが楽しみです。

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演奏前に指揮者の下野竜也氏がステージに現れ、楽曲の解説をして下さいました。
さあ、みなとみらいホール独特の開演を知らせる“ドラの音(ね)”がホール内に鳴り響いています。
いよいよ、コンサートの始まりです。

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[演奏]読売日本交響楽団
[指揮]下野 竜也(首席客演指揮者)
[コンサートマスター]デヴィッド・ノーラン(ゲスト)

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◆ 前奏曲とフーガ BMV545 (J.S.バッハ/arr. A.オネゲル)

◆ 「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」BMV622 (J.S.バッハ/arr. M.レーガー)

◆ ジーク風フーガBMV.577 (J.S.バッハ/arr. G.ホルスト)

◆ シャコンヌBMV.1004 (J.S.バッハ/arr. J.ラフ)

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〔休憩〕

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◆ 組曲〈展覧会の絵〉 (M.ムソルグスキー/arr. H.ウッド)
    Ⅰ.Promenade
    Ⅱ.Gnomus
    Ⅲ.ⅡVecchio Castello
    Ⅳ.Les Tuileries
    Ⅴ.Bydlo
    Ⅵ.Ballet of the Unhatched Chicks
    Ⅶ.Samuel Goldenberg and Schmuyle
    Ⅷ.The Market at Limoges
    Ⅸ.Catacombs(Sepulcrum romanum)-Cum mortuis in lingua mortua
    Ⅹ.The Hut on Hen’s Legs(Baba Yaga)
    ?.The Great Gate of Kiev

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前半は、オール、バッハです。
シブイ選曲です。
しかも、いろいろな時代の著名な作曲家が編曲している作品です。
もともと、オルガンやチェンバロのために作られた曲を時代や各作曲家の個性で見事に表現されており、楽しく聴かせて頂きました。

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まずはオネゲルの編曲です。
オネゲルと言えば、俗に言う“フランス6人組”の中に数えられる著名な作曲家です。
20世紀前半に活躍されただけあって、ダイナミックなオーケストレーションは、なぜか妙にバッハの音楽にマッチしていて、非常に面白く感じました。
新しい“発見”に出会ったような気がしましたね。
次の曲のアレンジャーは、マックス・レーガーです。
後期ロマン派に属するドイツの作曲家です。
マーラー、リヒャルト・シュトラウスといった作曲家とほぼ同年代の方で、もともとはオルガン曲で評価を得た作曲家のようです。(ちなみにラフマニノフとは同い年みたいです。)
今回演奏された曲は、バッハの作品を見事な弦楽合奏曲にアレンジしたものでした。
重厚なロマン派の弦楽合奏が心に沁み入り、バッハの世界とは趣の違う優れた作品に仕上がっていたように思います。
ステキでした…。
3番目の曲は、ご存知、ホルストの編曲です。
プログラムの解説によると“ジーク”とはイギリス諸島起源のリズムの“様式”なんだそうです。
その影響もあるのでしょうけど、何かバッハの音楽がホルスト特有のイギリス民謡みたいに聴こえてくるんですよねぇ。
不思議です。
最初は、チェロから始まってビオラ、ヴァイオリンとソロが受け継がれていきます。
徐々に楽器が増えて、tuttiになる頃には、バッハでありながら、ホルストの世界が満載ですね。
楽しめました。
前半、最後の曲は、J.ラフの編曲です。
私は音楽史に詳しいわけではありませんので、恥ずかしながら、ラフという人物を存じ上げませんでした。(リストのお弟子さんであったようですね。)
近年、再評価されつつある作曲家です。
また、このラフが編曲した(この日、演奏された)「シャコンヌ」は、前の3曲がオルガン曲であったのに対して、ヴァイオリンの曲です。
ロマン派の作曲家らしく、スケールの大きいダイナミックな曲になっていました。

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前半が終わりました。
オール・バッハという、なかなか粋なプログラムには個人的には大満足でした。
共通するバッハの旋律を使いながらも、しっかりと各々の個性を出した音楽に完成させている。
さすが、それぞれの時代を代表する作曲家の皆さんです。
と同時に、読響も、それぞれの編曲者の“独自の世界”を十分に具現化した演奏で、大いに楽しませて頂きました。
また、危惧していた“3階席”の心配は杞憂に終わりました。
程良く響いていて、聴き辛く感じませんでした。
ただ、視覚的な不満は残りますが…。

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さて、後半は、ヘンリー・ウッド編曲の「展覧会の絵」です。
サー・ヘンリー・ウッド(1869~1944)は、19世紀から20世紀に活躍したイギリスの指揮者です。
現在「BBCプロムス」として名高いプロムナードコンサート(初回は1895年)の指揮者として指名されたことから、彼の将来が開けていきます。
様々な部分でイギリスクラシック界に一石を投じて来たウッドでしたが、編曲者としての一面も持っていました。
古いバッハやヘンデルの曲を近代的なオーケストレーションで編曲し、ある意味“蘇らせた”ことが多々あったようです。
ちなみに今回のコンサートで演奏されたのは、時間的にいうとラヴェルより以前の編曲なのだそうです。

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さあ、演奏が始まります。
どんな編曲なのでしょう?
やっぱり、最初のプロムナードのメロディは弦楽合奏かな?
なんぞと空想を膨らませながら、待っておりました。
すると…。

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出だし、ある意味、予想外でした…。
ラヴェル版だとトランペットソロですが…。
あれ、同じ金管楽器で曲が始まりました…、しかも、多分、舞台上の全ての金管楽器が演奏している金管合奏です。
しかし、ラヴェルを聴きなれている身からしても、新鮮な感じこそすれ、違和感はなかった。
それ以降も、ラヴェルとは違う感じで興味深かった。
特に「古城」のサックスソロ(ラヴェル版)が、バンダでユーホニウムソロとトランペットソロになっていたのが面白かった。
若干、違う雰囲気なのだけれど、共通する“時間”を感じました。
それと全般的にラヴェル版より、打楽器が使用されていたような。(それが故に多少、音量的に大げさに感じた部分もありました…。)
ラヴェル版は完成度が高く、メロディに合わせて、華やかさや素朴さを兼ね備えた名編曲だと思います。
だからこそ、「展覧会の絵」と言えば、誰もが“ラヴェル”と連想するんじゃないでしょうか?

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それと比較して、ウッド版は“新しさ”を強く感じました。
もちろん、聴き慣れてないから、そう思う部分もあるかもしれませんが、僅か数年の違いとは言え、とてもラヴェル版以前の編曲とは思えない。
より現代に近い感性を感じた次第。
是非、もう一度聴いてみたい編曲でした。

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読響も素晴らしかった。
表現力が豊かだし、ヘンな表現かもしれませんが、初めて聴く曲を観客にわかりやすく“咀嚼”して聴かせてくれたように感じました。
次回は、じっくりと、ブルックナーやマーラーとかの交響曲を聴いてみたいオーケストラでした。

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それにしても、マエストロ下野の指揮はキレイですね。
私は指揮の事は、全くわかりませんが、素人目から見てもカッコイイ。
ステキな音楽が聴こえて来そうな指揮でした。(実際、そのとおりでした。)

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曲が終わり、盛大な拍手が長く、続いています。
そのうち、下野氏の「帰っちゃだめよ」の掛け声とともにアンコールの演奏です。
アンコールまでバッハです。

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実に興味深い演奏会でした。
聴き慣れた楽曲をいい演奏でじっくりと聴くのも良いけれど、こういう変わった形の楽曲を聴くのも楽しいものです。
豊かな気持ちになって、家路を急ぐ浦和のオヤジでした…。
(演奏会から、ずいぶん時間が経ってしまいました…。スミマセン。)


第4回 音楽大学オーケストラフェスティバル(東京音楽大学・国立音楽大学)

2013-12-11 20:07:40 | オーケストラ

石田衣良氏の小説で「池袋ウエストゲートパーク」というのがあります。
2000年に宮藤官九郎氏の脚本でドラマ化(TBS)されたこともあるので、ご存知の方も多いと思います。
そして、この小説の舞台となった「池袋ウエストゲートパーク」すなわち「池袋西口公園」の一角に東京芸術劇場は建っています。

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東京芸術劇場は、『公益財団法人東京都歴史文化財団』が管理する地上10階、地下4階の堂々たる建物ですね。
私がよく訪れます大ホール(1999席)や中ホール(841席)、小ホール(300席)が二つ(シアターイースト、シアターウエスト)、他に展示ギャラリー、展示室、テナント等々を抱える施設です。
1990年10月の開館ですが、2011年4月より改装のために1年半にわたり休館いたしました。
その後、2012年9月にリニューアルオープンし現在に至っております。(特にリニューアル後はエントランスが素敵になりました。)

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そして、今回この東京芸術劇場に「第4回音楽大学オーケストラフェスティバル」のために伺いました。(今年、個人的に東京芸術劇場での“7回目”のコンサートです。)
洗足学園音楽大学管弦楽団、桐朋学園オーケストラ、武蔵野音楽大学管弦楽団、昭和音楽大学管弦楽団、東邦音楽大学管弦楽団、東京藝大シンフォニーオーケストラ、東京音楽大学シンフォニーオーケストラ、国立音楽大学オーケストラという在京8音大の学生さんがミューザ川崎と東京芸術劇場にて日頃の研鑽の成果を披露して頂ける催しです。
11月11日にもミューザ川崎シンフォニーホールで洗足学園と桐朋学園の演奏を聴かせて頂きました。
この日も仕事が休みであったため、演奏会に伺うことにしました。

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2013年12月8日、日曜日の昼下がり。
池袋西口公園は、休日のせいか大変、賑わっておりました。
公園で歌を歌う人がいるのは、よく見る光景ですが、さすが繁華街、池袋駅前の公園はダンスや曲芸?のようなことをするパフォーマーが複数おり、それを見物する人間で溢れかえっておりました。

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そんな人混みをかき分けて東京芸術劇場へと向かいます。
建物の中へと入り、長い長いエスカレーターを登りつめたところに目的の大ホールの入口があります。
さあ、これから、国立音大、東京音大の皆さんの演奏が始まります。

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《ファンファーレ》
● Fanfare2013~躍進~ (竹蓋 彩花)

 【演奏】国立音楽大学

● 交響曲 第8番 ヘ長調 作品93 (L.V.ベートーヴェン)
 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・コン・ブリオ
 第2楽章 アレグレット・スケルツァンド
 第3楽章 テンポ・ディ・メヌエット
 第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
● バレエ音楽「ガイーヌ」より (A.ハチャトゥリャン)
 剣の舞/バラの娘たちの踊り/子守歌/レスギンカ

 【管弦楽】東京音楽大学シンフォニーオーケストラ
 【指揮】 川瀬 賢太郎

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〔休憩〕

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《ファンファーレ》
● フェスティバル・ファンファーレ2013 (小濱 響子)

 【演奏】東京音楽大学

● 管弦楽のための協奏曲 (B.バルトーク)
 第1楽章〈序奏〉アンダンテ・ノン・トロッポ―アレグロ・ヴィヴァーチェ
 第2楽章〈対の遊び〉アレグレット・スケルツァンド
 第3楽章〈悲歌〉アンダンテ・ノン・トロッポ
 第4楽章〈中断された間奏曲〉アレグレット
 第5楽章〈終曲〉ペザンテ―プレスト

 【管弦楽】国立音楽大学オーケストラ
 【指揮】 山下 一史

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それぞれの大学の演奏の前に“エール”の意味もあるのでしょうか、相手方の金管楽器(一部打楽器も)がファンファーレを奏でます。
しかも既存の曲ではなく、作曲科の学生さんが作った新曲です。
面白い試みです。
そして、とてもいい演出だと思います。

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国立音大のファンファーレに続いて、まずは東京音大の演奏です。
まずはベートーヴェンですか。
普段、個人的にベートーヴェンのオーケストラ曲は聴かないですね。
近代の作曲家から比べると物足りなく感じてしまうので…。
ただ、生演奏で聴くと弦楽器中心の音楽は心が安らいで、とても心地よかった。

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続いては打って変ってハチャトゥリャン。
実はこの2日前に吹奏楽版を聴いているのですけど、やっぱり弦楽器が入るとスケールが大きくなります。
また、管楽器の音と弦楽器の音が交わると普段聴いている吹奏楽の音とは、同じ管楽器なのだけれど違った響きをするように思いました。(何か艶っぽくなったような…。)
それにしても“レスギンカ”は盛り上がる曲ですね。
大いに楽しめました。
全体的に都会的な感じがして、いい演奏だと思いました。

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休憩のあと、後半の演奏は国立音大です。
東京音大のファンファーレに続いて、大曲、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」です。
大好きな曲ですので楽しみですね。
今年も吹奏楽の全国大会で“吹奏楽版”「管弦楽のための協奏曲」を聴きましたが(横浜ブラスオルケスター)、先程の「ガイーヌ」と同様、弦楽器の素晴らしさには感銘を受けますね。
迫力が違います。
演奏も「動」と「静」の対比をうまく表現した内容で素晴らしかった。
滅多にオーケストラの演奏会に行くことがないので、よく知っている曲でも生演奏を聴くのは初めてです。
やっぱり演奏はCDではなく、実際にホールに足を運んで聴くものだと、あらためて思った次第。

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演奏会が終わり、外に出ても少し薄暗くなっただけで、都会の喧騒の様子は変わっていません。
心地よい余韻に浸りながら池袋駅から埼京線に乗り込む私(浦和河童)でございました。

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音大生の皆さんの演奏(吹奏楽もオーケストラも)はチケット代があんなに安いのに、それをはるかに上回るパーフォーマンスをみせてくれます。
断然、オトクです!!


第4回 音楽大学オーケストラフェスティバル(洗足学園音楽大学・桐朋学園大学)

2013-11-18 08:44:28 | オーケストラ

時々、無性に弦楽器の音が聴きたくなります。
普段、よく聴いている管楽器のそれとは別世界の音です。
そして(うまく表現できないですが)、吹奏楽の演奏にも非常に参考になると思います。

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今年の11月(そう、まさに今です!)は、何と、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウといった世界三大オケが日本に集結しています。
本当は、どれか一公演だけでも聴きに行きたい…。
でも、3万も4万も出せるほど、私は裕福なオヤジではありません。
残念です…。

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今回、「音楽大学オーケストラフェスティバル」には大きく三つの理由で伺わせて頂きました。
ひとつ目は音大生のみなさんの演奏に興味があったから。
吹奏楽の演奏会では音大生の演奏をかなり聴かせて頂いております。
そして、その演奏は相当なレベルを保っています。
学生さんのオーケストラが、吹奏楽の“それ”と同じように素晴らしいものなのか、プロとはどのくらい違いがあるのか?
そんなことを知りたいなあという好奇心からです。(不純でしょうか?)
二つ目は生演奏の「春の祭典」を聴いてみたかった。
言わずと知れた名曲「春の祭典」。
私も何百回と聴いているとは思うのですが、残念ながら生演奏を聴いたことがない。
CDであれだけ迫力のある曲なのだから、生演奏で聴いたら、どんなにすごいんだろう…と。
そして、最後三つ目の興味は「ミューザ川崎シンフォニーホール」です。
あの3.11東日本大震災の日にホール内の天井が崩落だか破損だかしたらしくて、つい今年の春先までリニューアル工事をしていたと聞いておりました。
どのように変わったのでしょうか?
(と言っても、ミューザ川崎シンフォニーホールは数年前、東海大高輪台高校の演奏会で一度しか訪れたことしかなく、おぼろげにしか覚えていませんが…。)

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音楽大学オーケストラフェスティバルは、平成11年(1999年)に先日亡くなられた三善晃先生の発案で始められたそうです。(その当時の名称は“音楽大学学生オーケストラの祭典”)
いったんは、5年間で終了しましたが、平成21年に再開され、今年で4回目を迎えました。
洗足学園音楽大学管弦楽団、桐朋学園オーケストラ、武蔵野音楽大学管弦楽団、昭和音楽大学管弦楽団、東邦音楽大学管弦楽団、東京藝大シンフォニーオーケストラ、東京音楽大学シンフォニーオーケストラ、国立音楽大学オーケストラという在京8音大の学生さんがミューザ川崎と東京芸術劇場にて日頃の研鑽の成果を披露して頂ける催しです。

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平成25年(2013年)11月11日、金曜日。
場所は、ミューザ川崎シンフォニーホール。
そして出演団体は、洗足学園音楽大学、桐朋学園大学です。
音大生の皆さんのパフォーマンスに期待しましょう!

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当日のプログラムは以下のとおりです。
なお、それぞれの大学の演奏に先立って、相手方?の大学の金管楽器奏者の皆さんがエールの意味を込めてファンファーレを奏でました。(この演出もヨカッタ。)

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《ファンファーレ》
● Fanfare (芳澤 奏)

 【演奏】桐朋学園大学

● 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107[ハース版] (A.ブルックナー)
 第1楽章 アレグロ・モデラート
 第2楽章 アダージョ
 第3楽章 スケルツォ
 第4楽章 フィナーレ

 【管弦楽】洗足学園音楽大学管弦楽団
 【指揮】 秋山 和慶

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〔休憩〕

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《ファンファーレ》
● FANFARE Es-dur (久保 雅斗)

 【演奏】洗足学園音楽大学

● カルタ遊び (I.ストラヴィンスキー)
 第1ラウンド
 第2ラウンド
 第3ラウンド
● バレエ音楽「春の祭典」 (I.ストラヴィンスキー)
 第1部 大地礼賛(全八曲)
 第2部 いけにえの儀式(全六曲)

 【管弦楽】桐朋学園オーケストラ
 【指揮】 高関 健

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最初は、洗足学園の演奏。
ブルックナーの7番。
指揮は秋山和慶先生です。
この曲は、CDでは聴いた事があるものの、生演奏は初めてです。
確かに重厚なサウンドというところだけをみると少し物足りなかったかも知れません。(プロのブルックナーの演奏と比べてという意味です。)
でも、全体的に透明感のある音色は、私のような素人にも感じとることができる“安らぎ”を与えてくれました。
1時間以上の大曲でありますが、ちっとも苦にならずというか、もっと続かないかなあと思える“快適な時間”でした。

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休憩中。
ミューザ川崎シンフォニーホールがリニューアル前とどうかわったのか?
正直言うと、よくわかりません。
円形のすり鉢状に舞台を囲んでいるように感じるホールです。
こういう言い方をするとどうかと思いますが、“カッコいい”ですよ。(素人のオヤジなのでご容赦を!)
私が陣取ったのは、上手(かみて)側のイチバン端の最前列という席でございました。
弦楽器の音は、よく聴こえましたが遠い位置にいる木管楽器に“距離感”を感じるようにも思いました。(演奏者がどうのこうのと言う意味ではなく、純粋にホールの“響き”としてです。)

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後半は、桐朋学園の皆さんです。
指揮は、高関 健先生。
2曲ともストラヴィンスキーですね。
最初の曲は、「カルタ遊び」。
初めて聴くに等しい曲なのですが、華やかなで軽快な感じがします。
そして、なんだか懐かしいようにも思える。(あとでプログラムの解説を読みましたら、ロッシーニ、ベートーヴェン、ラヴェル、ドリーブなどの楽曲の引用を“断片的”にしているとのこと。だから、このように感じたのでしょうか?)
桐朋学園の演奏も表現力に長けた良いものでした。
さて、続いてはトリの曲、春の祭典です。
いい歳をしたオヤジが生演奏を聴けるとあってワクワクしています。
いやあ、とてもステキな演奏でした。
確かに変拍子の難しい曲ですので、リズムのズレやアンサンブルの乱れがなかったわけではありません。
しかし、それを補って余りある“ハート”がありました。
そのエネルギッシュな演奏は、若者の“生命力”を感じましたね。

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コンサートが終わった時、21:00を大きく過ぎていました。
でも、ミューザ川崎から、去り難い想いが私の心に満ち溢れていました。

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本日、演奏して頂いた2つの音大の皆さんは、私の思っていた以上のパフォーマンスを見せて下さった。
“音楽”というカタチのないもので、様々な想いを伝え、感じさせてくれるということをあらためて思い出させてくれた演奏会でした。
これからも(この日、演奏して下さった洗足学園、桐朋学園の皆さんはもちろんですが)、音楽に真剣に向き合っていらっしゃる学生の方に、心より尊敬の念を抱きながら、今後も、ご活躍されることを願っております。

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それにしても“弦の音”って素敵ですね!