浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

第21回 東関東吹奏楽コンクール 職場一般・大学の部

2015-09-28 13:24:57 | 吹奏楽

早いもので、私が“埼玉県民”となってから、四半世紀が経とうとしています。

一時期、仕事やプライベート環境の変化の関係で神奈川県川崎市に転居を考えた時期もありましたが、何とか浦和の住民として現在に至っております。

ですから、生まれ故郷よりも、この埼玉・浦和に愛着が深い。

吹奏楽が好きで、埼玉に愛着を持っているとなると当然、地元の吹奏楽部、吹奏楽団を応援します。(どこの地域の方も地元を応援するでしょうが…。)

ですから、本来はコンクール支部大会に行くのなら、西関東大会だと思うでしょうが、私の場合、そうじゃないんですね。

少なくとも、ここ数年、東関東と西関東の職場一般(大学も)は、コンクールが同日に行なわれるんですね。

そうなると、どうしても東関東に行ってしまう。

だって、東関東の方が圧倒的に面白いんですよ、これが。

 

西関東には“二強”がいます。

アンサンブルリベルテと川越奏和。

私の独断的な考え方かもしれませんが、もう、既に埼玉県大会の段階で「ああ、全国行くな」って思える2団体です。

もちろん、他のグループも素晴らしい演奏をしてくれるのですが、如何せん差が…。

そこへ行くと東関東は絶対的に安定したバンドがない。(以前は、土気シビックと言う大きな存在がありました。)

レベルが低いわけではないんです。

いや、むしろ全国トップレベルでしょう。

そして、全国大会を狙えるレベルのバンドがゴロゴロいる。

過去10年を振り返ってみても、驚いたことに代表3団体(平成20年以前は“職場の部”と分離していたので、2団体)が2年連続して、同じ“メンバー”になったことがないのです。

もちろん、「3出(さんしゅつ。3年連続全国大会に出場すると次の年はコンクールに参加できないと言う大会規定。現在は廃止。)」の影響はあるでしょうが…。

いかに激戦区か、わかろうと言うものです。

 

さて、そんな第21回東関東吹奏楽コンクール、職場一般・大学の部に“浦和のオヤジ”は、今年もやってまいりました!

2015年9月20日、日曜日。(同日には新潟で西関東大会やってる…、行きたかったなぁ…。)

場所は、京浜急行汐入駅前の「よこすか芸術劇場」。

初めて行くホールです。

HPには、「国内最大級の本格派オペラハウス仕様」って書いてありますね。

詳しいことは、略しますが、スライド式のステージであったり、あらゆる舞台芸術に対応が出来る様ですね。

そして、何よりも特徴的なのが、客席。

オペラ座のように配置が馬蹄形の客席は、なかなかカッコイイ。

私が行ったことのあるホールで言えば(強いて言えばですが)、東京文化会館に似ているような…。

さあ、本題に入りましょう。

いつも“面白い”東関東大会の職場一般ですが、今年は近年になく“もの凄いこと”になったのでした…。

 

【2015年度全日本吹奏楽コンクール課題曲】

Ⅰ.石原 勇太郎/天空の旅-吹奏楽のための譚詩-(第25回朝日作曲賞受賞作品)

        Yutarou Ishihara/Pilgrimage – Ballade for wind orchestra

Ⅱ.佐藤 邦宏/マーチ「春の道を歩こう」

       Kunihiro Sato/Walk down the Spring Path March

Ⅲ.西村 朗/秘儀Ⅲ-旋回舞踊のためのヘテロフォニー-

       Akira Nishimura/HigiⅢ – Heterophony for Whirl Dance

Ⅳ.田坂 直樹/マーチ「プロヴァンスの風」

       Naoki Tasaka/March “Wind of Provence”

Ⅴ.朴 守賢/暁闇の宴〔※高校・大学・職場一般のみ〕

  (第7回全日本吹奏楽連盟作曲コンクール第1位作品)

       Park, Soo-Hyun/The Scintillating Dawn

 

【職場・一般の部】

 

1.千葉県代表 習志野ウィンド・オーケストラ (指揮)須藤 卓眞

 [課]Ⅱ[自]交響詩「ローマの祭り」より Ⅰ,Ⅲ,Ⅳ(レスピーギ/森田 一浩 編曲)

さあ、今年も東関東大会が始まりました。

“満喫”させて頂きます!

トップバッターは、習志野ウィンド・オーケストラ。

指揮は、松戸四中の指導者としても知られる須藤卓眞先生。

課題曲は人気のⅡですね。

朝イチなのに音がよくなってますねぇ。

ホールがよく響くのか、このバンドが“鳴らしている”のか、この時点では私には判断できませんでした…。(後で考えると、“どっちも”だったようです。)

重量感のある演奏に聴こえて良かったと思ったのですが、ホールの音に私が慣れてないせいか、ダイナミクスのメリハリに多少欠けるかなと感じました。

自由曲は、「ローマの祭り」。

最初の“チルチェンセス”のトランペットのファンファーレ、とてもカッコ良かった。(3人の方が立って演奏。)

これも、課題曲同様、とても迫力のある演奏でした。

良い意味で派手でこの曲の特徴を如何なく発揮しているように思いました。

しかしながら、このペースの音量で聴き続けると疲れてしまいそうな…。

でも、演奏している方は気持ち良いだろうなぁ…。

[銀賞]

 

2.栃木県代表 宇都宮音楽集団 (指揮)鈴木 太志

 [課]Ⅴ[自]バミューダ・トライアングル(ピナ)

課題曲Ⅴは、私がこの曲に持っているイメージと違って、良く言えば“上品”に聴こえる演奏だったような。

川越奏和の課題曲Ⅴのように、これでもかとたたみ掛けるような“音のかたまり”とは違い、リズムを正確に刻んでいるだけのように感じました。

これもアリなのかも知れませんが、聴く人間にドーンと衝撃を与えるような方が個人的に好きですね。

自由曲は、私は初めて聴く曲でした…。

きれいにまとまっていた感じは強くしたのですが、印象に残り辛かったかも。

“好演”ではありましたが、いつの間にか終わってしまったように感じました…。

[銅賞]

 

3.神奈川県代表 相模原市民吹奏楽団 (指揮)福本 信太郎

 [課]Ⅲ[自]Mont Fuji(モン・フジ)-富士山・北斎の版画に触発されて-(真島 俊夫)

いつもながら、相模原市民の赤いブレザーは非常にインパクトがあります。

全国大会の常連であった相模原市民も昨年、一昨年と出場の機会を逃している。

福本先生ファンの私としても全国大会で復活の姿を見てみたいものです。

課題曲は、西村先生の名曲、Ⅲですね。

全体的にこの曲の“神秘性”がよく表現されていて雰囲気が素晴らしかった。

ただ、(A)でインパクトがイマイチだったのとaccel.が掛かった全体の合奏の部分で一瞬、混沌とした感じがしたような…。

それにしても、福本先生の指揮は絵になります。

自由曲は、真島俊夫先生の曲。

曲名から言って、浮世絵の世界を描いているようですが、極端に“和”を前面に出している感じではなかった?

もちろん、“和”のテイストもふんだんに盛り込まれているのですが、私の独断の印象からすると、“日本通の外国人から見た浮世絵の世界”のように思いました…。

さすがに相模原市民、日本人の郷愁を誘う絵画的な世界をまるで色が見えるような感じで表現していたのは、さすがだと感じました。

サウンドも厚いし、ある意味“芸術的”な演奏でありました。

結果は、残念でしたが、一層の奮起を期待します。

[金賞]

 

4.茨城県代表 関城吹奏楽団 (指揮)豊田 晃生

 [課]Ⅱ[自]ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ(天野 正道)

何故だか、わからないけれど私個人的に関城のサウンドって好きなんですよね。

ですから、毎年、東関東大会で聴けるのを楽しみにしています。

課題曲はⅡですね。

元気ハツラツなのだけれど、サウンドのバランスがとても心地よい。

コンサートマーチらしく、さわやかにソフトにまとめ上げていて、非常に好感が持てました。

たしか、Tubaが5、弦バス1であったような。

この低音部がよく響いていて、曲がより一層、軽やかに聴こえました。

自由曲は天野先生の人気の曲です。

出だし、とても色っぽかった。

ソロパートの技量も高く、サウンドもまとまりがあって、ステキでした。

最後も良く盛り上がったように思います。

ただ、何か他の団体と“差別化”出来る表現があったら、良かったですね…。

[銀賞]

 

5.茨城県代表 ひたちなか交響吹奏楽団 (指揮)武藤 隆行

 [課]Ⅱ[自]アブサロン(アッペルモント)

課題曲。

出だし、少し重量感があり過ぎだったでしょうか?

勇ましい感じの“行進曲”に仕上がっていました。

これはこれで、アリなのかもと思った次第。

個人的に苦手ですが…。

自由曲は、最近コンクールで聴きましたね。

えっと、どこだっけ?

そうそう、東京都大学吹奏楽コンクールで東洋大学の演奏を聴いたのでした。

さすがに支部大会まで出場している団体だけあって、まとまりを感じました。

好演です。

ただ、課題曲と違って、tuttiの時のサウンドに違和感を持ったのは、何故だったのでしょうか?(サウンドが融け合っていないと言うか…。)

[銀賞]

 

6.千葉県代表 船橋市交響吹奏楽団 (指揮)牛渡 克之

 [課]Ⅱ[自]「エニグマ変奏曲」より(エルガー/杉本 幸一 編曲)

課題曲の出だし、ちょっと違和感。(合わなかったような…)

一部でアクセントの付く音符がテヌートっぽく聴こえた?

でも、これがために、よりソフトに仕上がっていたように思います。

自由曲は私の好きな「エニグマ」ですね。

出だしの“主題”のメロディ、もう少しデリケートに入ると好みでした。

“ニムロッド”に入る時、誰かがリードミスをしたでしょうか?(間違っていたら、ゴメンナサイ。)

聴かせどころの“変奏”なのにチョット残念。(そのあとは、美しかったですよ。)

“終曲”は荘厳な雰囲気が出ていて、とても良かった。

ただ、曲全体を通して見ると“こじんまり”した印象が強かったように思います。

[銅賞]

 

7.栃木県代表 作新楽音会 (指揮)大貫 茜

 [課]Ⅳ[自]虹は碧き山々へ(真島 俊夫)

課題曲の出だしのトランペットやホルンが奏でるメロディのリズム、もっと滑舌よく、華やかに演奏出来れば良かったですね。

ただ、その後は、軽快でエキゾチックな感じがよく出ていました。

ただ、Ⅱとは違い、Ⅳはもう少し、情熱的な感じが個人的に好きかなぁ。

自由曲は、真島先生の曲ですね。

先生の作品は、美しいメロディ、それを歌いきることが不可欠ですね。

そう言った意味で、ゆったりとしたテンポのところを中心に確実に観客に響いていたように思いました。

しかし、時折、“音楽の流れ”が途切れるように感じることがあり、そこが残念に感じました。

[銅賞]

 

8.神奈川県代表 グラールウインドオーケストラ (指揮)天野 正道

 [課]Ⅲ[自]シネマ・シメリック(天野 正道)

さあ、グラールの登場です。

昨年は、3年振りの全国大会出場、天野正道先生の「トラジニ・ソナタ・ナ・ジュレバカ・イ・プォーヴェ」の演奏はステキでした。(銀賞でしたが…。)

今年も連続出場をして勢いをつけてほしいものです。

おや、自由曲の作曲者でもある天野正道先生が指揮をされるようですね。

本来は佐川聖二先生が指揮をされるのでしょうが、おそらく同日の西関東大会、大学の部の文教大学を指揮されるために新潟に行かれていたのでしょう。

課題曲の(A)からのメロディ、力強くて、good!

曲名に沿った“世界”を作り出していたように思います。

ただし、チャイニーズゴングは、もう少し迫力があった方がよかったかも。

さて、自由曲。

本来は、井澗昌樹氏の委嘱作品をコンクール自由曲にする予定だったらしいのですが、“諸般の事情”より断念、急遽、今年の文教大学の自由曲、「シネマ・シメリック」が自由曲になりました。(「シネマ・シメリック」は、天野先生に文教大学が委嘱した作品。)

『架空の映画の為のサウンドトラック』というコンセプトのもと作られたこの曲をグラールは感情豊かに表現しておりました。

定期演奏会の時も聴かせて頂いているのですが、その時より、整理された演奏でした。

特に物悲しい雰囲気のあるメロディが聴く人の心に迫って来るような感じがしました。

ただ、少し慎重になりすぎた部分もあったように思いました…。

来年に期待します。

蛇足ですが、成績発表の時、グラールが「銀賞」とコールされた時、「エーッ」という地を這うような声が会場中から発せられたのが印象的でした。

[銀賞]

 

9.神奈川県代表 ユース・ウィンド・オーケストラ (指揮)高田 亮

 [課]Ⅴ[自]「プラハのための音楽1968」より Ⅰ,Ⅲ,Ⅳ(フーサ)

これも東関東大会“常連”のユース・ウィンド。

毎年、指揮の高田亮氏の派手な衣装に目が行きますが実力は相当あるバンドだと思います。(高田氏と言えば、少し前のシエナの定期演奏会で打楽器奏者として演奏に参加されていたのを拝見しました。)

豪快で“パワー”の印象が強いユース・ウィンドですが今年は違った一面をみせてくれたように思います…。

今年の東関東での高田氏の衣装は、全身黒づくめ。

エナメルのような感じで生地が光っているコートを着用されています。

課題曲はⅤ。

音量は出ているのですが、何かいつもと違う。

うるさく感じないし、“静寂感”のあるフレーズをうまく利用している。

今まで“良い”と思った課題曲Ⅴとは表現の仕方が違うように思いましたが、ある意味、新鮮さを感じる演奏でした。

プログラムを見て、ユース・ウィンドの自由曲が「プラハ」だと知った瞬間、“こりゃ大変だぞ”と思ったのも事実。

あのパワーでゴチャゴチャになってしまうのではなかろうか…、こんな思いが頭を支配します。

でも、良い意味で期待を裏切ってくれました。

まず、イチバン最初に言いたいのは、打楽器の皆さんの素晴らしいこと!

カッコ良すぎます。

標題音楽らしく、場面を想像させる雰囲気を作りながらも実に正確なアンサンブル、見事でした。

とても、ドラマチックな演奏!

演奏が終わった瞬間、「こりゃ、全国狙えるかも。」

結果は、ご覧のとおり。

ある意味、“納得”でした。

[金賞・代表]

 

10.千葉県代表 習志野シンフォニックブラス (指揮)須藤 信也

 [課]Ⅱ[自]太陽への讃歌-大地の鼓動(八木澤 教司)

ユース・ウィンドの興奮も冷めやらぬまま、次の団体です。

課題曲はⅡ。

軽くもなく、重くもなく、適度に心地よさを感じさせる演奏でした。

リズムのハギレも良いし、課題曲の演奏としては見本的。

ただ、少しだけ楽器ごとの音色が揃っていないのか、サウンドがクリアに聴こえないような気がしたのが残念でした。

自由曲は、テンポよく八木澤先生の曲をまとめていたように思いました。

躍動感があふれていてステキです。

途中、スキャットが入っていましたが、これがまた美しい歌声でした。

全体的に華やかな感じが出ていて実にバランスの良いパフォーマンスだったと思いました。

[銀賞]

 

11.茨城県代表 日立市民吹奏楽団 (指揮)伊勢 友一

 [課]Ⅱ[自]スクーティン・オン・ハードロック~3つの即興的ジャズ風舞曲(ホルジンガー)

課題曲は、出だしから音を出しすぎでしょうか?

そのせいか、少し重く感じました。

(E)からのミュートを使ったトランペットがもう少しハギレが良かったら、より効果的でした。

全体的には無難にまとめてあったようにも思いましたが、強弱のメリハリがあるとなお、良くなると思いました。

自由曲の曲名は、すごくかっこいいですね。

とても良い演奏でした。

ただ、何かしらの雰囲気は出ているものの、“曲名”の割にはキレイすぎるかな?

私は、“ロック”とか“ジャズ”とかは門外漢なのですが、泥臭さって必要じゃないかと言う“印象”を持っています。

あまり、やりすぎるのもコンクールという場では「いかがなものか」とは思いますが…。

ただ、音はバンバン出ていました。

何れにせよ、評価が難しい演奏?

[銅賞]

 

12.神奈川県代表 厚木シビックウインドシンフォニー (指揮)萩原 通友

 [課]Ⅱ[自]ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ(天野 正道)

課題曲のイチバン最初、メロディの4分音符3つ、何故だか分からないのですが、とても重厚に聴こえました。

と言って、重く感じない。

とても自然に聴こえてきたのです。

曲を通してダイナミクスの整理された完成度の高い演奏だと思いました。

軽やかながら、力強さも感じ好感が持てました。

自由曲は、関城に続いて、この日、2回目の「ラ・フォルム・ドゥ・シャク・アムール・ションジュ・コム・ル・カレイドスコープ」(それにしても、なげ~曲名。)です。

出だし、もっと艶っぽく入って欲しかったかな。

少し、無造作に始まったように思いました。

関城と比較すると荒々しい感じもします。(これも“アリ”です。)

アンサンブルは見事なもので、聴きごたえのある演奏。

ただ、若干、元気良すぎるかな。

ある意味、若々しい演奏でした。

[銀賞]

 

13.千葉県代表 アンサンブル・市川 (指揮)中島 正考

 [課]Ⅱ[自]バレエ音楽「青銅の騎士」より(グリエール/淀 彰 編曲)

                元老院広場にて,エフゲニーとパラーシャ,踊りの場面,偉大なる都市への賛歌

課題曲は、とてもソフトな演奏でした。

サウンドがまろやかで心地よく、とても聴きやすかった。

よこすか芸術劇場の音響をうまく利用した好演だと思いました。

自由曲は、バレエ音楽です。

堂々とした感じの演奏に躍動感がマッチして、格調高さを出していたと思います。

反面、同じ雰囲気の中で曲が進み、少し単調にも感じました。

もう少し、客席に迫る“音圧”があったら、より良く聴けたと思います。

個人的に私の好みのサウンドを持つバンドでした。

[銀賞]

 

14.茨城県代表 水戸交響吹奏楽団 (指揮)萩原 健

 [課]Ⅴ[自]ラッキードラゴン~第五福竜丸の記憶~(福島 弘和)

課題曲は私が苦手なⅤ。(曲が嫌いというわけではなく、演奏の評価を聴かれて、何と答えて良いのかわからないという意味で。)

例えば、川越奏和のような“音圧のインパクト”のようなものがあれば、私のような素人も分かりやすいのですが、ないと“ただただ”単調に聴こえてしまう…。

曲のタテヨコ、キチンと揃っていてセンス良く聴こえるのだけれど、私には判断するのが難しい演奏だと思いました。(迫力は、ありました!)

自由曲は、「ラッキードラゴン」。

私も大好きな曲です。

正確で“音楽の流れ”を感じる演奏でした。

物語のある楽曲の特徴をよく掴んでいます…。

ただ、贅沢を言えば、出だしをもっとデリケートに入って欲しかった。

なので、悲劇性を持ったメインのメロディの“物悲しい感じ”が薄れたような…。

それと曲の終盤、クライマックスで少し、“音量過多”に思えました。

[銀賞]

 

15.神奈川県代表 Pastorale Symphonic Band (指揮)瀬尾 宗利

 [課]Ⅳ[自]カントゥス・ソナーレ(鈴木 英史)

いよいよ、パストラーレの登場です。

今年の定期演奏会に行かせて頂いて、好感触を持ったので期待大です。

ナンダカンダ言って、私、このバンド好きなんだと思います…。

一昨年の全国大会、福岡サンパレスホールで聴いた「チンギス・ハーン」は、感動的でした。

縁もゆかりもないバンドですが札幌で演奏を聴きたいかなぁ…。

課題曲はエキゾチックな感じのするⅣですね。

サウンドが軽やかでとてもステキです。

そのくせ、重量感もあって、この相反する感覚が絶妙に混ざり合って、“華やかさ”という演出を作り出している。

この曲の本質をよくとらえた演奏でした。

自由曲は鈴木英史先生の「カントゥス・ソナーレ」。

音をよく響かせているので、空間的広がりを感じます。(ベルトーンのようなところ)

そして、それによって、より澄み切ったサウンドに聴こえます。(何と美しい)

ソロパートの表現力も素晴らしく、バンドの技術の高さを感じさせられます。

パストラーレを聴き終った時点で、ここまでの15団体の中でナンバーワンの演奏だと思いました。

そして、全ての職場一般の演奏を聴き終った後でも個人的にイチバン好きな演奏でした。

それにしても、瀬尾先生の情熱的な指揮は素晴らしい。

結果は残念でしたが、これからも全国大会を目指す演奏をして頂きたいと思います。

[金賞]

 

16.栃木県代表 矢板ウインドオーケストラ (指揮)黒尾 実

 [課]Ⅳ[自]スピリチュアル・プラネット(鋒山 亘)

課題曲は、パストラーレと同じⅣですね。

どうしても、比較してしまう…。

勇ましい出だしは、楽器間のバランスが少し悪いように感じました。

少し、金管楽器群が強過ぎでしょうか?

華やかさは、十分出ていて楽しく聴けました。

トリオからのピッコロソロは、少し全体とかみ合っていなかったような…。(微妙なテンポのズレの問題でしょうか?)

躍動感とは違う、激しく動き回るような印象を持った演奏でした。

自由曲は、多分、初めて聴かせて頂く曲だと思います。

曲名からも想像できるように原初的な世界を感じさせる楽曲で多分に土俗的な雰囲気を持っていますね。

良い曲だと思いました。

迫力もあって、勢いもあって、独特の世界観も表わしていて、優れた演奏だと感じました。

ただ、時折、細かいミスがあったのが残念でしたが。

[銀賞]

 

17.栃木県代表 真岡ウインドオーケストラ (指揮)辻田 雅史

 [課]Ⅲ[自]ミラージュ サンク(真島 俊夫)

課題曲の(A)からの“ズレ”のメロディ、少し違和感を覚えました。

原因は個人個人のサウンドが違うため、同じフレーズを奏でていても融け合わないのか、単純に音量が違うのか…。

よく、わかりません。

ただ、それを引きずることなく、その後は、無難なアンサンブルを披露して頂きました。

チャイニーズゴング、アクセントが効いていて素晴らしかった。

イチバン最後の打楽器の音、もう少し、迫力があれば良かったかも。

自由曲は、真島先生の作品です。

私も聴いたことがあった曲かなぁ?(“響宴”だったろうか?ちょっと、思い出せません。)

力強く、迫力もあって、しかも軽快さも兼ね備えているという“スグレモノ”の演奏なのだけれど、何かが足りないような…。

だから、強いインパクトを感じなかった…。

[銅賞]

 

18.神奈川県代表 横浜ブラスオルケスター (指揮)近藤 久敦

 [課]Ⅴ[自]「幻想交響曲 作品14」より 第5楽章 ワルプルギスの夜の夢(ベルリオーズ/近藤 久敦 編曲)

さて、ここからの3団体は全国大会出場経験のある実力団体ばかりです。

そして、その名に違わぬ演奏してくれたのでした。

まずは、もはや“全国区”の横浜ブラスオルケスターから。

昨年の自由曲、イベールの「祝典序曲」は、名演でした。

今年も期待しましょう。

課題曲は、Ⅴ。

さすが、横浜ブラス。

響きが素晴らしい!

各楽器の音がよく絡み合っていて、“這って行くような”浸透力を持つサウンドです。

“音圧”を感じます。

それなのに微妙な“暁闇(あかつきやみ)”の色合いを見事に表現していました…。

自由曲は、「幻想交響曲」ですか。

個人的に聴き慣れた曲なので、出来れば新しい曲で勝負してほしかったかも…。

でも、そんな考えは吹き飛んでしまうくらい迫力のある演奏でした。

とにかく、表現力が素晴らしい!

「幻想交響曲をやっているぞ」という“空間・雰囲気”をホールの中に作り出し、且つミスのない演奏。

これにつきます。

ただ、多少、スマートすぎるところもあったでしょうか?(個人的好みです。)

この日、“全国大会”に最も近い演奏だと思いました…。

[金賞・代表]

 

19.茨城県代表 古河シティウインドオーケストラ (指揮)原 進

 [課]Ⅱ[自]交響詩「ローマの祭り」より Ⅰ,Ⅱ,Ⅳ(レスピーギ/佐藤 正人 編曲)

さて、次も楽しみな古河シティウインドオーケストラです。

課題曲は一番人気のⅡですね。

いやぁ、金管楽器の音色が明るいこと!

キラキラしています。

こんな感じだと課題曲Ⅳを聴いてみたかったかも。

でも、自由曲を考えると印象がカブっちゃいますかね?

さすが、実力のあるバンドです。

軽やかにまとめ上げました。

自由曲、これも聴き慣れた「ローマの祭り」。

見事な演奏でした。

低音が充実しているのか、レスピーギの楽曲の持つ“奥行き”を垣間見たような気がしました。

自由曲としての選択がバッチリです。

演奏が終わった瞬間、「これは、どこの団体が“代表”になるのか、ますます、わからなくなってきた」と思わせる演奏でした!

[金賞]

 

20.千葉県代表 光ウィンドオーケストラ (指揮)佐藤 博

 [課]Ⅴ[自]交響曲第2番「キリストの受難」より(フェラン)

職場一般の部の“トリ”は、昨年も代表であった光ウィンドオーケストラ。

昨年、私は全国大会には行けませんでしたが、この光ウィンドを東関東大会で聴いた時は、全国でも「金賞」を取れるのではないかと思っていましたが…。(後でCDにて鑑賞させて頂くと…。後半で、アンサンブルの乱れが…。だから、「銀賞」でしたか。)

指揮は、幕張総合高校の佐藤博先生です。

再三、申し上げておりますとおり、私のような素人には難しい課題曲Ⅴから。

ただ、譜面に書いてあるように演奏しても、音の羅列になってしまうだけ。

いかに観客に“音楽”として伝えるかがカギになります。(特に私のような“素人”に)

そう言った面では、的を射た演奏だったと思います。

一曲を通して、流れを感じさせ、“音楽”を途切れさせない。

いかに“休符”を有効に使っているかと言う事でしょう。

ただ、個人的な好みとしては、もう少し“激しさ”があったら、と思いました。

自由曲は、聴きごたえのある演奏でした。

見事に標題音楽を“演出”している…。

ドラマチックでやわらかいサウンドは、観客を魅了するのに余りあるものでした…。

[金賞・代表]

 

職場一般の20団体が終わりました。

“熱演”の連続で些か疲れましたが…。

しかし、レベルの高さには驚きましたね。

代表になった団体は、全国大会での一層の活躍を期待します。

それにしても、「よこすか芸術劇場」は、よく“響く”。

いいホールです。

 

【大学の部】

 

1.茨城県代表 茨城大学吹奏楽団 (指揮)野村 颯希

 [課]Ⅰ[自]アルプスの詩(チェザリーニ)

課題曲は、この日、全部門を通じて唯一のⅠ。

作曲者の楽曲解説からは、哲学的なものを意図しているように見受けられます。

同時に細かくはない、ゆったりとした“物語性”が垣間見える曲です。

ですから、空間的な広がりをいかに表現して行くかが、この曲を際立たせるポイントでしょうか?

さわやかで、ハツラツとした演奏でした。

ただ、少し“こじんまり”してしまったかも…。

色々な意味で“若い”演奏だと感じました。

自由曲も課題曲と同様、アルプスという空間を舞台とする“スケール感”が重要な曲ですね。

でも、それを表現するにはサウンドの重厚さに欠ける気がしました。

清浄な雰囲気は、とても感じられましたが。

[銅賞]

 

2.茨城県代表 筑波大学吹奏楽団 (指揮)鈴木 竜哉

 [課]Ⅲ[自]吹奏楽のための「交響的典礼」(伊藤 康英)

少し、人数が少なめ何ですかね。(プログラムには、“42名”と書いてある)

なのに演奏が始まってみると、ケッコウ、パワーがありましたね。

課題曲はⅢ。

硬質なサウンドですが、これが功を奏して、この曲によく合う。

無骨な感じが好感触です。

ただ、少し細かいニュアンスのようなものを整理すると、もっと良くなったかもしれませんね。

自由曲は、スピード感を思わせる部分がとても良かった。

たたみかけるようなフレーズはステキです。

ソロパートには巧拙に多少、差が出ていたように思いました。

全体的に聴きやすい演奏でしたが、もう少し、色々な意味でインパクトを感じられたらなと感じました。

[銅賞]

 

3.千葉県代表 千葉大学吹奏楽団 (指揮)山本 裕介

 [課]Ⅱ[自]吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」より Ⅰ,Ⅳ(高 昌帥)

課題曲Ⅱは、軽快なコンサートマーチだと思うのですが、このバンドの演奏は少し、重量感を覚えました。

おそらく、硬質なサウンドのせいだと思います。

それと金管楽器が音量の大きな場面になるとバリバリ、音が割れているように聴こえたのが気になりました。

秩序だったノーブルな雰囲気を持つ演奏だっただけに、そこが残念でした。

自由曲は、高昌帥先生の“名曲”です。

私、この曲、大好きなんです。

吹奏楽の曲の中でも格調の高さを感じさせる曲ですね。

低音部がしっかりしているので、サウンドに厚みを感じます。

よく合奏に統制がとれている“好演”だと思いました。

多少、オーバーヒート気味ではありましたが…。

[銀賞]

 

4.栃木県代表 白鷗大学ウインドオーケストラ (指揮)堂阪 知之

 [課]Ⅳ[自]恋す蝶 -原典版-(井 昌樹)

[出場辞退]

 

5.神奈川県代表 神奈川大学吹奏楽部 (指揮)小澤 俊朗

 [課]Ⅴ[自]楽劇「サロメ」より 7つのヴェールの踊り(リヒャルト・シュトラウス/小澤 俊朗 編曲)

続いては、“王者”神奈川大学の登場です。

私の個人的な意見ですがアマチュアの大学吹奏楽団の中では間違いなく全国トップだと思う団体です…。

課題曲は、いつもの年と同じⅤです。

他の団体と違って、自分たちに与えられた演奏時間を“支配”している気がします。

音が出ている時も、出ていない時も、意味付けのできる…、そんな演奏でした。

やっぱり、サウンドが違いますね。

自由曲の「7つのヴェールの踊り」、これは一時期頻繁にコンクールで聴きました。

個人的に新鮮味には欠けますが、神奈川大学には期待します。

ハープが2台もありますね。

多くは語りません…、この曲のテーマの如く“エロティシズムの極致”を感じさせる音楽でした…。(蛇足ながら、究極にかいつまんで言うならば、「7つのヴェールの踊り」とは“ストリップ”の曲です…。)

完璧です。

[金賞・代表]

 

6.神奈川県代表 北里大学北里会文化会吹奏楽団 (指揮)荒木 玉緒

 [課]Ⅲ[自]恋す蝶 -大編成版-(井澗 昌樹)

いよいよ、全部門通じて、最後の団体です。

課題曲はⅢですか。

ひとつひとつの音を長めに表現しているのかなぁ。

独特のカンジですね。

話題のティパニの3連譜、とっても力強くて良かったです。

ただ、チャイニーズゴングは、もう少し、音の低いタイプの方が私の好みでしょうか?

一曲を通しては、まとまりのある演奏だったと思います。

自由曲は、井澗氏独特のメロディアスな曲調をわかりやすく、表現していると思いました。

起伏に満ちた演奏は、この曲の魅力を上手に引き出していたのでは、ないでしょうか?

[銀賞]

 

全団体の演奏が終わりました。

熱演の連続で疲れました…。

大学の部は、神奈川大学が“別格”って感じでしょうか?

しかし、職場一般は本当に混沌としていましたね。

だから、東関東大会は、ヤメラレナインデスヨ!

ただ、惜しむらくは、この激闘を繰り広げられた代表団体の皆さんの雄姿を札幌で見られない事です…。(チケットが入手出来ませんでした…。)

まあ、こういう事もあるでしょう。

何れにせよ、代表団体の皆さんの全国大会でのご活躍、お祈り申し上げます。

 

なお、このブログに載せられている文言は、“浦和河童”の個人的感想です。

決して、悪意を持って書かれているものではありません。

ただ、もし、ご不快に思われる方がいらっしゃいましたら、オヤジの戯れ事と思い、ご容赦頂ければ幸いです。


東京佼成ウインドオーケストラ 第125回 定期演奏会

2015-09-15 04:14:51 | 吹奏楽

2015年9月5日、土曜日。

9月に入って、最初の演奏会です。

8月は、コンクールしか聴いていませんので、ある意味、“耳をリセット”したい。

そう言う意味で最適なのはプロの優れた演奏を聴かせて頂くのがイチバンです。

今回のTKWOの第125回定期演奏会に伺わせて頂いた理由は、そんなところでしょうか?

 

この日の演奏会は、2010年から毎年、秋に開催されている“ブラスウィーク”の一環のコンサートです。(“ブラスウィーク”とは東京芸術劇場が主宰し、ある特定の時期に固まってプロの演奏家による吹奏楽や管楽アンサンブルの演奏会が開かれる催しです。今年は、この日の演奏会と9月26日の東京吹奏楽団が対象になっているようですね。)

東京芸術劇場という素晴らしい“器”で、日本トップクラスの吹奏楽の演奏を聴けるのは素晴らしいことだと思いますね。

 

もう何度、訪れたかわからない東京芸術劇場。

それでも毎回、新鮮な気持ちになれますね、素晴らしい演奏を聴くことによって…。

いつものように一階のロビーから長い長いエスカレーターに乗ってたどり着くのは、“コンサートホール”の入口です。

そして、ここからは、まるで現世と隔絶された“夢の世界”。

音楽の魔法が飛び交う素敵な空間です…。

 

[演奏]東京佼成ウインドオーケストラ Tokyo Kosei Wind Orchestra

[指揮]本名 徹次 Tetsuji Honna

[マリンバ独奏]大茂 絵里子 Eriko Daimo

 

「ロメオとジュリエット」組曲(セルゲイ・プロコフィエフ/淀 彰 編)

“Romeo and Juliet”Suite/Sergei Prokofiev:arr. Akira Yodo

「モンタギュー家とキャピュレット家」The Montagues and Capulets

「仮面」Masks

「ジュリエットの墓の前のロメオ」Romeo at Juliet’s Grave

「アンティーユ諸島から来た娘たちの踊り」Dance of the Maids from the Antilles

「タイボルトの死」The Death of Tybalt

 

「中国の不思議な役人」組曲(ベラ・バルトーク/仲田 守 編)

“The Miraculous Mandarin”Suite/Bela Bartok:arr. Mamoru Nakata

 

【休憩】

 

マリンバとウィンド・アンサンブルのための

「ラウダ・コンチェルタータ」(伊福部 昭/和田 薫 編)

“Lauda Concertata”for Marimba and Wind Ensemble/Akira Ifukube:arr. Kaoru Wada

 

エローラ交響曲(芥川 也寸志/和田 薫 編)

Ellora Symphony/Yasushi Akutagawa:arr. Kaoru Wada

 

今回のプログラムはシブいです。

前半のプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」、バルトーク「中国の不思議な役人」は、吹奏楽でも頻繁に演奏される曲ですが、プロの吹奏楽団がほぼコンクールに出場できる人数(多分、60人くらいで演奏してました)でどのような迫力を持って演奏して頂けるのかというところに興味津々です。

また、後半は吹奏楽では聴けない曲ばかりです。

日本の生んだ偉大な作曲家、伊福部昭、芥川也寸志両先生のプログラムは、プロの吹奏楽団の演奏会ならではのことであり、非常に貴重ですね。

 

今回の演奏会の指揮者は、ベトナム国立交響楽団の音楽監督である本名徹次氏。

さまざまな受賞歴や国内外の多くのオーケストラとの共演は、敢えてここには記しませんが吹奏楽と言うジャンルでどのような演奏を作り上げて下さるのか、楽しみですね。

同時に本名先生は、現代音楽の指揮に意欲的であるとか。

そのレパートリーは日本人作曲家にまで及び、そう言った意味でこの日の伊福部、芥川作品の演奏は注目すべきところでありました。

そして、伊福部先生の作品でマリンバのソリストとして登場した大茂絵里子氏。

まだ、30代前半という若さながら、凄まじい活躍ぶりです。

ベルギー国際マリンバコンクール優勝などの多くの国際コンクールでの最高位賞の受賞歴を持ち、現在は、ニューヨークを拠点として世界を舞台に演奏者として、指導者として活躍されている方です。

今回は、伊福部先生という民族音楽的な領域を持つ作曲家との“邂逅”にどのような“化学変化”を起こして下さるのか…。

 

いろんな意味で興味深い演奏会です。

突然ですが、ここでエピソードをひとつ。

私は、この日の座席は3階席でした。

コンサートホールのエントランスのところで芸劇の係員の方に「3階席のお客様はエレベーターをご利用下さい」と案内されました。

そこで、エレベーターの前へ。

しばし待っておりますと上階からエレベーターが到着。

扉が開いた瞬間、エレベーターの中から出てきたのが、大井剛史氏。(だと、思います。間違っていたらゴメンナサイ。)

言わずと知れたTKWOの正指揮者です。

私は、大井先生の指揮される時のTKWOの演奏がとても好きなので、とても感激致しました。(一瞬の出来事でしたが…。)

ご自分の出番でない時も会場にはいらっしゃるのでしょうか?

 

演奏会が始まりました。

まずは、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」。

吹奏楽では、1980年代、90年代を中心によく流行った曲です。

データベースで調べてみました。

吹奏楽コンクール全国大会に限ってみますと自由曲として演奏されたのが37回。

賞の内訳は、金賞13、銀賞12、銅賞12と、ほぼ均等な結果です。

逆に考えてみますと自力のあるバンドが演奏すれば、好成績を獲得しやすい曲と言えるのではないでしょうか?(ちなみに部門別の内訳は、中学11、高校16、大学6、職場一般4)

TKWOの演奏は、さすがにプロだけあって、月並な言い方ですが素晴らしいものでした。

当然、オーケストラが原曲ですので比較してしまうのですが、何か“管弦楽”とは違う、新しいジャンルの音楽のような新鮮さを感じる演奏でした。

空間的な広がりを感じますね。

 

続いては、これもコンクール自由曲の大人気、「中国の不思議な役人」。

先程と同じようにコンクール全国大会で比較してみます。

演奏した団体が45、そのうち金賞を獲得したのが22団体。

比較的“金賞”を取りやすい曲のようです。

でもね、個人的にこの曲がコンクールの場で演奏されることに違和感があります。

確かに重厚感がありながらも華麗なるオーケストレーションは、聴く者を引き込む素晴らしいし、カッコイイ。

ですが、ザックリと言ってしまえば、この曲、「売春宿」の話です。

しかも「強盗」や「殺人」とかも絡んでくる。

作曲された当時も内容が“非道徳的”ということで、物議を醸し、上演中止になったりしている曲なのです。

それを大学、職場一般の皆さんが演奏するならまだしも、中学生や高校生がするのは如何なものか?

何もそんなに堅苦しく考えなくてもとおっしゃる方もいるかも知れませんが、これには理由がある。

私の若い頃と違って、今の中高生の皆さんの演奏技術の進歩には驚くべきものがあります。

単純に正確に演奏が出来るという領域を越えて、“表現力”を競う次元に入っているのです。(そうじゃないと今は、コンクールで“戦えない”?)

そうなると、曲に踏み込んでいく必要性が否が応でも高くなる。

楽曲の作曲された背景だとか、標題音楽だったら、それを理解し表現しなければならない…。

他面、教育的見地から勘案すると果たして「売春宿の話」は適切なのかどうか?

そう思ってしまう“浦和のオヤジ”でした…。

蛇足ながら実際、生演奏、CD等、この曲の多くの演奏を聴かせて頂きました。

しかし、高校では“上手な”演奏は、たくさんありましたが、“スゴい”演奏に出会ったことがないのも事実です。

高校生による「役人」の演奏には“限界”があるんですよ、きっと。

オペラやバレエ音楽が得意な市立習志野や埼玉栄がこの曲を自由曲として選んでいないのが何よりの証拠では?

この2校は、知っているんですね、完璧な演奏が出来ないって。

わかっているんです…。

どう考えたって、昨年のアンサンブルリベルテの「役人」のような色気のある音は出せませんもの、高校生には。

余計なことを長々と書いてしまいました…。

申し訳ありません。(謝るんだったたら書くなって話ですよね…。)

 

曲の題材は非道徳的なものではありますが、さすがプロ、TKWOは、恐ろしく“色気”あり。

“色気”ムンムンの演奏でした。

“淫靡”(笑)な世界を見事に表現していました!

この演奏こそが、“The Miraculous Mandarin”という曲の“本質”なのだと感じさせられた次第。

 

休憩の後は、最初に紹介したとおり、邦人作品2曲。

どちらも、元々はオーケストラ曲であるのですが、吹奏楽に編曲したのは作曲家の和田薫氏。(今回の演奏会のプログラムに伊福部、芥川両先生のステキな“思い出”を寄稿されておられます。)

まず、最初は伊福部先生の作品。

編曲された和田先生は東京音大で伊福部先生の“弟子”でありました。

その関係で若干23歳の時にこの「ラウダ・コンチェルタータ」を伊福部先生指導のもと、吹奏楽版に編曲をされたのだそうです。

この曲は、1976年に木琴独奏者の平岡養一氏のために作曲されましたが、なかなか演奏の機会にめぐまれず、結局はマリンバ独奏として書き直し、1979年に新生日本交響楽団10周年記念曲として日の目を見たとのこと。(初演は、安倍圭子独奏、山田一雄指揮)

プログラムの『曲目解説』によると「ラウダ・コンチェルタータ」とはイタリア語で『協奏的頌歌』という意味で『祈りと蛮性との共存を通じて、始原的な人間性の喚起を試みたもの』なのだそうです。

私のような素人には、よく理解はできませんが、何となく“土俗性”にあふれた曲なんだろうなということは、想像できます…。

伊福部先生と言えばゴジラの音楽でも、わかるようにアイヌの音楽や民族的な雰囲気のする曲を作られている印象があります。

また、「オスティナート」、すなわち、“執拗な反復”は先生の作品では重要な意味を持つのです。

そして、この曲も伊福部先生の魅力を網羅した、とてもステキな曲でした。

どこかエキゾチックな感じもするのですが、私は個人的に雅楽っぽいフレーズもあったような気がしました。

だから、躍動的な曲の中にも日本人の本来感じる“懐かしさ”のようなものが見え隠れしていて共感できる音楽に聴こえました。

それにしても、大茂絵里子氏の演奏は素晴らしかった。

技術はもちろん、表現力に脱帽。

エネルギッシュな演奏は聴く者の心を支配し、音楽の世界の中に埋没させてくれましたね。

特に曲の最後の方の短いフレーズの“執拗な繰り返し”は見事でした!

ブラヴォーです!

 

最後の曲は、芥川也寸志先生の「エローラ交響曲」。

今年は、芥川先生の生誕90周年にあたるのだそうです。

私が20代くらいの頃、“N響アワー”の司会をなさっておられましたね。

あの端正な顔立ちで柔和な笑みを浮かべられていたお姿が強く印象に残っています…。

平成元年、63歳で亡くなられたのは、音楽界にとって大きな損失であった事でしょう。

90歳の方もめずらしい存在ではなくなった昨今のことを考えますと、存命でいらっしゃったら、どんなに素晴らしい楽曲を作られたかと思うと残念でなりません。

この曲名の中にある「エローラ」とは、インドの「エローラ石窟群」のことです。

仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教などの34ヶ所からなる石窟寺院がある壮大な風景は、1956年に訪れた芥川先生に大きな衝撃を与え、この曲が出来たとのこと。

何でも、この曲は、「マイナス空間論」という高尚な理論によって構築されているらしい。(私には難しくてわからない…。)

1958年のNHK交響楽団初演時(指揮は岩城宏之)は短い20の楽章で構成されていたそうですが、後に8、14、15、16番目の楽章が削除され、3番目と4番目の楽章がひとまとめになったので、現在では全15楽章として定着しているようです。

この日の演奏を聴いて思ったこと。

とにかく、スケール感がスゴカッタ。

“迫力”なんて表現で片づけられるものではなかった。

空間的な広がりを持つというか、東京芸術劇場コンサートホールという物理的な器を越えた響きを感じたような気がします。

“珠玉”の演奏でした!

(蛇足ながら、今回の演奏会のプログラムに芥川先生の奥様が“ご挨拶”を寄稿されておりました…。)

 

吹奏楽の素晴らしさを再認識できた演奏会でした。

もともとは、管弦楽曲であるものを“吹奏楽と言う手法”を使って、新しいもの、別のものに見事に作り上げていると言う事です。(今年の3月に聴かせて頂いた“芸劇ウインドオーケストラ”の演奏会で指揮の井上道義先生がおっしゃっていたことを完璧に“具現化”していました!)

技術はもとより、優れた演奏は独自の世界を生み出せるのだと感じ入った次第。

また、こんな豊かな時間を作って頂いた本名先生、大茂氏、そして、TKWOの皆さんに感謝!

 

浮世の心の汚れを洗い落としたが如く、すがすがしい気持ちになって埼京線の車中の人となった“浦和のオヤジ”でした…。(素晴らしい演奏会だったので、思わず、トートバッグを“オヤジなのに”買ってしまいました…。)