2015年5月10日、日曜日。
川越奏和奏友会吹奏楽団の定期演奏会にやって参りました。
早いもので、3回目の川越訪問となります。(全て川越奏和の定期演奏会のためですが…。)
場所は、川越市市民会館。
残念な事に50年にわたって使用されてきた大ホールは、本年6月を持って閉館となるのだそうです。
つまり、川越奏和の定期演奏会も川越市市民会館での最後のステージとなると言う事です。
そのかわり、川越駅西口徒歩5分に“ウェスタ川越”という立派なホールが出来ます。(本年7月1日にオープン)
いずれにせよ、川越市市民会館、長きにわたり、お疲れさまでした…。
さて、今回の定期演奏会は、アルフレッド・リード、天野正道、岩井直溥という有名作曲家の特集をするとの事。
特に岩井先生の作・編曲の楽曲をどう演奏して下さるのか非常に楽しみです。
[演奏]川越奏和奏友会吹奏楽団
[指揮]佐藤 正人(音楽監督・常任指揮者)
[ゲスト]天野 正道
[司会]水野 潤子
【第1部】
アルメニアン・ダンス(パートⅠ)/A.リード
Armenian Dances PartⅠ/Alfred Reed
杏の木 Tzirani Tzar(The Apricot Tree)
ヤマウズラの歌 Gakavi Yerk(Partidge’s Song)
おーい、僕のナザン Hoy, Nazan Eem(Hoy, My Nazan)
アラギャズ山 Alagyaz(Alagyaz)
行け、行け Gna, Gna(Go, Go)
アーデンの森のロザリンド/A.リード
Rosalind in the Forest of Arden/Alfred Reed
パッサカリア/A.リード
Passacaglia/Alfred Reed
【第2部】
そして静けさは森の中へ・・・/天野 正道 《吹奏楽版初演》
… and silence into forest/Masamicz Amano
Alas de Hierro ~ 虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)/天野 正道
Alas de Hierro/Masamicz Amano
【第3部】
ポップス描写曲 メイン・ストリートで/岩井 直溥
On Main Street/Naohiro Iwai
ディズニー・メドレー/岩井 直溥 編
Disney Medley/arr. Naohiro Iwai
ヘイ・ジュード/J.レノン&P.マッカートニー:岩井 直溥 編
Hey Jude/J. Lennon & P. McCartney : arr. Naohiro Iwai
エル・クンバンチェロ/R.エルナンデス:岩井 直溥 編
El Cumbanchero/Rafael Hernández : arr. Naohiro Iwai
さあ、いよいよ開演です!
まず、第1部は、今年で“没後10年”を迎えたアルフレッド・リードの特集から。
アルフレッド・リードの吹奏楽界に残した功績は大きいです。
特に私が若かりし頃は、吹奏楽に親しんでいる人間で、影響を受けなかった者はいないと断言しても良いでしょう。
それだけ偉大な作曲家でした…。
1曲目は「アルメニアン・ダンス(パートⅠ)」。
ホントにお馴染みの曲です。
もしかしたら、私がコンサートでイチバン多く聴いている楽曲かもしれません…。
川越奏和の音質が少し乾いた感じがします…。
いわゆるホールが響かないってことでしょうか?
でも、音は後ろまで抜けてきますねぇ。
さすが、川越奏和です。
多少、ミスはありましたが、音楽の流れと勢いを強く感じました。
安心して聴ける演奏でした。
次は、「アーデンの森のロザリンド」。
しっとりとした仕上がりで曲調を生かした丁寧な演奏のように思いました。
私の勝手な思い込みかも知れませんが、川越奏和の“激しさ”の表現は尋常じゃなく素晴らしい。
それとは、違った“美しさ”の表現も見せて頂き、非常に印象深く思いました。
ただ、少しだけダイナミクスの点で起伏が感じられたらと思った部分もありましたが。(決して単調だったという意味ではありません。)
第1部、最後の曲は、「パッサカリア」。
私なんぞは、吹奏楽で「パッサカリア」と言うと兼田敏先生の作品を思い浮かべてしまいますが、リードのそれも重厚で格調高い曲でした。
最初の金管のアンサンブルで心を引き込まれ、「パッサカリア」という音楽技法が流行った中世ヨーロッパの世界を味あわせて頂いたような気がしました。(私の“想像”の世界ですが…。)
荘厳な雰囲気の演奏は、この曲を第1部のメイン曲に持ってきた理由がわかるような気がしました。
さて、第2部は、この日のゲストでもある作曲家の天野正道先生の楽曲のステージです。
最初の曲は、「そして静けさは森の中へ・・・」。
この曲は、もともと埼玉栄高等学校吹奏楽部のアンサンブルコンテスト出場のために委嘱された楽曲です。(そして、2002年度アンサンブルコンテスト全国大会で“第1位”を獲得。)
原曲は、打楽器八重奏ですが、当時、埼玉栄の吹奏楽部顧問であった大滝実先生(西関東吹奏楽連盟理事長)の『ヴィブラフォーンで静かに始まって、静かに終わって』という指示を守りつつ、吹奏楽版では曲の“肉付け”をされたようです。
出だしのヴィブラフォーン、雰囲気良く始まりました。
でもね…、ホールの空調がうるさくて、よく聴こえなかった…。(とても、残念。曲、演奏者に罪は無し。)
多彩に打楽器を使った曲です。(もともと、打楽器の曲ですから、あたり前でしょうけど。)
と言うより、全ての楽器を“打楽器的”なニュアンスで使用してしているのではないかと錯覚する場面がありました。
アクセントの効いた川越奏和にマッチした曲だと思いました。
余談ですが、天野先生もステージ上にあがり、曲の解説をして下さったのですが、大滝先生の声真似をしたのが面白かった…。
ちなみにこの日の演奏の中で個人的にイチバン感銘を受けた演奏でした…。
第2部の2曲目は、「Alas de Hierro ~ 虚空に散った若き戦士たちへの鎮魂歌(レクイエム)。
この曲は、2004年に鹿児島県の一般バンド、J.S.B.吹奏楽団の第18回定期演奏会にて初演されました。
曲名からも推察されるように、爆弾を装着した戦闘機で敵の艦船に体当たりを仕掛けると言う、いわゆる“特攻隊”に散った若き命を題材にした楽曲です。
天野先生は、J.S.B.吹奏楽団の常任指揮者である東久照氏に鹿児島県南九州市(旧・知覧町)にある「知覧特攻平和会館」に案内されました。
その会館で死んでいった若者たちの残した遺書・手紙等にいたく感銘を受け、作曲に至った次第。
天野先生は、おっしゃっていました。
この曲には政治的な意図はなく、事実関係のみを“音楽”にした、とのこと。
それにもかかわらず、様々な思想の団体、個人の方から、抗議や誹謗中傷のメールが来たらしいです。(作曲意図を丁寧に説明することによって、ほとんどの方が分かってくれたそうですが…。)
トランペットのソロが物悲しかった…。
人間の深層心理が非常にわかりやすく描けている作品であり、演奏だったと思います。
休憩後、祝電紹介のあと、第3部です。
ここからは、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」という吹奏楽にとって“新境地”を開いて下さった岩井直溥先生の“特集”です。
プログラムの解説を見ますと岩井先生が90歳で亡くなられたのが昨年の5月10日。
そうです、ちょうど、このコンサートの1年前に亡くなられたのです。
もう、1年経つのかぁ、早いものですね…。
ステージ上では指揮台のすぐ脇に岩井先生の写真。
舞台上手(かみて)の脇には、大型テレビなのか、プロジェクターのスクリーンなのか、分かりませんが、大きな画像を映し出す“画面”が設置されています。
一体、何が始まるのでしょう?
まず、最初は、1976年第25回全日本吹奏楽コンクール、課題曲D「ポップス描写曲《メインストリートで》」。
岩井先生は課題曲をいくつか作曲されておりますが、個人的にその中で最も好きな曲です。
最近、岩井先生への追悼の意味を込めてなんでしょうが、比較的多くの演奏会でこの曲を聴く機会がありました。
嬉しい反面、岩井先生が亡くなられたことを実感させられ、複雑な心境ですね。
この日の演奏は…、心の底から、懐かしく、楽しく聴かせて頂きました。
続いて、岩井先生のアレンジした曲が3曲続きます。
1番目は、「ディズニー・メドレー」から。
これはもう、老若男女、どなたでも楽しめる内容でしょう。
続いては、ビートルズの名曲「ヘイ・ジュード」。
そして、その前にあの舞台上の大きなスクリーンに映像が映し出されました…。
岩井先生の若い頃から、晩年までの様々な写真。
それを指揮の佐藤先生やゲストの天野先生が楽しく“解説”して下さいました。
面白かったなぁ。
演奏は、この曲だけ、天野先生が指揮。(冗談で天野先生が「いろんなトークや解説まで、させられた上に指揮までしなくちゃならないなんて、人使い荒いなぁ」と笑っておられたのが面白かった。)
最後はラテンの名曲、「エル・クンバンチェロ」です。
この曲も、天野先生がヴィブラフォーンで参加し、大いに盛り上がりました!
とても、楽しい演奏会でした。
これだけの実力のある吹奏楽団だと安心して、観客が演奏に“没頭”することが出来ます。
来年の定期演奏会も行かせて頂きますね。
でも、その前にコンクールです。
10月25日、札幌コンサートホールKitaraでお会いしましょう!!
またまた、ブログの完成が遅れました…。(´Д`;)ヾ ドウモスミマセン