国立音大(7/5)、東京音大(7/10)に続く、音大吹奏楽団の第3弾!
武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブルの登場です。
2013年7月16日、火曜日。
東京芸術劇場コンサートホール。
指揮はインディアナ大学名誉教授、そして武蔵野音楽大学の名誉教授でもあるクレーマー氏。
プログラムのプロフィールで確認してみますとかなり高名な方なんですね。
いちいち書きませんが、アメリカを中心に吹奏楽のありとあらゆる要職に就いてらっしゃる。
しかも、このバンドを指導して20年以上になるとのこと。
演奏が楽しみです。
さて、当日のプログラムは以下のとおりです。
[演奏]武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブル
[指揮]レイ・E.クレーマー
[トランペット独奏]クリストファー・マーティン
● モニュメント・ファンファーレ・アンド・トリビュート《日本初演》 (P.ロスマン)
● ファイブ・エリザベサン・ダンス《日本初演》 (D.フロイント)
第1部 ガリアート:入場の舞曲(もったいぶって)
第2部 バス・ダンス:ロメオがジュリエットを見る(優しく)
第3部 ダンプ:怒ったタイボルト(重く、粗野に)
第4部 パヴァン:愛撫(外面はクールに、内は燃えて)
第5部 ラ・ヴォルタ:自身にもどって・旅立ち(陽気に)
● シール・ララバイ (E.ウィテカー)
● 2013年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅱ“祝典行進曲「ライジングサン」 (白岩優拓)
● 交響曲第4番「ブックマークス・フロム・ジャパン」 《世界初演》 (J.A.ジルー)
Ⅰ.富士山
Ⅱ.日本橋
Ⅲ.神奈川沖浪裏
Ⅳ.金龍山浅草寺
Ⅴ.蒲原 夜之雪
Ⅵ.箱根
~休憩~
● 眩い星座になるために… 《2013年改訂版・初演》 (八木澤教司)
● ファンタジー・イン・フレンチ 《日本初演》 (J.A.ジルー)
● 2013年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ“エンターテイメント・マーチ” (川北栄樹)
● トランペットとウィンドアンサンブルのための協奏曲『ガウチョ』 《日本初演》
(K.ヴァルツィック)
実に意欲的なプログラムです。
私の好みで言ったら、選曲の面白さは3音大の中ではダントツですね。
しかも、《初演》の文字がプログラムにたくさん踊っています。
そして、決定的なことなんですが、今年の課題曲の演奏を除いて、私が知ってる曲が一つもない。
福山雅治じゃないですが、「実に面白い…。」(オヤジギャグです。スミマセン。)
(私にとって初めて聴く曲ばかりなので、プログラムの解説をもとに書かせて頂きます。)
最初の曲は、「モニュメント・ファンファーレ・アンド・トリビュート」。
南北戦争時の北軍の将軍で第18代アメリカ大統領、ユリシーズ・グラントの生誕祭の式典のために書かれた曲だそうです。
金管楽器のファンファーレの目立つ華やかな曲でした。
武蔵野音大のアメリカ的なサウンドによくマッチしていました。
この曲によって、観客の心をつかんだように思いました。
2曲目も1曲目と同じく、日本初演の曲ですね。
「ファイブ・エリザベサン・ダンス」。
もともとは、シェークスピアの「ロメオとジュリエット」をもとにピアノと歌手のために作曲された曲で、2011年にウィンドアンサンブルのために改編したそうです。
曲名にある「エリザベサン」とはイギリス黄金期を統治したエリザベス1世の時代のことで、同時期に活躍したのがシェークスピアだったので、この曲名になったようです。
16世紀のイギリスの舞曲集をもとに作られているだけあって、格調高い雰囲気を持った曲でした。
作曲者のフロイント教授(インディアナ大学)のアレンジも素晴らしく、合わせて武蔵野音大の演奏も丁寧で素晴らしかった。
次は、「シール・ララバイ」。
子守歌ですよ。
美しくノーブルなメロディが曲の中核をなしています。
特にピアノの役割は大きいですね。
武蔵野音大のサウンドが溶け合って、優雅な世界を作り上げておりました…。
少し、大人しい曲が続いたので、少し、大きな音も聴きたいなあと思っておりましたら、今年の課題曲Ⅱですね。
アメリカの有名なバンドディレクターが日本のアマチュアコンクールの課題曲を振る姿なんて滅多に見られるもんじゃないんで、少し興奮しました。
少し、テンポが速く感じましたが、素晴らしい演奏でした。
特にクラリネットの小さい音量での音の響かせ方は絶妙でした!
会場に来ていた中学生、高校生の皆さんは非常に参考になったと思いますし、参考にすべき演奏でした。
前半最後の曲です。
しかも、「世界初演」です。
ジルー作曲、「交響曲第4番“ブックマークス・フロム・ジャパン」。
プログラムによりますと、指揮のクレーマー名誉教授が武蔵野音大と共に作曲者自身の数多くの作品を紹介しているのに感謝して献呈した作品なのだそうです。
“ブックマークス”とは“本のしおり”という意味です。
この作品の作曲者のジルー女史がクレーマー先生よりの日本土産の栞(しおり)を見て、素晴らしさに感銘を受け曲の題材にしたとのこと。
そして、ブックマークに描かれていたのは、どうも歌川広重や葛飾北斎の浮世絵であったようですね。
実に日本的な世界を見事に表現した楽曲でした。
曲名や字面の内容から読み取ると真島俊夫先生の「三つのジャポニズム」みたいな曲かなと想像しました。
確かに似た「和テイスト」の部分もありましたが、全く違う感性で浮世絵の世界を表現しているのには驚かされました。
特に第5楽章の「蒲原 夜之雪」は素晴らしかった。
ハープの音色が“琴”に聴こえてならなかった…。
ネットで検索して、元になった広重の浮世絵も見ましたが、まさにイメージどおり。
夜の東海道・蒲原宿。
深々と降りつもる雪の中をすれ違う旅人三人。
武蔵野音大の皆さんは、見事な表現力でこの情景を描き切っていましたね。
ブラヴォーです!!
楽譜が、出版されているようですので、日本のバンドも演奏会等で取り上げて頂きたいと思った次第。(プログラムには出版社の名前が「ムシカ・プロプリア」と書いてありました。)
また、作曲者のジルーさんも会場にお見えになっており、観客の大きな拍手を受けられておりました…。
15分の休憩をはさんで後半の開始です。
まずは、武蔵野音大OBで作曲家の八木澤教司氏の作品「眩い星座になるために…」。
この曲は関東学園大学付属高等学校創立50周年記念の委嘱作品です。
2008年11月に同校吹奏楽部によって初演され、今回は2013年改訂版として演奏されます。
中学、高校の生徒の皆さんが演奏するのにふさわしい明るく快活な曲でした。
武蔵野音大の演奏も、あくまでも軽やかに躍動感のある、この曲の特徴を生かしたものでした。
好演です。(作曲者の八木澤先生も会場にお見えになっておられました。)
後半2曲目は、またまた、ジルー女史の作品「ファンタジー・イン・フレンチ」です。
サン=サーンス、サティ、ドッビュッシーなどのフランスの作曲家が作った著名なメロディを使った美しい曲でした。
女性らしい優しいタッチで作曲されており、武蔵野音大の透明感のある演奏は、観客を魅了していたと確信します。
さて、後半も課題曲の演奏がありました。
今度は課題曲Ⅳですね。(前半、後半の2曲の課題曲とも“マーチ”でしたね。ちなみにプログラムには“2013年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲より”としか書かれておらず、演奏が始まるまで、どの曲だかわかりませんでした。)
前半に演奏したⅡと同じように模範的な演奏でした。
スマートなコンサートマーチに聴こえました。
いよいよ、最後の曲です。
メインのトランペット協奏曲ですね。
この曲のサブタイトルにある「ガウチョ」とは南アメリカの遊牧民のことなのだそうです。
その「ガウチョ」の人々に歌い続けられている音楽を使用しているため、この曲名になったとのこと。
作曲者のヴァルツィック氏も会場にいらっしゃっており、曲が終わったあと盛大な拍手に包まれながら、挨拶をされておりました。
さて、トランペット・ソロはシカゴ交響楽団の首席奏者、クリストファー・マーティン氏です。
曲が始まりました。
異国情緒あふれるメロディが会場に響きわたります。
それにしてもマーティン氏のトランペットの響きの美しいこと…。
テクニックがハイレベルなのは当然ですが、それにしても、その音色の素晴らしさと言ったら…。
ここ数年のうちに、私が聴いたソロ・トランペット奏者の中では一番、良かったかな。(個人的意見です。)
楽しい時間はあっという間で、このままずっと聴いていたいような思いに駆られながらもマーティン氏の演奏は終わりました。
ブラヴォー!
アンコール曲等は以下のとおりです。
(ナット・キング・コールの名曲“スターダスト”をフリューゲルホルンで演奏するマーティン氏の音色もシビレましたね。)
ここ10日間くらいの間に集中して東京芸術劇場での在京3音大、吹奏楽団の演奏を聴かせて頂きました。
それぞれに、独自の個性があり、どこがイチバン良いなんて決められないですね。
国立音大は、ギャルドに似た甘いサウンドにシビレましたし、東京音大のパワーと表現力は、弦楽器に負けないようなスケール感を作り出していました。
そして、武蔵野音大のアメリカ的な洗練されたサウンドは、アマチュアバンドが向かうべき最良のお手本のように感じられました。
そして、この幸せな3日間が終わったことを少し残念に思いながらも、豊かな気持ちで家路を急ぐ浦和のオヤジでした…。
正直言うとサウンドの好みは国立音大かな…。(あくまでも、個人的意見です。)