浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

埼玉栄中学・高等学校吹奏楽部 第39回定期演奏会

2015-06-28 19:57:22 | 吹奏楽

昨年の全日本吹奏楽コンクール高校の部は、西関東支部にとっては散々な結果に終わりました。

吹奏楽王国と言っても過言ではない埼玉の3強(埼玉栄、春日部共栄、伊奈学園総合)が支部代表として全国大会に出場したものの、どの団体も“金賞”を獲得できなかったのです。

私自身、生で全国大会を聴いたわけではないので申し上げにくいところなのですが、信じられませんでした。

でも、さいたま市文化センターで行われた高校の部の地区大会には行きました。

この時、上記3校のうち、埼玉栄と春日部共栄は聴かせてもらうことは出来たのですが、両校とも素晴らしい演奏でした。

特に埼玉栄は、完成度が高く、「明日、全国大会があっても“金賞”を獲れるよな」と思わせるくらいだったのに…。

 

後日、発売されたCDを購入し高校全団体の全国大会での演奏を聴きました。

3校とも全国大会出場校に相応しい完成されたパフォーマンスでした。

成績発表で“ゴールド金賞!”とコールされても何の疑問も持つことはない出来栄えでした。

でもね…、他の支部の団体の演奏も聴いてみたんです。

そうすると、わかってきたんですよ。

全国大会だから、どの学校も恐ろしく上手なんです。

下手な学校なんか、いないんですよ。

しかし、“金賞”を獲得した学校は何かが違う。

ほんの紙一重のところで勝敗がついてしまったような…。

技術や表現力、サウンドに差はないんです。

ただ、自分たちが訴えかけたい部分をいかにアピール出来たか、そこの差のような気がします。

我が埼玉の3校は、その部分で“他の団体との差別化”が今一歩だった…。

言い過ぎてしまったかも知れません…。

気を悪くされた方がいたら、お許し下さい。

 

蛇足ながら…。

昨年の全国大会高校の部で個人的にナンバーワンだと思った団体は、九州支部代表の玉名女子高でした。

特に自由曲の「森の贈り物」の演奏は珠玉の出来だと感じ入った次第。

反対に「何でこれが“金賞”」という団体もありましたが。(商業的にも大活躍されている某女子高。自由曲なんてボロボロだった…。もちろん、玉名女子高ではありません。大きな声では言えませんが、同じ支部の学校ですけど。)

 

2015年6月20日、土曜日、大宮ソニックシティ大ホール。

埼玉栄中学・高等学校吹奏楽部の第39回定期演奏会が行われました。

私は、仕事の都合と個人的に好きな「課題曲Ⅲ」の演奏をすると言うことで、“夜の部”に行かせて頂きました。

早いもので、春日部共栄高校吹奏楽部の定期演奏会同様、4回目の定期演奏会です。(何故か、もうひとつの地元強豪校、伊奈学園総合の定期演奏会には行けてません。不思議に私の仕事等の日程と合わんのです…。ただ、1回だけ、2012年6月9日に川口リリアメインホールで行われた東海大学付属高輪台高校とのジョイントコンサートで演奏を聴いたことはありますが。)

初めて行った時の生徒さんたちは、誰ひとりとして埼玉栄吹奏楽部員としては存在しないんですね…。

感慨深いものがあります。

ところで、昨年末には、アメリカ・シカゴで行われた世界的に権威のある“ミッドウエスト・クリニック”に参加されたとか。

素晴らしい活躍ですね!

 

さあ、1296文字の“いろんなこと”を書いてきましたが、そろそろ本題に入りましょう。

 

[演奏]埼玉栄中学・高等学校吹奏楽部

[指揮]奥 章

     大滝 実

     金井 良弘

     萩原 奏恵

     宍倉 晃

 

【夜の部】

 

[Ⅰ]

マーチ「プロヴァンスの風」(2015年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ)/田坂 直樹

秘儀Ⅲ-旋回舞踊のためのヘテロフォニー(2015年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅲ)/西村 朗

斐伊川に流るるクシナダ姫の涙/樽屋 雅徳

ベン・ハー・シンフォニア/M.ローザ:編曲 宍倉 晃

歌劇「トリスタンとイゾルデ」より ~愛の詩~/R.ワーグナー:編曲 宍倉 晃

 

[Ⅱ]

There’s more than one way ~仲間と描く未来予想図~/吹奏楽部3年 企画・構成

 

[Ⅲ]

歌劇「アンドレア・シェニエ」/U.ジョルダーノ:編曲 宍倉 晃

交響曲第5番より 第4楽章「アダージェット」/G.マーラー:編曲 宍倉 晃

幻想交響曲より/L.H.ベルリオーズ

   Ⅳ.断頭台への行進/編曲 藤田 玄播

   Ⅴ.サバトの夜の夢/編曲 天野 正道

 

まずは、いつも恒例の校歌の演奏から。

指揮は、クラリネットパートでコンサートマスターの3年、成田美佳さん。

続いて、司会の方(職員のミヤウチミキコさんとおっしゃっていたような。聞き書きなので間違っていたらゴメンナサイ)の案内のもと、校長の佐藤光一先生のご挨拶があり、Ⅰ部が開演です。

1曲目は、「課題曲Ⅳ」からです。(指揮は、顧問の萩原奏恵先生)

明るい演奏でした。

エキゾチックなメロディを軽やかに表現していて聴きやすかった。

特にTubaや弦バスがリズムセクションをよく支えていて安定感があったように感じました。

ただ、肝心なファンファーレ的な部分やメロディラインで、金管セクション(特にトランペット)に“雑味”のある音が聴こえたように思えたのが残念でした。

そのため、サウンドが溶け合っていないように感じる部分があったような…。

次も課題曲。

Ⅲの演奏です。(指揮は奥章先生に代わります)

このブログでも何度も申し上げているかと思うのですが、私は今年の課題曲の中で圧倒的にこの曲が好きです。

課題曲という枠を超えて、ひとつの楽曲として大好きなんです。

だから、今年は色々な団体の「課題曲Ⅲ」を聴いてみたい。

そう思っています。

そして、埼玉栄の演奏。

Aからの木管のメロディ、ズレて聴こえるのは何故なんだろう?

そりゃ、“ヘテロフォニー”だから「ズレの音楽」であることはわかっていますよ。

そうじゃなくて、これまで聴いてきた演奏と違って、ズレが、間違っているように聴こえるんです。

私の耳の錯覚かもしれません…。

しかし、そう思ったのもわずかな時間でBあたりから、正常(?)に戻った気がしました。

それにしても難しい曲をソツなくこなしますねェ。

もう少し、泥臭くやって頂ければ、私の好みにピッタリでした。

ここまで、課題曲2曲を聴いた感想。

さすが、高校のトップバンドだけあって、他の高校の模範となるような演奏だと思いました。

ただ、本音でいうとコンクールで最高の結果を残すには、あと少しだけの努力が必要かも知れません。(ここ最近、プロや神奈川大学等の“大人のバンド”の演奏する課題曲を聴き続けたので、コメントが多少、辛口になったかもしれません。悪しからず。)

さあ、次は人気の作曲家、樽屋雅徳先生の「斐伊川に流るるクシナダ姫の涙」。(指揮は、顧問の金井良弘先生。)

埼玉栄は、オペラのイメージが強いですが、こう言う吹奏楽オリジナル曲もウマい。

しっかりとした技術があるから、どんな曲でも対応できる。

樽屋先生らしく情緒があって美しい曲です。

「ヤマタノオロチ退治神話」を題材にしているせいか“和テイスト”も加味されていますね。(どこか「白磁の月の輝宮夜」に似た感じもしました。)

起伏の少ない曲なのに丁寧に神秘性を持って“奏でた”演奏は、とてもステキでした…。

続いては、オペラの「トリスタンとイゾルデ」です。(指揮は大滝実先生)

ワーグナーの美しい世界を見事に描ききった演奏でした。

これは、もう理屈ではなく感情の世界です。

多少、音程が気になるところがありましたが、とても素敵な数分間でした…。

Ⅱ部、最後の曲は、「ベン・ハー・シンフォニア」。(指揮は同じく大滝先生)

若い方々は知らんでしょうなぁ、「ベン・ハー」って映画。

さすがに“浦和のオヤジ”でも“懐かしくない”くらい昔の映画です。(私の生まれる前の映画)

でも、その音楽は知っています。

“これ”は懐かしい。(何で私は知っているのだろう?)

映画音楽をもとにした曲のようですね。

曲が始まりました。

「ああ、あの曲だ!」

スケールの大きな演奏でした!

(ところでプログラムでは4番目と5番目の曲が逆に書いてありました。でも、私のメモでは、ブログに書いてある順番になっています。少し、仕事で疲れていたので記憶が曖昧です。間違っていたらゴメンナサイ。なお、上記の“曲目”の欄では、敢えてプログラムに記載されているとおりにしてあります。)

 

休憩の後は、コーチで埼玉栄の演奏する楽曲を数々、作ったり編曲したりされている宍倉晃先生の指揮でⅡ部の開演です。

プログラムを拝見しますと、このⅡ部は、吹奏楽部の3年生の皆さんが企画・構成しているようです。

ある意味、定期演奏会における毎年の恒例行事ですね。

「There’s more than one way ~仲間と描く未来予想図~」と題されたパフォーマンスは、埼玉栄吹奏楽部の団結力をしっかりと具現化して見せて頂いたように思います。

演奏は、もちろん、ダンスや様々なパフォーマンスは年代の垣根を超えて観客を楽しませてくれました。

このブログでは、詳細を敢えて記しません。

これは是非、実際に演奏会に足を運んで頂いて、ご自分の目で耳で、ご確認頂くのが肝要かと思います…。

これからは、雑談。

Ⅱ部で指揮をされていた宍倉晃先生。

2005年、第53回の全国大会で自由曲として埼玉栄が演奏した「狂詩曲“ショパン・エチュード”」の作曲者です。

この曲、私、大好きなんです!(一時期、何度も何度も繰り返し聴いていました。)

出来れば、埼玉栄の生演奏を聴いてみたい!です。

 

さあ、いよいよ最後のステージ、Ⅲ部が始まりました。(Ⅲ部は奥先生の指揮)

最初の曲はオペラです。

歌劇「アンドレア・シェニエ」。

おやおや、上手(かみて)ソデから、生徒さんが出てきます。(楽器はもっていません。)

多分、“合唱隊”でしょうか?

演奏が始まりました。

さすがにウマいですね。

“合唱”も効果的です。

とてもバランスの良い演奏をします。

何よりもメロディを歌いきっているのが良い。

オフステージのバンダの金管の皆さんの“フランス国家”、カッコ良かった。

時折、2ステージ目で疲れが出たのか微妙なアンサンブルの行き違いやアインザッツの乱れがありましたが、全体的に“雰囲気”があって素晴らしかった。

2曲目は、マーラーの交響曲第5番第4楽章、いわゆる「アダージェット」と呼ばれる曲です。

マーラーが妻アルマに贈った恋文的な曲として有名です。

単独で演奏されることも多く、クラシックファンなら誰でも知っている名曲ですね。

原曲で注意しなければならないのは、その楽器編成。

何と弦楽器とハープのみという形態です。

管楽器や打楽器が一切使われていない、この曲をどうやって吹奏楽で演奏するのか、興味津々です。

結論から申し上げますと、やっぱり“管楽器の限界”を感じました…。

オーケストラに比べて、広がりというかスケールにチョッピリ欠ける。

でも、よく頑張っていました!

しっかりと“吹奏楽曲”になっていましたよ!

特にメロディのユニゾン部分は息がぴったり合っていて素晴らしかった!

気持ちも入っていましたね。

最後も、とてもよかった。

フェイドアウトするようなディミヌエンドは響きましたよ、心に。

 

祝電紹介のあと、主将の船越千幸さんの感謝の気持ちが伝わる挨拶があり、いよいよトリの曲です。

ベルリオーズの「幻想交響曲」。

難しい曲です。

その中でも、吹奏楽で人気の高い第4楽章「断頭台への行進」第5楽章「サバト(魔女)の夜の夢」を演奏するとのこと。

スケールの大きな演奏でした。

ソロパートも高校生とは思えないくらい素晴らしい。

標題音楽ということに負けない繊細な表現力には“脱帽”です。

今年の埼玉栄も期待できます!!

 

指揮をされた先生方に花束贈呈のあとはアンコール曲。

最初は、アルフレッド・リードの第1組曲の4楽章「ギャロップ」。

2曲目は、旭川商業高校吹奏楽部にまつわる合唱曲「夜明け」。(この曲の誕生秘話は私のブログのコメント欄にてご確認下さい。アドレスを記しておきます。)

http://blog.goo.ne.jp/urawa_kappa/e/d1a79060ec5d12b32cc5f55ea10082b6#comment-list

もう、1曲アンコール曲があったのですが、私がメモし忘れてしまいました…。

なお、上記のアンコール曲に関しては、会場に内容の掲示がなかったようなので、確認ができません。

間違っている可能性があります。(間違っていたら、ゴメンナサイ。)

 

とても楽しい演奏会でした。

何よりも生徒さんたちの、ひたむきな心が観客まで伝わって来て感動いたしました!

演奏を聴いているだけで、埼玉栄吹奏楽部の皆さんが“とても素敵な仲間”と“愛情にあふれた先生方やご父兄の方々”に囲まれて、いかに幸せな生活をしているかが手に取るようにわかる気がします。(後で自分の過去のブログを見返していたら、2年前の埼玉栄定期演奏会の記事でも同じようなことを書いていますね。それが埼玉栄の伝統、雰囲気なのでしょうか?とにかく、“愛“を感じます…。)

あっ、それから最後にひとこと。

今年のコンクールでは必ずや“全国金賞”の“奪還”を頼みます!!


Blitz Philharmonic winds 第22回定期演奏会~ブリッツで聴く課題曲とダフニス~

2015-06-26 15:02:18 | 吹奏楽

降り続いていた雨が上がって、蒲田の駅前を行き交う人も心なしか、軽やかな足どりに感じます。

2015年6月19日、金曜日。

この日、向かったホールは「大田区民ホール・アプリコ」。

ここに来るのも、久し振りです。

前、いつ来たのだろう。

 

“ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ”の演奏会は今回で3回目。

前回は、「渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール」で行われた第21回定期演奏会に行かせて頂きました。

~指揮者のいない吹奏楽~と題したコンサートは全編、“指揮者なし”という面白い演奏会でした。

特にスパークの「ダンス・ムーヴメンツ」は、複雑な曲を見事なまでに表現していて、とても感動いたしました。

 

そして、今回。

~ブリッツで聴く課題曲とダフニス~というテーマです。

コンクール前のこの時期、学生の皆さんにとっては、プロの課題曲演奏を聴けるのは、大きな“財産”になると思います。

また、一時期、コンクール自由曲として爆発的にヒットした「ダフニスとクロエ」。

このラヴェルの名曲を情熱的な演奏をするブリッツがどのような音楽として観客に届けてくれるのか、私は興味津々であります…。

 

開演前に音楽監督の松元宏康氏より“オープニングトーク”というかたちで、ブリッツの今後の計画を発表して頂きました。

吹奏楽&ブリッツを好きになってもらうための新しい試み、その一。

ファンクラブの開設。

入会金、会費等のいらないファンクラブを立ち上げると言うのです。

そして、そのファンクラブに入会すると特典が4つあるとのこと。(①ファンクラブ会員が200~300名以上になったら、プライベートコンサート&交流会開催②年4回のメールマガジン発信③リハーサル見学ができる④定期演奏会の曲目リクエストが出来る)

特に若い方々には、貴重な体験となると思いますし、技術向上の一翼を担うのではないでしょうか?

続いて、その二。

毎回の演奏会の最後にブリッツメンバーと一緒に演奏が出来るというもの。

この日の演奏会でも楽器を持参した方の多く(主に中高生の皆さん)がブリッツメンバーとアンコールで“宝島”の大合奏をしました。(楽器を持ってきた方が結構いたので、推察するに一部の方には事前に“告知”されていたのでは?)

松元氏のトークの後には、サックスパートとパーカッションの皆さんでの見事なアンサンブルを見せて頂きました。

そして、時間は19:00、開演です。

 

[演奏]Blitz Philharmonic winds

         ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ

[指揮]松元 宏康(音楽監督)

         三澤 慶(ミュージックパートナー)

 

Overture “The BLITZ!!”/三澤 慶

2015年全日本吹奏楽コンクール課題曲

 Ⅰ.天空の旅 -吹奏楽のための譚詩-/石原 勇太郎

 Ⅱ.マーチ「春の道を歩こう」/佐藤 邦宏

 Ⅲ.マーチ「プロヴァンスの風」/田坂 直樹

オリエント急行/P.スパーク

 

【休憩】

 

2015年全日本吹奏楽コンクール課題曲

 Ⅲ.秘儀Ⅲ -旋回舞踊のためのヘテロフォニー/西村 朗

 Ⅴ.暁闇の宴/朴 守賢

バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲/M.ラヴェル

 

まず、最初の曲は、ミュージックパートナーとして名前を連ねている三澤慶氏の作品「Overture “The BLITZ!!”」。

ブリッツの“テーマ曲”です。

若々しさと躍動感にあふれた華やかな演奏でした!(音圧がすごい!)

ブリッツのために作られた曲なので当然だとは思いますが、見事にマッチしていますね!

 

さて、ここからは、今年の課題曲が3曲。(指揮の三澤氏は、客席より舞台へ登場。)

まずは、課題曲Ⅰです。

最初は、私が集中出来ていなかったせいか、モヤモヤモヤっと始まったように感じましたが後はパーフェクト!

あとで、思ったのですが、この曲をうまいバンドが演奏すると映画音楽のようにも聴こえます。(個人的意見です。)

 

続いては、課題曲Ⅱ。

こういうコンサートマーチって、ある意味難しいですよね。

ミスを気にしながらやると、つまらない演奏になってしまうし、あまり勢いよくやると“音楽”でなくなってしまう…。

ちょうど良いくらいの柔軟性とテンポでスマートに演奏するのがベストなのでしょう。

そして、それが課題曲という意味でも模範的なものですよね、きっと。

でも、課題曲ではなく単純な楽曲として、そんな演奏を聴くと私はツマラナイ。(前にもこのブログで書いたかも知れませんが、最近の課題曲のマーチ、ライト過ぎるんですよ。)

そういう意味では、この日のブリッツの演奏は、あらゆる意味で“寸止め”を駆使した絶妙な演奏だったように感じました。

ライトではないが、ヘビーでもない。

実にうまくリズムや躍動感が散りばめられていて、マーチ本来の持つ、猛々しさは残しつつも上品に演奏すると言う“テクニック”には感服いたしました。

ある意味、課題曲の模範演奏とは多少、異質かもしれませんが、私は非常に楽しめました。

 

次は、課題曲Ⅳです。

この曲は、Ⅱと違って、メロディラインに特徴があります。

曲名を見れば、すぐわかる(笑)

明らかに地方色があって、しかも南欧の陽気な雰囲気です。

エキゾチックな感じもして、演奏者がイメージを湧かせやすい楽曲だと思います。(少なくとも同じマーチのⅡよりは。)

ブリッツの演奏も楽団のカラーに合っていてステキでした…。

 

前半最後の曲は、スパークの「オリエント急行」です。

指揮は松元氏にかわります。

そもそも「オリエント急行」とは、1883年に運転を始めたヨーロッパを横断する長距離夜行列車のことらしいのですが、2009年に定期列車が廃止されるまで、さまざまな種類の“それ”が走っていたようですね。

個人的なことを言いますと、「オリエント急行」と言う言葉は、アガサ・クリスティの小説によって初めて知ったように思います。

さて、スパークの楽曲についてですが、もともとBBCの委嘱で1986年に作曲されたブラスバンドの曲です。(その後、東京佼成ウインドオーケストラのために作曲者自身によって吹奏楽版も。)

簡単に言うと「オリエント急行」の出発から到着までを描写した曲なんですが、日本でも人気の高く割と演奏されることが多いように思います。

基本、標題音楽なので、やはり、聴き手側もイメージする部分が多いと思います。

この日の演奏は、こういった“イメージ”の世界にも負けない絵画的な演奏でした。

何よりも“情緒”がある。

それにスパークの曲らしい躍動感が加わって、とても楽しい演奏でした。

 

休憩をはさんで後半の最初は、課題曲ⅢとⅤ。

まずはⅢから。

今年の課題曲Ⅲは、毎年の“Ⅲ”の曲調から比べて少し異質で、難解なのだと思います。

だからこそ、私は面白く感じます。

これまで何回か、この曲を聴かせて頂く機会がありました。

それぞれに工夫を凝らした演奏は、非常に興味深く拝聴いたしました…。

そして、ブリッツの演奏。

素人なりに考えてみましたが、他の団体より、ひとつひとつの音にアクセントを効かせているように思いました、しかも故意に。

だから、とっても“舞踊”感が増していたように思える。

クルクル回りながら踊っているダンサーが目に見えるような気さえしました…。

ダイナミクスにメリハリがあって、心地よかった。

そして…、他の団体とは“差別化”された面白い演奏だと思いました。

私は好きです、この演奏。

 

続いては、課題曲Ⅴ。

私のような素人にとっては難解に感ずる曲です。

でも、さすがプロだけあって、音楽に“流れ”を作っている。

だから、自然に身体の中に曲が入り込んでくる感じがします。

“表現力の妙”を感じますね。

でも、そのオオモトにあるのは低音部の充実ですね。

土台がしっかりしているから、その上にひとつの曲を構築できる。

そんな風に思えました…。

 

さあ、早いもので、いよいよトリの曲、「ダフニスとクロエ」です。

やっぱり、印象派の音楽ですので、透明感だとかキラキラ感、そして、出来れば“色気”を感じたい。

これまでのコンクールで数多く演奏されたこの曲も、特に高校生の演奏には、いかに素晴らしかろうと、この“色気”を思わせるモノはなかなか、なかったように思います。

吹奏楽でオーケストラの曲をやる場合、管楽器には“弦の響き”は到底、表現できないので原曲とは違う“何か別のモノ”を作り出すのがベストだと私は思っています。

ですが、この曲だけは、やっぱり弦楽器を意識せざるを得ない。

そういう意味ではブリッツの演奏は完璧だった!

弦を意識しているから、“色気”がムンムン。

表現は悪いですが、とびっきり美しい大人の女性を見ているような気がしましたね。

素晴らしかった!!

それと当然ですがソリストの皆さんのテクニックは、ブラヴォー!

 

ステキな演奏の余韻に浸りながら、会場の観客の皆さんと拍手をしていましたら、アンコール曲をするようです。

最初に発表があったとおり、当日、会場に楽器を持ってきた観客の皆さんとブリッツメンバーとの“合奏”。

でも、準備するのに少し時間がかかるので、その間に1曲。

ミュージックパートナーの三澤慶氏の作品で、ある演奏者の方の酒宴での様子を描いた曲とのこと(笑)(確か「打ち上げパーティギャロップ」と紹介されていたような…。間違っていたらゴメンナサイ。)

とても愉快な曲でした!

そして、観客の皆さんと合同演奏。

曲は、「宝島」。

盛り上がらない訳はありませんね。

普段は禁止の舞台の撮影もOKとのこと。

皆さん楽しそうで大変、盛大に演奏会は終わりました!

ただ…、、、

 

この日の演奏会は、とても素晴らしいものでした。

課題曲は、コンクールでの模範演奏と言うよりも個性を持った楽曲の演奏に聴こえ、工夫を凝らされたパフォーマンスは実に心地よいものでした。

その他の曲も“大人”を感じさせるものでした。

色っぽかったですねェ。

だからこそ…。

少しでも、そのステキな余韻に浸っていたかった。(コンサートで、あまりに感動が深い時は、アンコール曲ですら、ジャマな時があります。)

でも、この観客との合同演奏は…、私にとって不必要なものでした。

合同演奏の喧騒が“余韻”をどこかに吹き飛ばしてしまった…。

舞台と客席との距離を縮めたい、演奏者と観客との一体化したいという意図は痛いほどわかりますが、そのような“距離”は、物理的ではなく、音楽で精神的につながるのがベストだと私は思います。

と言うか本編の演奏の部分で「ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ」と観客は既に精神が繋がっていたのに…。

 

少し、言い過ぎてしまいました…。

ただ、こう思っているオヤジがいるという事だけは書かせて頂きました…。(ただ静かに音楽を聴きたいだけなのです。)

そして、一笑に付して頂ければ幸いです。

 

「ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ」のサウンドが好きです。

そのパフォーマンスが好きです。

そして、これからも演奏会に行かせて頂きます。

楽しみにしています…。


神奈川大学吹奏楽部 サマーコンサート2015

2015-06-16 09:59:24 | 吹奏楽

2015年6月12日、金曜日。

私の知っているだけで、三つの吹奏楽団のコンサートがありました。

東京芸術劇場で行なわれた「東京佼成ウインドオーケストラ」。

大田アプリコホールで行なわれた「タッド・ウインドシンフォニー」。

そして、みなとみらいホールで行なわれた「神奈川大学吹奏楽部」。

もちろん、全部の団体を聴きたかったのですが、物理的に不可能です。

やっぱり、日本のトッププロの吹奏楽団ですから、TKWOは捨てがたい。

また、タッドの素晴らしい演奏はもちろん、その選曲はダントツに良い。

でも、神奈川大学の“サマーコンサート”に行くことにしました…。

 

なぜか?

ひとつは、2012年のサマーコンサートから、年2回の演奏会に通い続けているからです。

ずっと行ってると行けなかった時に非常に後悔するような気がして…。

そして、私の仕事場(都内)からイチバン遠い会場である“横浜・みなとみらいホール”へと向かったのでした…。

 

しばらく振りの“みなとみらいホール”です。

きっと今年、初めてですね。

もしかすると、去年の神奈川大学のサマーコンサート以来かも知れません。

自分の指定席に座ってみます。

正面から見て舞台後方の席、いわゆる“P席”に同じ制服を着た高校生の皆さんがお行儀よく座っています。

多分、演奏会後半あたりに何かのパフォーマンスに参加するのでしょう。(合唱とか。)

それにしても、このホールの落ち着いた雰囲気は好きです、個人的に。

 

入口で頂いたプログラムを開いてみます…。

サマコンでは、その年の吹奏楽コンクール課題曲を演奏するのが恒例になっていますので、

それは良いと思うのですが…。(私はコンクールに出ませんので、課題曲にそこまで強い関心はないのです…。)

うーん、個人的に言えば、もう少し攻めてほしかったかなぁ。

オーケストラのアレンジ曲は、大昔、聴いたことのあるような曲ばかりだし、「アルメニアンダンス」は、ここのところ頻繁に聴いているような。

メインの「三つのジャポニズム」は大好きな曲なのだけれど…、チョット新鮮味に欠けるような気がして…。

「こりゃ、“タッド”に行った方が面白かったかな。」と言う思いが一瞬、頭をよぎったかも…。

いろんな事を考えているうちに、会場に銅鑼(どら)の音が…。

みなとみらいホール独特の開演を知らせる合図です。

さあ、演奏に集中しましょう!

 

[演奏]神奈川大学吹奏楽部

[指揮]小澤 俊朗(音楽監督)

 

マーチ「春の道を歩こう」(課題曲Ⅱ)/佐藤 邦宏

Walk down the Spring Path March / Kunihiro Sato

「詩人と農夫」序曲/フランツ・フォン・スッペ

“Poet and Peasant” Overture / Franz von Suppe

交響詩「フィンランディア」/ジャン・シベリウス

Tone poem “Finlandia” / Jean Sibelius

アルメニアン ダンス パートⅠ/アルフレッド・リード

Armenian Dances Part1 / Alfred Reed

 

【休憩】

 

ウインドジャマー/真島 俊夫

Windjammer / Toshio Mashima

秘儀Ⅲ -旋回舞踊のためのヘテロフォニー(課題曲Ⅲ)/西村 朗

Heterophony for Whirl Dance / Akira Nishimura

マーチ「プロヴァンスの風」(課題曲Ⅳ)/田坂 直樹

March “Wind of Provence” / Naoki Tasaka

暁闇の宴(課題曲Ⅴ)/朴 守賢

The Scintillating Dawn / Soo-Hyun Park

三つのジャポニズム/真島 俊夫

Les trios notes du Japon / Toshio Mashima

    Ⅰ鶴が舞う La danse des grues

    Ⅱ雪の川  La rivière enneigée

    Ⅲ祭り       La fête du feu

 

[司会]鴫原 美香

 

最初の曲は、今年の課題曲Ⅱです。(プログラムには、“演奏曲目”として掲載されていませんでした。そのかわり、ホワイエに上記、看板がありました(笑))

ある意味、素晴らしい演奏でした。

サウンドに曲にあった“統一性”があって軽やか。

“音楽”に流れがあって、実にライトな感覚で観客に訴えかけてくる…。

実に見事です。

確実に“コンクールで勝てる”演奏ですね。

“見本”のような演奏に会場の中高生の皆さんは大いに参考になったことでしょう。

 

続いては、「詩人と農夫」。(私、昔にこの曲を演奏したことがあるような…、「軽騎兵」の方だったろうか?記憶が曖昧…。)

19世紀の“オペレッタ”の世界ですね。

メロディラインを実に美しく奏でていると同時に、サウンドが厚いので格調高くも聴こえる。

それでいて、オペレッタらしい軽快さや諧謔味を持ち合わせている。

とても、聴きやすい演奏だったと思います。

演奏は別にして、個人的に私の中では、何故今日の演奏会でこの曲なんだ、という思いも少なからず、ありましたが…。

 

次は「フィランディア」ですね。

この曲も私としては“違和感”のある選曲だったような。

7月にヨーロッパ遠征で「ウィーン国際青少年音楽祭」に参加されるようですから、それも見据えたことなのかと推察いたします。

冒頭の金管低音部、もっと迫力があっても良いのでは…。

でも、個人的に不満があったのは、そこだけ。

そのあとは、“精密”といっても良いくらいのアンサンブルが続きます。

特に音の処理の仕方に感嘆致します。

長いロングトーンの終りやリズムの刻みに柔らかく音をまとめるので、途轍もなくキレイに聴こえる。

とても良かったです。

ただ、しいて言うならば、あの有名なメロディ、少しだけクサく演奏してほしかった。(独立運動に関係する民族主義的なある意味ドロドロした“音楽”なのだから、と個人的に思います。)

神奈川大学は、“美しすぎる”のです。

 

さあ、前半最後の曲は「アルメニアン ダンス パートⅠ」。

この曲、今年に入って、何回聴いたことでしょう。

「パートⅡ」も含めれば、相当数の演奏を聴いているはずです。

いかに“リード没後10年”というメモリアルイヤーと言えども、個人的には、少し時間を置いて聴きたいなという思いが強かった。

でも、やっぱり、神奈川大学吹奏楽部は侮れませんね。

きちんとタテヨコ揃っていて、ソロパートも申し分ない。

もともと神大は聴く側からすれば、欠点を探しづらい演奏をするバンドという印象が強いですが、それと同時にアルメニアの雰囲気、民族性を表現しているという“付加価値”さえ与えてくれる。(アルメニアに行ったことがないので、“この付加価値”は、私の“推測”や“イメージ”にすぎませんが。)

ふだん、鼻歌で歌っているメロディが豪華なフル・オーケストラの編曲になったような、そんな気分にさせてくれる演奏でした。

 

さて、15分の休憩のあと、後半が始まりました。

最初は、神奈川大学吹奏楽部OBでもある真島俊夫先生の作品、「ウインドジャマー」。

「ウインドジャマー -Windjammer-」とは“帆船”のことで、具体的には横浜港に展示されている「日本丸」をイメージしているそうです。

この曲は、横浜市立桜丘高等学校吹奏楽部の創部50周年記念作品として作られました。

解説を見ますと『理想に燃えて飛び立とうとする若人の気持ち』を出港しようとする『Windjammer(ウインドジャマー)になぞらえて』書かれたそうです。

実は、この曲、聴かせて頂くのは2度目なんですね。

今年の3月8日に文京シビックホールで行なわれた「21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”」で同じ神奈川大学吹奏楽部の演奏で堪能させて頂きました。

そして、この日の演奏も素晴らしいものでした!

真島先生の作品らしく、明るくさわやかな曲調は、まるで“みなとみらいホール”を飛び出して横浜港にでも佇んでいるような心持ちにさせてくれました…。

特に金管楽器のやわらかなサウンドが心地よかった。

 

続いて、今年の課題曲を3曲。

しかも、簡単ながら、小澤先生の解説付きです。(長年、吹奏楽の“現場”にいらっしゃる小澤先生だけあって、その話は、視点の鋭さに感心する事しきり。)

まずは、課題曲Ⅲから。

結論から言いますと、すごい演奏でしたし、個人的に感動すら覚えました…。

ブラヴォーでした!

この曲の持つ、“神秘性”“土俗性”“宗教性”をうまく利用した神大の演奏は、“独特の空間”を醸し出していたように思います。

勝手に解釈するにそれこそが、作曲者の西村朗先生の意図するところではないのでしょうか?

私の偏見にまみれた感想ですが、この日、ナンバーワンの演奏でした!

このところ申し上げているのですが、私は、課題曲Ⅲのファンなんです。

だから、言う訳ではないのですが、神大の課題曲Ⅲを聴いてみたいなぁ、コンクールで。(おそらく、課題曲Ⅴをやるのでしょうけど。)

 

次は、課題曲Ⅳ。

曲名に入っている「プロヴァンス」とはフランス南部地方の名前ですね。

地図で見てみると北側にはアルプスを背負って、イタリアに隣接しているように見えます。

でもね、この曲を聴くと私がイメージする闘牛場の音楽みたいなメロディに溢れていて、“スペイン臭”がプンプンするんです…。

「スペインも近いから、こんな感じのイメージなのか。」とずっと思っておりました。

でも、小澤先生の「フランスよりスペイン的な感じ」「曲名を“スペインの風”に変えた方がいいかも」という“解説”に多少、溜飲が下がった次第。

他にも小澤先生がこの曲は「非常に面白い作りをしている」と言っておられましたが、悲しいかな“素人のオヤジ”には理解の範疇を越えていました…。

そうそう、神大の演奏の方ですね。

この前に課題曲Ⅲを聴いたせいか、最初は少し、軽快さに欠ける気がしましたが、時間を追うごとにその思いは、私の心の中から消えて行きました…。

華やかな明るい演奏でした。

特にトランペットのファンファーレ的なところ、シビレました。

 

課題曲の最後は、Ⅴです。

神大って、毎年、Ⅴの課題曲をやらせたら、敵なしです。

本当にウマい!

ただ単純な“音の羅列”という訳ではなく、絵画のようなイメージを具現化した世界を作ってしまうように思います。

また、小澤先生の「“雅楽”のように聴こえる部分がある」との“解説”には非常に納得し、共感いたしました。

 

さて、大トリは、「三つのジャポニズム」。

神大の皆さんが大先輩の名曲をどう“料理”してくれるのでしょう。

“やりなれた感じ”のする演奏でした。

ただ、それは非常に良い意味で、です。

やっぱり、OBの作曲した曲だけあって、“十八番(おはこ)”と言っても過言ではないくらい「堂に入った」演奏でした。

特に「雪の川」は、しっとりとして風情があって、日本人の心を描いているように思えました。

“もう何も言う事はない”と感じました…、本当に。

これは、蛇足ながら、「鶴が舞う」のところで打楽器パートが“鶴の羽音”を表現するのに団扇だか扇子だかをパタパタやるのは知っていたのですが、今回の演奏会で木管楽器の皆さんもタンポを打楽器パートに合わせてパタパタ動かしていたのに気付きました。(もちろん、息を吹き込まない状態で。)

これって、楽譜に書いてあるのでしょうか?

打楽器の扇子どうしをはたく音と合わさって、とても効果的に羽音を表現出来ていると思いました。(何度も聴いている曲なのに気付くのが遅すぎましたかね。演奏したこともないし、楽譜を見たこともないので…、スミマセン。なお、書いてる内容が間違っていたら、ご容赦下さい。)

 

アンコールは3曲、上記のとおりです。

最初の「花は咲く」は、東北演奏旅行でも演奏されたと聞きました。

神大の素晴らしい演奏に被災地の皆さんも、どんなに心癒されたことでしょう。(この日の演奏では、予想通り、“P席”の生徒さんたちがキレイな歌声を披露して下さいました。)

それと、神奈川大学吹奏楽部の演奏会でアンコール曲の定番となっていた真島先生編曲の“ひばりメドレー”が演奏されなかったのが、少し残念でしたが。

 

どちらかと言うと、見た目は“大人しい”印象のある神奈川大学吹奏楽部が演奏に入ると見事に“豹変”します。

そのギャップがたまらなく好きです、私。

そして、今回のサマーコンサートも、とても素晴らしいものでした。

中でもトランペットパートの素晴らしさは特筆すべきものがあると思いました。

これからも、年2回のメインの演奏会、“皆勤賞”で頑張らせて頂きます!!

それにしても今年の神大のコンクール自由曲って何なのでしょう…?


ミュゼ・ダール吹奏楽団 第18回定期演奏会

2015-06-12 23:10:04 | 吹奏楽

アマチュア吹奏楽団の演奏会は、その団体の考え方によって様々な“やりよう”があります。

まずは、最初の段階。

自分たちのやりたい曲をやる…、いわゆる自己満足完結型。

簡単に言えば、観客を自分たちの充実感の道具として利用するということでしょうか。

次に観客に聴かせたい曲でプログラムを組む、ただ、それは決して自分たちがやりたい曲とは“イコール”にはならない。

いわゆる観客を“意識した”選曲です。

後者の方が志が高い様にも思えますが、一概にそれがベストだとも言えません。

観客の“内容”によっても変わるからです。(例えば、学校や職場のバンドだと如何せん、“身内”が中心の観客であるとか…。)

それはもう、致し方のないとしか言いようがありません。

 

ところが、ここに○○高校吹奏楽部のOBでも父兄でもなく、△△市民吹奏楽団に属しておらず、関係者でもなく、ただただ、吹奏楽が好きで仕事の合間をぬって年間約40公演に行く一人の“オヤジ”がおります。

何の縁故もない吹奏楽団、吹奏楽部の演奏会に、いつも、たった一人で乗り込んで行く“オヤジ”です。

ある時は、いたたまれないくらいのアウェー感に浸りながらでも“音楽”を聴いてしまいます。

そんな“オヤジ”が最近、思うのです、“テーマ”のある演奏会って面白いなと。

もちろん、いかにアマチュアと言えども観客に聴いてもらうわけですから、まずは技術を向上させなくてはなりません。

ですが、悲しいかなアマチュア演奏家には時間の制約があります。

限られた時間の中でいかに演奏会において観客に訴えかけるか、それが問題ですね。

それには他の団体との“差別化”を図るのが手っ取り早い。

流行りの曲や今の時期だと課題曲の演奏、こればっかりが目立ちます。(課題曲を演奏して審査される身のアマチュア吹奏楽団がコンクール前の定演で“課題曲全曲披露”とかしても…。多少、疑問に思ってしまいます…。自分たちのコンクールで演奏する課題曲だけだったら、わかるのです。人前で演奏するという“意味”がある。)

 

何となく、そんな事を思っていたある日、一つのコンサートに出会いました。

東京の一般吹奏楽団、ヒネモス・ウインド・オーケストラ。

今年の4月19日に行なわれた演奏会は、「ニッポンの吹奏楽」と題して、現代日本の吹奏楽界に影響を与えた作品の特集をすると言う企画。

アマチュアですから、限界のある部分もありますが、とても楽しめた演奏会でした。

私は、大満足でありました。(但し、吹奏楽にあまり触れたことのない観客の方には微妙な感情が生まれるでしょうが…。)

 

そして今回の「ミュゼ・ダール吹奏楽団」。

たしか、どちらかの演奏会で頂いたチラシで知ったと思いますが、内容を確認した瞬間、即決で行くことに決めた次第。

しかも、演奏会のナビゲーターとして、NHK-FM「吹奏楽のひびき」のMCとしても人気の高い作曲家の中橋愛生先生が参加して下さるとのこと。

第18回定期演奏会のテーマは、『吹奏楽コンクールを彩った作品たち~懐かしくも新しい本当の姿』とサブタイトルがついています。

今回の演奏会での選曲は、「全日本吹奏楽コンクール全国大会」で演奏されたものであり、そして、その中でも中橋先生が『「作品自体」と「吹奏楽コンクール全国大会という場」との間に《何らかの距離》がある』と感じた楽曲なのだそうです。

何だか聞いているだけでワクワクしてきそうです…。

 

ミュゼ・ダール吹奏楽団は1999年4月に豊島区を活動拠点として、17名で創団しました。

それから、定期演奏会やその他のコンサート、コンクールやアンサンブルコンテストにも出場し、多岐にわたる活動をしている吹奏楽団です。

特に『豊島区での地域活動の功績が認められ』、2009年12月に「豊島区文化功労表彰」を受賞されたとのこと。

最近では、コンクールでも都大会出場の常連となり、安定した成績を残されています。

ちなみに「ミュゼ・ダール(Musée d’Art)」とは、『フランス語で“芸術の殿堂”を意味して』いるそうです。

 

2015年6月6日、土曜日。

ほぼ1年振りの「杉並公会堂」です。(昨年の5月16日に“Blitz Philharmonic winds”の定期演奏会で“初”来館しています。)

2006年の完成ですから、まだ10年も経ってないホールなんですね。

確か非常に音響も良かったような気がします。

まもなく、17:30。

開演のようです。

 

《吹奏楽コンクールを彩った作品たち~懐かしくも新しい本当の姿~》

ナビゲーター/中橋 愛生

 

【Opening】

 

ダンス・セレスティアーレ Op.28/ロバート・シェルドン

 

【1st Stage】

 

ザノニ Op.40/ポール・クレストン

クィーンシティ組曲/チャールズ・カーター

    Ⅰ.ファンファーレとプロセッショナル

    Ⅱ.グラス・ルーツ

    Ⅲ.ハーヴェスト・ジュビリー

瞑と舞/池上 敏

アンティフォナーレ~金管六重奏とバンドのための/ヴァーツラフ・ネリベル

 

【2nd Stage】

 

セント・アンソニー・ヴァリエーションズ《原典版》/ウィリアム・H・ヒル

吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」/高 昌帥

   Ⅰ.衝動

  Ⅱ.情緒

  Ⅲ.祈り

  Ⅳ.陽光

 

さて、今回の演奏会は、中橋先生がナビゲーターをやって下さるようですが、同時にプログラムの曲の“解説”も中橋先生が書いておられます。

とても懇切丁寧で詳細な内容になっております。

曲の構成や作曲の経緯に関する部分では、私はあまりにも知識がなく、中橋先生の文章に頼らざるを得ないことをご容赦下さい。

演奏会が始まりました。

まずはオープニング曲ということでシェルドンの「ダンス・セレスティアーレ」から。

私にとってシェルドンと言うと毎年、春日部共栄高校吹奏楽部の定期演奏会で聴く「飛行の幻想」を思いだします。(春日部共栄では、毎年、春の定期演奏会で吹奏楽部に入部した新1年生だけで「飛行の幻想」を演奏するのが恒例行事となっています。)

演奏会に行っても時折、名前を聞く作曲家ですね。

曲が始まりました。

よく、響きます。

とっても、いいホールです。

演奏も出だしから、スマートなカンジ。

いかにもアメリカの作曲家らしい曲調は、安心します。

ただ、ダイナミクスにもう少しメリハリがあると私の好みに近かったかも。

ちなみに、この曲は全国大会では、1990年度第38回大会、一般の部で九州支部の春日市民吹奏楽団が演奏した1回だけのようです。

 

第1部、最初の曲は、ポール・クレストンの「ザノニ」です。

この日の演奏会は、私個人的な観点から申し上げますと、この曲を聴きに来たと言っても過言ではないかも知れません。

あまり詳しく言いますと“個人情報”に触れますので(笑)、ご容赦願いたいのですが、実は私、この曲を自由曲として2度程、コンクールに出たことがあります。(支部大会まで進みました。)

だから、非常に思い入れが強い曲です。

プログラムの解説を拝見しますと今年がちょうど、クレストンの没後30年とのこと。

ン十年前は、この曲のタイトルの意味も分からず演奏しておりましたが、「ザノニ」とはイギリスの小説のタイトルから、採られたようですね。(クレストン自身は否定しているそうな。)

この曲の演奏というと、まず思いだされるのが1972年度、第20回全国大会、大学の部、関西学院大学の『名演』です。

これは今でも“音源”を持っていて頻繁に聴いているのですが、実に見事で、現代に持ってきてもトップクラスの演奏だと個人的に確信しています。(というか、この演奏を聴いて、お手本にしていたのですよ。)

冒頭、もう少し、アタックを効かせて欲しかった。

全体的にソロパートの方が浮足立っていたような。

途中のテンポが少し早くなるところ(確か2/4拍子?間違っていたらゴメンナサイ。)から、少し舞曲的な感じもするので、出来れば“華麗な”テイストもあれば良かったかな。

そして、最後の物悲しいユニゾンのメロディラインは、もう少し朗々と歌って欲しかった。

色々、書いてしまいましたが決してミュゼ・ダールの演奏にケチをつけているのではありません。

あまりに個人的な想いの詰まった曲なので、私の“固定化した曲のイメージ”があるのです。

だから、“それとは違う”演奏だと…。

ミュゼ・ダールは客観的に見て、都会的でスマートな演奏だと思いました。(ちなみに私は、「ザノニ」をドロドロした暗くて重厚な曲だと思っています。)

若い頃の事を思い出して、少々、熱くなってしまった…。

そう言えば、関学の演奏もコンクールと言う時間制限のため、トランペット・ソロの“カット”をしてあるのですが、音源として“完全版”がないことを中橋先生もプログラムに書いておられました。

しかし、ここで、朗報。

舞台上でナビゲーターをしておられた中橋先生が良い情報を教えて下さいました!

何でも東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)が「ザノニ」を含むアルバムをCD化するとのこと。

非常に楽しみです!!

 

続いては、カーターの「クィーンシティ組曲」。

1970年の作品と言いますから、半世紀近い前に作曲されたものです。

全国大会では、1971年の神奈川大学(第19回・銀)と1975年の金沢吹奏楽研究会(第23回・銅)が自由曲として演奏されています。

私の学生時代にありがちだったアメリカ人作曲家の作品という趣の懐かしい感じの曲です。(もちろん、良い意味で、です。)

ミュゼ・ダールの演奏も好感の持てるものでした。(この曲から“エンジンが掛かって”きましたね。)

1曲目のファンファーレ的な部分から、金管楽器がとても良く音が出ていて気持ちが良かった。(特にトランペット。)

2曲目も細部まで気を使った丁寧な演奏に仕上がっていたように感じました。

全体的にみると大きな山場のない曲で単調になりがちだと思うのですが、そこは技術と表現力で観客に訴えかけていたように思います。

特にバンド全体に対する低音楽器の“支え”は曲を構成する上において非常に重要な位置にあるものだと実感した次第。

それにしても…。

私、この曲を最近、生演奏かCDで聴いたことがあるような気がするのですが…。

どこだっただろう?

歳は取りたくないものです…。

 

第1部、3曲目は、池上敏先生の「瞑と舞」。

この曲は、“中学の部”を中心に今まで5回、全国大会で演奏されています。(第25回[1977]徳島市立富田中、第29回[1981]旭川市立神居中、第34回[1986]伊丹市立東中、第46回[1998]NTT東京吹奏楽団、第51回[2003]松山市立雄新中)

私にとって、“リアルタイム”に存在してた曲で学生時代に「カッコイイなあ」と思っていた印象が強い。

この日の演奏。

パーフェクトというわけではなかったが、この曲の持つ“本質”…、すなわち、“土俗性”“神秘性”を如何なく発揮した好演でした。

「動」から「静」へ移る時の音の処理の仕方が気になる部分もありましたが、表現力の高さは素晴らしかった。

 

中橋先生による“祝電紹介”のあと(そこまでやるとは、ご苦労様でした(笑))、2012年に“復刻版”の楽譜が出版されて以来、割と演奏会やコンクール自由曲として聴く機会が多くなったネリベルの「アンティフォナーレ」。

今回の演奏会では曲名の一部にある「~金管六重奏とバンドのための」と書いてあるところに目を惹かれました。

「アンティフォナーレ」って“バンダ”を使う曲だったんですね…。

調べてみると、全国大会で演奏されたのは、あわせて6回。(福岡大学[第21回,1973]、近畿大学[第30回,1982]、小牧市立小牧中学校[第34回,1986]、北海道教育大学旭川分校[第37回,1989]、大曲吹奏楽団[第48回,2000]、福岡工業大学[第56回,2008])

中世のローマカトリック教会の2つ以上の群が交互に演奏するという手法「アンティフォニー」を取り入れた楽曲です。

演奏の方は、どんどん華やかになってきました!

ネリベルらしい独特の“間(ま)”も、うまく表現出来ています。

私は、この曲で初めて“バンダ”を使った演奏を聴いたように思いますが、何か今までとは違った曲に聴こえましたね。

より厚みが出て、より宗教色が濃くなった。(この曲の本来の“雰囲気”が増したということです。)

第1部の最後に相応しい華麗な演奏でした。

 

第1部、 最初の曲はウィリアム・ヒルの「セント・アンソニー・ヴァリエーションズ」。

しかも、演奏されるのが珍しい《原典版》だと言う。(この曲をヒルが作曲したのが1979年。この《原典版》の出版は何故か2012年まで待たなければならなかった…。)

全国大会では1981年(第29回)に文教大学が演奏したのが始めで、昨年2014年(第62回)、職場一般の部のNTT西日本中国吹奏楽クラブまで、19回の演奏が行われています。

ただし、“曲の内容”は違う。

もともと、この曲は『聖アンソニーのコラール』という『17世紀に歌われていたキリスト教の巡礼歌』に『基づく「序奏と主題、4つの変奏」という流れの変奏曲』です。

まず、全国大会で初めての演奏である文教大学は、同大学教授の『作曲家、柳田孝義が新たに書き下ろしたもの』でありました。

ヒルの書いた《原典版》が重々しく終わる“エンディング”であったのに比べ、文教大学のものは『主題のコラールが原型のまま華々しく回帰する劇的なもの』だったそうです。

そして、『その4年後の1985年』天理高校が全国大会で演奏したのも、ヒルの《原典版》とは違い、『ピアニスト・中屋幸男が作成した版』でした。

その内容は、『文教大学に倣って主題の再現を結尾に置きつつ途中を縮小したもの』で、これが、いわゆる《天理版》です。

この《天理版》は『ヒル許諾のもと』に出版されるに至りました。(何と『後年、ヒル自身が《天理版》を用いて指揮した演奏の録音も遺されている』そうです。)

なお、コンクール自由曲として演奏された「セント・アンソニー・ヴァリエーションズ」は、文教大学を除いて全て《天理版》なのだそうです。(全国大会、支部大会の123回全て。)

この日の《原典版》は初めて聴かせて頂くので、どのようなものか非常に楽しみでした…。

最初の金管のファンファーレ、とても美しい!

ソロパートも第1部と比較して、見違えるように音が響いていたし、感情豊かなパフォーマンスでした。

ただ、合奏部分でメロディラインの表現力は素晴らしく、十分すぎるほど華やかではあったのですが、個人的な好みとしては、もう少し、“粘着質”的な感じがあればと……。(“浦和のオヤジ”は、どちらかと言うと“クサい”のが好きなのです…。)

《原典版》について。

やはり、打楽器中心の最後の終わり方は、《天理版》を聴きなれた私にとってみれば、やっぱり、重厚ではありますが、“違和感”を感じざるを得ませんでした…。

 

さて、時間が経つのは早いもので、いよいよ“トリ”の曲です。

高昌帥先生の「陽が昇るとき」。

けっこう流行りの曲です。

コンクールや演奏会で割と頻繁に聴かせて頂いているような気がします。

何よりも、とってもステキな曲です。

私は個人的に大好きですね。

私が初めて、この曲を“生演奏”で聴いたのが(記憶が正しければ)、2012年8月12日に川崎市教育文化会館で行なわれた第61回神奈川県吹奏楽コンクール県大会、職場一般の部で「大磯ウインドアンサンブル」が演奏したものだったと思います。

そして、その翌年、福岡サンパレスホールで行なわれた職場一般の部全国大会(第61回)の「大津シンフォニックバンド」の演奏は、とても良かった。

その後も、たくさんのバンドの演奏を聴かせて頂きましたが、いつ聴いても心が洗われるような名曲ですね。

プログラムの中橋先生の“解説”によりますと『実はこの曲、全部で4つの楽章(詩、と表記される)から成る演奏時間33分の大作なのだが、そのそれぞれの詩は元々は個別の楽曲で、委嘱元も異なる』のだそうです。

私は知らなかったので、とても興味深く感じました…。

参考のために以下にプログラムに書いてあった内容で“委嘱先”と“作曲年”を記しておきます。

〈第1詩〉「衝動」…創価学会関西吹奏楽団、2004年

〈第2詩〉「情緒」(旧「諧謔のとき」)…ウインドアンサンブル「一期一会」、2004年

〈第3詩〉「祈り」(旧「祈りのとき」)…関西大学応援団吹奏楽部、2002年

〈第4詩〉「陽光」(旧「陽が昇るとき」)…宝塚市吹奏楽団、2002年

 

ミュゼ・ダールの「陽が昇るとき」、とても気持ちが良かったです。

もちろん、ミスがなかったとは申しませんが、サウンドに厚みを感じ、この壮大な「風景詩」を見事に描いていたように思います。

そして、何よりも音楽に“流れ”がありました。

だから、長時間の演奏でも退屈しないし、かえって時間が短く感じる。

気合いの入った演奏でした!!

 

アンコール曲は上記のとおりです。

それにしても、アンコール曲も“コンクール自由曲”であった曲を持ってくところは、なかなか粋ですね。

ちなみにアンコール1曲めの「行進曲“木陰の散歩道”」は1962年(第10回大会)で愛知大学吹奏楽部が、2曲目の「スピリテッド・アウェイ」は2010年(第58回大会)で伊奈学園OB吹奏楽団が全国大会自由曲として演奏した楽曲です。

 

ミュゼ・ダール吹奏楽団 第18回定期演奏会。

楽しいひとときでした。

何よりも演奏会に真摯に向き合っている姿が良い。

これから、いかなる成長を遂げて行くのか、楽しみな吹奏楽団が私の中でひとつ増えたようです…。