浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

第59回全日本吹奏楽コンクール 高校前半の部

2011-10-31 00:08:16 | 吹奏楽

2011年10月23日(日)、昨日から降り続いた雨もやみ、季節外れのムシムシした空気に包まれています。
私は8:20頃、杉並区和田にある普門館に到着しました。
目的は、第59回全日本吹奏楽コンクール高校前半の部を聴きに来るためでした。(残念ながら、チケットが入手出来なかったので前半のみです。)
私が以前、ここに来たのは第33回(1985)全国大会高校の部以来ですので、実に26年振りです。
入口は既に観客でごった返しています。
ホールに入り、ひとつ大きく深呼吸をしてみます。
私は音楽ホールの独特の匂いが大好きで、それは心を豊かにし、心地よくしてくれます。
しかし、普門館は音楽ホールの匂いと言うより、体育館の匂いですね。(^v^)
開演までに、まだ時間があるので2Fロビーの椅子に座っていますと目の前を鹿児島情報高校の屋比久勲(やびくいさお)先生が通り過ぎて行かれました。
トイレにでも行かれるようです。
そう言えば、鹿児島情報高校は、「3出(さんしゅつ)」(全国大会に3年連続出場すると4年目出られないという大会規定)で出場してないんですね。
来年も全国大会に出場して、金賞を獲得して下さい。
我が故郷の代表として…。
まず、最初に久しぶりに観客となった感想としては、いろいろ考えさせられる大会でした。賞のあり方もそうですし、判定基準や大会の目的、…etc。
何か、しっくり来ない、後味の悪い想いがしました。
そうこうしているうちに開演です。

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第59回全日本吹奏楽コンクール高校の部のトップバッターは、九州代表の福岡工業大学付属城東高等学校[(指揮)武田邦彦 (課)Ⅰ(自)バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り ラヴェル/佐藤正人]、4年ぶりの全国出場です。
普門館は響かないというイメージがありますが、それにしても、ってカンジでした。
先日、サントリーホールで春日部共栄、東海大四校の演奏を聴いたばかりでしたので尚更でした。
城東の音が響いてないのか、ホールが悪いのか、比較対象がなければ、私のような素人には判断がつきません。
数団体、聴き進むうちに城東の音が良く響き、美しいサウンドである事を認識しましたが…。
いずれにせよ普門館でのトップバッターは可愛そうなものだ、と思いました。[銀賞] 

次は、名門、西関東代表・埼玉栄高等学校[(指揮)大滝 実 (課)Ⅲ(自)歌劇「トゥーランドット」より プッチーニ/宍倉 晃]です。
私の居住地の代表なので地区大会でも聴かせて頂きました。
その時、課題曲が何となく始まり、少しモヤモヤした演奏だと感じましたが、全国大会の演奏でも、そう感じました。
素人ながら思うに課題曲として「シャコンヌS」を選択しては不利になるのではないでしょうか?
曲の冒頭から単調な感じといい、音程の乱れを余計に目立たせる気がする。
埼玉栄が不安定と言う事ではなく、高校生レベルでは、そういう風に聴こえる曲なのでは?
多分、譜面上ではわからない非常に難しい曲なんだと感じます。
さて、自由曲は、新アレンジのトゥーランドットです。
これはもう、栄ワールドを満喫させてもらったなあと思いました。
地区大会よりパワーアップして、さすが埼玉栄と思っていたら、結果は銅賞。
これはいか様に考えてもオカシイ。
銅賞レベルの演奏には、到底思えませんでした。
(埼玉栄の演奏では、2年前のポカホンタスのジャッジ(銀賞)も疑問でしたが…)[銅賞] 

                                                          3番目の出演は四国代表・愛媛県立北条高等学校[(指揮)池田 努 (課)Ⅱ(自)シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」 福島弘和]です。
課題曲は、何か失敗を恐れているような演奏に感じました。
折角、日本的な旋律で踊るように軽やかな曲なのだから、楽な気持で演奏したらどうでしょう。
自由曲は、「祈りの鐘」なのに全体的な響きが前に出てない様に思いました。
折角、きれいな音色を持っているのに残念です。
それと演奏には関係ない事ですが、舞台の最上段にホルンとユーホニウムが配置されていたのが面白かった。[銅賞] 

さて、次は中国代表・岡山学芸館高等学校[(指揮)中川重則 (課)Ⅳ(自)華麗なる舞曲 スミス]の登場です。
課題曲をお手本の如く、演奏したあとは、いよいよ、華麗なる舞曲です。
私は、この曲が大好きですが、やはり高校では、第40回大会(1992)の洛南高校の名演が思い出されます。
生で華麗なる舞曲を聴くのは初めてでしたので大いに期待を持って演奏を聴きました。
やあ、やってくれましたね!これは名演です。
ここ3年のうちでも磐城高校、精華女子高が演奏しましたが、精華女子は、この曲にあった明るい音色で躍動感にあふれた、いい演奏でしたが何せミスが多かった。
磐城は、それほどミスもなく、流れにのったいい演奏でしたが、この曲に音色があわない。
つまり、深みのあるサウンドを持っているのに軽快な華麗なる…は、どうかなというのが個人的感想でした。
余談はそれくらいにして、学芸館に話をもどします。
とにかく、ミスがなく、明るい音色で曲に一体化している感じがしました。
これは、かなりの練習、努力をした事と推察されます。
“伝説の洛南”を越えたかどうかは、歴史の評価なので、すぐには答えは出ないと思いますが、少なくとも、精華女子高、磐城高校を超えているのは間違いありません。
私が、拝見させて頂いた高校午前の部の中ではイチバンの演奏だと個人的には思いました。[金賞]

5番めは、全国大会常連、三出明けの西関東代表・埼玉県立伊奈学園総合高等学校[(指揮)宇畑知樹 (課)Ⅳ(自)交響詩「英雄の生涯」より R.シュトラウス/森田一浩]です。
3出前の一昨年、マーラーの交響曲第一番なんぞという吹奏楽の自由曲では考えられない曲で出場し、それでも実力があるので全国大会まで駒を進めた実力校です。
課題曲は無難、自由曲はほんのわずかなアンサンブルの乱れが雑音になったりして、何かしっくりこない感じでした。
聴き終わった瞬間、今年は金はないなと思った次第…。
我が地元の代表です、来年は、一層の奮起を願っています。[銅賞]

6番目、中国代表・山口県立防府西高等学校[(指揮)野上慎二郎 (課)Ⅳ(自)バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り ラヴェル/平井哲夫]。
元気のいい課題曲の演奏です。
自由曲もメリハリに欠ける。
もう少し、ダイナミックスを意識して演奏したら、もっと素晴らしい演奏になることでしょう。
来年は期待しています。[銅賞]

次は、北陸代表・石川県立小松明峰高等学校[(斉藤忠直) (課)Ⅳ(自)交響詩「ローマの祭」より Ⅰ.チルチェンセスⅡ.主顕祭 レスピーギ/森田一浩]の皆さんです。
ローマの祭の特に主顕祭は、考えて吹かないとタダうるさいだけになってしまうと思います。
盛り上げたいのはわかりますが、その点に配慮がほしかった。
他は素晴らしかったのに残念に思います。[銀賞]

8番目は関東の雄、東関東代表・常総学院高等学校[(指揮)本図智夫 (課)Ⅴ(自)バレエ音楽「中国の不思議な役人」より バルトーク/佐藤正人]です。
課題曲の冒頭から、あの響かないホールでスーッと音が前に抜けている気がしました。
透明感がある音色なのに自由曲ではバルトーク独特の泥臭さを表現できていて、すごいと思いました。
これで2年連続金賞です。
名門の階段を確実に駆け上がっていますね。[金賞]

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ここで次の学校の紹介の前に以前より思っていた事を述べたいと思います。
それは、コンクール自由曲としてポピュラーな「中国の不思議な役人」についてです。
クラシック音楽については、私は作曲者や作曲された時代背景、内容等を意識して演奏すべきなのではと思っています。(“のだめ”のやっていたアナリーゼというヤツでしょうか。)
特にこの曲はバレエという手段を使った描写音楽ですから、尚更です。
でも、このバレエのあらすじは、簡単にいうと悪党が少女を使って中国の役人を誘惑させ、挙句の果てに殺して金品を奪い取るというものです。
到底、高校生が学ぶような物語ではありません。
保守的なオヤジがそんな事を考えてしまいました。
閑話休題。

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9番目、去年、久々に出場して今年も2年連続で普門館の舞台に立った九州代表・玉名女子高等学校[(指揮)米田真一 (課)Ⅳ(自)ラッキードラゴン~第五福竜丸の記憶~ 福島弘和]です。
去年の全国大会のCDを聴いた限りでは、パワーってカンジでした。
課題曲は軍楽隊みたいだし、自由曲のローマの祭も吠えてた。
そんな先入観の中で演奏が始まりました。
しかし、えーこれが玉名女子と思うくらい去年のパワーを修正してきていました。
マーチを丁寧に演奏し、ラッキードラゴンもやさしく、音を気遣いながら演奏していました。
去年より進化していました、が何か物足りない。
来年に期待します。[銅賞]

10番目、関西代表・大阪桐蔭高等学校[(指揮)梅田隆司 (課)Ⅱ(自)楽劇「ワルキューレ」より ワーグナー/梅本幸司]。
課題曲も自由曲もバランスが良く、うまい!と思わせる演奏です。
ま、言ってみれば、これぞ大人の演奏ということです。
逆にいえば、そつなくこなしてる感が強く、私の個人的な意見としては、高校生らしさ、若々しさが欲しかった。
でも、その他は完璧ですけど。[金賞]

次は、北海道代表・北海道札幌白石高等学校[(指揮)杉村光雄 (課)Ⅲ(自)交響詩「モンタニャールの詩」~アルプスに伝わる愛と勇気の物語~ ヴァン=デル=ロースト]です。
課題曲はⅢです。
思ったとおり、この曲でわずかなのですが、音程のズレを感じさせるところがありました。
やはり、難しい曲ですね。
自由曲は去年、東海大高輪台が全国大会で演奏し、今年のコンクール自由曲としてブレイクするだろうと思っていた「モンタニャールの詩」です。
調べてないのでわかりませんが、この曲を自由曲に選んだ学校は多かったと思います。
でも、結局、全国出場を果たせたのは、この学校だけ。
難しい曲なんですねぇ。
演奏の方は、去年の高輪台が物語を奏でているといった感じに比べ、少し余裕がないように聴こえました。
折角、美しく丁寧に演奏しているのにアルプスの風景がハッキリうかんで来なかった。[銅賞]

12番目は、常連の東京代表・東京都立片倉高等学校[(指揮)馬場正英 (課)Ⅴ(自)「交響曲」より 矢代秋雄/甘粕宏和]の登場です。
このところ全国大会金賞の取り続けているので非常に期待して聴きました。
うーん、課題曲は元気がよすぎるかなあ。
自由曲は難曲を馬場先生の指揮と共にエネルギッシュにこなしていました。
個々の演奏レベルの高さが十分、発揮された演奏です。
少し、パワーのレベルが高い数値を示していたようにも思いましたが…。
終わった瞬間、会場も岡山学芸館高校の華麗なる舞曲と同じくらい盛り上がっていました。
ただ、コンクールという場でこのような現代曲の演奏は、評価が難しいと思います。
私自身、意欲的な曲はコンクールで聴いてみたいですが、「勝つ」と言うことには疑問符が付くのでは?
本来なら、聴衆の心を揺り動かす演奏が一番、評価されてしかるべきですが、そうでないのが現実です。
全てとは言いませんが、ただ単純にミスがなかったり、アインザッツが揃っていたりの「減点法」で高評価されそうな演奏が金賞をとっていることも事実です。
しかし、聴衆はわかっています。
金賞を取るために自由曲をローテーションで替えてくる学校もある中、この精神は尊い。
どんどん、チャレンジしてほしい。[銀賞]

13番目は、東北代表・福島県立磐城高等学校[(指揮)根本直人 (課)Ⅳ(自)トッカータとフーガ ニ短調 J.S.バッハ/根本直人]の登場です。
トッカータとフーガですか。
私の学生時代は吹奏楽名門校なら必ず自由曲としてコンクールで演奏した曲で、非常に懐かしく思います。
今回は、根本先生自身の編曲でフレッシュなトッカータとフーガでした。
個人的には、打楽器とかを利用し、より効果的に仕上がった演奏だと思いました。
磐城高校の音色に非常にマッチした曲だし、今年あった悲劇に対する死生観とかの訴えすら感じました。
金賞は間違いないと思いましたが、残念な結果でした。[銀賞]

14番目は、東海代表・三重県立白子高等学校[(指揮)桐生智晃 (課)Ⅳ(自)歌劇「蝶々夫人」より プッチーニ/後藤 洋]です。
他の学校と違いステージ上の配置が中心に固まっているような気がしました。
2階席の端の方から見たので、違うかもしれませんが、そう感じたのは、この学校だけだったので…。
もし、そうだとしたら何か意味があるのでしょうか?
演奏は、ミスも少なく、全てにうまくまとまっており、コンクールのお手本のような演奏でした。
でも、私には印象が薄かった。
これは個人的な意見なので、m(_ _)m。[銀賞]

さあ、いよいよ、前半の部、最後の団体です。
東北代表・福島県立湯本高等学校[(指揮)橋本葉司 (課)Ⅴ(自)「ピアノ三重奏曲 イ短調」より 第2・第4楽章 ラヴェル/高木登古]。
ラヴェルにあう明るい音質、躍動感、華やかさ、透明感、全て兼ね備えていました。
でも、少しだけ慎重になりすぎていたかも。
ラヴェルだったら、もう少し型破りな感覚も必要ではないでしょうか。
来年に期待します。[銅賞]

それにしても、出演順13番と最後の磐城高校と湯本高校は、今年は震災、原発という二重苦で練習はおろか、学園生活も、ままならなかっただろうに、よく全国大会まで進まれました。
最大の賛辞を贈りたいと思います。

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高校前半の部の演奏が全て終了し、結果発表です。
全体の結果は上記の通りでしたが、それにしても金賞が3つだけとは…。
あと、埼玉栄をはじめとする結果に納得いかないまま、普門館を後にしました。(後半の部のチケットがないので…。)
モヤモヤしながら…。
しかし、自宅に帰り、すべての結果を見てみると驚きました。
後半の部、前半より1団体少ない14団体ながら、金賞が6つ。
倍です。
表彰式も前半後半、別々なので昨年までは賞がほぼ均等に分けられていたように感じていましたが、今年は違いました。
今まで何故か、数ヶ月後に遅れて発表される点数が同じでも前半後半の違いで金、銀、銅の各賞が違うという弊害があったのも確かです。
しかし、高校生の皆さんも明確な発表もなく、突然、審査基準が変更されるのもおかしな話だと思います。
全国大会金賞を目指して、努力している高校生の皆さんが余りにも不憫でなりません。
いっそのこと、時間的に厳しいかもしれませんが、昔のように統一した表彰式を行なっては、どうでしょうか?
そのためには、衆議院じゃないですが各支部の定数見直し、並びに併合も考慮したほうが、いいと思います。
また、金、銀、銅の賞制度は残していいと思いますが、同じ賞の中でも順位をつけたら、どうでしょう?(大昔は、そうしてましたよね?)
音楽コンクールって、順位つけますよね、普通。
いずれにせよ、今後もますます、吹奏楽が盛んになりますよう、吹奏楽ファンの切実な願いです。

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高校の後半の部の結果は以下の通りです。
http://www.ajba.or.jp/competition59koukou.htm
今日、職場・一般の部が青森市文化会館でおこなわれました。
これで第59回全日本吹奏楽コンクールのすべての日程が終了しました。
本来は、高校の部も先週の日曜日(ちょうど1週間前)終わったので、このようなブログを出すのも遅すぎですがご容赦ください。
これからも、いろんなコンサートを聴かせて頂いて、お伝えできればと思っております。
最後に地元の埼玉県、そして、出身地の鹿児島県、九州の団体が活躍されますこと心より願っております。
(特に春日部共栄高校、埼玉県立大宮高校、鹿児島情報高校、鹿児島県立松陽高校、鹿児島県立大島高校、ガンバレ!以上は個人的な意見です。)