浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

ぱんだウインドオーケストラ 第4回定期演奏会

2015-03-25 08:54:28 | 吹奏楽

私は、10代の頃より、いわゆる通っている学校の「吹奏楽部」というものに所属しており、卒業後も20代前半までは実際に“吹奏楽”のプレーヤーとして活動しておりました。

その後、様々な理由から、徐々に吹奏楽から疎遠になって行きました。

そして、20数年の時が経った時、人生の紆余曲折に痛めつけられた“心の隙間”を埋めようと求めたのが、“吹奏楽”でした。

何でその公演を知ったのか、何で突然行こうと思い立ったのか、詳しい事は忘れてしまったのですが、およそ20数年振りに行った“吹奏楽の演奏会”は、忘れもしない改装前の東京芸術劇場、2010年(平成22年)7月30日に行なわれた「淀川工科高校吹奏楽部」の東京公演でした…。

 

あれから、5年近くの年月が流れようとしています。

その後も、ある意味“生きがい”として、様々なコンサートに伺い、このブログも書かせて頂くようになりました。

その間、色々な感動にふれ、私としては大変、幸せでございました。

そんなある日、短い期間で、根本的に吹奏楽と向き合える公演が2回続いたのです…。

ひとつは、前回(3/13)聴かせて頂いた「芸劇ウインド・オーケストラ」。

井上道義先生のポリシーのもと、“新しい観点”から吹奏楽を“考えさせられる”公演は非常に新鮮で有意義なものでした。

そして、もうひとつが今回、ご紹介する「ぱんだウインドオーケストラ 第4回定期演奏会」です…。

 

「ぱんだウインドオーケストラ」の存在は以前から存じ上げておりました。

最初は、どこかの演奏会でもらったチラシか何かで知ったのかなぁ?

団体名のネーミングがある意味、斬新でインパクトがありましたね。(同時に“違和感”も覚えましたが…。)

チラシをよく見なかったので、どこかの市民バンドかなと思っておりましたが、後に東京藝大の学生さん達だと知って、がぜん興味が湧いてきました。

1~2年前から演奏会に行く機会を狙っておりましたが、日程が合わず今回へと至った次第です。

 

プログラムの《プロフィール》を見ますと「ぱんだウインドオーケストラ」と言うのは、2011年4月に東京藝術大学に入学した学生さん達を中心に結成されました。

演奏や指揮は、もちろん、全ての運営を学生の皆さんのみでやっているとのこと。

ところで、楽団名の「ぱんだウインドオーケストラ」というのは、2011年に上野動物園に新しいパンダが来た事にちなんで名付けられたようです。(調べてみますと「リーリー」「シンシン」と言うパンダが来園しているようですね。)

結成当時の学生の皆さんも4年が経ち、卒業されるとのこと。

つまり、学生としては最後の演奏会。(“卒業公演”なんですね。)

気合いが入っていることでしょう。

楽しみです。

 

開演前に舞台上では“ウェルカムコンサート”がありました。

小編成を対象にしたアンサンブルを披露して下さいました。

「ぱんだウインドオーケストラ」は、演奏者の増減が可能な、いわゆる“フレキシブル”な小編成のための楽曲にも取り組んでいるようです。(CDも出しているのですね。『コンサートのためのフレキシブル・レパートリー』)

2015年(平成27年)3月18日、水曜日。

場所は、大田区民ホール・アプリコ大ホール。

開演です。

 

[演奏]ぱんだウインドオーケストラ

[指揮]石坂 幸治

[コンサートマスター]上野 耕平

 

1.PANDASTIC!/前久保 諒

2.フランス組曲 ~Suite Franҫaise/D.ミヨー

  第1部〈ノルマンディ〉

  第2部〈ブルターニュ〉

  第3部〈イル・ド・フランス〉

  第4部〈アルザス・ロレーヌ〉

  第5部〈プロヴァンス〉

3.オール・デウーヴル ~Hors-d’œuvre/黛 敏郎(Arr. 長生 淳)

 

~休憩~

 

4.アルメニアン・ダンス パートⅠ ~Armenian Dances Part1/A.リード

  1.あんずの木 Tzirani Tzar

  2.やまうずらの歌 Gakavi Yerk

  3.おーい、ぼくのナザン Hoy, Nazan Eem

  4.アラガツ山 Alagyaz

  5.行け,行け Gna, Gna

5.交響曲 第0番 ~Symphony No.0/B.ピクール

  第1部〈太陽神「ラ」のファンファーレ〉

  第2部〈泉にて――不死鳥の歌と踊り〉

  第3部〈死と復活〉

  第4部〈ヘリオポリスへの飛行――「ラ」の祝典〉

 

まずは、金管楽器数名の有志の方が舞台に出てきてファンファーレの演奏。

柔らかい温かみのあるサウンドは、否が応でも雰囲気を盛り上げます…。

そして、演奏が始まりました。

 

最初の曲は、「PANDASTIC!」。

作曲科の前久保諒さんの作品です。

第2回の定期演奏会で初演されて以来、演奏会の幕開けの曲として定着しているようです。

明るく、さわやかで軽快な曲でした。

それにしても、東京藝大の皆さんのサウンドは素晴らしい!

厚くて、やわらかな音なのだけれども、キラキラ感が半端じゃないです。

以前に聴かせて頂いた「東京藝大ウィンドオーケストラ」の演奏会の時も思ったのですが、東京藝大の皆さんのサウンドは、他の音大にない良い意味で“特異”で素晴らしいサウンドを持っています。

なお、作曲者の前久保諒さんも会場にいらしてました。

 

さて、2曲目は、ミヨーの「フランス組曲」です。

フランス各地の『民謡』や『伝統的な素材』を取り入れた楽曲。

音色もガラッと雰囲気が変わって、より温かみが出てきたような。

あらためて思うのですが、個人の技量がすこぶる高い!

各セクションのサウンドが楽器として“交わり”、また、ハーモニーとして“交わり”、融和された世界をつくり上げておりました…。

少し、こじんまりとした感じもしましたが、それは決して演奏がマズイわけではなく、“演出”の成果だと思った次第。

実にノーブルな演奏でした。

 

次は、プログラムの演奏曲目を見た瞬間、とても興味を持った楽曲「オール・デウーヴル」。

黛敏郎先生の作品で長生淳先生が吹奏楽にアレンジされたとのこと。

そして、このアレンジが17年前に行なわれたにもかかわらず、未だに演奏されたことがないらしいのです。

この日、「ぱんだウインドオーケストラ」が演奏することによって“吹奏楽版”の“世界初演”になるのだそうです。

もともとはピアノ曲のようですが、なぜ、“吹奏楽版”が17年もの間、日の目を見なかったのか?

プログラムに載っていた音楽プロデューサーの磯田健一郎氏のコメントに“答え”がありましたので、ザックリと説明させて頂きます。

17年前、磯田氏はご自身の仕事の集大成として、ある企画を思いついておられました。それは、黛先生の“管楽オーケストラの作品をまとめ”、日本の代表的な指揮者、岩城宏之先生のタクトでCD化するというものでした。

そして、その中の1曲として、「オール・デウーヴル」がありました。

吹奏楽への編曲は、三善晃先生に“楽器用法を絶賛された”長生先生“しかいないだろう”と言う事で話は進んでいました。

ところが、収録の段階になって、黛先生のご遺族から“待った”が、かかってしまった。

それで、CDの計画も頓挫し、この「オール・デウーヴル(吹奏楽版)」も“お蔵入り”となってしまったのです…。

今回、この曲が初演されるにあたって、おそらく関係者の相当な御尽力があったことと推察いたします。

そして、演奏を聴かせて頂いた、我々観客は本当に幸せ者です。

 

「オール・デウーヴル」は、黛先生が東京藝術大学の前身の東京音楽学校の学生であった1946年の作。

全2楽章から構成されており、第1楽章が“ブギウギ”、第2楽章が“ルンバ”の要素で構成されています。

聴いてみて、ビックリしましたねぇ。

ジャズやラテンの雰囲気を保ちながら、きちんとクラシック音楽になっている。

と言って、ガーシュインみたいな感じではなく、もっとアカデミックで芸術性が高い。

不協和音や変拍子だらけなのですが、うまく既存の音楽と混じり合っていて聴いているだけで楽しくなる曲でした!

演奏も素晴らしかった!

特に団員、ひとりひとりの表現力には驚嘆です。(ソロ・パートなどは、ものすごかった!特にコンサートマスターの上野耕平さんは、「第6回アドルフ・サックス国際コンクール第2位」という輝かしい実績を持っているだけあって、素晴らしかった!)

この曲は楽譜を出版しているのでしょうか?

それとも、これから出版の予定があるのでしょうか?

広まれば、ものすごく流行りそうな曲です。(市立柏高校が演奏したら面白そう…。)

それにしても、作曲された1947年とは、昭和22年ですよね。

戦後の混乱の中、学生でありながら、このような素晴らしい曲を書くとは…。

黛先生は、偉大です!!

 

休憩のあと、心地よい余韻にひたっていたら、後半が始まるようです。

最初は、打楽器の皆さんのトライアングルによるパフォーマンス。

しっかりとした技術があってこその演奏でした。(非常に楽しめました。)

後半の口開けは、お馴染み「アルメニアン・ダンス パートⅠ」です。

今年は、作曲者のアルフレッド・リードの没後10年ということもあり、各地でリードにまつわるコンサートをしているような…。(例えば、4/5にTKWOが東京芸術劇場で“オール・リード”のプログラムをやるみたいですね。)

この曲は、皆さんご存じだと思いますので、グダグダと説明はしません。

ただヒトコト、感想だけ。

私は今まで、数多く生演奏の「アルメニアン・ダンス パートⅠ」を聴いてきました。

それを前提に申し上げるのですが、今回の演奏は、私の聴いた中では「ベスト5」に入る“名演”でした。(もちろん、プロも含めてです。)

うまく言い表せないのですが、率直に表現すると、技術を超えた“気持ちが伝わってくる演奏”。

そんな気がしました…。(表現が下手でスミマセン。)

 

続いて、「ぱんだウインドオーケストラ」の“制作”の担当である伊藤啓太さんが舞台に登場し、挨拶をされました。

このバンドに対するアツい思いが部外者の私にも強く感じられました。

 

最後の曲は、ピクール「交響曲 第0番」。

この曲は、2004年にベルギーの「聖セシリア吹奏楽団」の委嘱によって作曲されました。

テーマは、「聖セシリア吹奏楽団」のシンボルである“不死鳥”の伝説なのだそうです。

ところで、私は、ピクールさんという人を知りません。(ここが、ただの吹奏楽ファンのオヤジの悲しいところで、もっと、いろんな音楽的知識があれば、この拙いブログを読んで下さる皆様にたくさんの情報を伝えることが出来るのに…、といつも、歯がゆく思います。ただ、今は、インターネットと言う素晴らしい“ツール”があるので、助かってます。)

調べてみますと、バルト・ピクール氏、1972年にベルギー生まれと言いますから、まだ、40歳過ぎたばかりの方ですね。

この日、演奏された「交響曲 第0番」の他に「ガリア戦記」「地獄の踊り」といった曲が有名のようです。(私は、聴いた事がないので、youtubeで鑑賞させて頂きます。)

演奏は、期待通り、素晴らしいものでした。

何度も言いますけど、本当に個人の技術力が高い。

だから当然、“表現力”もしっかりしています。

いや、“表現力”と言うよりも、“演技力”と言った方がいいかも。

あまりに演奏に引き込まれて、曲の印象が記憶に残らなかった“浦和のオヤジ”でした…。

 

これで、プログラム上の演奏は終了しました。

そして、アンコール曲。

上記の写真の2曲です。

最初は、吹奏楽のコンサートで定番の「宝島」。

フュージョンのインストゥルメンタル・バンド、T-SQUARE(作曲当時は、THE SQUARE)の和泉宏隆氏の作曲で、真島俊夫先生が吹奏楽に編曲したことによって爆発的にヒットした楽曲です。

当然、とても、楽しい演奏でしたが、ノーブルさは漂っていましたよ。

 

そして、ここで、指揮の石坂幸治さんの挨拶。

石坂さんも「霧島国際音楽賞」を受賞されていたり、今後の活躍を期待される方です。

本当に「ぱんだウインドオーケストラ」を好きなんだなあと思う挨拶でした。

そして、学生としての、最後の「ぱんだウインドオーケストラ」に想いを込めて2曲目のアンコール曲が紹介されました。

それは、第53回(2005年)全日本吹奏楽コンクール課題曲「マーチ『春風』」。

何でも、「ぱんだウインドオーケストラ」が第一回目の演奏会の第一曲に演奏した曲なんだそうです。

ステキな演奏でした…。

 

「ぱんだウインドオーケストラ」は、今後は、年数回の演奏会を目標に活動するようです。

学生とは違う立場になる方が多くなるのでしょうが、これからも高レベルの演奏を聴かせて頂ければ幸いです。

 

「ぱんだウインドオーケストラ」、忘れられない団体になりました…。


芸劇ウインド・オーケストラ 第1回演奏会

2015-03-18 06:47:48 | 吹奏楽

東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)が2014年度より主催している事業に『芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミー』があります。

これは、若手演奏家を対象に「プロフェッショナル音楽家」を育成するプロジェクトです。

技術面では、東京佼成ウインドオーケストラ、キャリアアップのためのゼミを担当するのが上野学園大学とバックアップ体制も充実しています。

 

第1期メンバーの募集には342名の応募があり、オーディションにて38名が選ばれました。

ざっと言いますと10倍の“狭き門”。

その“アカデミー生”が行なう初めての演奏会が「芸劇ウインド・オーケストラ 第1回演奏会」です。

もちろん、開催場所は、東京・池袋駅西口にある東京芸術劇場です。

2015年(平成27年)3月13日、金曜日、19:00から始まりました。

 

[演奏]芸劇ウインド・オーケストラ

[指揮]井上 道義

 

吹奏楽のための序曲(F.メンデルスゾーン)

 

クロス・バイ・マーチ(三善 晃)

 

Time No Longer ~ もはや時がない ~for wind orchestra op.145(権代 敦彦)

〈芸劇委嘱作品世界初演〉

 

バレエ音楽より抜粋(P.チャイコフスキー)

   《白鳥の湖》より イントロダクション~ワルツ

   《眠りの森の美女》より パノラマ、花輪のワルツ

   《くるみ割り人形》より 

    マーチ、金平糖の踊り、中国の踊り、トレパック、花のワルツ

 

指揮は、井上道義先生。

この方を日本のクラシックファンで知らない人はいないと思います。(昨年は病気のために多少、療養されたようですが、この日は、素晴らしい指揮をみせて下さいました。)

ただ、井上先生に吹奏楽のイメージがあまりないので、どのような演奏を聴かせて頂けるのか“興味津々”でありました。

また、この日は、指揮と共に“司会進行”役も…。

ユニークなお話も多く、楽しかった。

 

ところで、アカデミー生は、38名とのことですが、曲によっては、人数不足だろうと思っていましたら、東京佼成ウインドオーケストラの方を中心に若干名、賛助出演されているようでした。(客席でもTKWOの方が複数名、聴いてらっしゃったような…。)

ホールの中に入って舞台を見てみると天井の反響板が下まで降りてきていて、舞台後方のパイプオルガンを隠しています。

視覚的には、パイプオルガンが見えた方がカッコイイんですが、演奏(響き)のことを考えたら、仕方がないのでしょうけど。

さあ、時間が来たようです。

 

最初の曲は、メンデルスゾーンの「吹奏楽のための序曲」。

なんとメンデルゾーン、15歳の時の作品らしい。

この曲、どこかで生演奏を聴いたことがあるんだけどなぁ。

どこだったか思い出せない…。

実にノーブルな演奏でした。

前半は、吹奏楽と言うよりも木管アンサンブルの要素が強かった。

でも、楽器の種類が多い事によって、ハーモニーが厚く感じました。

後半、テンポが速くなって、上品な快活さが曲を支配。

全く音色は違いますが、弦楽合奏のような感覚に陥いりました。

まるで、お花畑で聴いているような演奏でした…。

演奏後、井上先生が言っておられましたが、メンデルスゾーンが作曲した当時とは、同じ吹奏楽とは言え、多少、違う楽器編成だったとのこと。

つまり、現代吹奏楽ではポピュラーな“楽器”でも、その当時には“なかった楽器”がいくつかあったらしい。

当然、“サウンド”は多少、違うのでしょうが“ドイツ・ロマン派”の雰囲気は、きれいに表現されていたと思います。(私には、くわしくわかりませんが、上品さは、ものすごく伝わって来ました…。)

 

続いては、三善晃先生の「クロス・バイ・マーチ」。

1992年度、第40回全日本吹奏楽コンクールの課題曲です。

20年以上前の曲ですが、さすがに三善先生が作られた名曲だけあって、現在でも比較的演奏される機会が多い曲ですね。

それにしても、驚きました、芸劇ウインド・オーケストラ。

メンデルスゾーンの時と音色がガラっと変わりました…。

あっと言う間に現代“吹奏楽”のサウンドに!

それもアメリカ的なシャープな感じです。

躍動感あふれる素晴らしい演奏でした!

ただ、メンデルゾーンで感じた上品さは失ってなかった…。

 

次は、今回の演奏会のために委嘱された権代敦彦氏の作品です。

「Time No Longer ~ もはや時がない ~for wind orchestra op.145」。

曲名は、新約聖書の最後に位置する“ヨハネの黙示録”の一節なのだそうです。

私は、聖書には疎いので、よくわからないのですが、“ヨハネの黙示録”は、預言書のようなものらしい。

それにしても、~ もはや時がない ~とは、穏やかな表現ではありません。

ただ、“解説”によりますと、決して悲観的な意味ではなく“神の国の完成”が近づいているので、~ もはや時がない ~のだそうです。(私には、難しくて、わかりません…。)

曲は、重厚なものでした。

現代最先端の権代先生が作曲された曲なので、私のような素人のオヤジには少々、難しいものでしたが、何か、飲み込まれて行くような迫力がありました。

さすがにオーディションで選ばれたアカデミー生だけあって、“テクニックの妙”を感じました。

難しい曲なのに私のような素人にでも抵抗なくサウンドを受け入れられるのは、表現力のなせる技なのでしょう。

何か、不思議な気持ちになりました…。

曲が終わったあと、指揮の井上先生の手招きで、権代先生がステージに上がられ楽しくお話をして下さいました。

 

20分間の休憩です。

前半を終わって思う事。

まず、アカデミー生の皆さんの演奏技術の高さに驚きました。

そして、極端に言えば、「吹奏楽団」と言うより、「ソリスト」が集まって吹奏楽の演奏をしているような気がしました。

ただ、サウンドは見事に“融和”されていて、実に自然に聴ける演奏ばかりでした。

 

さあ、後半は、チャイコフスキーの“バレエ音楽”集です。

しかしながら、本音で言うと少し、不満な選曲でした。

本当なら、トリの曲はもっと華やかで派手な曲をやって欲しかった。(個人的な趣味としては、レスピーギとかラヴェルの曲とか。)

しかし、演奏を聴き終った瞬間に理解できたのです。

なぜ、この選曲にしたか?の意味が。

 

3つの“バレエ音楽”の演奏の合間のMCで井上先生は、このような意味のことをおっしゃいました。

「本当なら、オーケストラの曲なんだから、ここに弦楽器が持ってくればいいじゃないかと皆さん、思うでしょうが、そう言うわけにはいかない。だから私は“別のもの”をつくる。」(正確なところは覚えてないので、間違っていたら、ご容赦下さい。)

私は、衝撃を受けましたね!

だって、私が何となく思っていたことを具体的に言葉に表し、また、演奏で示して下さったのですから。

吹奏楽曲を吹奏楽団が演奏するのは当たり前です。

それでは、オーケストラのアレンジ曲を演奏するのは何ゆえか?

オーケストラの音色に近付きたい!?

どんなに頑張っても弦楽器の深み、重厚なサウンドは、管楽器には表現できないと思います。

それならば、どうすれば良いか?

「A」という管弦楽曲を「A’」という吹奏楽曲に生まれ変わらせればよいのではないか。

比較対象とはなりえないものに変化させればよいのではないか。

難しくて表現が出来ないのですが、そんな気がします。

 

吹奏楽コンクールでは、根強い言い伝えとして、“チャイコフスキーは鬼門”というのを聞いた事があります。

要は、弦楽器が多用されているチャイコフスキーの曲は表現するのが難しく、不利だと。

でも、今回の演奏は、“オーケストラを意識した吹奏楽”でも“ただの吹奏楽”でもなく、全く新しいジャンルの“管楽器を使った音楽”を聴かせて頂いたような気がしました…。

井上先生、アカデミー生の皆さんに感謝いたします!

(全部、素晴らしい演奏だったのですが、特に最後の「くるみ割り人形」。圧巻でした!ブラヴォーです!!)

 

ステキな演奏に拍手は鳴り止みません。

でも、終わりの時がやって来ました…。

井上先生の「アンコールはありません!」の“雄叫び?”と共にコンサートは終了。

 

池袋駅から埼京線に乗り込んだ“浦和のオヤジ”も幸せな気分に浸りながら、家路につきました。

またひとつ、楽しみなコンサートが増えたようです…。


21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”

2015-03-12 20:05:19 | 吹奏楽

私には、毎年楽しみにしているコンサートがいくつかあります。

もちろん、好きな吹奏楽団の定期演奏会は、その中に含まれますが、それとは別に特別なコンサートとして、“3つの演奏会”を個人的に、非常に待ち遠しく感じています…。

ひとつは、吹奏楽コンクール全国大会です。

やはり、吹奏楽を愛する者にとって、全国大会は、その年の最大のイベントです。

全国各地の選ばれた精鋭たちが一同に会して競い合う様は、まさに“壮観”のひと言。

 

二つめは、「なにわ《オーケストラル》ウィンズ」です。

毎年、全国の(おもに)オーケストラで活躍されているプロの管楽器奏者の方々が集まって、大阪と東京で吹奏楽のコンサートを行うという催しです。

プロだから、あたり前と言えば当たり前なのだけれど、実に見事な演奏なんですよ、これが。

東京佼成とかシエナとかの吹奏楽専門のプロ吹奏楽団とは違う味わいがあるんです…。

敢えて表現させて頂ければ、サッカーに置き換えると「なにわ」が“ナショナルチーム”とするならば、「佼成、シエナ、市音」なんかは、“クラブチーム”と言ったところでしょうか?(練習量が多いので“クラブチーム”のテクニックは素晴らしいのですが、“ハート”の部分での高揚感は“ナショナルチーム”の方が感じますよね。それと同じように思います。)

本音で毎年、「なにわ」のコンサートが行なわれるゴールデンウィークが待ち遠しいですね。

 

そして、三つめが今回、ご紹介させて頂く、「21世紀の吹奏楽“響宴”」です。

未発表あるいは、未出版の吹奏楽の新曲をアマチュアとは言え、素晴らしいテクニックを持った吹奏楽団の皆さんが演奏するコンサートです。

内容を聞いただけで、私のような吹奏楽大好き人間は興奮してしまいますよ!

私も今年で3回目の“響宴”となりました。

どんな素晴らしい曲を聴かせて頂けるのか楽しみです。

 

2015年(平成27年)3月8日、日曜日。

お馴染みの文京シビックホールへと向かいます…。

一昨年、初めて“響宴”を聴かせて頂いた時のブログの記事(もちろん、この“浦和河童便り”の記事です)を読み返してみると、ポカポカ陽気で電車に冷房が入っていて、風が強かったなんて書いてありますけど、今年は全く違います。

冬の訪れが早く、そして、いつまでも寒さが続いている…、そんな気がしますね。

 

「21世紀の吹奏楽“響宴”」で演奏される楽曲は、応募された未発表ないしは未出版の楽曲の邦人作品の中から、選曲委員によって選考されたものです。

プログラムで確認しますと今年は、“応募のあった103作品と昨年からの越年作品9作品の、合計117作品の中から選ばれ”たそうです。

そうは言うものの、作曲者の名前を拝見すると私でも知っている著名な方が多いようです…。

さあ、無駄話をしているうちに「21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”」が始まるようです。

 

[司会]賀内 隆弘

 

司会は、秋田放送アナウンサーで秋田吹奏楽団事務局長の賀内隆弘さん。(毎年、司会をされていますね。“響宴”の会員でもあるようです。)

なお、各団体の演奏レベルは、かなりの高水準で非常に満足できるものでした。

したがって、今回は、楽曲の紹介や私個人の感想が主体になっています。

当然、“未発表・未出版”という知られていない曲ばかりですので、プログラムの“曲目解説”に頼らざるを得ない事をお許し下さい。

 

[演奏]川越奏和奏友会吹奏楽団

[指揮]佐藤 正人

 

◆  Fanfare for wind orchestra “In Triumph”(下田 和輝)

◆  海の歌 The Song of Sea(福田 洋介)

◆  不条理~何故に~ Absurdity, why?(飯島 俊成)

◆  吹奏楽のための交響的断章 Symphonic Movement of Wind Orchestra(福島 弘和)

 

まず、“我が”埼玉の川越奏和から。

最初の曲は「Fanfare for wind orchestra “In Triumph”」。

この曲は、大江戸シンフォニックウィンドオーケストラの第3回定期演奏会作品公募の入選作品です。(2014年5月6日、同団により初演。)

短い曲では、ありましたが、ファンファーレが目立つさわやかな曲でした。

作曲者の下田和輝氏も1992年生まれと言いますから、20代前半の若さ。

今後の活躍に期待します。

続いての曲は、2012年度の吹奏楽コンクール課題曲の「さくらのうた」や同じく、2004年度の「吹奏楽のための“風の舞”」で私も存じ上げております福田洋介先生の作品です。(プログラムの福田氏のプロフィールを見て初めて知ったのですが、作編曲は独学だそうな。すごいですな。)

曲名の「海の歌」と言えば、私のようなオヤジにはR.ミッチェルの作品を思い出してしまいます…。

ゆったりとした美しい曲でした。

“あらぶる”海ではなく、おだやかで大きな世界を表現されていて、心が和みました…。(海上自衛隊東京音楽隊2013年委嘱作品)

続いては、「不条理 Absurdity, why?」。

“響宴”実行委員でもある飯島俊成先生の作品です。

現在、東池袋のサンシャインシティのあたりにあった巣鴨プリズン。

そこには、先の戦争の日本の敗戦直後、多くの“戦犯”が収監されました。

戦争に負けたとは言え、まともな裁判も受けられないまま、多くの日本人が処刑されたのです。(中には、「冤罪」であった方も多数いたようです。)

このような「不条理」に想いを込めて作曲されたのが、この曲。(現在、世界で横行しているテロで理不尽にも命を落とされる方がいらっしゃる事実を鑑みても、決して忘れてはならないのが、“命の尊さ”ですね。)

曲調も激しさだけではなく、透明感や深さを感じるものでした…。

恐ろしく、川越奏和に合った曲だと思いました。

見事な“表現力”でした。

そして、個人的に私がこの日の楽曲でイチバン好きな曲でした…。(2012年豊島吹奏楽団委嘱作品。同年、大釜宏之氏の指揮にて初演。)

川越奏和、最後の曲は、2013年に常総学院高等学校吹奏楽部の委嘱によって作曲された「吹奏楽のための交響的断章」。

ご存知、福島弘和先生の作品です。

福島先生の曲らしい華やかで、ドラマチックな展開をする曲でした。

このような難しい曲を川越奏和のような実力のあるバンドが演奏すると際立ちますね。

期待に100%応えた演奏でした。

 

ここで、この“響宴”の代表(“21世紀の吹奏楽”実行委員会 代表)である小澤俊朗先生がご挨拶され、この催しの意義を語って下さいました。

 

[演奏]浜松交響吹奏楽団

[指揮]浅田 享

 

◆  アストロラーブ製作所 Astrolabe Factory(伊左治 直)

◆  “Oneiros”〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品初演〉(保科 洋)

◆  デカンショ・ラプソディ Dekansho Rhapsody(酒井 格)

◆  コンサートマーチ「海原を越えて」 Concert March “Beyond The Ocean”(渡邉 大海)

 

2番目の団体は、浜松交響吹奏楽団。

これも、素晴らしい団体です。

浜松と言えばヤマハ吹奏楽団を思い出さざるを得ませんが、それにも引けをとらぬ活躍は素晴らしいものがあります。

指揮者で音楽監督の浅田氏は、もともとヤマハ吹奏楽団にいた方のようですね。

現在は、ヤマハの管打楽器の製造会社の社長をされているとか。

やっぱり、浜松は、「ヤマハ」の街なのですね…。

最初の曲は、「アストロラーブ製作所」。

「アストロラーブ」とは、“中世イスラム圏で使われた天体の位置を調べる道具”なのだそうです。

この曲は、アラビア旅行の折に未だにこの「アストロラーブ」を製造する工場に迷い込んでしまったことを題材にしています。

太鼓のフチ(打楽器に詳しくないので何と言うのかわかりません)をまるでメトロノームのような、ある一定の間隔で叩いているのが、“工場”の感じを出していましたし、神秘的な雰囲気も醸し出しておりました。

そして、そのエキゾチックな流れが曲全体を支配している面白い曲でした。

是非、もう一度、聴いてみたい曲です。

次は、保科洋先生の曲。

この曲は、昨年より始められた〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品〉です。

小澤先生も「ご挨拶」の中でおしゃっておられましたが、“響宴”で演奏される曲は、大編成で大曲になりがちです。

そこで、〈スクールバンド・プロジェクト〉として、“中・高スクールバンド、特に小編成でも取り組むことのできる教育的な作品を開発、発信する目的”で作曲家の先生方に委嘱作品を書いて頂くと言う試みなのだそうです。(今年は、保科洋先生と長生淳先生が委嘱作品を書かれました。)

少子化で若い世代の人口が少なくなってきている昨今、吹奏楽部員の人数が集まらない学校もあると思われますので、すごく良い企画だと思います。

さて、話を曲にもどしましょう。

曲名にある「“Oneiros”(オネイロス)」とは、ギリシャ神話の夢の神。

保科先生は、“この曲はほろ苦い青春の想い出を夢に託して回想する老人の心境を綴ったもの”とおっしゃっておられます。

きっと、ご自身が若者たちへ未来を託す気持ちを表現されているのだと思います。

少人数で演奏されたにもかかわらず、厚みのある曲に聴こえます。(もちろん、浜松交響吹奏楽団の“技量”があっての賜物です。)

ゆったりとした曲調が“時間”と“歴史”を感じさせる名曲でした…。

続いては、人気作曲家、酒井格先生の「デカンショ・ラプソディ」。

こちらは、兵庫県篠山市で“広く愛されている”「デカンショ節」をモチーフにした楽曲です。

デカンショ節のメロディが“テンポや演奏する楽器を変え、都合11回繰り返す、変奏曲風スタイル”なのだそうです。

民謡的な泥臭さを感じさせない現代的なアレンジは、若い学生さんたちにも違和感なく受け入れられる楽曲だと思います。

なお、この曲は、地元、兵庫県篠山市の市民バンド「篠山吹奏楽団」の委嘱で作曲され、2013年12月7日に第30回定期演奏会(指揮:尾花尚史)で初演されたそうです。

また、“響宴”の演奏前に篠山市長からの“祝電”が紹介されたのが印象的でした…。

浜松交響吹奏楽団の演奏の最後の曲は、海上自衛隊佐世保音楽隊の副隊長、海上自衛官の渡邉大海氏の作品でコンサートマーチ「海原を越えて」。

渡邉1等海尉(階級だそうです)も“曲の解説”で言われているように海の上での心情を描いた明るい曲です。

おおらかな自然と立ち向かう自衛官の姿を想像してしまう、ハツラツとした曲でした。

 

一回目の休憩に入りました。

そして、川越奏和奏友会吹奏楽団、浜松交響吹奏楽団と実力派の重厚なサウンドを聴かせて頂き、私は大満足でありました。

それと言い忘れましたが、委嘱作品を書かれた保科洋先生を除いて、他の全員の作曲者が会場にお見えになっており、自分の曲が終わるたびに立ち上がり、観客の声援を受けておられました…。

休憩後は酒井根中学。

中学生かぁ、と思って侮っていましたら、とんでもない事に。

それでは、続けてお読み下さい…。

 

[演奏]千葉県柏市立酒井根中学校吹奏楽部

[指揮]犬塚 禎浩

 

◆  セレモニアル・ファンファーレ Ceremonial Fanfare(内藤 友樹)

◆  Lament(松下 倫士)

◆  ソナチネ Sonatine for Wind Orchestra(河邊 一彦)

◆  季のまど Perspective on Time〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品初演〉(長生 淳)

 

三つ目のの演奏団体は、柏市立酒井根中学校吹奏楽部の皆さん。

近年では、中学校のトップバンドであると言っても過言ではないでしょう。

今まで全国大会に10回出場し、そのうち8回が金賞。(しかも、2006年からは、7回連続。但し、「3出」休み除く。)

輝かしい成績です。

でもね、所詮、中学生ですよね。

ここ数年、中学校のバンドを何回か聴いた事があります。(うまいのも、下手なのも…。失礼!悪意のある発言ではありませんので悪しからず…。)

しかし、高校大学、職場一般、音大、プロのバンドに比べて聴く機会が圧倒的に少なかった。(私自身が“避けていた”と言う意味で。)

確かにコンクールの支部大会以上に出場する団体になると、テクニックに問題はなかった。

音程、リズム、アンサンブル…、どれをとっても、そのへんの高校バンドより遥かにうまい。

ですが、サウンドが…薄いんです。

そのため、ハーモニーやサウンドが“融合”しないから、平坦な演奏になってしまう。

と同時に曲にも“感情”を乗せにくい…。

中学校の吹奏楽部に私は以上のような印象を持っておりました、酒井根中の演奏が始まるまでは…。

最初の曲は、内藤友樹先生の「セレモニアル・ファンファーレ」。

この曲の“冒頭”部は、2012年に岐阜県で開催された『ぎふ清流国体』及び『全国障害者スポーツ大会』の“開式通告”として演奏され、その後、航空自衛隊中部航空音楽隊の依頼により、加筆された楽曲です。(2013年、航空自衛隊中部航空音楽隊により初演。)

岐阜県の「山」「川」と言った自然をイメージした曲は、“素朴さ”や“透明感”を内包しながら、ファンファーレを中心とした明るい曲でした。

実際に聴かせて頂いて、“セレモニー”に相応しい曲だと実感した次第。

次の曲は、松下倫士先生の「Lament」。

東京都立尾山台高等学校の委嘱により、吹奏楽コンクール小編成の部の自由曲として作曲されました。

旧約聖書の中の「哀歌」をテーマにした宗教色の強い曲ですが、小編成向きにも関わらず、曲の印象がかなり重厚でスケールの大きい演奏に感じました。

それと、特筆すべきは、曲冒頭のフルート・ソロの音色、テクニックとも素晴らしかった!

3曲目、「ソナチネ」。

昨年の3月まで、海上自衛隊東京音楽隊の隊長を務められていた河邊一彦先生の曲です。(自衛隊時代も海上自衛隊初のソプラノ歌手、三宅友佳里[3等海曹]さんとコラボした「祈り~a Prayer」が大ヒットしましたね。)

クラシック音楽にとって重要である“ソナタ形式”を題材にしたものですね。

“楽典”に関しては、素人のオヤジなので、詳しくはわかりませんが、河邊先生らしいメロディラインの美しい曲でした。

今後も“美しい曲”を書き続けて頂きたい。

期待してます。

酒井根中、最後の演奏曲は、〈スクールバンド・プロジェクト委嘱作品〉でもある長生淳先生の「季のまど」。(「季のまど」は、“ときのまど”と読むそうです。)

長生先生の解説によると「季のまど」とは、“人生の中でのいろいろな時期を眺める窓”とのこと。

ひとりの人間の人生の節目を振り返る“瞬間”という意味合いに近いのでしょうか?(英題の“perspective”の方が分かりやすいような…。)

小編成であろうとも長生先生の楽曲らしい“独特のうねり(流れ)”は健在でした。

また、演奏人数の少ないことを感じさせない重厚なサウンドは作り出す技術は、素晴らしかった。(長尾先生にしろ、保科先生にしろ、スゴい方です…。)

センチメンタルな感じもする曲調の部分は、私のようなオヤジには、心にグッとしみ入りましたね…。

それにしても、酒井根中の演奏は凄かった!

オヤジは、感動しました。

客席で目をつぶって聴いていると他の大人のバンドと遜色ないサウンドが私の脳裏に響いてきます。

でも、目をあけて演奏者の姿を見てみると、まだ、あどけない少女たち。(男子もいましたが異常に“女子率”が高かったので…。)

これが現実なのか、夢なのか、わからなくなってしまいました…。

どうしたら、中学生にあのようなサウンドやテクニックを指導できるのでしょうか?

犬塚先生、教えて下さい!

 

ここで、舞台転換の合間に選曲委員長である後藤洋先生の登場。(私のようなオヤジには、後藤先生が高校生の時に作曲され、吹奏楽コンクール課題曲となった「即興曲〔1967年度全日本吹奏楽コンクール課題曲A」が思い出されてなりません。〕

〈スクールバンド・プロジェクト〉や“著作権”の事を中心にお話されました。

 

次は、グラールウインドオーケストラ。

それにしても、昨年の全国大会は、惜しかった。

一昨年に真島俊夫先生の「レント・ラメントーソ」という名曲で熱演したのにも関わらず、東関東大会敗退の憂き目にあいました。

復活をかけて挑んだ昨年、天野正道先生の「トラジニ・ソナタ・ナ・ジュレバカ・イ・プォーヴェ」で見事、全国大会出場。

しかし、全国大会での結果は、惜しくも銀賞。

とにかく、頑張って頂きたい。

 

[演奏]グラールウインドオーケストラ

[指揮]天野 正道

 

◆  邯鄲の夢(八木澤 教司)

◆  神々の系図~神と人間が共存する土地へ~(清水 大輔)

◆  AMPLITUDE(本多 俊之)

 

指揮は、天野正道先生。

本音で言うと天野先生の曲も聴きたかったかなぁ。

最初の曲は、「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」。

人間の栄枯盛衰が如何に、儚いかを説いた中国の故事ですね。

“標題音楽”らしい起伏にとんだ曲でした。

八木澤先生らしいドラマチックなところもあって、まるで、映画音楽のようでもありました。

この曲は、浜松交響吹奏楽団の第36回定期演奏会なために委嘱された曲で、2009年に同団によって初演されました。

今回の“響宴”には、浜松交響吹奏楽団も出演しておりますが、“本家”ではなく、他の団体で演奏を聴けるのも、この“響宴”の醍醐味のひとつですね。(基本的に“響宴”では“初演団体”ではないバンドが演奏するような気がします。)

続いては、この方も人気の作曲家である清水大輔先生の作品。

「神々の系図」とは、神々しい曲名です。

“天孫降臨”の地と伝承される宮崎県。

その宮崎県で活動されている宮崎市民吹奏楽団の委嘱で作曲されました。

プログラムの楽曲解説を拝見しますと清水先生ご自身も団員の方の案内で『実際に高千穂や、夜神楽、神話にまつわる場所』を回られたようですね。

美しく厳かで、どこか懐かしくも感じる前半部分。

そして、ストラヴィンスキーの「春の祭典」とリンクしたという“夜神楽”の部分は、神秘的でもあり土俗的でもあり、曲名に合った雰囲気を十二分に感じさせて頂きました。

曲の終り、突然、ピッコロ奏者が立ちあがり、ソロを吹きながら、スタスタと歩き出す…。

そして、ひとり、舞台上手(かみて)へと去っていく…。

曲の雰囲気にあった効果的な演出だと思いました。

それと、曲の最初の部分と終わりの部分で金管楽器の皆さんが“楽器を吹く”のではなく、“楽器に息を吹き込む”事によって、まるでウインドマシーンのような“効果音”を出していたのが面白かった。(神秘的な「風の音」に聴こえた…。)

グラール、最後の曲は、本多俊之氏の「AMPLITUDE」。

ご自身もサックスのソリストとして参加されました。

この曲は、昨年の5月、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の第48回定期演奏会(第22回“吹奏楽の響き”)にて福本信太郎先生の指揮で初演されました。

リベルテファンの私としては、残念なことに、この時の定演は行ってないんですよね。(ここ数年、年2回の定期演奏会には必ず行っていたのに…。この時だけ仕事で行けなかった…。)

曲名の「AMPLITUDE」は、辞書を引くと「広さ・豊富・振幅」って出てきます。(ざっくり言うと何か物事が“広がっていく”って意味合いなのでしょうか?)

その名のとおり、躍動感あふれる曲でした。

ちなみに曲名は、リベルテのメンバーと観客からの公募で選ばれたとのこと。(リベルテ団員、堀越巌さんのアイデアを採用。)

一流のサックス奏者、本多先生とジャズにも造詣が深い指揮の天野先生、そして、“大人の楽団”グラールウインドオーケストラ。

素晴らしい演奏にならない方がオカシイ。

ノリノリの10分余りでした…。

 

10分の休憩ののち、いよいよ最後の団体、神奈川大学吹奏楽部の登場です。

少し、“真面目すぎる”傾向が無きにしも非ずですが、技術、表現力、どれをとっても、日本のアマチュア大学吹奏楽団の中では、ナンバーワンと言わざるを得ない団体です。

それにしても、部門を問わず、アマチュアトップバンドの演奏を1日で聴けるのですから、“響宴”ってホントに素晴らしい!

 

[演奏]神奈川大学吹奏楽部

[指揮]小澤 俊朗

 

◆  行進曲「イーグル・アンド・ソード」(星出 尚志)

◆  ゆりのねゆらり(井澗 昌樹)

◆  Respiration(堀田 庸元)

◆  Windjammer(真島 俊夫)

 

最初の曲は、星出尚志先生のマーチですね。

行進曲「イーグル・アンド・ソード」。

陸上自衛隊第12音楽隊の委嘱作品で、所属する第12旅団の部隊マークに“鷲”と“日本刀”描かれているので、この曲名になりました。

私の個人的な印象としては、荒々しいというより、格調高い…、むしろ上品な曲に聴こえました。

とても、ステキなマーチでした。

次は、井澗(いたに)昌樹先生の「ゆりのねゆらり」です。

2013年12月23日、アンサンブルリベルテの第47回定期演奏会の委嘱作品として初演されました。(幸いなことに、この曲は初演に“立ち会わせて”頂きました。)

井澗先生の作品は「Bye Bye Violet」が有名ですよね。

コンクール自由曲としても人気が高い。

その特徴は、井澗先生独特の“激しさの表現”にあると素人なりに考えます。

ハッキリとはわからないのですが、“激しい感情”が曲に表現されている…。

それは、決して不快なものではないのですが、聴く人間の感情を揺さぶる力を持っているような…。

今回の「ゆりのねゆらり」にも同じようなことを感じました。

私のボキャブラリーが貧困なせいか、上手く伝えられないもどかしさがあるのですが、きっと聴けばわかります。

機会があったら、是非、聴かれることをおススメします。

3曲目は、「Respiration」。

川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の第48回定期演奏会で委嘱作品として初演されました。(この時の定期演奏会には、私は行ってないのです…。)

「Respiration」は、“呼吸”という意味なのだそうです。

演奏している楽器の奏でる音楽(演奏行為)を“呼吸”のような生命活動と意図しているのでしょうか?

解説を読んでいると、そんな意味合いにもとれましたが。

そう言えば、第16回の“響宴”の時にも作曲者の堀田庸元先生の「Prelude and Fugue」が演奏されました。

スケールが大きく、ドラマチックな曲調に大変感動した覚えがあります。(第16回では、“私がイチバン好きな曲だった”とその時のブログ記事に書いてあります。)

なぜか個人的に堀田先生の曲って“シックリ”くるんですよね。

「Respiration」も私の中にいつのまにか入り込んできました…。

まるで、“呼吸”のように普段は意識しないのに絶えず行なっていないといけないものとして…。

さあ、これが本当の最期、お馴染み真島俊夫先生の「Windjammer(ウインドジャマー)」。

“ウインドジャマー”とは「帆船」という意味。

この曲は、横浜市立桜丘高等学校吹奏楽部の創部50周年記念作品です。

解説を見ますと『理想に燃えて飛び立とうとする若人の気持ち』を出港しようとする『Windjammer(ウインドジャマー)になぞらえて』書かれたそうです。(また、この“帆船”は「日本丸」をイメージしているそうです。)

明るくさわやかな曲調は、真島先生らしい名曲だと思いました。

広く、中高生の皆さんに演奏して頂きたいですね。

ちなみに司会の賀内さんによると真島先生は、“響宴”18回のうち、第15回を除いて、全ての回で楽曲を演奏されているようです。(余談ですが…。)

 

さあ、全ての楽曲紹介が終わりました。

最後は、舞台上に作曲者と各演奏団体の指揮者が全員、登壇し、挨拶されました。(所用でお見えにならなかった保科洋先生を除く。)

錚々たる顔ぶれです。

この時が、ずっと続けばいいのに…、と心から思った“浦和のオヤジ”でした…。

それにしても、“吹奏楽”って、本当に楽しい!


東京都大学吹奏楽連盟 第54回合同演奏会

2015-03-04 03:10:08 | 吹奏楽

川口リリアのメインホールに訪れるのは、昨年末のアンサンブルリベルテの定期演奏会以来です。

今回の目的は、「東京都大学吹奏楽連盟」の合同演奏会のためです。

もう、54回目になるんだそうな。

恥ずかしながら、このような演奏会が開催されているとは、知らなかった…。

どこかの演奏会でたまたまもらったチラシで知って、この日に至った次第。

 

開演は、18:30なのですが、チケットを持っていないので当日券販売開始の17:30を目途に川口駅に到着。

改札を抜けて左側、西口方面へ。

駅のコンコースを抜けると、そこは川口総合文化センター(リリア)の目の前です。

エントランスに入ると…、すごい長蛇の列!?

アレッ、チケット持ってなきゃダメかな、と思っていたら、その列は開場を待つ人の列らしい。

無事、チケットは購入でき、“長蛇の列”の最後尾に並びました…。

それにしても開場30分前から、この“盛況”とは、よっぽど人気の高い演奏会なんだろうなと思った次第。(エントランスに飾ってあった“雛人形”がとってもキレイでした…。)

 

ナンダカンダするうちに開場となり、ホール内へなだれ込みます。

本来は、あまり興味がないのですが、ステージドリルをやるみたいなんで、全体を俯瞰できるように、2階席の前列の方に陣取りました。(私と同じ考えの方が多かったようで、短い時間で2階席は、ほぼ“満席”に近い状態になりました。)

それと、もうひとつ2階席に行った理由。

川口リリアのメインホールって、響きもよく大変素晴らしいホールなのだけれど、少し客席の傾斜(勾配)がキツい。

だから、客席部分の奥行きがない。(私は、そう感じます。)

なのに、2002席という“大容量”に作っているものだから、2階席がせり出してきていて、他のホールと比較して、1階席の上に“屋根”のある部分が多いような気がします。(1階席の半分近くまで2階席の“屋根”が覆っているような…。)

当然、頭の上に“屋根”が「音響」も違います…。(ちなみに2階席は、とても素晴らしい“響き”でした。)

 

2015年(平成27年)2月27日、金曜日。18:30。

さあ、総勢242名のパフォーマンスが始まります!

 

【第Ⅰ部】Marching Stage

 

『サウンド・オブ・ミュージック』よりThe Sound of Music(リチャード・ロジャース)

『レ・ミゼラブル』よりOn My Own / Do You Hear the People Sing ?(クロード=ミシェル・シェーンベルク)

『ウエスト・サイド物語』よりAmerica / Gee, Officer Krupke(レナード・バーンスタイン)

『オペラ座の怪人』よりAll I Ask of You(アンドリュー・ロイド・ウェバー)

[Drum Major]中西 亮子(東洋大学)、手嶋 亜希(東京大学)

[Guard Chief]佐藤 美穂(明治大学)、土谷 仁美(青山学院大学)

Ⅰ部運営スタッフ 木島 亜美(明治学院大学)、佐藤 央弥(大東文化大学)

         高橋 奈々(明治学院大学)

 

【第Ⅱ部】Pops Stage

 

ジャパニーズ・グラフィティⅫ(arr. 星出 尚志)

情熱大陸(葉加瀬 太郎)

マイ・ウェイ(J. ルヴォー / C. フランソワ)

オーメンズ・オブ・ラブ(和泉 宏隆)

[指揮]山野井 大輝(駒澤大学)、船木 宏太郎(東京農業大学)

Ⅱ部運営スタッフ 安藤 咲貴(立教大学)、橋床 高史(東洋大学)

 

【第Ⅲ部】Symphonic Stage

 

ファンファーレ「天と大地からの恵み」(八木澤 教司)

ウィークエンド・イン・ニューヨーク(フィリップ・スパーク)

歌劇「トゥーランドット」より(ジャコモ・プッチーニ)

[指揮]平地 将成(明星大学)、水野 真輝(創価大学)

Ⅲ部スタッフ 笠井 一利(武蔵野大学)、佐藤 佳鈴(亜細亜大学)

       中野 みさと(明星大学)

 

[司会]川勝 亮太郎

 

最初は、『Marching Stage』です。

反響板も取り払われ、舞台では広い空間が姿をみせています。

曲目はミュージカルの名曲ばかりですね。

普段は違う大学に通う皆さんですが、そうは思えないまとまった演技を見せて下さいました。

視覚的に楽しめたと言ってよいでしょう。

ただ、私がいつも申し上げていることですが、やはり、“動きながら演奏をする”と言うことに非常に違和感を感ぜざるを得ません。

だからと言って、否定しようとは思いませんが、マーチングは、“音楽”“吹奏楽”と言うよりも“スポーツ”の部類に入るような気がしてなりません。(個人的意見です。)

 

ところで、司会の川勝亮太郎さんは、良い声でしたね。

川勝さんと言えば、昨年の5月、東京芸術劇場で行なわれたNTT東日本東京の定期演奏会で清水大輔先生の「ロスト・ムーン~マン・オン・ザ・ムーン エピソード2」のナレーションをされていたのを覚えています。

映画にもなった“アポロ13号”の事件を扱った曲でしたが、ナレーションが実に効果的でした…。

 

第Ⅱ部は、『Pops Stage』.

我々が聴き慣れている名曲を堪能させて頂きました…。

「情熱大陸」、あのようにジャズっぽいカタチで、オーボエの方々のパフォーマンスを聴かせて頂いたのは、とても新鮮で見事でした。

ただ、個人的な感想を言わせて頂くなら、出来れば、あのフレーズは、ソプラノサックスでやった方が良かったかなぁ…。

「マイ・ウェイ」は演奏もさることながら、天井に吊るされたミラーボールがキレイだった…。(演奏とは関係ないですね…。)

「オーメンズ・オブ・ラブ」は比較的吹奏楽のコンサートで演奏されることが多い曲です。

“T-SQUARE”の名曲ですが、盛り上がること間違いなし。

この日も大いに盛り上がりました。

さすがに各大学からの代表者だけあって、個人的なテクニックは、なかなかのものあり。

ただ、第Ⅱ部、全体を通して思ったのは、もう少し、エネルギッシュなものを感じられたら良かったかも。(個人的意見です。)

 

最後は、『Symphonic Stage』.

吹奏楽のオリジナル曲やアレンジ曲のステージです。

まず、最初に東京都大学吹奏楽連盟の学生代表の小森 香織さんから、ご挨拶がありました。

1曲目は「ファンファーレ『天と大地からの恵み』」ですね。

人気作曲家、八木澤教司先生の作品。

恥ずかしながら、初めて聴かせて頂く曲です。

プログラムの“曲目紹介”の欄を見ますと「小山市交響吹奏楽団結成30周年記念」の委嘱作品のようです。

華やかで、変な表現かもしれませんが、吹奏楽らしい曲でした。

演奏も大人数(90名くらい?)で大迫力!

実にまとまりがある演奏で好感が持てました。

ただし、金管楽器が目立つ曲だったせいか、サウンドに“融合感”が少なく感じ、そのためか、ブラスサウンドが少し暗く感じました…。(個人的意見です。)

 

2曲目は、私も大好きな曲、スパークの「ウィークエンド・イン・ニューヨーク」。

やはり、大学生ということもあって、高校生とは違う“大人の演奏”でしたね。

ソロも色っぽかったし、これだけの人数だと普通は、大味になってしまいがちですが、細部まで表現力を意識した好演だと思いました。

冒頭の打楽器が音量が大きすぎたのかメロディラインが埋没してしまったのと、前半でテンポが乱れて、アンサンブルが合わなかった部分があったのが残念でしたが…。

最後の曲は、大人気曲「トゥーランドット」です。

音が前によく出ていますね。

スケールが大きい演奏に感じます。

アンサンブルの乱れやダイナミクスのバランスの悪さを感じる部分がほんのわずかにありましたが、それを除けば、とても素晴らしい演奏でした!!

カッコよかった。

 

最後に演奏者、スタッフがステージに集合して、アンコール!

若々しさがみなぎる「星条旗よ永遠なれ」を披露して下さいました。

歴史ある演奏会のようですが、これからも東京都吹奏楽連盟の発展のために続けていってほしいコンサートです。

来年も楽しみにしています!