浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

東京芸術劇場リニューアル記念 インバル=都響 [新]マーラー・ツィクルスⅤ

2013-01-21 20:28:33 | オーケストラ

2013年1月20日。
外は、よく晴れています。
寒いですが、さわやかな日曜日の午後、私は池袋駅に降り立ちました。
東京芸術劇場のリニューアル記念として企画されました「インバル=都響 [新]マーラー・ツィクルスⅤ」にお邪魔するためでした。

P1200005

エリアフ・インバル氏といえば、私のような素人でもフランクフルト放送交響楽団とのマーラーの名演は、知っています。(実際、インバル&フランクフルト放送響のマーラーの交響曲のCDを数枚持っています。)
再三、申し上げておりますように私は、専門的な音楽教育も受けておりませんし、中学校の吹奏楽部レベルの感覚しか持っておりません。
ですから、「この曲のこの部分の解釈が素晴らしい」とかの素人論評は出来んのです。
ステキだなと思ったり、幸せな気分になったり、背中に電気が走るような感覚に陥ったり、と私の貧弱な感性を呼び覚ましてくれるような「出会い」がしたいだけなのです。
(昨年末のN響&デュトワ、レスピーギの“ローマ三部作”に物足りなさを感じたことも根底にあると思います。)
だからこそ、このコンサートに行こうと思ったのです。
だって、インバルといえばマーラーですもの。
このマエストロが、きっと私を幸せな気分にしてくれることを信じて。

P1200007

東京芸術劇場は、リニューアルしてから2回目の訪問ですね。
(昨年10月の陸上自衛隊中央音楽隊のコンサート以来です。)
ホール入口には大勢の方がいらっしゃいます。
公演のポスターには「完売御礼」の表記もありますし、ヒッチハイカーのように「チケット求む」と書いた紙を持って立ってらっしゃる方もいます。
大盛況ですね。
ホール内に入っても熱気ムンムンで、座席数1999席の東京芸術劇場大ホールが超満員てカンジですか。
エリアフ・インバル恐るべし、です。

Dsc_0141

ちなみに私の席は2階席の端の方でした。
しかも、屋根がある…。(つまり、頭の上に3階席があるということです。)
少し、解放感に欠け、響きを危惧する心持ちになりました。(実際、前半のフルート協奏曲では不満が残りました。)
しかし、それよりも何よりも頭の上が熱かった。
というのも、座席の真上に照明があったからです。
天井も低いし、おまけにハロゲンランプのように酷く熱を発しておりまして、こりゃ、たまらんと思いながら座っておりました。(もちろん、開演中は照明が落とされますので開演前、休憩中の時だけのことでしたが…。)
いづれにせよ、席選択は失敗だったようです。

当日のプログラムは以下のとおりです。

P1200012

[演奏] 東京都交響楽団
[指揮] エリアフ・インバル
[フルート] 上野 由恵

P1200013

● フルート協奏曲第2番 ニ長調 K.314(285d) [ W.A.モーツァルト ]

( 休 憩 )

● 交響曲第5番 嬰ハ短調  [ G.マーラー ]

P1200006


最初の曲はソリストの上野由恵さんを迎えて、モーツァルトのフルート協奏曲ですね。
全体的に言うと演奏しているのが、弦楽器と木管楽器ばかりだったので、屋根付き客席が災いして、少し響きに物足りなさを感じた。
しかし、上野さんの音は温かみがあってステキでした。
ラヴェルなんかにあうキラキラした透明感のある音質とは対称的に厚みがあってやわらかい音に心が和みました。
モーツァルトにとても合ってるように思いました。

P1200015


ここで、20分間の休憩。
さすがにこれだけ、超満員だとトイレも長蛇の列、ロビーにも人があふれかえっています。
ゴミゴミしているのも、イヤですが、これだけ人が入ってると否応なしに演奏会が盛り上がりますよね。
以前、客席の3~4割程度しか入っていない演奏会に行ったことがありますが、演奏の巧拙以前に気分が高揚しなかった。

Dsc_0140

そんなこんなしているうちに、いよいよマエストロの真骨頂、マーラーが始まりました!
1楽章冒頭のトランペットソロ、ステキでしたねぇ。
いや、感動しました。
楽章が進むごとに“インバルの世界”に引きずり込まれて行くようでした。
それにしても、大昔、金管楽器を吹いていた身からしてみれば、何と金管楽器が難しい曲なのでしょう!
ですが、それだからこそ金管楽器が効果的に扱われている、そんな気がしてなりません。
若い頃は、マーラー、ブルックナーは重く感じて好きではなかったですが、素晴らしい作曲家ですね、マーラーは。
今は、そういうふうに思います。
第4楽章アダージェット。
素晴らしいかった。
個人的には、全楽章の中で一番良かったんじゃないかと思った次第。
都響の魅力をマエストロが存分に引き出していたように感じました。
(なんか夢の世界にいるような気がしておりました。)
そして、フィナーレも圧巻の演奏!
この演奏が終わってほしくないと思いました。
しかし、終焉は来ました。
このブログの冒頭で申し上げたとおり、演奏に関する音楽的な論評はできません。
でも、私の感性や魂で感じる事は出来ます。
演奏が終わった瞬間、ジーンと来ました。
それが、私の表現できる“答え”だと思います…。

P1200016

それにしても、東京都交響楽団がこんなにステキな演奏をするなんて思わなかった。(失礼。)
素人考えだとやっぱり、日本ではN響がイチバンだと思っていたし、だからこそ、数十年ぶりにオーケストラのコンサートに行こうと決めた時に最初はN響を選んだのです。
しかも、デュトワというマエストロの指揮で聴かせて頂いたりしたのですよ。
(NHKホールでの演奏という“ハンデ”があったとしても)“デュトワ&N響”より“インバル&都響”の方がはるかに良かった。
少なくとも、私にとっては。

P1200014

今年の年末から、「新マーラー・ツィクルス」の第Ⅱ期が始まるようです。(マーラー交響曲第6番~第9番)
何でも、セット券は完売したとのこと。
しかし、私も1曲でもいいから、聴かせて頂きたいものです。

P1200004


この日の演奏が終わったあとも拍手はなりやみませんでした。
15分以上は拍手が続いたのではなかったでしょうか?
そして、楽団員の方たちが舞台上から、去ったあとでも、拍手をしている観客がいました。
すると、誰もいない舞台上にマエストロ・インバルがコンサートマスターや他の楽団員を引き連れて何度も拍手に応えるため、出て来られました。
マエストロも満足のいく演奏だったのでしょう。
満面の笑みをたたえています。

P1200003

そして…、私も幸せな気持ちに包まれながら家路を急いだのでした。


神奈川大吹奏楽部 第48回 定期演奏会

2013-01-10 19:01:36 | 吹奏楽

明けましておめでとうございます。
今年も、このブログを続けていくつもりですので、よろしかったら、少しでもいいので、お読み下されば幸いです。

Dsc_0116


一昨年から、吹奏楽を中心としたコンサートのブログを書かせて頂いておりますが、
さて、2013年の第一弾のコンサート鑑賞は横浜からです。
昨年最後のコンサートは、アマチュア大学吹奏楽界の雄、文教大学でしたが、こちらも歴史ある名門、神奈川大学吹奏楽部が、私の“コンサート始め”です。
さあ、正月ボケの頭をステキな音楽で覚醒させましょう!

Dsc_0121


[演奏] 神奈川大学吹奏楽部
[指揮] 小澤 俊朗

Dsc_0127

●  リバティ・ファンファーレ (ジョン・ウィリアムズ)
●  歌劇「タンホイザー」序曲 (リヒャルト・ワーグナー)
●  優しい花たちへ (高 昌帥)
●  リンカンシャーの花束 (パーシー・アルドリッジ・グレインジャー)
Ⅰ.リスボン(水夫の歌)
Ⅱ.ホークストウの農場(けちん坊と召使い 地方の哀歌)
Ⅲ.ラフォード公園の密漁者(密漁の歌)
Ⅳ.元気な若い水夫(恋人と結婚するための帰還)
Ⅴ.メルボルン卿(戦争の歌)
Ⅵ.行方不明の婦人が見つかった(踊りの歌)

Dsc_0130


( 休 憩 )

Dsc_0124


●  喜歌劇「軽騎兵」序曲 (フランツ・フォン・スッペ)
●  吹奏楽のためのバラードⅠ (兼田 敏)
●  交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 (リヒャルト・シュトラウス)

Dsc_0117


2020名が定員の横浜みなとみらいホールが、ほぼ満席です。
学生さんも多数来ているようです。(持っているカバンに“KYOEI”と書いてある高校生の方がいたように思いましたが、もしかしたら、吹奏楽の名門、春日部共栄高校の生徒さんでしょうか?違っていたら、ゴメンナサイ。)

Reg48poster


それにしても、みなとみらいホールは、素敵なホールです。
音響も素晴らしいと思います。
好きなコンサートホールをあげるならば、個人的に、「東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル」「サントリーホール」「横浜みなとみらいホール」がベスト3だと思っています。(あくまでも、私が演奏を聴いたことのあるホールだけでの話ですよ。あくまでも…。)
余計な話が長くなってしまいました。
コンサート開始です。

Dsc_0119


最初の曲は、おなじみ、J.ウィリアムズの「リバティ・ファンファーレ」。
この曲、流行っているんですかねえ?
昨年末の武蔵野音大ウインドアンサンブル(12/18)、川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団(12/24)の演奏会でも聴かせて頂きました。
演奏の巧拙はともかく、神奈川大学の演奏が一番、J.ウィリアムズっぽい演奏だと思いました。
明るく華やかな好演です!
お次は、ガラッと雰囲気が変わってワーグナーの「タンホイザー序曲」。
私は、吹奏楽で管弦楽曲をやる場合は、オーケストラの演奏を意識するのではなく、“何か別のモノ”、言い換えれば、聴衆がその演奏を吹奏楽のオリジナル曲と思えるものが理想だと思っています。
ただ、後期ロマン派のブルックナーやマーラーの交響曲は弦楽器を駆使した壮大感を吹奏楽で表現するのは、不可能だと思いますし、“別のモノ”にもなりえません。
よしんば、無理やり“別のモノ”したところで、それはブルックナーやマーラーではなくなってしまう。
そして、ブルックナー、マーラーの音楽に多大な影響を与えた、いや源流そのものがワーグナーだと思うのす。
だから、吹奏楽の演奏でも無理がある。
(私の若い頃は、ワーグナーは、コンクール自由曲として頻繁に演奏されたものですが、最近はパッタリと演奏されなくなったように思います。)
本日の演奏でも、弦楽器にあたる部分を演奏する頻度が高い木管楽器(クラリネット)の高音部に難を感じました。
対する金管楽器は、重厚でとてもいいサウンドでした。
次は、人気作曲家の高 昌帥先生の曲ですね。
プログラムの解説によると、2012年4月、大阪市の三木ウインドフィルハーモニー創立30周年記念委嘱作品だということで非常に新しい曲です。
高先生が女性へ“愛と感謝を込めた讃歌”なのだそうで、ゆったりとした美しい曲でした。
重厚な和音で、先程の曲とは違いクラリネットの音色が際立っていました。
前半、最後の曲は、「リンカンシャーの花束」。
グレインジャーの名曲ですね。
イギリス民謡をモチーフにして作曲されているだけあって、素朴ながらも上品な作品です。
神奈川大学は、そのノーブル感を維持しながら、技術力とその力強いサウンドで見事な世界を作り上げていたように思います。
ステキでした。

Dsc_0132


ここで、前半終了。
15分の休憩です。
去年のサマーコンサートで同じ、みなとみらいホールにて聴かせて頂いた時には木管楽器主体のバンドなのかなあと思ったものでした。
しかし、今回は金管楽器の厚く、温かみのあるサウンドに驚きました。(特にトロンボーン、ホルン)
なにか、バンド全体のサウンドがまろやかになってきているように思いました…。

Dsc_0129


後半の最初の曲は、誰でも音楽の授業で聴いたことのあるであろう懐かしい曲です。
演奏も軽やかで、とても楽しめました。
2曲目は、“吹奏楽界の巨匠”今は亡き、兼田 敏先生の「吹奏楽のためのバラードⅠ」です。
1981年にヤマハ吹奏楽団の委嘱により作られた曲らしいですが、全く古さを感じさせない名曲ですね。
若い世代の方々に○○先生の新曲ですよと紹介しても、わからないのではないか?(信じてしまうということです。)
神奈川大の演奏も見事でした。
こういう曲の方が神大サウンドにあってますね。
吹奏楽オリジナル曲をもっと取り上げてほしいなあなんて、勝手に思ってしまいました。
トリの曲は、名曲「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」です。
始まってから、1~2分、休符を交えてのリズムを刻む部分でアンサンブルに乱れがありました。
すると、指揮の小澤先生は即座に演奏を止められました。
くるりと身体を反転させ、観客の方を向かれた小澤先生は、「難しい曲なのでミスがありました。曲の最初からやり直します。」とおっしゃられました。(正確な言葉は、ハッキリ覚えていませんが、このような意味であったと思います。)
再度、演奏し直された「ティル ― 」は、気迫のこもった素晴らしい演奏でした。
リズム感にあふれ、描写音楽特有の表現を観客に示してくれました。
しかし、演奏を止めるとは…、驚きましたねぇ。
ちょっとしたハプニングでした。

Dsc_0135


アンコールは、写真のとおりです。
特に2曲目の「ひばりメドレー」は、神奈川大学吹奏楽部恒例のアンコールですね。
横浜出身の偉大な歌手を讃える意味で、横浜にある大学の学生が演奏するなんて素敵な演出です。

Dsc_0133


さて、年末年始にかけて、昨年の全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した文教大学、3出で去年はコンクールに出ていませんが、金賞常連の神奈川大学と短い期間に日本のアマチュア大学トップバンド2校を聴く機会に恵まれました。
若々しくエネルギッシュな文教大学、重厚なサウンドの神奈川大学とそれぞれの個性が光る団体は、これからも我々、吹奏楽ファンを楽しませてくれることでしょう。
今後のご活躍を期待しております。

Dsc_0123


最後に、年頭にあたって、少し申し上げたいことが、ございます。
私は、専門的な音楽教育は一切受けておりません。
学生の頃、部活程度の場で、楽器を吹いていたにすぎません。
それなのに、プロの演奏や一生懸命、頑張っていらっしゃる学生さんや一般バンドの皆さんを時には、批評まがいのことをこのブログでやっております。
基本的には演奏会で聴いた素晴らしいサウンドをその演奏会に行けなかった方々にもお伝えしたいという気持ちだけで書いているつもりです。
ツタない人間がツタない文章でなんとか感動を伝えたいとあがいている…。
そんな気持ちであたたかく見守って頂ければと思います。
よろしくお願い申し上げます。

Dsc_0115