浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

春日部共栄中学高等学校吹奏楽部 第29回定期演奏会

2015-05-08 09:40:36 | 吹奏楽

私も春日部共栄中学高等学校吹奏楽部の定期演奏会に訪れる様になって4回目の春を迎える事になりました。

早いもので、私が初めて伺わせて頂いた時の1年生部員の方は、既にOB OGになっているのですね…。

時の経つのは早いものです。

私にとって何の縁もゆかりもない高校吹奏楽部に4回も定期演奏会に通いつめている理由…。

それは、まず、技術力の高さ。

私の好きな神奈川大学吹奏楽部に何となくサウンドが似ているところ。

もちろん、私の地元、埼玉の学校であることも大きな理由のひとつ。

そして、ここがイチバン大事なところなのですが、その演奏会スタイルがとても、好きなのです。

じっくりと“音楽”を聴かせる体制が出来ている。

高校吹奏楽部は、ともすると“過度な”学芸会ばりのパフォーマンスに陥りがちです。(やってはいけないと言っているわけではありません。あくまでも“過度な”と言うことです。)

数年前、都下の吹奏楽の名門高校の演奏会に行ったことがあります。

演奏は素晴らしかったのですが、観客にまで何度も何度も様々な要求をしてきた。(振付まがいの事まで。)

折角の素晴らしい演奏がどっか行ってしまって、私は疲労困憊してしまったのです。

それ以来、その高校の演奏会には行ってません。(行く気にもならない。)

春日部共栄の演奏会は、じっくりと曲を味わえる…、だから、聴きに行くのです…。

コンサートの話にもどります。

 

そして、今回の演奏会は特別な意味を持つ演奏会なのですね。

顧問(正確にはこの日の時点で“だった”)の都賀城太郎先生が春日部共栄高校を退職され、今回の定期演奏会が最後の舞台となるからです。(定年退職なのか、何なのか私にはわかりませんが、個人的には非常に寂しく思います。)

今後は東京の藤村女子高校へ赴任されるようですが、場所が変わってもご活躍を期待したいと思います。

 

2015年4月29日、昭和の日。

場所は、大宮ソニックシティ大ホール。

13:30開演でしたが、所用があり、15分程前にやっと会場に到着。

しかし、ソニックシティの外には長蛇の列。

仕方がないので私も並びましたが、開演5分前になってもホールのロビーすら入れません。

それでも何とかホール内の座席に着席。(どうにか、ならんものですかな。)

まわりを見渡してみると、2505席の大宮ソニックシティの大ホールが超満員です。

と言うことで15分遅れの開演となったのでした。

 

[演奏]春日部共栄中学高等学校吹奏楽部

[指揮]都賀 城太郎

     織戸 祥子

[賛助出演]

 Trumpet  原田 照久(2005年度卒業)

       田本 一 (2009年度卒業)

 Euhonium  本橋 宏昭(2005年度卒業)

       中村 知弘(2008年度卒業)

 Drums      山本 真央樹(2010年度卒業)

 

グラデュエーション デイ マーチ/真島 俊夫

Graduation Day March/Toshio Mashima

2015年度全日本吹奏楽コンクール課題曲より

秘義Ⅲ-旋回舞踏のためのヘテロフォニー/西村 朗

HigiⅢ-Heterophony for Whirl Dance/Akira Nishimura

マーチ「プロヴァンスの風」/田坂 直樹

March “Wind of Provence”/Naoki Tasaka

飛行の幻想/R. シェルドン

Visions of Flight/Robert Sheldon

百年祭/福島 弘和

A Centenary Celebration/Hirokazu Fukushima

沢地萃/天野 正道

Taku Chi Sui/Masamicz Amano

 

【休憩】

 

喜歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲/O.ニコライ:福島 弘和 編曲

Die lustigen Weiber von Windsor/Otto Nicolai : arr. Hirokazu Fukushima

森の贈り物/酒井 格

Legacy of the Woods/Itaru Sakai

コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディ/P.ウィリアムズ:S.ネスティコ 編曲

Rhapsody for Concert Band and Jazz Ensemble/Patrick Williams : arr. Sammy Nestico

喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション/L.レハール:鈴木 英史 編曲

“The Merry Widow” selections/Franz Lehár : arr. Eiji Suzuki

愛の挨拶/E.エルガー:福島 弘和 編曲

Salut d’amour/Edward Elgar : arr. Hirokazu Fukushima

 

[司会]弦本 緑加

 

最初に生徒会長の“イイサカリュウスケ”さん(お名前がプログラムに載っていなかったので、間違っていたらゴメンナサイ)の挨拶の後、演奏会が始まりました。

休憩をはさんで前後半に分かれるプログラムでしたが、前半は今年度より高校生の指導もされることになった顧問の織戸祥子先生の指揮での演奏です。

織戸先生は、春日部共栄のOGで全国大会出場経験もある方です。

今までは中学校の吹奏楽部を指導されていたようですが、特に昨年は、「第20回西関東吹奏楽コンクール中学Bの部」で『金賞』、また、「第20回日本管楽合奏コンテスト全国大会中学校A部門」で『最優秀賞』と輝かしい成績を残されております。

 

最初の曲は、真島俊夫先生の作品で「グラデュエーション デイ マーチ」。

クラリネットのリードミスがあったかなぁ。

それは、“ご愛敬”として、物理的にも心理的にも実にテンポの“いい”演奏で最初から心を掴まれました。

真島先生特有の華やかさを如何なく発揮した好演だと思います。

ただ、トランペットパートの音が伸びてこないのと若干、雑味を感じました。

まあ、1曲目だから…。

 

続いては、課題曲Ⅲです。

個人的には、他の4つの課題曲より圧倒的に好きな曲です。

今年の課題曲Ⅲは、この日、初めて生演奏を聴いたんです。

そして、ひそかに期待しておりました。

だって、春日部共栄の例年のサウンドから推察すると絶対に合うと思ったから。

期待を裏切りませんでした!

確かにもう少し、“煮詰める”必要はあるかと思いますが、雰囲気とテクニックの面で素晴らしいパフォーマンスを見せて頂きました!

とっても、良かった!

確かに難解な感じがして課題曲として選択するのは躊躇する面があるかと思います。(もちろん、コンクールで“勝つ”という意味で。)

ただ、考えてみて下さい。

今年の5つの課題曲の中で唯一の委嘱作品。

しかも、現代クラシック音楽界で日本を代表する作曲家の西村朗先生の作品ですよ。

私には楽典的な難しいことは、分かりませんが作品としての完成度が高いのは間違いない。

高い技術と表現力で演奏すれば、イチバン優れた演奏になるのではと素人ながら考えてしまいます。

だから、願わくは、大好きな春日部共栄にコンクールで演奏してほしいなぁと勝手に思う“浦和のオヤジ”です…。

少し、熱くなってしまいました。

クールダウンしましょう…。

 

次も今年の課題曲。

Ⅳのマーチですね。

曲名の「プロヴァンスの風」というだけあって、南欧風のメロディもある。

明るく軽快な曲調にマッチした演奏でした。

ただ、少しサラッとし過ぎていたような、いないような…。

課題曲としては、お手本のような演奏でした。

コンクールでは、こういう演奏が高評価を得るのでしょうね、きっと。

これは、春日部共栄に問題があるのではなく、曲の構成からして、“こうせざるを得ない”のだと思います。

個人的意見ですが、最近というか、もっと前からかな、課題曲のマーチってライトすぎませんか?(下手すると、まるでポピュラー音楽みたい。)

やっぱり、いかにコンサートマーチと雖も“重厚さ”がないと。

誤解して頂きたくないのは、“重厚さ”って堅苦しさではないんです。

言い換えると“格調が高い”って事かなぁ。

昔のいわゆる軍隊が行進するようなマーチでなくても、“格調高い”ものはあります。(私がイチバン好きなマーチは、ヤン・ヴァン=デル=ローストの「アルセナール」ですが、これなんぞは、この典型です。)

その中で、最近の課題曲のマーチに限って言うならば、2012年度課題曲Ⅳの『行進曲「希望の空」』は、この条件を満たしていたように思います。(個人的意見です。)

この曲のようなマーチが課題曲であればと切に願う次第です。

余談ばかりでスミマセン。(ちなみにここまでが、3年生中心の演奏とのことでした。)

 

前半3曲目は、「飛行の幻想」。

春日部共栄吹奏楽部、毎年恒例の新1年生だけの演奏です。

数ヶ月前まで中学生だった皆さんの“デビュー”がこの曲によってなされる…、これが慣例となっているようですね。(そう言えば、私も、この曲を聴くのは4回目になるんですね。)

さすが、吹奏楽名門校、ざっと60名近くいるでしょうか?

演奏は、まだまだ未熟な面もあるとは思いますが、さすがに春日部共栄の未来を担う人材だけあって、芯のしっかりしたサウンドをしていると感じました。

 

次は、先程も申し上げた「西関東・金賞」「管楽コンテスト全国大会・最優秀賞」を獲得したメンバーでの演奏だそうです。

福島弘和先生の「百年祭」。

創立100年目の年に廃校になった奈良県立城内高校吹奏楽部の委嘱により、2005年に作曲された曲です。

少人数(10名)だった同校吹奏楽部員のために元々は小編成の楽曲として書かれています。

この日の演奏は20数名。

多少、ミスもありましたが、賞を獲っただけあって、しっかりとした演奏でした。

 

早いもので、前半最後の曲です。

天野正道先生の「沢地萃(たくちすい)」。

プログラムの解説が難解な曲名を的確に説明してあるので引用させて頂きます。

『「沢地萃」とは中国五経のひとつ「易経」45番目の卦で、人や物が集まり繁盛することを意味します。』

曲名からは想像しづらいロックテイストの雰囲気のある面白い曲でした。(実に天野先生らしい!)

2年生中心の演奏とのことでしたが、さすが上品にまとまっていたと思いました。

ただ、曲調からすると、もう少し躍動感があればなぁ。

それと、大昔、自分で吹いていたので気になってしまうのですが、もっと金管楽器に延び(響き)があれば、より効果的だったかも。

 

後半は、都賀先生が指揮をされました。(相変わらず、先生の“おじぎ”は、とても丁寧です。)

そして、演奏曲にちなんだエピソードを1曲ごとに話して下さいました。

最初の曲は、「ウィンザーの陽気な女房たち」。

なつかしいですね。

昔、コンクール自由曲として、すごく流行りました。(今の大・高・中生の皆さんが生まれる前の話です。)

私個人は、全国大会の名演としては、第27回(1979年)のブリヂストンタイヤ久留米工場吹奏楽団(当時は、この団体名だった。現・ブリヂストン吹奏楽団久留米)か第28回(1980年)の中村学園女子高校の印象が強い。

特に中村学園は衝撃的でした。

全国大会ではなく、九州大会で生演奏を聴かせて頂いたのですが、あどけない表情の女子高校生がこんなに艶っぽい音を出している。

目の前のことなのに信じられない想いで演奏を唖然として聴いたのを覚えています…。

話は、変わって都賀先生のこの曲にまつわる想い出。

30年くらい前、先生若かりし頃にこの曲でコンクールに出ようとしたことがあるそうです。

ところが吹奏楽部員たちは真面目に練習しようとせず、活を入れるつもりで「ヤメチマエ」と言ったら、本当にコンクールに出ませんと生徒たちが言ってきた。

何度か翻意を促すも結局、コンクールは不出場。

こんな苦い思い出があるのだそうです。(笑)

演奏の方は、細かい表現力が際立ち、個人の技量の高さが光りました。

流れにのった好演であったと思います。

ただ、個人的には春日部共栄は、吹奏楽オリジナル曲の方が合うと思いますが…。

 

2曲目は、「森の贈り物」。(昨年のコンクール全国大会、玉名女子高校の演奏は非常にステキでした!)

この曲には、春日部共栄OBで東京藝大卒のトランペット奏者、原田照久氏も加わります。

ちなみに原田氏は全国大会でこの曲を演奏した時、この曲のトランペット・ソロをされた方だそうです。

全体的な印象としては、よく曲のことを理解して、丁寧に丁寧にやろうという意図が前面に出ていた。

だから聴きやすいし、この曲の持つメルヘンチックな世界が十分、表現出来ていた。

とても素晴らしい演奏でした。

都賀先生によると、この曲は復活の曲。

2000年、「ローマの祭り」で全国大会初出場。

しかし、その後、自由曲をオケのアレンジ曲にこだわっていたためか、数年、全国までは進めなかった。

そこで、原点にもどり、本当にやりたい曲を…、ということで取り組んだのが「森の贈り物」。

ここから、春日部共栄の快進撃が始まるのです…。

 

続いては、「コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディ」。

コンクール自由曲としてやる場合は、コンサートバンドとジャズアンサンブルの棲み分けはないように思いますが、この日の演奏は、二つのグループの合同演奏と言う形で聴かせて頂きました。

ちなみに5人のOBも交えての演奏でした。(メンバーについては、上記参照。)

このようなジャズっぽい曲でも、行けるんだとあらためて春日部共栄のポテンシャルに感服する次第。

ここでまた、“都賀”解説。

この曲は、都賀先生がとても好きな曲なのだそうです。

コンクールで他の学校がやっているのを聴いて気に入ったそうな。(多分、同時に全国大会のステージに上がっている2005年のファンキー植田薫先生率いる武生東高校あたりの演奏でしょうか?)

そのため、「3出(さんしゅつ。全国大会に3回連続出場すると4年目は出られないという大会規定。現在は廃止。)」でコンクールに出場できなかった2007年に“招待演奏”のステージで演奏したのだとか。(たぶん、コンクール県大会なのでしょうか?)

 

さて、後半4曲目は、「メリー・ウィドウ」セレクション。

時々、コンクールでも取り上げる団体がある曲です。

都賀先生によりますと、とにかく明るい曲が好きなのだそうで、そのため、この曲を選んだと…。(いろんなところが明るい…、とご自分でおっしゃっておられましたけど。)

その通りで、明るく、軽快で楽しい演奏でした!!

さあ、いよいよトリの曲です。

エルガーの「愛の挨拶」。

兎にも角にも都賀先生がイチバン好きな曲なのだそうです。

とても、やさしい演奏でした。

そして、“愛にあふれた”演奏でした…。

 

アンコール曲は、下記の通りです。

定番の合唱曲と「フーテナニー」。

 

全ての演奏が終わりました。

織戸先生が都賀先生に花束を。

感動的な場面です。

でも何かアッサリし過ぎているような。

でも、都賀先生はきっと、湿っぽいのが嫌いなのでしょう。

 

今年の春日部共栄のコンクール自由曲って何なのでしょう?

ここ数年の既定路線、吹奏楽オリジナル曲委嘱作品を貫いて頂ければと部外者のオヤジながら切に願う次第であります。

これは、吹奏楽の発展のためにも非常に良いことです。

特に「ラッキードラゴン~第五福竜丸の記憶~」という名曲を世に送り出した功績は多大です!

そして、ここのところ、課題曲Ⅴをやる機会が多いようですが、今年はⅢをやってほしいなぁ。

 

織戸先生もこの吹奏楽名門校を率いていくのに相当なプレッシャーもあるかと思いますが、頑張って頂きたい。

応援しています!!

そして、都賀先生。

本当にお疲れ様でした!

どこに行かれても先生のご活躍を一吹奏楽ファンとして祈っています。

最後にひとつだけ。

あくまでも希望なのですが、都賀先生の一般バンドでのコンクール出場も見てみたい気がします…。

いずれにせよ、これからも“浦和のオヤジ”は勝手に春日部共栄中学高等学校吹奏楽部を応援しています!!

 

追伸

2年前の第27回定期演奏会の時の私のブログ記事に都賀先生より、コメントを頂いたことがあります。(私は、ご本人だと信じていますが、確かめようがないのも事実です…。)

温かいお言葉に大変感激したのを覚えておりますが、その時、私の住居に近い地域にすんでらっしゃるとお聞きしたような気がします。

もし、住まいがお変わりでなかったら、どこかでお会いするかもしれませんね。

そう言う機会があればと願う次第です。

[浦和河童]