浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

東京芸術劇場Presents ブラスウィーク2012 飯森範親&陸上自衛隊中央音楽隊 

2012-10-27 22:32:06 | 吹奏楽

 

平成23年4月1日より、改修工事のために休館していた東京芸術劇場が本年9月1日にリニューアルオープンしました。

改修前は何回かコンサートに行かせて頂いた馴染みのホールですが、大規模改修後、初めての訪問が陸上自衛隊中央音楽隊のコンサートとなりました。

私が若かりし頃のコンクール課題曲の模範演奏(カセットテープに録音されていました。)は、必ず自衛隊の楽団によるものでした。

だから、今回の演奏会は学生だった頃の私に戻り非常に期待してしまうのでした。

しかし、期待以上、大感激の演奏会でありました。

Dsc_0051

まず最初にお知らせしたいのは、リニューアルした東京芸術劇場の素晴らしさです。 

エントランスから始まって、ホールまで行き着く間、全てに高級感がましたというか、もうビックリです。(写真でご確認下さい。)

また、ホール内も内装を変え、音響を良くしたとの事です。

それでは、しばしの間、素敵な空間で素敵な音楽を味わう事にしましょう…。

Cimg0378

開演の15分前から、プレトークということで、本日の指揮者、演奏楽曲の作曲者が舞台上にあがり、お話をして下さいました。

メンバーは指揮の飯森範親氏、作曲家の真島俊夫、中橋愛生の両氏の3人です。

いずれも著名な方々ですね。

飯森範親氏は皆様ご存知の現代日本を代表する指揮者のひとりです。

この飯森先生と吹奏楽との結びつきと言えば(ご本人もおっしゃっておられましたが)、大阪市音楽団(市音)抜きにして語ることはできないでしょう。

(個人的な意見としては、市音と共演したスミスの「華麗なる舞曲」の演奏はいたく気に入っております。CD持ってますよ…。) 

また、陸上自衛隊中央音楽隊の演奏会では客演指揮者(飯森氏)がすべての曲を指揮するのは今回が初めてだとの事。

その点においても興味を引く演奏会です。

また、真島先生、中橋先生にもご自身の楽曲の解説やエピソードを聞かせて頂き、短い時間でしたが、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。

時間が許せば、他の演奏会でも、このようなプレトークを行ってほしいなと感じた次第。

そうこうしてるうちに開演の時間となりました。

2012年(平成24年)10月25日、木曜日、東京・池袋の東京芸術劇場です。

Dsc_0050

それでは、プログラムの紹介です。

Photo

 吹奏楽のための「クロス・バイマーチ」 (三善 晃)

 三つのジャポニズム (真島俊夫)

   第1曲 鶴が舞う

   第2曲 雪の川

   第3曲 祭り

 吹奏楽のための祝典序曲「科戸の鵲巣」 (中橋愛生)

 交響曲 第1番「指輪物語」 (ヨハン・デ=メイ)

 第1楽章 ガンダルフ(魔法使い)

 第2楽章 ロスロリアン(エルフの森)

 第3楽章 ゴクリ(スメアゴル)

 第4楽章 暗闇の旅

 a モリアの坑道

 b カザド=ドゥムの橋

 第5楽章 ホビットたち

Cimg0383

素晴らしい演奏の数々でした。

最初の曲、1992年度吹奏楽コンクールの課題曲であった三善先生の「クロス・バイマーチ」でグッと心をつかまれ、続く「三つのジャポニズム」の日本情緒にあふれた躍動感に酔いしれました。

3曲目のご存知、「科戸の鵲巣」。

さすがに本日、演奏している陸上自衛隊中央音楽隊のために書かれた(委嘱作品)だけあって、十八番(おはこ)の堂々たる演奏でした。

曲の持つ物語性を音楽で表現した名演だったと思います。

この演奏を聴けただけでも本日のコンサートに来た甲斐があったと感じたのは私だけでしょうか?

Cimg0379

Cimg0381_2 

陸上自衛隊中央音楽隊のサウンドは素晴らしい。

恐ろしく滑舌が良いのですが、それでいて柔らかくて心地よい。

しかも、春の日差しのような暖かさの輝きがあるのです。

これは、金管、木管に共通しており、統一した音色は非常に美しいです。

また、打楽器もバランスがとてもよく、下手なバンドの騒々しいタイコの音と違って実に効果的な演奏です。

技術的な事は素人なので良くわかりませんが、ノーブルな雰囲気に満ち溢れていました。

Cimg0372

Cimg0373_2

20分の休憩をはさんで、トリの曲、ヨハン・デ=メイの「指輪物語」です。

恥ずかしながら、初めて聴かせて頂きましたが、壮大な曲ですね。

中央音楽隊の演奏も原作のJ.R.R.トールキンのファンタジーの世界を神秘的に表現していました。

もう、ここまで来ると音程だの技術だのという前に、“ひとつの世界”ですね。

いやあ、いいものを聴かせて頂きました。

Cimg0382

鳴り止まぬ拍手の中、アンコールとしてタイケの「旧友」が演奏されました。

勇壮感は失わず、そのくせノーブルな雰囲気を持つ、素晴らしい演奏でした。

Cimg0385

最後にひとつだけ申し上げたいことがあります。

本日の演奏会は落ち着いた雰囲気の演奏会でした。

何故なんだろうと思い返してみると学生さんがあまり居なかったからだと思います。

普通、吹奏楽のコンサートというと中高生の皆さんが大挙して来場し、熱気に包まれる場合が多いのですが…。

このような素晴らしいホールで、このような素晴らしい団体の演奏を格安の価格で鑑賞出来るのに学生さんは何故、来なかったのでしょう?(一番、価格が安かったC席は、なんと1,000円ですよ!)

もったいない気がしてなりません。

Cimg0377

いずれにせよ、今後も、陸上自衛隊中央音楽隊のご活躍に期待しております。

次回も時間が合えば、是非、コンサートにお邪魔したいと思います。

本当に有意義な2時間でした。

Cimg0371

 


全日本吹奏楽コンクール三年連続出場記念演奏会 第3回“もうひとつの全国大会”

2012-10-10 20:37:20 | 吹奏楽

全日本吹奏楽コンクールには3年連続全国大会に出場するとその次の年は1回だけコンクールに出場できないという規定があります。
俗に言う「3出(さんしゅつ)」制度というものです。
そして、コンクールに出られない「3出」団体が一同に会して演奏会を開きました。
それが、今回、私の訪れた「全日本吹奏楽コンクール三年連続出場記念演奏会 第3回“もうひとつの全国大会”」です。(3出団体で演奏会をするのも、もう3回目なんですね。ちなみに私は第1回のCDを持ってます。)
場所は、お馴染みの文京シビックホール。
いいホールです。
時は、2012年10月8日、月曜日。
すがすがしい体育の日の13:00、演奏会の開演です。

O0800113212161125506

まず、3出団体が5団体続けて演奏します。
出演順にご紹介します。

005

●川越奏和奏友会吹奏楽団  (指揮)佐藤正人
 「法華経からの3つの啓示」より Ⅲ.平和の悦び [A.リード]
  Epitaphe 2011.3.11 (墓碑銘) [天野正道]
 「La suite excentrique」より 第1・2・4楽章 [天野正道]

バランスのとれたサウンド。
金管の音が温かみがあって、やわらかいなあ。
そして、サックスの皆さん、絶品です。
特に「La suite excentrique」は、コンクールの埼玉県大会、招待演奏でも聴かせて頂きましたが、今回は指揮者が違うせいか、別の表情をみせた演奏で非常に驚きました。(県大会の招待演奏では、作曲者の天野先生が指揮されており、もっと激しかった印象があります。)
どちらも甲乙つけ難い名演でしたが、これを表現できるこの団体に脱帽…。
川越奏和奏友会に死角はないようです。
こんな素晴らしい演奏をコンクールという緊張感の中で聴けないなんて…。
「3出」って何なんでしょう?

●越谷市立北中学校吹奏楽部  (指揮)田中秀和
 丘の上の古城 [堀田庸元]
 マーチ「春風」 [南 俊明]
 アルメニアン・ダンス・パートⅠ [A.リード]
 テキーラ [C.リオ/ ]

う~ん、これぞ吹奏楽部の音。
色気はないけど、正確でピュアなカンジ、素晴らしい!
特にマーチ「春風」は数年前の課題曲ですが、この曲だけ、1、2年生だけで演奏して頂きました。
小学生のように子供子供している部員も見受けられる中での堂々たる演奏でした。
アルメニアンダンスに至っては、その辺の高校生をはるかに凌駕しています。
ただ、ラテンの曲を高校生だったら、はじけて演奏しているだろうに恥ずかしそうに演奏してしているのが初々しくて良かった。
ちなみに1曲目の「丘の上の古城」の作曲者、堀田庸元氏が来場されていました。

001

 
●愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部  (指揮)伊藤宏樹
 祝典序曲 [D.ショスタコーヴィッチ/D.ハンスバーガー]
 元禄 [櫛田?之扶]
 オリンピック・センテニアル・セレブレーションズ [ジョン・ウィリアムズ/ジョン・モス]
 COSMOS(合唱曲) [詞・曲 ミマス]
 ディープ・パープル・メドレー [佐橋俊彦]

ショスタコーヴィッチの祝典序曲は私が若かりし頃、大いに流行った曲です。
曲冒頭のトランペットのファンファーレは華やかで素敵です。
しかし、名電の演奏では不発に終わってしまった…。
何でも昨晩は、秋田で山王中学とジョイントコンサートをやり、東京に着いたのは、夜中の2時だとのこと。
芸能人みたいで、そりゃ疲れますわな。
今年はスイスに演奏旅行にも、行かれたそうで大活躍です。
祝典序曲こそ、元気がなかったですが、演奏が進むにつれて「名電ワールド」を十分に堪能させて頂きました。
特に十八番の「ディープ・パープル・メドレー」では会場を大いに盛り上げてくれました。
(なお、名電高の演奏はプログラム上と少し順番や曲目が違ったりしていました。司会の方から変更の内容の紹介がありましたが、聞き書きですので上記の曲名に間違いがあるかもしれません。その場合は、ご容赦下さい。)

●横浜ブラスオルケスター  (指揮)近藤久敦
 吹奏楽のための「クロス・バイ・マーチ」 [三善 晃]
 アーデンの森のロザリンド [A.リード]
 キャンディード組曲 [L.バーンスタイン]
  Ⅰ.考えられる限り最善の世界
  Ⅱ.ウエストフェリエのコラールと戦いの場面
  Ⅲ.死刑執行(何て日だ)
  Ⅳ.着飾って、きらびやかに
  Ⅴ.草花や菜を育てよう(フィナーレ)

定期演奏会にも行かせて頂いたことがあり、その時のインパクトが強く、好印象を抱いている団体です。
しかし、最初から2曲目まで、なんだか軽く流している感じがして、アレッ?と思いました。
ところが、メインの「キャンディード組曲」に入るとその様相は一変しました。
横浜ブラスオルケスターの真骨頂ですね。
見事な演奏でした。

●松戸市立第四中学校  (指揮)須藤卓眞
 トッカータとフーガ ニ短調 BMW.565 [J.S.バッハ/森田一浩]
 15分の名声 ~アンディ・ウォーホルのための音楽~(委嘱作品) [清水大輔]
 スウィングしなけりゃ意味がない [D.エリントン/真島俊夫]
 あなたに ~吹奏楽と合唱のための~ [MONGOL800/樽屋雅徳]

いきなりの「トッカータとフーガ」。
少し、アンサンブルに乱れがあったのが残念でした。
2曲目は人気の作曲家、清水大輔氏への委嘱作品です。
(清水氏も会場にお見えになっておられました。)
フォルテ中心の難曲を中学生とは思えないテックニックで見事に表現していました。
また、ジャズの名曲も十分、“スウィング”してたし、1年生のダンスも本格的で見事でした!

002

ここから、本年度に全国大会に出場を決めている2団体の演奏です。
本番さながらに課題曲と自由曲、続けての演奏です。
(会場のアナウンスもコンクール風の紹介という“演出”がありました。)
コンクール本番、1ヶ月を切った状態でのパフォーマンスが楽しみです。

 
■東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部  (指揮)畠田貴生
 課題曲Ⅲ 吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」 [足立 正]
 自由曲  フェスティヴァル・ヴァリエーション [C.T.スミス]

今年は、スミスの「フェスティヴァル・ヴァリエーション」ですか。
高輪台の明るいサウンドに合ったナイス選曲だと思います。
しかし、課題曲は意気込みがすご過ぎてか、細かいミスがあったりして空回りしてたのかなあ?
自由曲は気合い入りまくりです。
いい意味で鬼気迫る演奏でした。
去年は、(私が個人的に)コンクール自由曲に合わないと思う曲を演奏して、銀賞に終わりましたが、今年は金賞を獲れるよう応援しています。
頑張って下さい。
(これでも私は高輪台高校の定演や演奏会に3回行っているのですよ!)

■川口市・アンサンブルリベルテ  (指揮)福本信太郎
 課題曲Ⅴ 香り立つ刹那 [長生 淳]
 自由曲  パッサカリアとトッカータ [福島弘和]

この団体のことを私のような素人のオヤジがナンダカンダ言うのもオコガマシイ。
完璧です。
それにしても、他のバンドだったら、アンサンブルを合わせるのが精一杯であろう課題曲Ⅴのメロディを美しく歌っているのはスゴイ!

004

大トリは、今年、ウィーン国際青少年音楽祭でグランプリを受賞した埼玉栄高校です。
(もちろん、3出で今年はコンクールに出場しません。)

●埼玉栄高等学校吹奏楽部  (指揮)大滝 実
 …そして、どこにも山の姿はない [J.シュワントナー]
 いとしのエリー [桑田佳祐/宍倉 晃]
 パガニーニ・ヴァリエーション [P.ウィルピー] 
 (アンコール)
 花は咲く [詞 岩井俊二 曲 菅野よう子]
 Believe [詞・曲 杉山竜一]

司会の方から、この曲を自由曲に選んだ1991年のコンクールで高校の部最高得点だった旨の紹介があった「…そして、どこにも山の姿はない」。
その時を彷彿とさせる名演でした。(実は私自身、CDでも聴いた事ないんですが…。)
埼玉栄はオペラなどのオーケストラ曲の編曲モノの印象が強いのですが、それを払拭する演奏に興奮した次第。
ブラヴォーです。
他の曲もとても洗練された素晴らしいパフォーマンスでした。
気持ちのこもった演奏に感動致しました。
(10月6日にさいたま市文化センターで行われた「秋演」にもお伺いしたかったのですが、仕事のため、どうしても行くことが出来ず残念です。)
アンコールでも大滝先生の歌声が聴けてラッキーでした。

Dsc_0044

そして、開演して4時間以上、大興奮の中、「全日本吹奏楽コンクール三年連続出場記念演奏会 第3回“もうひとつの全国大会”」は終了したのです。
いやあ、楽しいひと時でしたが、いささか疲れました。

006

最後に本日のコンサートの実行委員会の代表として、埼玉栄高等学校の大滝実先生が挨拶されました。
学生にとってコンクールは目標であり、それに出られないというのは特にその年の3年生が不憫でならない。
全日本吹奏楽連盟には何度も3出制度の廃止をお願いしているが、聞き入れてもらえない。
これからも3出団体でコンサートを続けていきたい…。
大まかな内容はこのようなものでした。

Dsc_0043

以前、私のブログに寄せられたコメントに「3出制度」の事を「悪しき平等主義」と表現されている方がいました。
まさにその通りです。
多くの団体に全国大会の機会を与えるというのは、素晴らしい考え方のようですが間違いだと思います。
およそコンクールの名を冠しているのならば、競争の世界です。
その競技会に何故、優れたところが出られないのでしょうか?
理由がわからないし、理解ができない。
甲子園に3回連続出場したから、次は出られませんよ、何て事になったら大変なバッシングにあうと思います。
全国大会に出たければ、常連校以上に指導者も学生も努力すればいい。
努力が足りないから、全国大会に進めないのだと思います。
“甘やかしすぎ”制度と言わざるを得ないでしょう。

003

ですが、3出制度のあるお陰でこのような素晴らしい演奏会が聴けるのも事実なので複雑な気持ちです。
いずれにせよ、出場団体の今後の活躍を心より祈っております。