久し振りのコンサートです。
でも、吹奏楽じゃないんです。
今回は、2014年9月16日、火曜日の「第574回サントリーホール名曲シリーズ」に行かせて頂きました。
サントリーホール。
首都圏では、優れたホールが数多くありますが、素人目から見ても格調の高さは、このホールが一番ですね。
独特の雰囲気を持っています。
さて、私がこのコンサートを拝見させて頂こうと思ったのは、この日の演目に惹かれたからでした。
吹奏楽の世界では、著名なチェコ出身の作曲家カレル・フサの作品「この地球を神と崇める」の管弦楽版が演奏されると知ったからです。
もちろん、フサの吹奏楽曲では「プラハ1968年のための音楽」が一番、有名です。
いわゆる「プラハの春」と呼ばれるチェコスロヴァキアの社会主義改革運動がソビエト連邦の牛耳るワルシャワ条約機構軍の軍事進攻によって弾圧された「チェコ事件」に抗議して作曲された曲で、強い政治的メッセージ性を持っています。(吹奏楽の世界では、時折、演奏される曲なのでこのブログをお読みになっている方なら、ご存知だと思います。)
ところが、この「この地球を神と崇める」は、それよりも、もっと大きなテーマを扱った曲なのです。
地球上で今現在も起こっている戦争、天災、環境破壊などの出来事を憂い、また、そのような事象を誘発する愚かな人間の行為に“音楽”によって警告を発しているのです。
初めて、この曲の吹奏楽版を聴いたのは何時だったか忘れましたが、若かった私は、強い衝撃を受けたのを覚えています。(調べてみますと吹奏楽の全国大会でも4つの団体が演奏していますね。)
そのステキな曲がオーケストラと合唱で形を変えて演奏されるとのこと。
ワクワクせざるを得ません。
[演奏]読売日本交響楽団
[指揮]下野 竜也(首席客演指揮者)
[ピアノ]小川 典子
[合唱]上野学園大学合唱団
[コンサートマスター]ダニエル・ゲーテ
◆ 松村 禎三/ゲッセマネの夜に
TEIZO MATSUMURA/To the Night of Gethsemane
◆ モーツァルト/ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
MOZART/Piano Concerto No.24 in C minor,K.491
Ⅰ.Allegro
Ⅱ.Larghetto
Ⅲ.Allegretto
【休憩】
◆ J.S.バッハ(ストコフスキー編)/ゲッセマネのわが主よ BWV487
J.S.BACH(arr.Stokowski)/
Mein Jesu(Geistliches Lied from Schemelli’s Gesang-Buch),BMV487
◆ カレル・フサ/この地球を神と崇める(管弦楽版日本初演)
KAREL HUSA/Apotheosis of this Earth
Ⅰ.Apotheosis
Ⅱ.Tragedy of Destruction
Ⅲ.Postscript
さあ、演奏会の始まりです。
指揮は下野竜也氏です。
このマエストロは、なかなか面白いプログラムを組んで下さるので大好きな指揮者のひとりですね。(今年の1月に横浜のみなとみらいホールで同じ読響の演奏会を聴かせて頂きましたが、ヘンリー・ウッド版の「展覧会の絵」は非常に感銘を受けました。)
広島ウィンドオーケストラの音楽監督もされていて吹奏楽にも造詣が深い事と推察されます。(昨年4月の広島ウィンドオーケストラ東京公演も行かせて頂き、非常に楽しいひと時を過ごさせて頂きました。)
だから、フサの曲と言う発想が出たのではないでしょうか?
推測ですが…。
最初の曲は、松村禎三先生の「ゲッセマネの夜に」。
素人のオヤジなので恥ずかしながら、松村先生の曲を真剣に聴いた事がありませんでした。(生演奏は初めてだと思います。)
少し、小さな楽器編成の曲ですね。
金管楽器などは、2管編成のように見えますが…。
プログラムの解説を読みますと編成の小さいオーケストラ、“アンサンブル金沢”のために作曲されたとのこと。
“ゲッセマネ”とは新約聖書に登場する地名で、キリストが、かの有名な“最後の晩餐”をした場所なんだそうです。
また、同時にキリストが捕えられた所でもあるのですが、ユダの裏切りによって捕縛される様を描いたジョット作「ユダの接吻」という絵画でこの時の様子を窺い知ることが出来るとのこと。(松村先生は、「ゲッセマネの夜に」を書く時に傍らにこの絵を置いていたそうです。)
いわゆる現代音楽ではありますが、流れの美しい上品な曲のように思えました。
神秘的でもありますよね。
宗教的な背景もあると思いますが、そんなところを越えた世界があるような気がしました。
続いては、小川典子氏の演奏によるモーツァルトのピアノ協奏曲。
なんと力強いピアノの音色でしょう!
何であんなに響くんだろうと感嘆してしまいます。
小川氏の素晴らしいパフォーマンスでした。
それにしても、モーツァルトって、何と心地よい気持ちにしてくれるのでしょうか。
良い意味で精神が弛緩していくのを感じます…。
休憩を挟んで後半の楽曲です。
バッハの「ゲッセマネのわが主よ」と、お待ちかね「この地球を神と崇める」です。
ところで、プログラムにわざわざ、以下のような文言が書かれているのを発見しました。
『指揮者・下野竜也氏の意向により、バッハとフサの両作品は続けて演奏されます。』
演奏を全て聴き終った時、何となくその意図がわかったような気がしました…。
最初は、バッハ。
また、“ゲッセマネ”ですか?
この日のプログラムは宗教を含めた精神世界がテーマなんでしょうか?
もともと“宗教的歌曲”を収録した「シェメッリ賛美歌集」の中の1曲だそうで、名指揮者ストコフスキーの編曲により、格調高い弦楽合奏曲として生まれ変わりました。
ゆったりとして深みのある弦楽器の響きは、私のような凡人の心の中まで沁み入ってきます。
キリストの苦悩に満ちた感情が素晴らしいほどの音の連鎖になって脳に伝わって来るようです。
そして、最後は、この日の目的でもあった「この地球を神と崇める」です。
吹奏楽版では、生演奏で聴いたことがありません。
ただ、レコードかCDの音源で聴いたのみです。(画像としては、youtubeで都立永山高校の全国大会での演奏を拝見したことがあります。)
吹奏楽版には、難解で迫力のある曲という印象が強く、この曲本来のメッセージ性とかに目を向けるまで至らなかった気がします。(私が、まだ若かったからかもしれませんが。)
ところが、今回の管弦楽・合唱版に関しては、曲に潜む作曲者フサの想いがガンガン心に響いてきました…。
と言うか、それがイチバン感じられた。
おそらく、その最大の要因は読響の演奏が素晴らしかったからだと思います。
同時に演奏に管弦楽と合唱になることによって、“演出効果”が上がったのではないでしょうか?
特に合唱が加わったのが効果バツグンでした!
本来の“声”だけではなく、“手拍子”や“足踏み”を交えたパフォーマンスは素晴らしかった!(上野学園大学合唱団の皆さん、ご苦労さまでした!)
いずれにせよ、“フサの世界”をじっくり堪能させて頂いた30分余でした…。
今年、聴いた中では、吹奏楽、オーケストラを問わず(私にとって)、一二を争う演奏だったと思います…。
サントリーホールより外に出ますと、目の前のカフェでは、まだ多くの客で席が埋まり、賑わっているようです。
そんな都会の喧騒も心地よくさえ感じられる幸せな気分になって、地下鉄南北線六本木一丁目駅から家路を急ぐ浦和のオヤジでした…。
追伸
この度、「OCNブログ人」サービス終了に伴い、“浦和河童便り”は、「gooブログ」に移らせて頂きました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます