浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

タッド・ウインドシンフォニー 第21回定期演奏会

2014-06-09 23:01:17 | 吹奏楽

私は、今まで生きてきた中で一度だけ、鈴木孝佳先生が指揮する吹奏楽団の生演奏を聴いたことがあります。
それは、何と今から35年前。
場所は忘れてしまいましたが、1979年度第24回西部吹奏楽コンクールの事でした。(いわゆる“九州大会”のこと。1982年に西部吹奏楽連盟が九州吹奏楽連盟と改称したため、第27回より“九州吹奏楽コンクール”となる。)
高等学校の部、福岡工業大学附属高等学校の演奏、指揮は、鈴木孝佳先生です。
「福岡工業大学附属って聞かない名だね。」
「そうだね。でも、福岡電波のことらしいよ。」
「へぇ福岡電波なの?」
以上は、一緒にいた友人との会話です。
福岡電波高等学校。
私がコンクールに出られる年齢に達した時には、コンクールこそ出場していませんでしたが、“伝説”の学校でした。(学校経営の破綻があり、すったもんだの後、福岡工業大学附属高等学校になったようです。)
特に1967年(昭和42年)第15回の全国大会、レスピーギの“ローマの松(アッピア街道の松)”で、全国大会1位を獲得(その当時は順位制でした)し、“名演”として後世までの語り草になっていました。

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「そうかあ、福岡電波なんだ…。」
福岡電波となりゃ、聴く態度も全然変わってきます。
そして、私も友人も、じっと演奏に耳を傾けます。
課題曲の「行進曲“青春は限りなく”」が始まりました。
なんて、柔らかくて、艶やかな音なんだろう…。
まだ、10代の私には、今までの高校の演奏で聴いたことのないようなサウンド。
素晴らしいと思いました。(その頃、全盛であった同じ福岡の中村学園女子高校と“双璧”だと思いました。)

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それ以後、鈴木孝佳先生のお名前は、私の記憶の中から薄れゆく存在となりました。
ところが、私が吹奏楽を再度、聴き始めた今から3年ほど前から、そのお名前を目にする事があるようになりました。
そう、タッド・ウインドシンフォニーの存在を知ってからなのです。
鈴木先生は、福岡工業大学附属高校を退任されてから、請われて渡米され、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校客員教授に始まり、何と2011年の退任まで15年間に渡ってネバダ大学ラスベガス校大学院教授をされたとのこと。(また、日本人初のA.B.A.正会員。)
私、個人として、本当は、もっと早く、“タッド”の演奏会に行きたかったのですが、都合が付かず、今年が“初”となったのでした。
そうです、鈴木孝佳先生は、私にとって、35年ぶりに『Takayoshi“TAD”Suzuki』として蘇って下さったのでした…。

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前置きが長くなりすぎてしまいました。
申し訳ありません。
本題に入ります。

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2014年6月6日、金曜日。
場所は、大田区民ホール「アプリコ」大ホールです。
座席数1477の立派なホールです。
ホール内は木目を基調とした内装です。
徹底的に木材で仕上げているので、東京オペラシティに感じが似ています。(と言ってもホールの形式は、違います。アプリコは典型的な“プロセニアム形式”ですね。東京オペラシティは、“シューボックス形式”ですから…。)
当日は、大雨でした。
蒲田駅から、わずかな距離なんですが、カサをさしていても結構、濡れちゃいましたね。

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タッド・ウインドシンフォニーとは、簡単に言うと鈴木孝佳先生のもとに集まったオーケストラや吹奏楽団で活躍中のプロの演奏家集団です。
私の好みの曲もありますので楽しみでなりません。
そして、演奏会が始まりました…。

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[演奏]タッド・ウインドシンフォニー
[指揮]鈴木 孝佳(音楽監督)

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◆ 祝典序曲(ポール・クレストン)
◆ ギレアド《日本初演》(ネイト・キンボール)
◆ シンフォニエッタ第4番(フィリップ・スパーク)
   第1楽章 モデラート
   第2楽章 レント
   第3楽章 リトミーコ

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【休憩】

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◆ 復興(保科 洋)
◆ アメイジング・グレイス(作曲者不詳/arr.ウィリアム・ハイムズ)
◆ メキシコの祭り(H.オーエン・リード)
   第1楽章 前奏曲とアズテックダンス
   第2楽章 ミサ
   第3楽章 カーニヴァル

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最初の曲は、クレストンの「祝典序曲」。
あまり言いたくないのだけれど、私、恥ずかしながら、この曲を演奏したことがあるんです。
しかも、コンクール支部大会まで出たんですよね。
懐かしい。
あまりにも懐かしい。
背中がゾクゾクしましたねぇ。
トランペットのミスは、“ご愛嬌”としても、素晴らしい演奏でした!
クレストン、大好き!!
2曲目は、「ギレアド」。(蛇足ながら、「ギレアド」とは、ヨルダン川東の山地の名称。)
鈴木先生の弟子にあたるキンボール氏の作品です。
映画音楽のような作品でした。
実にアメリカ的で躍動感にあふれる曲だったと思います。
そして、私が素敵な演奏を聴いた後に感じた事とプログラムの曲目解説に書いてあった事が同じだったので、そのまま記載させて頂きます。
「今後の活躍に注目すべき一人である。」
前半、最後の曲は、吹奏楽ファンお馴染みのフィリップ・スパークの「シンフォニエッタ第4番」です。
三つの楽章に別れたノーブルな曲です。
第1楽章がイギリス民謡を思わせるかのような曲調で(ホルストの“組曲”に近い雰囲気)、第2楽章は上品さが増し、サウンドの厚みが伝わりました。
第3楽章は、それらとは打って変わって、リズミカルな要素が増した感じがしました。
特に打楽器の独特なリズムとメロディ楽器のユニゾンが一見、ミスマッチに感じられながも、不思議に、そして、見事に融合していて素晴らしかった!(少し、ジャズっぽいテイストも感じましたね。)

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休憩です。
気にはなっていたけれど、今まで、TADを聴きに来なかった自分が悔やまれました…。

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後半、最初の曲は、保科洋先生の「復興」。
とても、良い演奏で満足しました…。
でもね、何か違うんです。
技術的なものは申し分ないです。
スピッリト的なものが…。
この曲、最近、流行りましたので、たくさんの演奏を聴く機会がございました。
私、個人的な意見ですが、この曲“演歌”だと思うんです。
日本人的なドロドロしたものが主題をなしている…。
しかし、この日の演奏は、ホンの少しだけあっさり、し過ぎかなぁ。
泥臭い、誇張した演奏の方が合うと思うんですけど…。(個人的意見です。)
次は、「アメイジング・グレイス」。
ブラスバンド界では、著名な作曲家ウィリアム・ハイムズの編曲による作品です。
美しいメロディに美しい演奏。
特にトランペットのメロディラインに酔いしれました。
トリは、「メキシコの祭り」。
子供の頃、憧れの曲でした。
特に1曲目の「前奏曲とアズテックダンス」は、天理高校の演奏をレコード(古いねぇ)を聴いて感動したものでした。
良かった!とっても良かった!!ブラヴォーです!

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アンコールは、2曲。
特に最初の曲は、TADのメンバーで演奏会のほん数日前に急逝されたホルン奏者の藤原貴裕さんを追悼するために演奏されたブラームスの「ドイツ・レクイエム」は感動的でした。(お名前がプログラムに載っていらっしゃるほどの急な旅立ちでした…。)

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この日を聴き終わって。
プロの皆さんなのですから、素晴らしい演奏であるのは間違いないのですが、それ以上に思いの詰まった演奏の数々に感銘を受けました。
鈴木孝佳先生、TADの皆さん、素敵な時間をありがとうございました!

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最後の言い残したこと。
ここだけの話、福岡工業大学附属高校は(福岡工業大学附属城東高校も含めて)、屋比久勲先生の時代より、鈴木孝佳先生の時代の方が圧倒的に好きです!!(あくまでも“超”個人的意見です。)