浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

昭和ウインド・シンフォニー 第15回定期演奏会

2014-06-03 17:48:18 | 吹奏楽

小田急線、新百合ヶ丘。
久し振りですねぇ。
何年振りだろう?
以前、仕事で来たのは、十数年前だと思います。(もっと前かも…。)
その頃は、住宅造成地っていうカンジが強かったですね。
今は、驚くほど立派になってしまいました。
本当にビックリです!

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その新百合ヶ丘駅の近くにあるのが、昭和音楽大学です。
2014年6月1日、日曜日。
私は、昭和音楽大学の学生で組織された“昭和ウインド・シンフォニー”の第15回定期演奏会におとずれたのでした。
“昭和ウインド・シンフォニー”というのは、「2000年に結成された」吹奏楽団で、「昭和音楽大学、同短期大学部、大学院の管弦打楽器の全専攻生から選抜された学生」で編成されているそうです。
「世界各国で生まれた新作を中心」に演奏をされているとのこと。
(最初に申し上げておきますが、私は、昭和音楽大学やその施設、あるいは、この日の演奏曲目等について、詳しい知識を持っておりません。したがって、演奏会で頂いたプログラムに頼らざるを得ないことをお許し下さい。)

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新百合ヶ丘駅を出て南口の方に向かいます。
商業施設の立ち並ぶ地域を抜け、なだらかな坂道を登っていくと昭和音楽大学に到着。
駅の改札からでも、5分かからないくらいでしょうか。
非常に近いです。
既に会場の“テアトロ・ジーリオ・ショウワ”の前には、開場を待つ観客の皆さんで長蛇の列が出来ています。
私も列の最後尾に並びました。
程なくして開場、中に入ります…。

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ここで、少し会場の“テアトロ・ジーリオ・ショウワ”について。
客席数1367(オーケストラピット使用時は、1265)で、ヨーロッパのオペラ劇場を意識した“馬蹄型客席”をしています。(国内ではめずらしいそうです。)
3階席まであり、オペラ、バレエ、ミュージカルといった様々なジャンルにも対応できるとのこと。
私もホールの中に入ってみました…。
1階席の傾斜はケッコウ角度がありますね。
舞台を“覗き込める”ようなカンジですね。
2、3階席はあまり客席数が多くないのでしょうか?
個人的な意見ですけれども、東京文化会館の縮小版みたいな印象を受けました。(あくまでも個人的意見です。)

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この日のコンサートは自由席でしたので、無難な1階席中段あたりに陣取りました。
プログラムを開いてみます。
《日本初演》の文字が躍っていますね。
楽しみです。(私、何でも“初モノ”は好きなので…。)
指揮者のところには、ユージーン・M・コーポロン氏と福本信太郎先生のお名前が書いてあります。
コーポロン氏は、「現在ノーステキサス大学音楽科教授として吹奏楽指揮の分野で全米一の名声を誇」っておられる方のようです。(プログラムのコーポロン教授の“解説”には、他にも様々な輝かしい経歴が記載されておりますが、あまりにも量が多いので割愛させて頂きます。)
福本先生は、このブログをお読みの方なら、お馴染みだと思います。
もともとは、サクソフォーンがご専門ですね。(時々、アンサンブルリベルテの演奏会などで、その“甘い音色”聴かせて頂けることがあります!)
私の大好きな“川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団”の常任指揮者で、他にも相模原市民吹奏楽団、東海大学吹奏楽研究会を率いて吹奏楽コンクールでは、華々しい成果を挙げておられます。
また、教育者としては、昭和音楽大学准教授の立場から、後進の指導もされていらっしゃるとのこと。
さあ、前置きが長くなりましたが、開演のお時間のようです。

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[演奏]昭和ウインド・シンフォニー
[指揮]ユージーン・M・コーポロン
    福本 信太郎

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◆ セレブレーション《日本初演》 (ブルース・ブロートン)
◆ レクイエム《日本初演》 (デイヴィッド・マスランカ)
◆ ダンスリーズ〈セットⅡ〉 (ケネス・ヘスケス)
  Ⅰ.ジェニーのボービー
  Ⅱ.トム・ティンカーのおもちゃ
  Ⅲ.心の安静
  Ⅳ.ピーズコッドのガリアルダ

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【休憩】

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◆ ビザロ《日本初演》 (マイケル・ドアティ)
◆ 魔王のための夜曲 (後藤 洋)
~シューベルトの歌曲によるシンフォニック・バンドのための幻想曲~
◆ フローズン・カテドラル (ジョン・マッキー)

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最初の曲は、ブルース・ブロートンの“セレブレーション”。
スミマセン、私の勉強不足なのでしょうが、ブルース・ブロートンという方の事を存じ上げません…。
こういう時は、プログラムの解説、解説…。
「映画、TV、ゲームの音楽からオーケストラ、吹奏楽、室内楽のための作品まで幅広く手がけている」アメリカ人作曲家のようです。
この“セレブレーション”とい曲は、ネヴァダ大学ラスベガス校のウインドオーケストラのために書かれた曲。
名前のごとく華やかな曲でした。
演奏も活気にあふれており、エネルギーを感じましたね。
楽器ごとのメロディやリズムの受け渡し方が見事です。
ただ、冒頭のファンファーレの乱れが惜しかった。
次は、マスランカです。
この方は、素人のオヤジでも知ってます。
“レクイエム”というのは、鎮魂の曲ですね。
そして、「第2次大戦におけるホロコースト(ナチスによるユダヤ人大虐殺)とその犠牲者のためにこの曲を書いた」のだとマスランカは述べています。
“レクイエム”なので、決して明るい曲ではありませんが厳粛な気持ちにさせる曲でした。
解説にも書いてありますように「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ《月光》を連想させる、ピアノとマリンバの3連符の分散和音」によって曲全体が支配されており、その上にメロディラインをのせていくには、相当のテクニックが必要であろうことが予想されました。
木管群の健闘が光り、曲が荘厳さを醸し出していましたが、単調な曲であるが故に、ほんの僅かな部分で、やっぱり単調に感じられたのが残念でした。
前半、最後の曲は、イギリス人作曲家、ケネス・ヘスケスの作品。
前作の“ダンスリーズ”は、2001年の第2回定期演奏会で《日本初演》されたそうです。
今回の“ダンスリーズ〈セットⅡ〉”は、その続編です。
“ダンスリーズ”とは、17世紀の「民謡とダンス音楽の集成『ダンシング・マスター』に収められた曲をもとに構成された組曲(17世紀イングランドの楽譜出版業者ジョン・プレイフォードが出版)」なのだそうです。
いわゆる「古い音楽を現代的なスタイルで再構成」しているようで、欧米の作曲家では、流行しているようですね。
ハリのある演奏で、古い時代のメロディを使用しているせいかノーブルに感じました。
音楽の中に良い意味で“時代”を意識させる好演奏でした。
ただ、それ故に曲自体に(素人のオヤジは)、退屈な感じを受けたのも事実です。(演奏は、とてもヨカッタ!)

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前半を聴いて思うに知らぬ曲を聴くのは良い体験だなあと。
曲の全てを受け入れられるわけではないけれども、初めて聴くことによって、作者の想いや意図がストレートに伝わって来るような気がする…。
浦和のオヤジは生意気にもそんな風に思ってしまったのでした…。

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後半開始です。
それまでは、コーポロン教授が指揮をされていたのですが、この曲は、福本先生に代わっての演奏です。
ドアティの“ビザロ”。(ドアティと言えば、吹奏楽ファンなら、“ストコフスキーの鐘”を思い浮かべるのではないでしょうか?)
“ビザロ”というのは、「悪の天才科学者にしてスーパーマンの宿敵、レックス・ルーサーが作ったスーパーマンの不完全なコピーのこと」。
ジャズやポップスのテイストが満載の曲で非常に面白かった。
昭和ウインド・シンフォニーの皆さんも素晴らしいパフォーマンスを見せて下さいました。
この日のプログラムの中でイチバン楽しめた曲であり、演奏でもあったように思いました。
それにしても、演奏中、やたらにスタンド・プレイをする方が多いなあと思っておりましたら、楽譜に指示されていたんですね!
ビックリです!
後半2曲目は、作曲家で昭和音楽大学講師でもいらっしゃる後藤洋先生の作品です。
“魔王のための夜曲”。
この曲は、「2011年春に石川県金沢市で開催された“ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2011”のために、石川県高等学校選抜吹奏楽団の委嘱で作曲された作品」。
この音楽祭は、毎年、テーマが決まっていて、それに沿った演奏がなされるとのこと。
この年のテーマは『ウィーンのシューベルト』。
しかし、シューベルトには吹奏楽の曲がないとの事で、後藤先生の出番となったようです。
素人のオヤジが言うのもオコガマシイですが、実にセンスのよい曲だと思いました。
シューベルトの歌曲《魔王》のテーマが時折、上品に見え隠れしていて非常に心地よい。
その反面、現代的な吹奏楽の雰囲気も残しつつ、キレイに融合されている…、そんな風に感じました。
この日の昭和ウインド・シンフォニーの皆さんの演奏も素晴らしかったですが、高校生の皆さんにもチャレンジしてほしい曲だと思いました。
さあ、トリは、ファンの多い作曲家、ジョン・マッキーの作品です。
「ノース・カロライナ大学グリーンズボロ校のバンド・ディレクター、ジョン・ロークの依頼」により作曲されたのが、この曲。
ローク氏の若くして亡くなった息子さんが、「北米最高峰のマッキンリー山を含むデナリ国立公園の雄大な景色に魅了されていた」ため、この曲名がつけられたそうです。
即ち、マッキンリーのような「高い山に登る人々が、しばしばその荘厳な様子を『教会のよう』と形容していることから、」“フローズン・カテドラル(凍れる寺院)”。
特に面白いのは、バンダの打楽器奏者がいること。
例えば、金管楽器のバンダだと迫力が増す効果がありますが、打楽器だと透明感のある空間的な広がりを感じました。(初めて聴く曲なのであまり意識は出来ませんでしたが、水を入れたクリスタルのグラスをコントラバスの弓で弾く楽器があったらしいです。福本先生は、それを“ウォーターホーン”と表現されていました。聞き間違いをしているかもしれません。もし、そうであったら、お許し下さい。)
壮大な自然と悠久の時間の流れを感じさせる名曲でしたね。
そして、昭和ウインド・シンフォニーの表現力の高さがこの曲に花を添えたように思いました。
素晴らしかった!

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アンコールは2曲。
そして、アンコール曲まで《日本初演》なのだそうです。
プログラムに載ってないので、福本先生の口頭による説明に頼ります。「ダウニー序曲」(作曲者は聞き逃しました)、「カルナヴァル」(ジュリー・ジロー)とおっしゃっておられました。(1曲目は、コーポロン教授、2曲目は、福本先生が指揮されました。なお、聞き書きなので、アンコールの曲名等が間違っていたら、ゴメンナサイ。)

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それにしても、昭和ウインド・シンフォニーの“ポリシー”に賛辞を送りたい。
世界の新作を紹介するという作業は、大変、志高いです。
個人的にとても素敵だと思います。
これからも続けていってほしいと切に希望します。

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前々から申し上げていることなのですが、音楽大学のコンサートは、非常にお得です!(表現の仕方が下世話で申し訳ありません。)
音楽を専門に勉強されている学生さんが演奏しているのですから、技術は非常に高度な水準です。
なのにチケットの価格が非常に安い。
素晴らしい演奏を安い金額で聴けるのですから、聴かない手はありません。
そして、それ以上に各音大の個性的な演奏を聴き比べられるのが楽しい。
これまで、たくさんの音大吹奏楽団の演奏を聴いてきましたが、期待を裏切る団体は、ひとつもありませんでした。
もちろん、この日の昭和ウインド・シンフォニーの演奏も大満足させて頂きました。
アメリカ的な繊細なサウンドは、現代の吹奏楽の新曲を演奏するのに最適だと思いました。
楽しい演奏をありがとうございました。

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そうそう、最後に申し上げたい事があります。
Twitterでも、つぶやかせて頂いたのですが、当初、6月1日は、東京芸術劇場で行われた陸上自衛隊中央音楽隊の定期演奏会に行くか、昭和ウインド・シンフォニーかと迷っておりました。
しかし、自衛隊のチケットは抽選にもれ、入手出来ませんでした。
でも、結果的に良かったかなと思っています。
昭和ウインド・シンフォニーの演奏の素晴らしさも然ることながら、選曲やその企画に大いに賛同することができたからです。

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やっぱり、音大の皆さんの演奏は素晴らしいなぁと思いながら、小田急線の車中の人となった浦和のオヤジは、埼玉県人の“東京の聖地”池袋で途中下車してしまい、ラーメンを食べ、西武デパートの地下食品売り場で日本酒を買い、そして、国立音大、武蔵野音大、東京音大の各吹奏楽団のチケットを“ぴあ”で購入し、この上ない幸せな気分で武蔵浦和へと帰ったのでした…。