四季おりおり

自然散策そして音楽のことなど・・・ 
2010年秋より里山・谷戸歩きで見た風景や蝶・花の紹介が増えてきました。

アサギマダラとクロコノマチョウ

2010-10-27 10:38:00 | 
寒波の訪れる前にアサギマダラに会おうと、フジバカマの咲く秦野市「くずはの家」を訪れました。


くずはの家 10月26日 

ここは、丹沢の麓を流れる葛葉川の近くにあり、広葉樹林を中心とした自然環境を子供たちに残していく、神奈川のナショナルトラスト緑地で、「くずはの広場」と呼ばれています。その中心にある「くずはの家」は自然の観察会や研修会を通じた自然保護活動を行っています。
くずはの家の職員に「アサギマダラを観に来ました」と挨拶をすると、フジバカマの咲いている場所を教えてくれたので、真っ先にそちらに向う。


フジバカマ

背の高い樹木に囲まれた一角に大きい株のフジバカマが咲いており、アサギマダラの雄が2頭あちらの花こちらの花と飛んでは止まり翅をきままに開閉していました。



アサギマダラは幼虫時代に食べた食草(ガガイモ科植物)に含まれるアルカロイドなどの有毒物質を体内に蓄えているので、鳥に襲われる心配がないためか動きはとても緩やかで、見ているだけで心が癒されます。





1頭は長旅のためか翅が破れていました。かなり長時間吸蜜したあと、ヒラヒラと舞い上がり、高い樹木を超える高度に達したら、翅を水平に開いたまま風に任せて葛葉川の下流方向へと滑空していきました。
アサギマダラの雄は、フジバカマの蜜に含まれる有毒のアルカロイドを体内に取り込んで代謝し、性フェロモンを産生することが知られています。それゆえ、フジバカマに飛来するのはアサギマダラの雄ということになるのでしょうか。今回出会ったのは2頭共雄でした。長い旅の途中で、どうやって上空からフジバカマを見つけるのか、視覚または嗅覚どちらで察知するのか、その能力には感心させられます。
フジバカマの所では他の蝶は見かけませんでした。
くずはの家の職員にアサギマダラに会えたことを告げると、23日、24日にもいたとのことでした。10月16日に同じ場所で観察したという投稿もあります。

葛葉川を渡ったところにある「ほたるの里」に行くと、黒褐色の大きい蝶が低いところをヒラヒラと舞い、草むらのどこかに止まったようでした。クロアゲハくらいの大きさですが、色がまったく違います。一旦諦めてくずはの家近くに戻ると、低木の庭で黒褐色の蝶が低い所を舞うのを見つけました。



クロコノマチョウで、翅を閉じて地面に止まっているところは実に見事に枯葉に似せており、その擬態のうまさには驚かされました。



クロコノマチョウに会うのは初めてです。1990年版の図鑑では、分布域が山梨県南部から静岡県以西となっていますが、2006年版の図鑑では本州の東北限は神奈川県、千葉県付近となっており、ナガサキアゲハと同様に温暖化によって分布を東に広げている蝶です。

気象データ(海老名、13時) 曇り 19℃ 

秦野市 「くずはの家」
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月下美人の開花と匂い

2010-10-12 10:55:00 | 相模原・県央
昨夜(10月11日)我が家の月下美人が1個咲きました。
今年は8月20日に1輪咲き、9月になってから2個蕾が付きました。10月になり、最低気温が15℃を下回る日もあって寒さで蕾の成長が止まる心配もしましたが、環境を変えることなくそのまま室外に置きました。1枚の葉に2個の蕾があり栄養が行き届かなかったせいか、1個は赤く変色し落ちましたが、残り1個は順調に大きくなり、11日の朝には蕾の先が下がり、白い花びらが見えかけていました。18時には、開花直前になる。


18時48分

18時48分に見ると、開花し始めたところした。しかし、まだ匂いはあまり感じられません。


19時30分

開花が始まって約1時間後です。ほぼ完全に開き切り、特有の芳香が漂いました。


23時24分

開花から約5時間後です。花の様子は19時半と同様で、芳香も続いています。
翌日午前2時、まだ開いたままですが匂いはしなくなり、5時には花はしおれていました。
今回、時間を追って観てみると、開花直後はまだ芳香がせず、またしぼみ始める前に芳香が弱くなる傾向がみられました。香り成分を、開花真っ盛りのほんの数時間だけに限って出すという仕組みも見事です。月下美人は、この限られた夜間の時間帯に一気に強い芳香を漂わせ、現地(メキシコ)に生息するヘラコウモリ科の小型コウモリを誘引する戦略になっています。
しかし、月下美人は実を付けることが(ほとんど)ありません。つまり、開花も芳香も子孫繁栄には役立っていません。彼岸花が蜜を出すのと同様に、当てのないことにエネルギーを費やしていることになりますね。
月下美人はメキシコ原産で、1個の木から挿し木で全国に広がっているといわれています。そうするとどの月下美人をとってみても遺伝子は皆同じということになります。


8月20日22時30分

以前より、あちこちの月下美人が同じ時期に咲くという傾向があるのが気になっていました。ブログでコメントを交換し合う二人の方も、10月5日から10日の間に開花したと載せています。我が家の前回の開花は8月20日でしたが、お二人のところでもやはり同じ頃に開花しています。
どの月下美人も同じ遺伝子を持っているから似たような開花時期になるのではと勝手に面白がっています。
しかし、1980年代にメキシコから別の月下美人の株が導入され、現在では複数の遺伝子の株が国内に広がっており、別の遺伝子を持つ花同士であれば受粉が可能になってきているそうです。
8月20日の写真を見ると、10月11日よりも外側の細いガクを真直ぐに伸ばし元気なように見えます。10月になってからの開花は温度環境がギリギリでやっとのことで咲いた感があります。
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ウラギンシジミの行動

2010-10-09 15:01:00 | 
相模原公園で銀色と黒地に赤の翅をチラチラさせているウラギンシジミの雄に出会いました。



一旦樹木の葉に止まり、そのうち、水飲み場の台の石材の隙間の水を吸うような仕草をしたり、僕の周りを回ったりし、写真の石材の角に止まりました。その後、近くの低木の方に飛んでいく。1時間ほどして、かなり離れた「リリちゃん橋」近くでもヒイラギナンテン近くで飛んでいるのを見つけました(写真下)。帰り際の畑の近くでも、高木に飛びつく個体を見かけました。



一日に3回も別の雄の個体を目撃しましたが、花に止まっている姿は見たことがありません。
それもそのはず、ウラギンシジミは、花には来ず、柿・イチジクなどの腐果、動物の排泄物、湿地の水、人の汗などを好みます。中には写真を撮っている人のジーパンに止まっている例さえ報告されています。僕の周りを飛んだのも汗の匂い(臭い?)に惹かれたのでしょう。
ウラギンシジミは、常緑樹の葉裏に止まったまま越冬します。飛んでいて常緑樹の葉に着地することが多いのは、越冬に適する葉を探索する習性なのかもしれません。
越冬するのは雌が多く雄は少なく、関東地方ではその大部分が死亡し、春に残る個体はごく少数だそうです(日本産蝶類標準図鑑、学習研究社、2006)。
しかし、北本自然観察園で約15%が越冬したという例も報告されています。
今回は、雄しか見つかりませんでしたが、雌も観察してみたいものです。
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彼岸花で吸蜜するキアゲハとアゲハ

2010-10-08 10:18:00 | 
相模原麻溝公園の彼岸花は、今が見頃で、まだ蕾もありました(10月6日)。
彼岸花は東西10m位を一列に植えられており、キアゲハが東端から、アゲハが西端から次々に花を巡って互いに接近してきました。



キアゲハが吸蜜しています。翅を光が透過しているところを撮りました。



キアゲハは彼岸花の花弁や雄しべをかき分けるように潜り込んで懸命に吸蜜している様子です。



アゲハ(写真上)もキアゲハを飛び越して近くにやってきました。
彼岸花の故郷は、中国の揚子江中・下流域と言われており、その辺りには種々のアゲハチョウが生息しています。アゲハもキアゲハも彼岸花が大好物と見えます。彼岸花は3倍体なので受粉して種を作ることがないので、本来蜜を作る必要はありません。しかし、蜜を分泌して蝶たちがやってくる。つまり彼岸花は無駄なエネルギーを使っているといえそうです。
それにしても、彼岸花にはアゲハチョウがとても似合います。
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インパチェンスで吸蜜するナガサキアゲハ

2010-10-05 09:53:00 | 
相模原公園の温室前にあるニューギニア・インパチェンスの花壇に大型のアゲハチョウが来ていました。ナガサキアゲハの雌です。



ナガサキアゲハの分布は1990年頃は関西以西でしたが、2006年時点では関東南部全域まで分布域が拡大しており、ナガサキアゲハの神奈川県への東進が話題になった10年位前には平塚市で目撃したことがありました。この辺でみかけるのは初めてのことです。
ナツミカンやウンシュウミカン、ユズなど栽培ミカン類を食草とするので、温暖化に伴ない一気に生息範囲を広げています。





ナガサキアゲハは、ニューギニア・インパチェンスのような南国的な花を好むのか、朱色や紅色の花々を次々に訪れて吸蜜していました。



同じ花壇には千日紅も植えられていて、時々止まるのですが直ぐに飛び立ち、近くのインパチェンスに向います。ナガサキアゲハは千日紅の花の形が苦手なのか、口吻(ストロー)が不自然に曲がっているように見えます。
ナガサキアゲハと同じくらい大型のモンキアゲハは太平洋沿いでは宮城県辺りまでが分布域ですが、この辺では見かけません。カラスザンショウを特に好むようなので、分布が局地的なのかもしれません。



アゲハがマルハナルコウソウで吸蜜しています。よく見ると、アゲハはラッパ状の小さい花を6本の足で抱きかかええるようにして止まり、吸蜜しています。一見窮屈で吸蜜しにくそうに見えますが、次々にマルハナルコウソウの花を訪れていたので、好みの花なのだと思います。ラッパの中を覗き込んでいる面白い光景も披露してくれました。


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