goo blog サービス終了のお知らせ 

「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

時のない時計 Long Good-bye 2025・04・29

2025-04-29 05:49:00 | Weblog

 

 

  毎日のように通っている高齢者住宅の一階にある 、

 見る人の少なそうな 壁掛け時計の針は 、この一年

 近くの間 、いつも何分かさきの時刻を指し示して

 いた 。とくに支障がないからか 、あるいはそれと

 気付いていても 、誰もわざわざ時計を壁から外ず

 してまで正しい時刻に直そうとはしなかったから

 なのか 。

  過去形で書いたのには理由がある 。週初めの昨

 日 ( 月曜日 ) の朝 、その時計を眺めたら正しい時

 刻を示していた 。スマホに表示された時刻との比

 較でそれとわかった 。正しい時刻に 修正されたら

 修正されたで 、なんとなく「 せわしない 」感じが

 する 。

  時計の長針が進んでいるだけで 、まだ4~5分余

 裕があると思っていたのが 、いきなり正しい時刻

 に変わったからである 。

  。 。(⌒∇⌒)!  。 。

  家の中に何個かある アナログの 置き時計 や 壁掛

 け時計 のうち 、ただ一個 、台所に立ったとき 、

 目に入る壁掛け時計の 長針の針 を 、4~5分進

 めている 。他にデジタル表示の電波時計も置いて

 いるので 、見ようと思えば 、いつでも正確な時

 刻は知れるのに 。

  時間に余裕があるようなふりをしていたいとい

 う 、なんとも いじましい習慣ある 。そん

 に急ぐ人生でもないのだけれど 。

  。 。(⌒∇⌒)!  。 。

  スマホの世の中になって 、アナログであると デ

 ジタルであるとを問わず 、街中から時計が消えた

 ように感じる 。運行表(ダイヤ)通りに運行される  ( バスの運転手が乗客からの

 ことの少ない路線バスの車内から 、時計その他の   カスハラをうけない

 時刻表示が 、いつの頃からか 、消えた 。外出時 、   ための用心か ? )

 スマホの携行を忘れると 、駅にでも行かない限り 、

 現在時刻がわからない時代になった 。

  もっとも格別の支障はないのだけれど 。

 。 。(⌒∇⌒)!  。 。

  今日の「 お気に入り 」は 、最近読んだ本の中から

 書き留めた 文章 。

   引用はじめ 。

  「  ・・・ 時計が刻む時間はひとつじゃない 。この世
  にはいろいろな別々の時間がある ・・・ 」

  「   ちっちっちっちっ 。
         かちこちかちこち 。
   てぃんくてぃんくてぃんく 。 」

  「 法学部で弁護士をめざしていた父は 、在学中に戦
  争へ行った 。戦争が終わり 、大学に復学したとた
  ん 、すべての法律が変ってしまった 。平凡な会社
  の経理課長であり続けることに満足していたわけで
  はない父の心は 、手の中に握りこめるほどありあり
  とわかる 。息子として 。同じ男として 。
   だが 、もう話を聞く機会はない 。生きていたとし
  ても 、自分のことを話すのが嫌いな父は 、答えな
  かったに違いないが 。 」

  「 『 時計の針を巻き戻したいって思うことは 、誰に
  でもあるでしょう
   私が答えるまで帰さない 、という口調で時計屋が
  言う 。今度は釣り銭を人質にされた 。 」

  「 『 あなたにだって 、あるんじゃないですか 』 」

  「 『 いえ 、ありません 』 」

  「  ちっちっちっちっ 。
         かちこちかちこち 。
   てぃんくてぃんくてぃんく 。 」

 (  荻原浩著 「 時のない時計 」集英社文庫 所収 )

  引用おわり 。

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 散髪屋と美容院 Long ... | トップ | 創作脳 Long Good... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事