
毎日のように通っている高齢者住宅の一階にある 、
見る人の少なそうな 壁掛け時計の針は 、この一年
近くの間 、いつも何分かさきの時刻を指し示して
いた 。とくに支障がないからか 、あるいはそれと
気付いていても 、誰もわざわざ時計を壁から外ず
してまで正しい時刻に直そうとはしなかったから
なのか 。
過去形で書いたのには理由がある 。週初めの昨
日 ( 月曜日 ) の朝 、その時計を眺めたら正しい時
刻を示していた 。スマホに表示された時刻との比
較でそれとわかった 。正しい時刻に 修正されたら
修正されたで 、なんとなく「 せわしない 」感じが
する 。
時計の長針が進んでいるだけで 、まだ4~5分余
裕があると思っていたのが 、いきなり正しい時刻
に変わったからである 。
。 。(⌒∇⌒)! 。 。
家の中に何個かある アナログの 置き時計 や 壁掛
け時計 のうち 、ただ一個 、台所に立ったとき 、
目に入る壁掛け時計の 長針の針 を 、4~5分進
めている 。他にデジタル表示の電波時計も置いて
いるので 、見ようと思えば 、いつでも正確な時
刻は知れるのに 。
時間に余裕があるようなふりをしていたいとい
う 、なんとも いじましい習慣である 。そんな
に急ぐ人生でもないのだけれど 。
。 。(⌒∇⌒)! 。 。
スマホの世の中になって 、アナログであると デ
ジタルであるとを問わず 、街中から時計が消えた
ように感じる 。運行表(ダイヤ)通りに運行される ( バスの運転手が乗客からの
ことの少ない路線バスの車内から 、時計その他の カスハラをうけない
時刻表示が 、いつの頃からか 、消えた 。外出時 、 ための用心か ? )
スマホの携行を忘れると 、駅にでも行かない限り 、
現在時刻がわからない時代になった 。
もっとも格別の支障はないのだけれど 。
。 。(⌒∇⌒)! 。 。
今日の「 お気に入り 」は 、最近読んだ本の中から
書き留めた 文章 。
引用はじめ 。
「 ・・・ 時計が刻む時間はひとつじゃない 。この世
にはいろいろな別々の時間がある ・・・ 」
「 ちっちっちっちっ 。
かちこちかちこち 。
てぃんくてぃんくてぃんく 。 」
「 法学部で弁護士をめざしていた父は 、在学中に戦
争へ行った 。戦争が終わり 、大学に復学したとた
ん 、すべての法律が変ってしまった 。平凡な会社
の経理課長であり続けることに満足していたわけで
はない父の心は 、手の中に握りこめるほどありあり
とわかる 。息子として 。同じ男として 。
だが 、もう話を聞く機会はない 。生きていたとし
ても 、自分のことを話すのが嫌いな父は 、答えな
かったに違いないが 。 」
「 『 時計の針を巻き戻したいって思うことは 、誰に
でもあるでしょう 』
私が答えるまで帰さない 、という口調で時計屋が
言う 。今度は釣り銭を人質にされた 。 」
「 『 あなたにだって 、あるんじゃないですか 』 」
「 『 いえ 、ありません 』 」
「 ちっちっちっちっ 。
かちこちかちこち 。
てぃんくてぃんくてぃんく 。 」
( 荻原浩著 「 時のない時計 」集英社文庫 所収 )
引用おわり 。
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