「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・01・19

2005-01-19 07:00:00 | Weblog
 世の中には様々な種類の職業がありますが、昔から「安定」して「堅い」職業の代表は「銀行員」でした。「公務員」もそうですが、常識的に考えれば、血気盛んな若者が好んで就く筈のない地味な職業です。「保険会社の社員」というのも「銀行員」と似ています。

 保険会社の社員という職業の評価、その社会的地位は昔から決して高いものではありません。

 日本においては、100年そこそこ前の明治時代に誕生し、戦後のモータリゼーションの進行に伴い自動車保険を牽引車として発展した損保業界と毎日の民放テレビ番組の合間にスポットCMがひっきりなしに流されている生保業界があります。この地味な保険業界に、戦後の復興期に、若くて優秀な人材を少数精鋭で集めようとするならば、良い給料、良い労働条件を提示する他なかったのだと思います。その頃からの伝統が、高度成長期を経て、今日まで続いてきたため、保険会社の従業員給与は他業種と比べて高めの水準にあるのです。

 巨額の不良債権を抱え、公的資金が注入され国民の税金のお世話になっているメガバンクの行員の給与水準の高さが批判されるのは当然ですが、安定した業績を挙げている保険会社の従業員給与の高さが、その高さゆえに批判される謂われはありません。

 昔から「保険屋」さんと呼ばれ、まさかのときの備えという効用は、理屈としては理解されながらも、保険料という名の掛け金を、税金同様、取り立てられるという感覚があり、また何事も起こらなければ払い捨てという割り切れなさの残るものであることから、人々の評価が低いのだと思います。物を作る仕事とか、物を売る仕事とかと比べると、生保であれ損保であれ保険は、あくまで縁の下の力持ち、人間社会を陰で支える地味な仕事であり、正当な評価はされるべきであるとは思いますが、社会の中で主役となることはまずありません。また、なくてもよいのだと思っています。

 保険金詐欺や保険金搾取を目的とした殺人事件は昔から後を絶ちませんが、最近のように、これだけ日常的に起きるということは、現代の日本人に老いも若きも、男女の別もなく、おカネ万能の拝金思想が蔓延し、通常社会の中にビルトインされている、犯罪に走ろうとする個人を未然に抑止し、規制する力が著しく減衰しているような気がします。社会の規範的なものが急速に希薄になってきている何よりの証拠だと思います。

 「保険」という社会生活の安定を図る知恵、仕組みには、一歩間違えば金儲けのための犯罪を誘発する側面があるだけに、保険契約獲得のために引受け時の契約者のチェック・審査が甘くなり、不正な契約の成立を簡単に許してしまうような引受姿勢は、保険会社にとって命取りになりかねません。

 日本中に「不祥事」が蔓延している今日、「お役所」や「銀行」や「保険会社」がその例外である筈もなく、どこの組織もコンプライアンス(法令遵守)や内部監査に大童です。
  
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