「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

二十年ふた昔 Long Good-bye 2021・09・11

2021-09-11 04:44:00 | Weblog



  今日の「お気に入り」 、その一 。

   「 2001年にアメリカで起こった同時多発テロのあと 、ブッシュ大統領はテロ組織とそれを支援する国家を

    許さないと明言し 、各国に問いました 。あなたは私たちの敵ですか ? それとも味方ですか ? と 。境界を

    引いて敵味方を分けるということは 、人間が犯してしまいがちな行為です 。でも 、それはそもそも誤った

    見方で 、人間が陥りやすい 罠(わな) だということを決して忘れないでほしい 。

     こうした感覚は 、人間が定住して農耕を始めてから非常に強くなったと私は考えています 。つまり 、価

    値を守るために人々は連帯しようとし始めた 。ここでいう連帯とは自分たちが有利になるように 、同じよ

    うな欲望を持った他の人たちを押しのけようとする行為です 。そして 、そこに『 われわれ 』と『 彼ら 』

    のような明確な差別化を見出したのです 。

     人間が長いこと続けてきた狩猟採集の社会では 、土地に食べ物がなくなればあちこち移動しながら生活

    をしていました 。今でも狩猟採集を続けている ピグミー や砂漠に暮らす ブッシュマン ( サン人 ) は 、数

    百平方キロメートルから1000平方キロメートルほどの地域を食べ物を求めて移動していますから 、固

    有の土地や家を持っていません 。価値が固定されず 、移動すれば価値が変わる世界に生きているのです 。

    そもそも財産なるものを持って移動することはありませんでした 。

     そういう世界から 、農耕や牧畜によってある特定の土地に大きな価値が生じ 、そこで利益を上げながら 、

    仲間と協力してその利益を守るという『 所有 』の精神が次第に発達したことで 、境界の内と外という発想

    が生まれてきました 。

     しかし 、人類の長い歴史に比べると 、農耕が発達してからせいぜい1万2000年程度 。おそらくそれ

    はまだ人間の本性にはなっていないはずです 。むしろ 、『 鬼畜米英 』 と叫んで敵を明確にしたように 、

    人間が発明した言葉によってわれわれは幻想を持たされているだけ 。だから 、他の国の人とでも個人的に

    会って付き合えばいい友だちになれるのに 、国という幻想の枠の中に押し込められ 、国や民族の単位で相

    手を敵視してしまうことがあるのです 。

     問題は勝つか 、負けるかという単純な解決策しかないと考えるところにあります 。勝つためには他の国

    と協力しないといけない 、勢力を拡大しないといけない 。果たしてそうなのでしょうか ? 勝つか 、負け

    るかの二者択一しかないのでしょうか ? 土地の所有を巡る問題にしても 、共同で利用することを提案する

    ことだってできるかもしれない 。むしろ 、真の問題は『 自分たちの利益を守るために 』という文言しか

    育たない精神のほうにあるのではないでしょうか 。」

    ( 出典:山極寿一著 「 京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ 」. 朝日新聞出版 刊 )   


  今日の「お気に入り」 、その二は 、30年ほど前に撮った米国ニューヨークの写真五葉 。・・・ 二十年ふた昔 。
                  



           

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