今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「とても人間のすることじゃない、あれは畜生のすることだと私たちはよく言うが、人間は無益な殺生をするが、畜生はしない。
獅子は猛獣として恐れられても、腹さえいっぱいなら他を殺して食うことがない。また明日のために貯えないから、弱い毛ものは強い毛ものが満腹しているのを見定め、ゆうゆうとその前を通って無事である。自然界はこうしてバランスを保ってきた。
昭和五十四年八月九日号に、私は原爆で非業の最期をとげた人の写真を請うて載せてもらった。あれは人間のしたことで、人間だけがすることで、畜生ならしないことである。
人が動物を高等と下等に分けて、人類を高等の極におくのは、自分がその一員だからにすぎない。
[Ⅰ『サル年にちなんでいう』昭55・1・24]」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集-」新潮社刊 所収)
「とても人間のすることじゃない、あれは畜生のすることだと私たちはよく言うが、人間は無益な殺生をするが、畜生はしない。
獅子は猛獣として恐れられても、腹さえいっぱいなら他を殺して食うことがない。また明日のために貯えないから、弱い毛ものは強い毛ものが満腹しているのを見定め、ゆうゆうとその前を通って無事である。自然界はこうしてバランスを保ってきた。
昭和五十四年八月九日号に、私は原爆で非業の最期をとげた人の写真を請うて載せてもらった。あれは人間のしたことで、人間だけがすることで、畜生ならしないことである。
人が動物を高等と下等に分けて、人類を高等の極におくのは、自分がその一員だからにすぎない。
[Ⅰ『サル年にちなんでいう』昭55・1・24]」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集-」新潮社刊 所収)