「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

寄せては返す波の音 2002・02・06

2005-02-06 07:00:00 | Weblog
   昨日に続いて今日も山本夏彦さん(1915-2002)です。


   小学4年生のときに「人の一生」おおむねかくの如しと書いた綴方が「最後の波の音」の中に再録されています。


  「人の一生   4年 山本夏彦
 
   おいおい泣いているうちに三つの坂を越す。生意気なことを言っているうちに少年時代はすぎてしまう。その頃に

   なってあわてだすのが人間の常である。あわててはたらいている者を笑う者も、自分たちがした事はとうに忘れて

   いる。かれこれしているうちに二十台はすぎてしまう。少し金でも出来るとしゃれてみたくなる。その間をノラクラ

   遊んでくらす者もある。そんな事をしているうちに子供が出来る。子供が出来ると、少しは真面目にはたらくように

   なる。こうして三十を過ぎ四十五十も過ぎてしまう。又、その子供が同じことをする。こうして人の一生は終わって

   しまうのである。」


    山本少年10歳のときの綴方ですが、「人は5歳にしてすでにその人」です。

   86歳になった山本老人はこの綴方について「最後の波の音」の中で次のように書いています。


   「もとより十歳の子供のことである。深い魂胆はないが、その直感は小児のときからのものだと今にして思われる。

   はたしてその通りだったのは遺憾である。」 
コメント
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