血糖値を高める糖質の摂取を減らして糖尿病の予防や減量に役立てる「糖質制限食」を取り入れる機運が広がり始めた。特殊な食事療法ととらえられがちだが、専門家の間でも適切に利用すれば効果があると支持する見方が増えている。「減量が必要な人を対象に短期間なら」と、導入する際の条件も徐々に浮かび上がってきた。(以下、日経ライフから一部抜粋)
『 「うまく使えば現在のカロリー制限食と同じ効果がある。糖質制限食を否定するつもりはない」。京都府立医科大学の福井道明准教授はこう解説する。
糖質制限食は大きく2種類ある。米国のアトキンス医師が考案したダイエット法に基づく厳しいやり方と、糖尿病患者でもある米国のバーンスタイン医師が提唱した食事療法だ。炭水化物の食べる量を減らせばよく、食材のカロリー量を計算する面倒がない。
アトキンス医師は通常なら200~300グラムの炭水化物の摂取量を「1日20~40グラム」に、バーンスタイン医師は「同130グラム以下」を唱えた。糖質は炭水化物から食物繊維を除いた主成分に当たり、摂取制限量はほぼ同じとみてよい。医療機関や栄養士らで容認する声が増えているのは、バーンスタイン式の「緩やかな糖質制限食」の方だ。
福井准教授は「糖質制限食を取り入れた患者で(血糖値調整ホルモンの)インスリンの効きを悪くする内臓脂肪が減少した。血糖値を管理しやすくなり、大きな利点だ」と強調する。
同時に「配慮しなければいけない点もいくつかある」と付け加える。診療の経験や論文情報などから利用者の肥満度、実施期間、糖質に代わり比率が高まるたんぱく質と脂質の食材の選択を主な注意点に掲げる。
【肥満の人が実施するのが望ましい】
糖質は筋肉に蓄えられ運動時のエネルギーや飢餓になったときの備えになる。体内で糖質が不足すると筋肉などのたんぱく質を分解して糖を合成する反応が自然に起きる。このため一般にやせた人に糖質制限食は適さない。よく運動する人や力仕事の多い職種の人にも向かない。
日本では体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が25以上の人を肥満としている。福井准教授は糖質制限食を利用できる人をBMI25以上と決めている。
【継続期間はおおむね半年間】
糖質制限食はカロリー制限食に比べ献立が楽で長続きしやすい。しかしごはんや麺、パンの量が少なく、主食をたっぷり取り慣れた人には物足りなさが残る。「長く続けられないと、不満を訴える人もいる」(福井准教授)。また1年ほど継続すると体重減少の効果がみられなくなり、悪玉コレステロール値が高まり動脈硬化の危険が増すとの調査があり、長期間の利用には消極的だ。
これに対し、糖質制限食の導入に積極的な山田悟・北里大学北里研究所病院糖尿病センター長は「糖質制限で減量し脂質や血糖値の改善が6年間維持された報告もある」と指摘する。「1年以内」と糖質制限食に条件をつけて容認していた米糖尿病学会が期限を撤廃した動きなども踏まえ「長期の利用にも全く問題はない」と反論する。
国内に決め手となるデータはない。今のところ半年なら問題なく受け入れ可能といえそうだ。
【たんぱく質と脂質の食材の選び方も考慮】
糖質を減らす分だけ必要なエネルギーをたんぱく質と脂質に求めなければいけない。福井准教授は「動物性のたんぱく質を取る人ほど死亡率が高くなる報告がある」と話す。糖質制限食を取り入れる場合は脂質やたんぱく質を動物性か植物性にするかがより重要になり「大豆や魚などの食材を選ぶようにした方がいい」と補足する。
帝塚山学院大学の津田謹輔学長は「食事と健康に関する調査は常に不確定さがつきまとう」と、信頼性の高い結果を得る難しさを説く。野菜を先に食べた後に糖質を取れば吸収を抑えられるとの調査があるし、いつ食事をするのが望ましいかを探る「時間栄養学」という研究からは、夜間に糖質を摂取すると脂肪に蓄積されやすいという結果が出ている。
津田学長は「糖質やカロリーとともに、味わい楽しむ食事を大切にする視点も忘れないように」と強調する。 』
『 「うまく使えば現在のカロリー制限食と同じ効果がある。糖質制限食を否定するつもりはない」。京都府立医科大学の福井道明准教授はこう解説する。
糖質制限食は大きく2種類ある。米国のアトキンス医師が考案したダイエット法に基づく厳しいやり方と、糖尿病患者でもある米国のバーンスタイン医師が提唱した食事療法だ。炭水化物の食べる量を減らせばよく、食材のカロリー量を計算する面倒がない。
アトキンス医師は通常なら200~300グラムの炭水化物の摂取量を「1日20~40グラム」に、バーンスタイン医師は「同130グラム以下」を唱えた。糖質は炭水化物から食物繊維を除いた主成分に当たり、摂取制限量はほぼ同じとみてよい。医療機関や栄養士らで容認する声が増えているのは、バーンスタイン式の「緩やかな糖質制限食」の方だ。
福井准教授は「糖質制限食を取り入れた患者で(血糖値調整ホルモンの)インスリンの効きを悪くする内臓脂肪が減少した。血糖値を管理しやすくなり、大きな利点だ」と強調する。
同時に「配慮しなければいけない点もいくつかある」と付け加える。診療の経験や論文情報などから利用者の肥満度、実施期間、糖質に代わり比率が高まるたんぱく質と脂質の食材の選択を主な注意点に掲げる。
【肥満の人が実施するのが望ましい】
糖質は筋肉に蓄えられ運動時のエネルギーや飢餓になったときの備えになる。体内で糖質が不足すると筋肉などのたんぱく質を分解して糖を合成する反応が自然に起きる。このため一般にやせた人に糖質制限食は適さない。よく運動する人や力仕事の多い職種の人にも向かない。
日本では体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が25以上の人を肥満としている。福井准教授は糖質制限食を利用できる人をBMI25以上と決めている。
【継続期間はおおむね半年間】
糖質制限食はカロリー制限食に比べ献立が楽で長続きしやすい。しかしごはんや麺、パンの量が少なく、主食をたっぷり取り慣れた人には物足りなさが残る。「長く続けられないと、不満を訴える人もいる」(福井准教授)。また1年ほど継続すると体重減少の効果がみられなくなり、悪玉コレステロール値が高まり動脈硬化の危険が増すとの調査があり、長期間の利用には消極的だ。
これに対し、糖質制限食の導入に積極的な山田悟・北里大学北里研究所病院糖尿病センター長は「糖質制限で減量し脂質や血糖値の改善が6年間維持された報告もある」と指摘する。「1年以内」と糖質制限食に条件をつけて容認していた米糖尿病学会が期限を撤廃した動きなども踏まえ「長期の利用にも全く問題はない」と反論する。
国内に決め手となるデータはない。今のところ半年なら問題なく受け入れ可能といえそうだ。
【たんぱく質と脂質の食材の選び方も考慮】
糖質を減らす分だけ必要なエネルギーをたんぱく質と脂質に求めなければいけない。福井准教授は「動物性のたんぱく質を取る人ほど死亡率が高くなる報告がある」と話す。糖質制限食を取り入れる場合は脂質やたんぱく質を動物性か植物性にするかがより重要になり「大豆や魚などの食材を選ぶようにした方がいい」と補足する。
帝塚山学院大学の津田謹輔学長は「食事と健康に関する調査は常に不確定さがつきまとう」と、信頼性の高い結果を得る難しさを説く。野菜を先に食べた後に糖質を取れば吸収を抑えられるとの調査があるし、いつ食事をするのが望ましいかを探る「時間栄養学」という研究からは、夜間に糖質を摂取すると脂肪に蓄積されやすいという結果が出ている。
津田学長は「糖質やカロリーとともに、味わい楽しむ食事を大切にする視点も忘れないように」と強調する。 』