肩こり解消体操 1回3分、回してすっきり (以下、日経ライフから一部抜粋)
『 首や肩の「こり」に悩む人は多い。鎖骨が通常よりも下がっていると悪化しやすいなど、骨や筋肉の状態と症状との関係がわかってきた。こりが進むと、うつ症状などにもつながるという。防ぐには自分の体をよく知り、ストレッチなどで硬くなった筋肉をほぐすとよい。ただ、神経を傷つける恐れもあるので慎重さが必要だ。
一口に肩こりといっても実際には頭から首、肩、背中にかけての広い範囲が固まったようになったり痛んだりする。東京医科大学の遠藤健司講師は数年前、ひどい肩こりに悩まされた。疲れ目やめまいも重なり集中力が低下した。
■鎖骨下がり水平に
「手術が多い時でもこんなことはなかったのに」。鏡を見て、体の中央から左右にのびて胸を広げるつっかい棒役の鎖骨が、本来のV字形ではなく水平に近い状態なのが一因ではないかと気付いた。「下がり鎖骨」だ。鎖骨と肋骨の間を通る血管が圧迫され血行が悪くなりやすい。神経に余計な力がかかり、手のしびれにつながることもある。
体調変化のきっかけは整形外科学教室の医局長になり、前かがみで机に向かって事務作業をする時間が増えたこと。頭を支える首の後ろの僧帽筋が使いすぎや緊張で硬くなり、肩こりが起きた。これに下がり鎖骨による血行障害などが加わり、悪化したようだ。肩こりがひどくなったと訴える患者は、もともとなで肩が多い女性に目立つという。
本来、緩やかなカーブを描く頸椎(けいつい)が棒のようにまっすぐになる「ストレートネック」も首こりや肩こりを悪化させる。あごが突き出た格好になり、首の筋肉に大きな負担がかかる。首の長さ、なで肩、頸椎のカーブなどは「遺伝的要素と生活習慣の両方が関係し、個人差がある」と慶応義塾大学医学部の石井賢専任講師は指摘する。
正常な鎖骨は中心から外側に向けV字状に伸びる(右)が、下がり鎖骨は水平に近い(東京医科大学の遠藤健司講師提供)
生まれつきの体格などが原因でも、筋肉を上手にほぐせればこりをかなり和らげられる。東京医大の遠藤講師は、肩をゆっくり上げ下げしたり回したりする「肩こり体操」を勧める。1回3分程度、1日2、3回実施するとよい。
ポイントはほぐしたい筋肉を意識することだ。肩を回す場合は、肩甲骨を少し痛いくらいに強く寄せる。体全体を揺らして大きな動作をする必要はない。肩甲骨を動かすと、首のこりにもよいという。入浴時にあごすれすれまでたっぷりの湯につかり、筋肉の血流を改善させるのも効果的だ。
■勢いはつけない
慶応大の石井専任講師によると、体の動かし方や姿勢ではいくつか誤った常識もあるという。たとえば首がこる時に、あごをあげて思いきり上にそらせると気分がよくすっきりすると考えがちだ。しかし、脊髄から枝分かれした神経の出口が狭まって圧迫される可能性があるので「勢いをつけてそらせないように」と注意を呼びかける。
同じ理由で、電車で居眠りをして頭を後ろの窓にぶつける人も危険だ。そらせるよりは、多少うつむき加減の方が神経を圧迫しにくいという。また肩や首のこり対策として首をけん引する器具などもあるが「現時点では症状の改善を示すエビデンス(科学的な証拠)が不十分」(石井専任講師)。
肩や首のこりを放置するとどうなるか。痛みが増したり手足のしびれが悪化したりする例が知られるが、それだけではない。首こりに詳しい東京脳神経センターの松井孝嘉理事長はうつ症状との関係に注目する。
同センターには夕方、仕事帰りの若い女性らが次々にやってくる。多くはうつの症状や、原因はよくわからないが何となく体調が悪い不定愁訴で診察を受ける。「いくつも医療機関を回ったが治らず、うつが悪化してしまったケースも多い」(松井理事長)
首には筋肉繊維が何層も連なり、合間を神経が走っている。筋肉のこりが自律神経を圧迫し、心身の不調をもたらしている可能性がある。うつ症状で同センターを受診する患者の大半に首こりがある。
パソコンやスマートフォン(スマホ)を長時間使うと、うつむく姿勢が続いてしまう。松井理事長は「15分に1回程度、首を休ませてほしい」と訴える。頭と首の境目で両手を組んでゆっくりと頭をそらし、気持ちのよい角度で30秒止めるだけで首が軽くなったと感じるという。
首や肩のこりは椎間板ヘルニア、首への衝撃などで起こる中心性頸髄損傷、腫瘍などが原因で、手術が必要になる場合もある。特に高齢者は痛みの感覚が鈍り、症状の悪化を見落とすこともある。自分で勝手に「問題ない」と判断せずに専門の医療機関に一度相談することも大切だ。 』
『 首や肩の「こり」に悩む人は多い。鎖骨が通常よりも下がっていると悪化しやすいなど、骨や筋肉の状態と症状との関係がわかってきた。こりが進むと、うつ症状などにもつながるという。防ぐには自分の体をよく知り、ストレッチなどで硬くなった筋肉をほぐすとよい。ただ、神経を傷つける恐れもあるので慎重さが必要だ。
一口に肩こりといっても実際には頭から首、肩、背中にかけての広い範囲が固まったようになったり痛んだりする。東京医科大学の遠藤健司講師は数年前、ひどい肩こりに悩まされた。疲れ目やめまいも重なり集中力が低下した。
■鎖骨下がり水平に
「手術が多い時でもこんなことはなかったのに」。鏡を見て、体の中央から左右にのびて胸を広げるつっかい棒役の鎖骨が、本来のV字形ではなく水平に近い状態なのが一因ではないかと気付いた。「下がり鎖骨」だ。鎖骨と肋骨の間を通る血管が圧迫され血行が悪くなりやすい。神経に余計な力がかかり、手のしびれにつながることもある。
体調変化のきっかけは整形外科学教室の医局長になり、前かがみで机に向かって事務作業をする時間が増えたこと。頭を支える首の後ろの僧帽筋が使いすぎや緊張で硬くなり、肩こりが起きた。これに下がり鎖骨による血行障害などが加わり、悪化したようだ。肩こりがひどくなったと訴える患者は、もともとなで肩が多い女性に目立つという。
本来、緩やかなカーブを描く頸椎(けいつい)が棒のようにまっすぐになる「ストレートネック」も首こりや肩こりを悪化させる。あごが突き出た格好になり、首の筋肉に大きな負担がかかる。首の長さ、なで肩、頸椎のカーブなどは「遺伝的要素と生活習慣の両方が関係し、個人差がある」と慶応義塾大学医学部の石井賢専任講師は指摘する。
正常な鎖骨は中心から外側に向けV字状に伸びる(右)が、下がり鎖骨は水平に近い(東京医科大学の遠藤健司講師提供)
生まれつきの体格などが原因でも、筋肉を上手にほぐせればこりをかなり和らげられる。東京医大の遠藤講師は、肩をゆっくり上げ下げしたり回したりする「肩こり体操」を勧める。1回3分程度、1日2、3回実施するとよい。
ポイントはほぐしたい筋肉を意識することだ。肩を回す場合は、肩甲骨を少し痛いくらいに強く寄せる。体全体を揺らして大きな動作をする必要はない。肩甲骨を動かすと、首のこりにもよいという。入浴時にあごすれすれまでたっぷりの湯につかり、筋肉の血流を改善させるのも効果的だ。
■勢いはつけない
慶応大の石井専任講師によると、体の動かし方や姿勢ではいくつか誤った常識もあるという。たとえば首がこる時に、あごをあげて思いきり上にそらせると気分がよくすっきりすると考えがちだ。しかし、脊髄から枝分かれした神経の出口が狭まって圧迫される可能性があるので「勢いをつけてそらせないように」と注意を呼びかける。
同じ理由で、電車で居眠りをして頭を後ろの窓にぶつける人も危険だ。そらせるよりは、多少うつむき加減の方が神経を圧迫しにくいという。また肩や首のこり対策として首をけん引する器具などもあるが「現時点では症状の改善を示すエビデンス(科学的な証拠)が不十分」(石井専任講師)。
肩や首のこりを放置するとどうなるか。痛みが増したり手足のしびれが悪化したりする例が知られるが、それだけではない。首こりに詳しい東京脳神経センターの松井孝嘉理事長はうつ症状との関係に注目する。
同センターには夕方、仕事帰りの若い女性らが次々にやってくる。多くはうつの症状や、原因はよくわからないが何となく体調が悪い不定愁訴で診察を受ける。「いくつも医療機関を回ったが治らず、うつが悪化してしまったケースも多い」(松井理事長)
首には筋肉繊維が何層も連なり、合間を神経が走っている。筋肉のこりが自律神経を圧迫し、心身の不調をもたらしている可能性がある。うつ症状で同センターを受診する患者の大半に首こりがある。
パソコンやスマートフォン(スマホ)を長時間使うと、うつむく姿勢が続いてしまう。松井理事長は「15分に1回程度、首を休ませてほしい」と訴える。頭と首の境目で両手を組んでゆっくりと頭をそらし、気持ちのよい角度で30秒止めるだけで首が軽くなったと感じるという。
首や肩のこりは椎間板ヘルニア、首への衝撃などで起こる中心性頸髄損傷、腫瘍などが原因で、手術が必要になる場合もある。特に高齢者は痛みの感覚が鈍り、症状の悪化を見落とすこともある。自分で勝手に「問題ない」と判断せずに専門の医療機関に一度相談することも大切だ。 』