地味ログ東洋硬化.うろつき雑記

寒い時も暑い時も、寒い場所も暑い場所も、処かまわず神出鬼没な東洋硬化の表面処理を、ポップに語ります。

コーカサス 国際関係の十字路

2009年11月20日 04時09分47秒 | 毎日がつらつらと過ぎていきます
毎日新聞11月17日付6面はアジア・太平洋地域の政治・経済・文化などに関する優
れた書物を著した研究者などに贈る「第21回アジア・太平洋賞」の選考結果発表の
場でした。

大賞2点・特別賞2点の著者4人が選ばれていましたが、うち3点が外国人研究者に
よる日露関係史(後藤新平)、日韓関係(竹島密約)、明治期の我国ナショナリズム
(陸羯南(くがかつなん))についてのもの。残り1点が、コーカサス地域の新進研究者
廣瀬陽子氏による「コーカサス 国際関係の十字路:集英社新書」でした。

2008年7月22日第一刷のものを8月に紀伊国屋で購入した覚えがあります。そんな
に簡単に掃けていかないだろうテーマの新書を、無謀にも平積みにしてあったことで、
逆にはっきりと記憶に残っています。


(自分的には、現時点断面での旧ユーゴスラヴィア地域とカフカス山脈両側地域の
諸状況、この上なく興味深いものとして捉えていますが、この書物のテーマ有り体
に言って、日本人大方の関心を惹くものではありません)

旧ソ連の一部だったこの地域ですが、ソ連崩壊に前後する時期にナゴルノカラバフ
領有をめぐってアルメニア対アゼルバイジャンで発生した戦争、ソ連崩壊以来ずっと
継続しているチェチェン・イングーシ・ダゲスタン等ロシア域内各共和国でのイスラム
諸族独立紛争とテロリズム、オセット人・アブハズ人他を抱えるグルジアとロシアの
確執など、共産独裁の軍事的箍が外れた途端、コーカサス各地域では先鋭化され
た民族主義を端緒とする中小規模の紛争が多発しています。

カスピ海と黒海に挟まれた東西交通の要所であり、豊かな天然資源が存在するこの
地域ですが、民族言語宗教的に複雑さが極まった感があるのも事実。スンニー派イ
スラム教徒・シーア派イスラム教徒・東方教会系キリスト教徒が混在し、コーカサス
諸語・アルタイ諸語・インド・ヨーロッパ諸語の言語モザイク模様、旧ソ連解体時に独
立した3ヶ国とさらにその3ヶ国内の少数民族地域、ロシアに残された未承認国家群
など、エントロピー極大にもほどがあると言っていい混沌ぶりを、平たく的確にわかり
やすく分析してくれる書籍として、昨年夏の初読以来参考にしておりました。

東洋書店には、細かいテーマごとに区切って発行していく「ユーラシア・ブックレット」
シリーズがありますが、あくまでも各地域各現象ごとの細目開架の印象。コーカサス
全域を総括した入門書としてこの新書の右に出るものはない、と勝手に思っておりま
した処、たしかに大きな賞の受賞となり、自分の鑑識眼に多少の自信が出来ました。


新聞6面最下段左端に廣瀬さんのコメントがありました。執筆のきっかけは?との問
いに対する回答が興味深いものでした。

大学入学直後、ソ連国家元首として初来日したゴルバチョフ大統領との対話集会に
大学代表として参加し、大統領と握手したことが旧ソ連圏との出会いだったんだとか。
直後、ロシア語を第2外国語に選んだ時点で廣瀬さんの将来は決定したのかもしれ
ません。


1980年代後半から90年代前半にかけて、ソ連・東欧で相次いだ旧政体の崩壊は、
僕にとり、空前絶後の只ならぬ世界史的出来事として、様々考えさせられました。

僕があと10~15年遅く生まれていたならば、おそらくその時点での学問的方向性は、
上記の影響により、間違いなく今の現実とは異なったものになっていただろうと感じ
ています。少なくとも出身校の国際関係学部か青学の国際政経学部を志向するか、
またはもっとモチベーション高く受験勉強し、廣瀬さんと同じ慶應の総合政策学部で
東欧情勢勉強していたかも。いーや、まずそりゃ無理か。

今となっては叶わぬことですが、自分と同じ方向性を持っておいでの方が、その道の
遥か先で優れた業績を上げられるのを垣間見、少し嬉しく思っています。



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   全部カタカナ書きするのではなく「クロムめっき」または「クロム鍍金」
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