国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

She continues loving songs (後)

2010年04月06日 | マスターの独り言(ライブのこと)
ボブ・ディランの年齢が68歳ということで
ロック歌手もそれなりに歳を取ってもパワフルに活躍ができることを
身を以て知った僕であるが、
今回のヘレン・メリルの歳を計算してみるとかなりびっくりしてしまった。
1929年生まれとプロフィールがなっている。
現在が2010年であることを考えると…
女性の歳であるから公表するのは失礼に当たるが、
それでも知ってびっくりどころではない。
よくぞ日本へ来てくださいました。

今回はブルーノート東京でファーストショーとセカンドショーの
ダブル聴きを初めて敢行した。
帰る時間が心配で今までやったことがなかったのだが、
まぁ、今回のような機会はなかなか難しくなるだろうと思い
かなり気合いを入れての参加である。

どちらのセットも最初はピアノトリオからの演奏開始である。
ピアノがテッド・ローゼンタール
ベースがスティーヴ・ラスピナ
ドラムがテリー・クラークの態勢であるが、残念ながら僕は初めての名前である。
とはいえその演奏はやはりジャズ本場のニューヨーク仕込みとでもいうべきか
かなり熱いものであった。
ピアノトリオであるからゆっくりと火が灯り、徐々に熱を帯びてくるような感じで
誰一人として欠けることのできないトリオであると思う。
「本場ではこんな演奏が毎日…」とある種贅沢とも思えるジャズライブが
ニューヨークでは毎夜繰り広げられているようだ。

3曲目から本公演の主役、メリルがステージに上がる。
サポートを受けながらも堂々と背筋を伸ばし、
軽やかにステージに立つメリルはとても若々しい。
マイクを持ち、歌う歌声は張りが失われておらず、
むしろ年齢からは想像もつかないほど伸びやかで、力溢れるものである。
「クローズ・ユア・アイズ」や「マイ・フェイヴァリット・シングス」
「バイ・バイ・ブラックバード」、「ラヴァー・マン」といった
スタンダード曲をトリオの演奏に耳を傾けながらも、
次々とエネルギッシュに歌い続ける。

マイルスの「オール・ブルース」にも歌詞を付け歌ったり、
テッドやスティーヴににこやかに声をかけたり、冗談を言ったりする姿は
長年ステージの上で歌ってきたベテランの余裕と楽しみ方を
見て取ることができた。

最後はお決まりの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム」で
会場をおお盛り上がりにさせ、
アンコールに「スワンダフル」を軽やかに歌い上げると
充実げにステージを去るメリル。

今回初のジャズボーカルライブであったが、
メリルの長く築いてきた人気の根本はやはりライブにあるのではないかと感じた。
楽器だけの演奏とは異なり、
歌手の表情や発声、仕草などからよりその曲の世界を深めているように思う。
時折ステージ斜め横から見上げるメリルの顔が、
その角度や照明によって、時に少女のように若々しく、時に瑞々しい女性のように
時に成熟した女のように、様々な表情を見せた。
前にビリー・ホリデイの写真を見たことがあるが、
撮られる角度によってその表情が百面相のように変わっていた。
改めて生でメリルを見たとき、その表情がくるくると変わるのは驚いた。
それがやはりジャズボーカリストの特色でもあるのかもしれない。

昨年も今ぐらいの時期にブルーノート東京でメリルはライブを行った。
今年で2年目だ。
となれば三度目もあるかも…
メリルは過去の人なんて思ってはいけない。
いつも「今」音楽が生まれるのだから。

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