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『ポートレイト・イン・ジャズ』について語ろう 2 伝説のベーシストが参加をするまで

2011年08月16日 | ビル・エヴァンスについて
ビル・エヴァンスが語っている言葉である。
「ただひとりの演奏を他の人が追随するような形ではなく、
 トリオが相互にインプロヴィぜーションする方向で
 育って行けばいいと思う。たとえば、もしベース・プレイヤーが
 自分の演奏で応えたい音を聴いたとする。それなのにどうして
 四分の四拍子を後ろでただ弾き続ける必要があるんだ?」

つまり、エヴァンスはそれまでの基本的なピアノ・トリオの形式が
新たな段階に踏み出すべきだという考えを持っていた。
インプロヴィぜーション、ピアノがソロを取っているときに、
ベースが単に「ボン、ボン、ボン、ボン」とコードを押さえて
四分の四拍子で演奏するよりも
ピアノのソロ演奏を聴きながら、ベースもソロ演奏を取り、
お互いのソロが混じり合うことで、
それまでの演奏よりもより刺激的で、かつ新しいものが生まれると考えたわけだ。

僕は楽器をやらないため、
エヴァンスの追い求めたこの「インタープレイ」という考えがよく分からなかった。
ひいてはピアノ・トリオの際にベースの音がよく聴き取れていなかったとも言える。
色々とアルバムを聴いてみると、ベースというのはあまりにもその活躍度が地味である。
よく音楽聴き始めの人は低音が聴き取れないというが、
まさに土台にもなる低音がどの程度大切なものなのかがつかみづらい。
もし分からなかったら、
ぜひブルーノートのアルバムでベースに注意して聴いてみて欲しい。
全てとは言えないが、ベースがカッチリとリズムを刻むのを聴くことができるだろう。

『ポートレイト・イン・ジャズ』の直前までエヴァンスのトリオには、
後にコルトレーンの元で活躍することになるジミー・ギャリソンが参加をしていた。
だが、エヴァンスの演奏とは合わなかったことで、すぐに辞めてしまう。
ギャリソンはコルトレーンの元で開花しているが、
コルトレーンの演奏を支えるガッチリとした音が特徴である。
だから音楽を支えるための土台作りが得意なベーシストと言えるだろう。
それはエヴァンスの求めていた音楽とは違うものだ。

ベースの基本であるしっかりとした土台を作りながらも
変幻自在に柔らかく、臨機応変にメロディーに乗れるベーシストが
エヴァンスの目指すトリオに必要だった。
そこに表れたのがスコット・ラファロである。
実はトリオを組む前にエヴァンスとラファロはサイドメンとして演奏をしている。
ラファロがエヴァンスと演奏をするようになった経緯は様々あるが、
エヴァンスがクラブでの公演中に組んでいたトリオが解体してしまい、
その演奏日程を消化するために
よく聴きに来ていたラファロが共演したことがきっかけだとされている。

こうして一歩『ポートレイト・イン・ジャズ』へ近づくことになる。

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