道は自然とできるのではない。誰かが歩くから新しい道が生まれてくるのだ

新しいジャズを追いかけるのは難しい。
お気に入りのミュージシャンを見つけて、
そのアルバムを追うというやり方はなかなか上手くいくものではない。
そもそも「ジャズ」というカテゴリーが肥大化しすぎて
何を追えばいいのかさえ分からないのだ。

そんな中で数人挙げるとするならばギタリストにビル・フリゼールを入れる。
まぁ、「いまさらビルフリ？」と思う人もいるだろうが、
現在のジャズシーンにおいて、
やはりギタリストのビル・フリゼールは欠かせないだろう。
それは人気的な意味合いではなく、
ジャズ、それに音楽という部分での発展的要素を持ち合わせた
ミュージシャンという意味合いでだ。

フォービートのジャズから、アメリカの根元に根ざしたカントリーミュージックまで
その時、そのコンセプトに合わせた演奏は
幅広く芸達者な技実者であるビル・フリゼールならではの演奏である。

そんなビルフリが今、東京の「コットン・クラブ」に出演している。
しかもベースがロン・カーター、ドラムがジョーイ・バロンである。
これにもしサックスのアーサー・ブライスが加わっていたら、
アルバム『ダウン・ホーム』である。

リーダーはジョーイ・バロンであるが、
全員が作り出す新しくも、カントリーチックな音色が特徴的だ。
アーサー・ブライスが好調で、
そこにビルフリのギターとジョーイ・バロンのメリハリのあるドラムが混じり合う。
大御所のロン・カーターが脇をしっかりと支えているから、
アーサーとビルフリの自由でうねりを挙げるような優しい音が高々と登り上がっていく。

僕はどちらかというと後半の５曲に惹かれる。
古き良きジャズと新しきジャズが絶妙なバランスで絡み合い、
一つの方向性を打ち出そうとしている。
音楽でも何でも一箇所に黙って止まっていたのでは面白くない！