国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
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ようこそ 美しく歪んだ音楽の世界へ

2012年01月15日 | マスターの独り言(ジャズ以外音楽)
『文化系のためのヒップホップ入門』(アルテスパブリッシング)によると
「ヒップホップは音楽ではない」ということである。
これは、まぁ、考えてみると「そうかも…」と納得がいく。
何しろ屋外におけるパーティーで流されたものが
ヒップホップへと洗練されていったという歴史がある。
(ここら辺は勉強不足のため表記上での間違いがあるかも)
そう考えるとヒップホップのノリの良さというのは、
元々ダンスと一体としてとらえると理解がしやすい。
となると踊るための音楽を静かに座って聴くというのは
本来のヒップホップの楽しみ方としては違っていると考えるのが自然の流れか?

ところが出だしは「屋外パーティー」であったとしても
歴史は進むごとに変化が生まれてくるのも自然の流れである。
ノリの良さからもちろん踊ったり、体を揺らしたりするのがヒップホップとしては
自然の楽しみ方としても
聴いていて「おっ、これ音楽的にもいいじゃん」となるものも生まれてくるようだ。

今、その代表格とされているのがカニエ・ウエストという
プロデューサー兼ラッパーであるそうだ。
当人名義で一番新しいアルバムが
『マイ・ビューティフル・ダーク・ツィステッド・ファンタジー』である。

これは『文化系のための…』でも取り上げられているのだが、
ロック・ファンにも受けが良かったらしく、
発売された2010年にかなり話題になったそうだ(僕は全く知らなかった)。
カニエがMTVの授賞式で
その年の最優秀女性アーティスト賞を取った女性に暴言を吐き、
その結果、ハワイへの隠遁生活をしている間に生まれたアルバムなのだそうだ。

正直、かなり聴きやすい。
ヒップホップ度素人の僕が聴いても「あぁ、聴きやすいな」と思える。
理由の一つにサンプリングされている曲が
どこかで聴いたことのあるような曲のような気がするからである。
「あ、このメロディー、知ってるな」と思えると、耳も音をとらえやすい。
加えてヒップホップのもう一つのセットであるラップの量である。
僕は「ヒップホップにはラップが欠かせない」というイメージがあった。
だが、このアルバムでは僕が日常的に耳にするJ-pop並のラップ量であり、
しかもラップで押してくるよりも、
「あれ、これ歌じゃない?」といった曲になっているのだ。
(ここら辺でヒップホップと歌付きの曲との違いが分からなくなってくる)

不得意の英語が分かると何を言っているのかも理解できると思うのだが、
多分そんなに激しいことは言っていないのだろう。
それもヒップホップのイメージとは異なるものである。
つまり「ノリやすい」・「聴きやすい」・「分かりやすい」という
3点セットなアルバムなのだ。

ここから先はぜひ『文化系のための…』を読んで欲しいのだが、
言ってみるとカニエ・ウエストは「内省的」な作品を作っているそうだ。
(当人が意図的にそういう作り方をしているのか?)
本来、ヒップホップは「身体的」・「肉体的」な音楽要素が強いとされている。
ダンスやしゃべくりまくるラップが入るのはそうした身体的心地よさ、
つまりリズムがつかまえやすくなる。
そうなるとカニエ・ウエストが作っている物と従来のヒップホップは
まるで正反対の方向を向いているような感じになるだろう。

まだ、上手にまとまらないため言葉にするのが難しいのだが、
実はここら辺が僕がヒップホップを上手くとらえられなかった理由でもあると思う。
まだまだ考察の余地は多分にあるのだが、
「ヒップホップである」や「ヒップホップでない」という議論は置いておいても
このアルバムは音楽的に「聴ける」のだ。
おそらくそれは暴言事件で憔悴したカニエの音楽が、
いわゆるロックの持つ社会への反発を持ちながらも、どこか自分を卑下してしまう
心情と似通っているからかもしれない。
これはロック・ファンに「違う」と言われてしまうかもしれないが、
少なくとも僕は結構そうした「なよっ」としたロックは好きなので、
その耳でカニエをとらえることができるのだろう。

11曲目の「ブレーム・ゲーム」のあの切々としたメロディーと歌声は
普通に「美しいな」と思えるし、
12~13曲目の「ロスト・イン・ザ・ワールド」から
「フー・ウィル・サヴァイヴ・イン・アメリカ」への流れは
社会に対して何かを訴えているようだなと思える。
まぁ、3曲目の「パワー」の中で「オバマ」と言っているところも好きなのだが…
(多分「オバマ」と言っている!)

ちょっと長くなってしまったのだが、
このアルバムに付属した映像についても言いたいので、続きは明日。

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