国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

耳が分類し、身体が選んだディスクガイド

2010年08月14日 | 喫茶店に置いてある本
せっかく昨日、後藤雅洋氏の新刊についてふれたから
今日はその話をしよう。

ジャズの世界は広大であるため一番最初にどのCD(もしくはLP)を
手に取るかというのは結構重要な話となる。
ロックグループのアルバム数というのは、それほど多いものではない。
特に近年はコンピ物が流行っているため、流行曲とか有名曲が取りざたされる。
アルバムの中に作られた「物語」をじっくりと聴き込む機会も少ない。

もちろんジャズにもブルーノートなどのコンピ物などがあるが、
それはほとんど意味が無いように思える。
コンピ物は有名曲が並んではいるが、
そもそもジャズは曲という概念はさほど大きいものではない。
知っている曲があるのは嬉しいが、結局即興演奏の世界であるから
知っている曲も解体をされ、再構築されていくことになる。
知っているのは最初と最後のテーマの部分というのがほとんどだろう。

となると、ジャズはちょっとしたつまみ食いというのは
あまり効果的な聴き方ではないわけだ。
ジャズを聴くということは、
ジャズを演奏している人たちを聴くことになるのだから。
続けざまに有名曲が流れていってもあくまでジャズに触れているだけにしかならない。

そこで巷には大量のジャズ入門書が出回る。
僕の場合はたまたま最初に呼んだのが後藤氏の本だったわけで、
その文体からジャズにかける意気込みや真摯な姿勢というものにひかれて、
信用をしている。
今回小学館新書から出た『一生モノのジャズ名盤500』は久々の新刊である。
ジャズ本の特徴としてジャズの歴史を追いながらの名盤紹介というものはありがちだが、
この本の特徴は、ジャズの「聴いた感じ」を分類して、
その雰囲気に合ったアルバムを全部で500枚紹介している。

これが意外にかゆいところに手が届く的な紹介方法だ。
歴史的名盤が聴けば必ず面白いものとは限らない。
むしろその名盤のためにジャズを聴くのを止めてしまう場合も考えられる。
(『カインド・オブ・ブルー』や『タイム・アウト』がよい例だろう)
ジャズを聴き始めたばかりの時にはやはりノリがいいものを聴くのが
ジャズを楽しむ第1段階になるだろう。
全身にリズムを感じ、アドリブの凄みと美しさを知ることのできるアルバムこそ
ジャズの面白味を伝えてくれる。
そこから様々な方向に広げていくことが大事なのだ。

そのときに聴いた感じで分類された本書は、
より多くのミュージシャンの演奏に触れ、
かつ同じテンションをもったアルバムが揃っているためとても効果的だ。
しかも500枚もある。
全部聴くことが目的ではなく、自分の肌に合ったジャズを見つけることが大切なのだ。
ジャズを深く楽しみたいのならば、ぜひ手元に置いておいて損のない本である。