国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ブラック・バード

2010年08月04日 | マスターの独り言(曲のこと)
朝、起きたら頭の中に曲がなっているため
それに歌詞をつけて生まれたのが「イエスタデイ」だと言われている。
作詞、作曲者はポール・マッカートニーだ。
あまりにも簡単に曲ができてしまったため
周囲の人たちに同じ曲がないかを確認までしたそうだ。
まさに天才の成せる技だろう。
しかも素人の僕が聴いても非常に単純な曲であり、凝ったところがない。
逆に単純だからこそ何度聴いても飽きることがなく、
純然とした曲として今も燦然と輝いている。

単純な曲というのは、
おそらくタネが開けてみれば単純なのだろうけど
じゃあ、誰にでも作れるかというとそんなに簡単ではないから
そのインスピレーションというか、創造性というか
優れた感性がうらやましくもある。

さて、そんな風に単純なメロディーであるが、やはり耳に残るポールの曲がある。
『ザ・ビートルズ』(通称ホワイトアルバム)に収録されている「ブラック・バード」だ。
ポールのソロとして演奏されているが、これがまた素晴らしい。
「イエスタデイ」同様に凝ったところがなく、歌詞も繰り返しているだけだ。
でも、そのメロディーラインの儚げな流れは美しい。
意気込んだところがなく、リラックスした雰囲気がただよう。

そんな名曲の多いビートルズの曲は、ジャズでも良くカバーされる。
単純に「ジャズっぽいビートルズ」ではない。
その曲のより深いところに根ざす本質をミュージシャンたちが
解体して再構成していくことがジャズの醍醐味でもある。
ビートルズの美曲を取り上げるのは分からないでもない。

ジャコ・パストリアルの『ワールド・オブ・マウス』に
「ブラック・バード」が取り上げられている。
ここでの主役はジャコではなく、ハーモニカのトゥーツ・シールマンスである。
ハーモニカという誰でも吹ける楽器で、丁寧にテーマをさらう。
原曲よりもエネルギッシュに聞こえるのは前の「半音階的幻想曲」とのつながりであろう。
様々なパーカッションのリズムをかき分け、
ジャコに重いベースラインにハーモニカのユートピア的可憐なメロディーがのる。

「夜の淵で歌うブラック・バードよ
 折れた翼で飛ぶことを学べ
 お前は生まれてから、飛び立つこの瞬間だけを待ち続けていた」(拙訳)

ポールは黒人の公民権運動家の女性を励ますためにこの曲を作ったという。
トゥーツ・シールマンスの奏でるハーモニカは
遙か高くに飛び立ったブラック・バードが
悠々とその翼を広げて自由に飛び回っているかのように生き生きとしている。