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応急仮設住宅の供与期間に関する要望書

2013年09月24日 16時29分56秒 | とすねっとの要望書

東京都知事 猪瀬 直樹 殿
東京都都市整備局都営住宅経営部指導管理課長 殿

     応急仮設住宅の供与期間に関する要望書

とすねっと要望書第44号
              2013(平成25)年9月24日

              東京災害支援ネット(とすねっと)
               代  表    森 川   清
        (事務局)〒170-0003東京都豊島区駒込1-43-14
               SK90ビル302 森川清法律事務所
          TEL080-4322-2018 FAX03-6913-4651

 


 私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援をしている法律家と市民等のグループです。
 東京都は、2013(平成25)年9月18日、「東京都が提供している応急仮設住宅の供与期間の延長について」とする発表を行いましたが、その中で、原発事故による避難者が大多数を占める「福島県からの避難者」が、岩手県・宮城県からの避難者に比べ、不当に不利な取扱いをされていることから、これを是正し、東京都として原発事故避難者に寄り添った支援をするよう、以下のとおり、要望します。

第1 要望の趣旨
 1 東京都は、東京都が現在提供している応急仮設住宅の供与期間について、福島県からの避難者についてのみ「入居日から平成27年3月末日まで」としている取扱いを撤回し、宮城県・岩手県からの避難者と同様、「入居日から4年間」に改めるべきである。
 2 東京都は、原発事故被害者(政府によって避難等の指示・勧告が行われた区域以外の地域の避難者(以下、「区域外避難者」という。)も含む。以下、同じ。)の避難の実情に鑑み、避難者向けに無償で供与する都営住宅等の提供を当面の間続けていくことを表明するべきである。

第2 要望の理由
 1 東京都は、2013(平成25)年9月18日、「東京都が提供している応急仮設住宅の供与期間の延長について」とする発表を行った。その内容は、災害救助法によって応急仮設住宅として扱われている都営住宅等に入居している避難者に対する住宅の供与期間について、(1)「岩手県及び宮城県からの避難者の方は、供与期間を『入居日から4年間』に延長します。」、(2)「福島県からの避難者の方は、供与期間を『入居日から平成27年3月末日まで』に延長します。」というものである。また、「(応急仮設住宅扱いの)民間賃貸住宅についても、上記1の都営住宅等と同様の供与期間とします。」とされている。
   これは、これまで各県からの避難者とも「入居日から3年間」としていた供与期間の取扱いの考え方を実質的に変え、事実上、福島県からの避難者について、短い供与期間を設定するものとなっている。すなわち、東日本大震災・福島原発事故の避難者に対する都営住宅等の応急仮設住宅の供与は最も早い場合でも平成23年4月からであって、平成23年末ころに入居した者も少なくないことに鑑みると、福島県からの避難者に対する供与期間である「入居日から平成27年3月末日まで」のほうが、岩手・宮城県からの避難者に対する供与期間である「入居日から4年間」よりも明らかに短期になる。
   汚染水問題や4号機の建屋に保管されている使用済み核燃料をめぐる問題にみられるように、福島原発事故による放射能汚染、被ばくや二次災害のおそれ等の問題が解決する気配は一向になく、かえって問題が深刻化している様相をもみせている。こうした中で、原発事故被害者の避難は、確実に長期化せざるをえなくなっている。
   原発事故による県外避難者の意識も、福島県への帰還よりは県外での避難の継続を望むものとなっている。当団体が全国の避難者を対象に2013(平成25)年7~8月に行った「原発事故による避難世帯の生活実態調査」(以下、「2013年避難者調査」という。)では、福島への帰還を考えていない世帯が64%に上った。2012(平成24)年に当団体が行った避難者(うち原発事故避難者は回答者の89%)に対して調査では、避難元への帰還を考えていない避難者が55%であったのに比べても、「帰還しない」と答えた者が確実に増えている。2013年避難者調査では、帰還しない理由として、山林や田畑の除染は無理であるという回答が帰還しない者の81%、除染の効果に疑問を感じるという回答が同じく78%、将来の疾病リスクを否定できないという回答が同じく74%も挙がっている。これらの理由を挙げた避難者の多さに鑑みれば、残留放射能による低線量被ばくの継続は防げないし、リスクが大きい、と避難者は判断しているといえる。この判断は、これまでの汚染水問題などでの政府の発表や「手抜き除染」などの報道等をみれば、至極合理的な結論である。したがって、原発事故による避難者が早期に帰還することは考えられない。もちろん、岩手県や宮城県における被害が甚大で災害公営住宅の建設等もあまり進んでいない現状にあることは承知している。しかし、上記のように、福島原発事故による避難の長期化は必至であり、福島県からの避難者が、岩手県・宮城県からの避難者よりも早期に避難生活を終えられる状況では全くない。そして、福島県外に避難者向けの災害公営住宅を建てる計画はないのであるから、福島県外に避難した原発事故による避雛者にとっても「被災者の住宅の需要に応ずるに足りる適当な住宅」(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律8条)が不足していることは明らかである。
   したがって、福島県からの避難者のみについて、応急仮設住宅の供与期間を短くする東京都の決定は、福島県からの避難者を不当に差別するものであって、合理的な根拠を欠くものとして許されない。
 2 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律8条によれば、「建築基準法第二条第三十五号の特定行政庁は、同法第八十五条第一項の非常災害又は同条第二項の災害が特定非常災害である場合において、被災者の住宅の需要に応ずるに足りる適当な住宅が不足するため同条第四項に規定する期間を超えて当該被災者の居住の用に供されている応急仮設建築物である住宅を存続させる必要があり、かつ、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、更に一年を超えない範囲内において同項の許可の期間を延長することができる。当該延長に係る期間が満了した場合において、これを更に延長しようとするときも、同様とする。」と定められており、応急仮設住宅を所管する特定行政庁(自治体)は、福島原発事故では最長1年ごとにその供与期間を更新していくことが認られている。
   これを踏まえて、厚生労働省は、2012(平成24)年4月17日付けで、「被災地における恒久住宅の整備になお時間を要する状況にある」として、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律8条に基づいて、応急仮設住宅の供与期間を原則として一律1年間延長し、3年間とするよう、各自治体に求めた。これに応じて、東京都も、応急仮設住宅の供与期間を「入居日から3年間」に延長した。
 さらに、2013(平成25)年4月2日付けで、復興庁統括官付参事官、厚生労働省社会・援護局総務課長及び国土交通省住宅局建築指導課長は、その連名により、各自治体に対し、「東日本大震災に係る応急仮設住宅の供与期間の延長について」とする通知を発し、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律8条の制度を周知し、応急仮設住宅の供与期間の延長については「特定行政庁の判断で存続期間の延長が可能なので、地域の実情を踏まえ、東日本大震災により建設した応急仮設住宅の供与期間を延長する必要がある場合は、災害救助担当主管部局において適切な対応をお願いいたします。」として、仮設住宅を設置している各自治体の判断で適切に延長の対応を行うよう求めていた。この際、復興庁も、厚生労働省も、延長の期限は明示していなかった。
 みなし仮設住宅として使われている都営住宅や国家公務員宿舎は、仮設建築物ではないので、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律8条に基づいて特定行政庁が供与期間を延長するについて何の支障もない。福島県外に避難した避難者にとって「被災者の住宅の需要に応ずるに足りる適当な住宅」が全くない状況では、供与期間を最長1年ずつ延長する以外の選択肢はありえないというべきである。
 現に、東京都は、岩手県・宮城県からの避難者に対しては、2013(平成25)年9月18日に1年間の延長を行った。
 そうであれば、福島県に対する避難者に対しても同様の延長を行うべきである。

3 たしかに、国と福島県は原発事故による避難者の帰還をすすめる政策を取っている。福島県は東京都等の被災者の受入れ自治体に対し、平成27年3月末日という期限を切って、避難者の受入れを要請してきたことは、当団体も承知している。
 さらに、これまで「各自治体の判断で。」としてきた復興庁及び厚生労働省は、2013(平成25)年8月30日、東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(以下「支援法」という。)5条1項に基づく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」(案)を発表し、原発事故避難者に提供している応急仮設住宅について、国の方針として初めて「平成27年3月末日まで延長」という形で住宅を無償で供与する期間の期限を明示した。
 このように原発事故避難者の福島県への帰還へ向けた圧力は強まっているが、これに東京都は加担する必要はない。しかし、福島県からの避難者についてだけ都営住宅等の供与期間の期限を短く区切る今回の東京都の決定は、帰還政策に加担することにほかならない。
 だからこそ、今回の決定に、多くの原発事故避難者が不安を抱いて、当団体に相談している。「東京都は、平成27年3月末日で、わたしたちを東京から追い出そうとしているのでしょうか?」という、原発事故避難者たちの悲痛な叫びが当団体の無料相談電話に寄せられている。
 東京都は、原発事故被害者を受け入れた以上、そのニーズを尊重した避難者政策を打ち出すべきである。東京都は、ただちに、今回の決定を撤回し、福島県からの避難者についても、岩手・宮城県からの避難者と同様に供与期間を1年延長することを発表すべきである。それだけでなく、さらに進んで、東京都は、原発事故被害者の避難の実情に鑑み、避難者向け住宅の無償供与の期間を当面の間延長し続けていくことを表明すべきである。五輪招致に成功した東京都であれば、このようなことは財政的に必ずしも困難ではないはずである。
 多くの避難者が東京都知事の決断に期待をかけている。これに反し、知事が国と福島県がすすめる「帰還政策」に加担し続けるならば、原発事故避難者の失望は大きい。原発事故避難者が安心して避難し続けることができるよう、東京都は、今回の決定を撤回し、福島県からの原発事故避難者に対し、岩手県・宮城県からの震災避難者よりも不利な取扱いをすることを即刻やめるべきである。そして、東京都知事は東京五輪招致のIOC総会で「東京は安全」との太鼓判を押したのであるから、原発事故避難者に対し、福島第1原発が完全に安全な状態になるまで安心して安全な東京に住み続けられるよう、長期的に無償の住宅提供を約束するよう求める。                                   以上
PDF→
http://www.evernote.com/shard/s293/sh/b36bf5fd-ec1b-4642-83e3-41e5ae85d561/0623d84b890b0d9f5ab324837484bcac


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