智の庭

庭の草木に季節の移ろいを感じる、日常を描きたい。

しゃらのき

2013年07月01日 | 庭、四季の花
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす

平家物語の冒頭を飾る「沙羅」、これはナツツバキの「しゃらのき」とは別物だそうです



こちらは「姫しゃら」



30歳の時、意を決して造園の道を歩み始めましたが、

最初の難関は、木を見分けて、名前を覚えることでした。

実際、お客様の前で、庭木の名前が分からないのは、恥ずかしく、信用失墜ものです。


花を見れば見分けはついても、1年のうち花のある時期はわずかです。

あとは、幹肌、枝ぶり、葉の特徴で識別しなければなりません。

ましてや、葉が落ちる時期もあります。

   

左は常緑樹の「くちなし」と、右は「姫くちなし」(もしくは「こくちなし」)。

常緑樹でも、花が印象的な木は早く識別できるようになりましたが、

シラカシ、ウラジロカシ、アラカシ、アカガシ、などは区別が難しく、

落葉樹でも、コナラ、ミズナラ、ブナ、クヌギなども葉が落ちるとお手上げでした。



東農大の樹木学の授業を受けて、識別のコツを教わり、少しずつ世界が広がりました。

識別と名前は表裏の関係で、識別は生態を、自然を知ることでもあります。


そして今、夫と庭を作る機会を得て、私は当時抱いた夢を、少し実現しつつあります。

それは、庭に様々な樹木を植え、四季を通じてよくよく観察し、識別できるようになり、

旅の空の下、野山の木々を一瞥して、「ここはブナの森だ、あちらはミズナラ。」

などと自然を鑑賞できるようになることです。


そのような訳で、あえて、似て非なる木を植えるようにしました。



新年早々、冬の箱根を旅した折、ヒメシャラの森がありましたが、幹肌で分かりました。

そして先ほど、ヒメシャラの花と、初対面。

雨の時期に咲き、一日でハラリと落下して終わるので、いつも見過ごしていました。

今年は、落ちた花を見つけて、雨の中を見上げ、間に合いました。

すぐにシャラを見に行きましたら、高いところで咲いていました。

ようやく「違い」が実感できて、嬉しいです。





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