情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

ドイツ編集者綱領を輸入しよう!~表現の自由を守るために

2007-08-04 02:53:58 | メディア(知るための手段のあり方)
 メディア内部での表現の自由を実現させるには、いまのように編集権を経営陣が握っているという状態を変更し、実際に取材・編集に携わる現場スタッフにも編集権を与える必要がある。現場でものを見た者が一番、そのものの報道価値を把握しているのだから、当然だ。

 そこで、リビングスピーチ(ここ←クリック参照)を守るために、野党に取り組んでいただきたいことの№2は、メディアの現場編集者の表現の自由を守るため、編集(者)綱領の設置を義務づける法律をつくることだ。有名なドイツの編集綱領を見習い、上司の圧力から現場を解放し、真の自由あるメディアとすること、これを求めましょう。もっとも、法律でメディア規制をするのは本末転倒になるため、編集者綱領の内容そのものは、基本条項を示すに止まり、具体的には各メディアが独自に設ける形にする必要がある。

 元関西学院大学教授・石川明さんによると(講演のレジュメ)、ドイツの編集綱領は、1960年代の末に新聞社や放送協会で働く記者や番組制作者が企業内部の意思決定構造を変えるために「編集(者)綱領運動」を展開したという。特に公共放送の運動で要求されたのは、国家や政党、さまざまな利益集団からの独立であったらしい。

 そのような運動の結果、1980年代後半には、放送法(州の管轄)が改正され、編集者綱領の概要が放送法に盛り込まれた。これによって、ドイツでは、番組スタッフの信条の自由が保障され、放送協会と番組スタッフが「放送の自由の実現」という共通の役割を担うこととなったという。

 現場のスタッフに与えられたのは、主として次の5つの権利だ(西部ドイツ放送協会の編集者綱領に基づく)。

1.信条の自由の保護
  「いずれの番組スタッフも、その記事や番組で、自らの信条に反する意見や芸術上の見解を、自らのものであると主張することを指示されたり、自らの情報に反する報告を正確であると指示されてはならない。また協会の任務の範囲にあり、かつ、公共性のある、総合的で、事実に即した情報に属する報告や意見を差しとめることを指示されてはならない」(第1条3)

2.理由開示請求権
  放送を予定された番組が中止されたり、その内容や意味の点で、関係者にとって重大だと思われるように改変された場合には、責任者はそのことを当の番組スタッフに対して、また、申し出のあるときには、編集者代表会に対して(中略)原則として中止や改変の前に、また、希望があれば文書で(中略)その理由を説明しなければならない」(第6条4)

3.情報収集権
  「番組や番組スタッフの編集上の業務に重大な影響を及ぼす基本的な構造上及び組織上措置がとられる場合には、編集社代表会には、番組局長からしかるべき時期に、それについての包括的な情報が提供されなくてはならないし、編集者代表会には、意見表明の機会が与えられなくてはならない」(第8条1)

4.聴聞権
  「編集者代表会は、番組局の管理職員の任用基準に関する話し合いに西部ドイツ放送協会の参加規定に基づいて、独自の職業グループとして参加できる」(第8条1)

5.公表権
  編集者代表会は、編集者綱領の枠内で、重要な意味を持つ問題についての決議と意見表明を、西部ドイツ放送協会の広報室を通じて公表することができる(第8条3)


以上、石川明さんの講演のレジュメに基づく説明です。

ドイツでは、放送だけでなく新聞も同様の規定があるそうです。ここまでの規定がある国とない国で、権力監視機能に大きな違いが出てくるのは間違いないでしょう。

市民だけでなく、記者・ディレクターら現場スタッフの中にも、こんな画期的な制度が現に運用されている国があることを知らない人は多いと思う。現に私も新聞記者時代には、全く、知らなかった。

この事実を市民だけでなく、報道陣自ら、仲間たちに伝え、実現に向けて少しでも努力してほしい。で、民主党は、放送法改正にあたって、この点も考慮に入れてほしい!










★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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