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情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

共謀罪HPバトルで法務省が一気に5頁掲載~弁護士会の反論は…

2006-10-17 04:40:04 | 共謀罪
法務省が共謀罪に対する批判について反撃に出てきた。HPに一気に5項目もの書面を掲載したのだ。「組織的な犯罪の共謀罪」について(←クリック)という頁に掲載されている①「組織的な犯罪の共謀罪」の創設が条約上の義務であることについて、②現行法のままでも条約を締結できるのではないかとの指摘について、③条約の交渉過程での共謀罪に関する政府の発言について、④条約の交渉過程における参加罪に関する日本の提案について、⑤参加罪を選択しなかった理由…という5つだ。

内容的には、これまでの法務省の見解の繰り返しに過ぎないが、こちらだけを見てしまうと、そんなもんかと誤解してしまいかねない。日弁連のHPにある意見書(←クリック)をぜひ多くの方に紹介していただきたい。

日弁連も意見書にあるからそれで十分だなどと考えていては、とんでもないことになりかねない。なぜ、ここにきて法務省、外務省が次々とHPで反論をしてきているのか?法務省、外務省のHPにきちんと反論し、反論したことをアピールしなければ、知らないうちに共謀罪が通っちゃったということになりかねない…。






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共謀罪の集会(10月18日)とテキストパート2のご案内~ピープルズパワーを!

2006-10-16 03:45:51 | 共謀罪

やっぱり危ないぞ!共謀罪―市民的自由への介入と規制を強め、監視社会化をさらに進める「共謀罪」にノーを!

樹花舎

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国会での審議入りを断念させるためには、まだまだ、反対運動が力強く継続していることを安倍政権に実感させなければならない。18日、日弁連が市民集会「共謀罪と弁護士の警察に対する依頼者密告制度-犯罪対策と人権のバランスを考える-」(←クリック)を開催します。大谷昭宏氏(ジャーナリスト)、桐山孝信氏(大阪市立大学教授・国際法学専攻)らが問題点を追及します。一人でも多くの方のご参加をお願いします。参加が難しい場合も、こういう情報があるよ、ということをブログなどで流していただければ幸いです。こういう情報が流れるだけでも、プレッシャーになるはずですから…。

日時:2006年10月18日(水)18:30~20:30
場所:弁護士会館2階 講堂「クレオ」 東京都千代田区霞が関1-1-3 (地下鉄霞ヶ関駅B1-b出口直結) (会場地図)

参加費:無料

プログラム
基調報告:山下 幸夫(弁護士)
パネルディスカッション
パネリスト:大谷昭宏氏(ジャーナリスト)、桐山孝信氏(大阪市立大学教授・国際法学専攻)
コーディネーター:海渡雄一(弁護士)
※各党の国会議員の方にも出席・発言していただく予定です



また、上記著作「やっぱり危ないぞ!共謀罪」は、共謀罪を様々な観点から切った読みやすいテキストです。資料も充実しています。ぜひ、こちらもお買い求めください。




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外務省も戦線復帰!~共謀罪HP合戦

2006-10-12 22:28:13 | 共謀罪
いやぁ~、とうとう、外務省が本音を出しはりましたな…。えっ、ああ、共謀罪のことやねん。外務省がHP(←クリック)で、共謀罪を新設して国際組織犯罪防止条約を批准しろやて…。あんたらいったい何者?いう感じやねぇ。

 そもそも、外交官いうのんは、日本の国益のために、外国はんと交渉するのが仕事やなかったやろか?国会で共謀罪の新設法案が通らんのには、通らんなりの理由があったんやないやろか。国民の強い反対があったからこそ、8回も国会通らんかったんやないやろか。

 そやったら、その国民の声を背景に、日本の法律は十分、国際組織犯罪防止条約に対応できるいうて、外国はんを説得するのが、外務省の仕事やろ。もっというたら、こんなおかしな条約はあかん、もっと世界的に対応できるような形にせな、日本は参加できひん、いうのんが…。そやのに、国民を説得するために、わざわざ、HPで説明するなんて変な話やなぁ…。

 まぁ、ここだけの話、最初、共謀罪は日本の法律に合わんって頑張ってた日本の代表団に圧力をかけたのは、アメリカはんちゅう噂もあるそうやね。もともと、共謀罪を持っている英米法系国、参加罪(結社罪)を持っている大陸法系国は、国際組織犯罪防止条約を批准するのに、何も新しい法律はいらん。それ以外の国々のために、日本が提案したのが第3のオプションやったが(ここ←参照)、アメリカはんとの非公式協議という裏の交渉で(ここ←参照)、ころっと意見をかえはった。どう考えてもアメリカはんが何か圧力をかけたとしか思われへんいうんが、噂の主の見方や。確かに、外務省がHPで必死に日弁連の意見書(←クリック)や最近の新聞記事に反論するのは、おかしな話や。

 え、外務省の意見のレベル?そりゃ、日弁連の意見書と比較すれば一目瞭然や、肝心なところは英文のままでよう訳しとらん。日本語にしたら、こけおどしや、いうことがばれるからやろなぁ…。

 それにしても、外務省の皆はん、日本が批准してない条約はたくさんある、特に人権を守るための条約は批准してないもんが多い、いうことを聞くんやけど、ほんまやろか?そのことについては、HPつくって、批准するように訴えたという話は聞かんのやけど、知らんだけやろか?まぁ、最近、耳が遠なって、目ぇも霞んできよったからねぇ…。

【重要な追記】
外務省が引用している国連のHPは、アメリカの留保の概要に過ぎない。肝心なのは、米国の留保の原文(←こちら)である。ここをよく読むと、「for example, a few states have extremely limited conspiracy laws」(いくつかの州はきわめて限定された共謀罪しか持っていない)という記載がある。このことも外務省は隠している。このきわめて限定された共謀罪、とは、日本での状況~一部の重大犯罪にのみ共謀罪規定があること~と同じ状況ではないか?それでも米国は条約を批准している…。米国の状況は、例えば、ある区域の学校が同じ校則を作ろうといって合意したのに、もっとも大きな学校だけは、「うちはクラスが校則とは違うクラス則をつくる権利をもっていて、みんなが作ろうと合意した校則とは違うクラス則を持っているので、そこのところ、よろしく!でもあんたのところの学校はみんなで合意した校則どおりつくらな承知せんぞ!」と言っているようなもんだ…。あきれ果てる。








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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その6

2006-10-11 02:36:59 | 共謀罪
毎日新聞もばしばし書き始めており,タイトルがあまりそぐわないが,急に変えても分かりにくいのでこのまま,書きます。前回は,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(いわゆる組織犯罪処罰法)が犯罪収益の収受を罰していることから,組織犯罪集団に事務所を貸して家賃をとったり,出前をもっていって代金をもらったりすることすら取り締まることができる条項になっているため,参加罪がカバーすべき行為を全てカバーしていると言ってよいのではないかという指摘をした。そして,条約そのものに,この考え方を裏付け条項があることまでお知らせしました。

その条項とは,第6条1項(b)の次のような条項(←クリック)である。

(b)自国の法制の基本的な概念に従うことを条件として、
(i)その財産が犯罪収益であることを当該財産を受け取った時において認識しながら、犯罪収益である財産を取得し、所持し又は使用すること。


これは,まさに犯罪収益収受を処罰することを求める内容だが,注目すべきは,「自国の法制の基本的な概念に従うことを条件として」という部分である。あらゆる国に,この犯罪収益収受罪を制定することを求めているのではないということだ。全ての国で犯罪化されることが前提の条項であれば,犯罪収益収受罪があるから,参加罪を実質的にはクリアしていると言っても,説得力がないが,一部の国が犯罪収益収受罪を設立することを前提とした条約であるのだから,説得力が備わると思う…。

もはや参加罪の要件を兼ね備えている。そう断言して,批准しても国際的に非難されるおそれはないはずだ。




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今度は,毎日が単独で…共謀罪:創設、攻防再び 条約批准に必要か

2006-10-11 02:20:43 | 共謀罪
東京新聞のまとめ記事に続いて,毎日も民主党がなぜ,共謀罪新設そのものの反対に回ったのか,日弁連が何を問題視しているのか,がよくわかる記事(←クリック)を掲載した。法務省は,例のHPで十分とお考えなのだろうか…。

■■引用開始■■
◇政府・与党「対テロの国際協調は不可欠」/野党・日弁連「既存法で十分に対応できる」

 実際に犯罪を実行しなくても事前に合意しただけで罪に問える「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案の取り扱いが、臨時国会の焦点の一つになっている。「内心の自由や表現の自由が脅かされる」「乱用の恐れがある」といった批判にさらされ、継続審議と廃案を繰り返してきた法案だが、政府・与党は「国際組織犯罪防止条約を批准するために必要」と成立にこだわる。一方、民主党は「条約の批准に共謀罪は必要ない」という主張を新たに打ち出し、対決姿勢を強めている。【森本英彦】

 ■新たな主張

 「総理からもご指示がありました」。9月26日の就任会見で長勢甚遠法相は、任命の際に安倍晋三首相から受けた指示として、共謀罪法案の成立を真っ先に挙げた。

 国際組織犯罪防止条約は、マフィアなどの国際的な組織犯罪に対応するために00年11月に国連で採択されたもので、日本の国会も03年5月、承認している。

 長勢法相は今月6日の会見でも「国際連帯の中でどうしても条約は批准しなければならない。全力を挙げて早期成立を図りたい」と述べ、条約批准の重要性を強調した。

 しかし、日本弁護士連合会が先月、「共謀罪を設けなくても条約の批准は可能」とする意見書をまとめたことで状況が変わってきた。「共謀罪創設はやむを得ない」として適用対象となる罪や団体の範囲を絞る修正案を先の通常国会に提出した民主党も、共謀罪の創設自体に反対していく方針に転換した。

 今後の国会論戦は、政府・与党が共謀罪創設の根拠としてきた「条約批准に必要」という説明が正しいのかどうかが大きな争点となりそうだ。

 政府はこれまで「組織犯罪の実行前の段階を処罰対象とすることが欠かせず、条約では、重大な犯罪を行うことを合意する共謀罪か組織犯罪集団の活動に加わる参加罪を設けることを締約国に義務付けている」と繰り返してきた。これに対し、日弁連は「日本には組織犯罪集団が関与する重大犯罪を未遂より前の段階で処罰できる立法が既にあり、新たな立法措置は必要ない」と主張する。

 根拠として日弁連は▽凶器準備集合罪のように主要な58の重大犯罪は未遂より前の段階で処罰できる▽共謀共同正犯理論が確立し、幅広く共犯を処罰できる▽ハイジャック防止法、テロ資金提供処罰法などのテロ立法がある▽銃刀法で銃器の所持が厳しく規制されている--などを挙げる。

 ■起草時の見解追及

 野党と日弁連は、条約起草のための国連の会議で政府が「共謀罪は日本の法原則になじまない」と主張していたことを改めて追及する構えも見せる。

 日本の刑法は、犯罪の意思だけでは罪に問わず、「既遂」を罰するのが原則。「未遂」「予備」「陰謀」などの処罰は例外的に定められている。このため、政府は99年3月の条約起草委員会で「すべての重大犯罪の共謀を犯罪とすることは、我が国の法的原則と相いれない」と述べている。

 野党側は「政府がなぜ考えを変え、共謀罪に固執するのか不透明だ」と疑問を投げかける。国連が04年に作成した立法ガイドにも「条約の文言通りの共謀罪を立法しなくても組織犯罪集団に対する実効的な措置をとることは可能」「新しい法は国内の法的な伝統、原則と合致しなければならない」という趣旨の記載があるためだ。

 この点について、法務省は昨年の通常国会で「当時は共謀の対象となる重大な犯罪の範囲が定まっておらず、現在の条約のように『組織的な犯罪集団が関与する』という要件もなかった」と答弁しており、「現在の条約の共謀罪に反対したわけではない」との立場だ。外務省も「立法ガイドはあくまで参考にすぎない。条約が共謀罪か参加罪の創設を求めているのは明らか」と反論する。

 さらに政府は「条約の要請に応えるというだけでなく、共謀罪はテロ対策にも有用だ」と強調する。杉浦正健前法相は先月、英国の旅客機テロ未遂事件を例に挙げて「共謀罪がなければ、日本ではこの種の事案を検挙できない」と発言した。これに対し、日弁連関係者は「爆発物取締罰則の共謀や殺人予備罪などで十分対応できるはず。政府の宣伝はこじつけだ」と批判する。

 ◇可決強行は困難?

 先の通常国会で与党は、民主党の修正案を「丸のみ」する奇策を繰り出して採決を狙ったが、民主党の反発で不発に終わった。各方面から共謀罪への批判が噴き出したことで、政府・与党内には「今度の臨時国会を逃せば、参院選を控えた来年の通常国会では審議できないだろう」という空気が広がる。ただ、教育基本法案など他の与野党対決法案との兼ね合いもあり、臨時国会での共謀罪法案の可決成立を強行するのは困難という見方も出ている。

 ◇海外、大半が新法整備せず

 ■米は留保し批准

 外務省によると、条約を批准した国は5日現在で126カ国。日本以外の主要8カ国(G8)は批准済みで、政府からは「日本だけ条約に協力できないのは極めてまずい。テロ対策の国際協調に穴が開いてしまう」(杉浦前法相)という声が聞こえてくる。

 ところが、条約批准にあたり、日本のように600以上の犯罪を対象に共謀罪を新設するといった大掛かりな国内法整備をした国はほとんどない。保坂展人衆院議員(社民)が「条約を批准した国のうち、新たに国内法を制定した国はどこか」と問う質問主意書を出したところ、政府は6月、「例えばノルウェーがあると承知している」と答弁した。外務省は「その後、ニュージーランドがあることも分かった」と言う。

 米国が「一部の州には極めて限定された共謀罪しかない」として、条約批准の際に留保(特定の規定を自国に適用しない意思表示)していたことも判明した。日弁連は「政府は留保はできないと言ってきたが、日本も米国と同様に留保することで、現行法のままでも条約違反を回避できるはずだ」と指摘する。

 さらに、カリブ海の島国セントクリストファーネビスが、共謀罪の対象を国際犯罪に絞ったまま条約を批准していることが日弁連の調査で分かった。共謀罪の対象を国際犯罪に限定した民主党の修正案について、政府は「条約違反で批准できない」としてきたが、この説明も怪しくなってきた。

 こうした諸外国の状況は、これまでの国会審議ではほとんど明らかになっておらず、外務省からは「言語も法体系も違い、調査に時間がかかる」という答弁もあった。

 日弁連関係者は「外務省はこれらの情報を隠してきたとしか思えない。国民に対する背信行為だ」と批判したうえで、「刑法の原則を大転換するような法改正をしようとしているのは日本だけで、異常さが際立っている」と指摘している。

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 ◆共謀罪を巡る主な動き◆

00年11月 国連で国際組織犯罪防止条約を採択

   12月 日本が同条約に署名

03年 3月 共謀罪を新設する法案を政府が提出

    5月 国会で同条約を承認

   10月 衆院解散に伴い廃案に

04年 2月 政府が改めて法案を提出

05年 6月 衆院法務委員会で審議入り

    8月 衆院解散で2度目の廃案

   10月 特別国会に三たび法案を提出

   11月 衆院法務委員会で継続審議に

06年 2月 通常国会で与党が修正案を民主党に提示

    4月 衆院法務委で審議入りし、政府案と与党修正案の提案理由説明。審議入りに反発した野党が審議を一時拒否。民主党が修正案を提出

    5月 河野洋平衆院議長が調整に乗り出し与党の強行採決回避

    6月 与党が民主党案に全面賛成する「丸のみ」方針に転換。麻生太郎外相が「民主党案では条約を批准できない」と発言し、反発した民主党は採決に応じず。衆院法務委で政府案が継続審議に

    9月 日弁連が「共謀罪なしでも批准は可能」とする意見書を法務省に提出。臨時国会が開会。安倍政権発足

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 ■ことば

 ◇共謀罪

 政府案では、4年以上の懲役・禁固にあたる刑が「団体の活動として犯罪実行のための組織により行われる場合」の共謀を罰する。対象犯罪は600以上に及ぶ。対象犯罪が「死刑、無期、10年を超える懲役・禁固に当たる刑」の場合は5年以下の懲役・禁固、それ以外の場合は2年以下の懲役・禁固が科される。しかし、「適用範囲が広すぎる」との批判が強く、与党と民主党はそれぞれ、政府案をより明確・厳格にする修正案を先の通常国会に提出した。政府案だけが継続審議になっている。

毎日新聞 2006年10月9日 東京朝刊


■■引用終了■■




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「共謀罪とは何か」~国会論戦の予習にぜひ!

2006-10-09 08:31:37 | 共謀罪
共謀罪反対派を代表する二人(海渡雄一弁護士、保坂展人衆議院議員)が書いた解説本「共謀罪とは何か」が岩波ブックレットから発売された。【犯罪に関わることを「話し合っている」段階で犯罪となり,処罰される.そんな従来の法体系とは全く違う法案の成立が目論まれている.何をもって成立する犯罪なのか,定義も成立要件も曖昧なまま…….この法案が私たちにとって,そして市民社会にとってなぜ危険なのか,平易に解説する.】というもの(ここ←クリック)。

保坂議員が、巻頭で、【自民党の新総裁に決まり,次期総理が確実視される安倍晋三氏は,「共謀罪の整備を急がなければならない」と前のめりの姿勢を示しています.「治安が悪化している」から「やっぱり共謀罪は必要ではないか」という声もきかれます.「自分たちの日々の生活には関係ないし……」と思っている人も多いでしょう.でも,本当にそうでしょうか.冷静な議論をするためにも,共謀罪とは何か,どこが問題なのか,論点を共有して,あなたにも共謀罪論議の中に入っていただきたいと思います.】と述べているように、これまであまり共謀罪に関心がなかった人にも分かりやすいようにまとめられたブックレットだ。

480円+税…一食抜かしてでも是非!




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法務省の共謀罪反論HPは説明義務を果たしていない

2006-10-07 10:55:24 | 共謀罪
先日,法務省が共謀罪に関する日弁連意見書や各紙の記事に対する反論をHPに掲載したことをお伝えしたが,紹介しっぱなしで終わって誤解を生むと困るので,少しばかり,法務省に横から「再反論」をしておきます。

◆たとえば,法務省は
【その当時の案文に基づく犯罪化を行うことは我が国の法的原則と相容れない旨の意見を述べるとともに、共謀罪については、「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加えるべきこと、参加罪については、特定の犯罪行為と参加する行為の結び付きを要件とした、それまでの参加罪とは別の類型の参加罪の規定を設けることなどを提案しました。】(法務省HP)
という。

しかし,すでに紹介したように,法務省が提案したのは,その二つだけではな~い。


法務省は,
【5 3条1項(b)は,参加罪という概念を導入するものである。上述したとおり,参加罪という概念は,各国の国内法の基本原則と密接に関連する。例えば,日本の国内法の原則では,犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり,共謀や参加については,特に重大な犯罪に限定して処罰される。したがって,すべての重大な犯罪について,共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない。しかも,日本の法律は,具体的犯罪を実行しないである犯罪組織に参加すること自体を犯罪化する規定を有していない。それゆえ,参加行為の犯罪化を実現するためには,国内法システムの基本原則の範囲内で実現化するほかない。】

【6 そこで,日本は,3条の1項(a)と(b)の間に,「国内法の基本原則に従って」というフレーズを加えることを提案する】

という提案をし(「朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その2」←クリック参照),実際に,条約には,この「国内法の基本原則に従って」というフレーズが加えられたのである。

「国内法の基本原則に従って」というのはどう読んでも「国内法の基本原則の範囲内で」としか読み取れない。こういう条項はどう解されるべきなのか?そのように解されることになった経緯はどのようなものだったのか?フレーズについていかなる議論がなされたのか?日本の提案でこのフレーズが入ったのだから,そのフレーズを活かさない手はないはずだというのが普通の感覚だが,それには一切答えていない。


◆また,法務省は
【我が国の提案のうち、別の類型の参加罪の規定を設ける点については、処罰の範囲が不当に狭くなるとして各国に受け入れられませんでした。
他方、共謀罪の要件に「組織的な犯罪集団が関与するもの」という要件を加える点については、平成12年1月に開催された第7回アドホック委員会において、「国内法上求められるときは、組織的な犯罪集団が関与するという要件を付することができる」旨の規定として条約に盛り込むことが各国に受け入れられました。】(法務省HP)
という。いかにも,参加罪は変更が認められなかったが,共謀罪は変更が認められたから共謀罪を導入することにした,と言いたげである。


渇~ッ!
法務省は,共謀罪についての修正の理由を,
【(3条の1項(b)()は,「重大犯罪」を犯すことを「共謀する」ことを犯罪化するものである。ここでいう重大犯罪とは,2条の2の(b)で「長期●年以上の懲役に処せられる犯罪を構成する行為」と定義されている。この条約の範囲が組織犯罪行為に関連する要素を含まなければならない以上,そのような要素に関連させるためにこの規定は,限定されなければならない。そして,このような要素は,条約案2条1項及び3条の1項(a)に2条の2に定義された組織犯罪集団の関与する重大事件という部分に見られる)】(「朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その2」参照)
としていた。
つまり,この条約が組織犯罪に関連するものだから,組織犯罪集団の関与という要件が必要になるのではありませんか?という観点からの修正提案だ。これが認められることと,【我が国の法的原則と相容れない】(法務省HP)こととは関係ない。

実は,条約を我が国の法的原則と相容れるものとするための提案は,参加罪の修正の方であった。だからこそ,法務省は参加罪の修正部分について,修正理由を

【3条1項(b)の()と()は,英米法系あるいは大陸法系のシステムのいずれかに合致するものとして導入されるように考案されている。条約をさらに多くの国が受け入れられるようにするためには,世界各国のの法大系が英米法,大陸法という2つのシステムに限定されていないことから,第3のオプション,すなわち「参加して行為する」ことを犯罪化するオプションを考慮に入れなければならない)】(朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その2)

と説明しているのだ。

よって,共謀罪の修正が認められたから,共謀罪に乗り換えたというのは,全く不合理な説明だ。このあたりのことについても,法務省は深く説明しようとはしていない。

まだまだ,言い足りないことはあるが,今日はこの辺で…。


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共謀罪HPバトルパート2~法務省の反撃

2006-10-06 14:07:49 | 共謀罪
法務省のサイトで別のことを調べていたら、HPに戻ったときtopics欄が増えていた…。あれっと思って眺めたら、何と、【「組織的な犯罪の共謀罪」を巡る条約の交渉過程での政府の発言・提案について(2006/10/6)】(ここ←クリック)という文字が…。ついに日弁連と法務省の間の共謀罪HPバトルの第2幕が切って落とされた。

早速、その書面(←クリック)を見ると、【組織的な犯罪の共謀罪を新設すること等を内容とする法案に関し最近「国際組織犯罪防止条約の交渉過程で、我が国政府が『すべての重大な犯罪の共謀を、犯罪とすることは、我が国の法的原則と相容れない』と発言していた」旨の指摘があります。】と書き出しており、日弁連の意見書や、朝日、毎日、東京の3紙が次々とスクープを連発していることに対する言い訳が書かれているようだ。

どれどれと見ると、これまで委員会などで繰り返したきた言い訳が書かれているのみで、各紙が記事を連発している事態の重大性が分かっていない。アメリカが留保していたことが分かったことなど新事実について真摯に受け止める姿勢が見られない。民主党が共謀罪不要を言い始めたのもそのあたりの事情の変化によるにもかかわらず…。

この程度の反論では、日弁連、各紙から再度反論をされるのは明白だ。

とりあえず、バトルが再開されたことをご紹介します。






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こんどは,毎日,東京アベック記事~共謀罪条約起草過程への疑問

2006-10-06 08:48:50 | 共謀罪
先日の朝日・毎日アベック記事に続いて,今度は,毎日と東京が【条約起草のための国連の会議で政府は「共謀罪も結社罪も、日本の法原則になじまない」と強調、多くの国に受け入れられる条約にすべきだ、と主張した】(毎日社説←クリック),【国連審議の際、そうした極めてまっとうな批判を行ったのは、ほかならぬ日本政府だったのです。英国からも類似の修正案が出され、おかげで、条約は、結社罪ほどガチガチでなく、犯罪組織による犯罪行為の手助けになる可能性を認識していた場合のみ罪になる“広義の参加罪”を求める内容になった】(東京特報←クリック)と条約の審議過程についての疑問を指摘した記事を掲載した。

毎日は社説での掲載で,社として,共謀罪導入に反対であることを表明した格好だ。他方,東京は,従前から共謀罪反対を貫いているが,今回の記事は,国会での審議入りを前に論点を整理したもので非常に分かりやすい。いずれも必読である。


■■毎日引用開始■■

社説:共謀罪 「必要」の論拠は確かなのか

 政府は共謀罪の導入を目指し、組織犯罪処罰法改正案を臨時国会の最重要法案の一つにしているが、「国際組織犯罪防止条約の批准には共謀罪が必要」とする政府の説明の根拠が、揺らぎ始めた。日本弁護士連合会が国連の会議録や国連作成の立法ガイドを精査した上で「共謀罪は不要」とする意見書を法務省などに提出。民主党も同様に、徹底追及する構えを見せているからだ。

 条約の批准には、犯罪の未遂より前の段階で加罰できるように共謀罪か結社罪を導入しなければならない、結社罪は憲法の結社の自由に触れるため共謀罪を創設する、創設して条約を批准しないと、テロ対策や国際犯罪対策で各国が連携を深める中、世界の孤児になる……といった説明を、政府は繰り返してきた。

 しかし、日弁連の意見書などによれば、条約起草のための国連の会議で政府は「共謀罪も結社罪も、日本の法原則になじまない」と強調、多くの国に受け入れられる条約にすべきだ、と主張した。その結果、日本など英米法や大陸法とは別の法体系を採る国では両罪とも導入が難しいことが理解され、条約には「各国が国内法の原則に従って実施すればよい」と明文化された。国連が各国の国内法起草者向けに作成した立法ガイドにも「各国の国内法の基本原則と合致する方法で行う」「新しい法が国内の法的な伝統、原則、基本法と合致することを確保しなければならない」といった日本の主張をくんだ項目が盛り込まれた。

 条約が一方で求める結社罪も、特定の犯罪にかかわることを認識して犯罪組織に加わる参加罪と解釈するのが妥当であり、日本では共謀共同正犯やほう助犯の理論によって幅広く共犯を処罰できること、58の主要犯罪について凶器準備集合罪や殺人予備罪などで未遂より前の段階で処罰できること--などを総合し、現行法のまま条約を批准できるので共謀罪は不必要、と日弁連は結論付けている。

 意見書に照らすと、政府は国連で受け入れられた自らの主張にも反し、必要でもない共謀罪の創設を図ってきたことになる。共謀罪には「市民の人権弾圧に悪用される」といった根強い批判があるほか、対象犯罪が600を超すだけに法体系を一変させるとの懸念も広がっている。それらに抗し、確固たる根拠もないまま政府が導入を目指していたとするならば、国民への重大な背信行為と言わなくてはならない。政府は「条約の一部を留保することはできない」とも説明していたが、この間、共謀罪導入に熱心だった米国が、肝心の国内法整備の条文に留保をつけて条約を批准したことも判明している。国連が条約批准の適否を審査するとしていた政府の説明も、事実に反すると批判されている。国を挙げての論争の意味も、問い直されなくてはならない。

 共謀罪がなぜ、必要か。政府はなぜ、変節したのか。切実な疑問を突きつけられた以上、政府は国会審議以前に、国民が納得できる説明をしなければならない。

■■引用終了■■


■■東京引用開始■■

臨時国会で再審議『共謀罪』の論点は

 臨時国会で再び審議される「共謀罪」創設法案。先の通常国会では与党が民主党案「丸のみ」の直前までいったが「丸のみ成立、のちに修正」の思惑がばれ野党が反発。継続審議になった。その後、野党・日弁連から、政府による国連条約の解釈の誤りが指摘されるなど、法案を取り巻く状況も変化、政府の説明責任も問われている。臨時国会で予想される論点をまとめると-。 (市川隆太)

■共謀罪導入は義務なの?

 共謀罪導入論議が浮上したきっかけは、国会も承認した「国際組織犯罪防止条約」だ。政府与党は「条約五条で共謀罪か参加罪の導入が義務づけられている」と解釈したうえで、共謀罪導入を進めている。なぜ参加罪を選択しないのか、いまだにはっきりしないが、二重、三重の反論が出ている。

 (反論1)日弁連は「アメリカは、共謀罪を積極的に導入していない州があるため、五条を留保した上で条約を批准している。共謀罪を導入しないと世界から相手にされなくなるという政府与党の主張はウソだ」と批判する。

 (反論2)政府与党は五条の解釈自体を間違えているとの批判もある。米ニューヨーク州弁護士でもある喜田村洋一弁護士や「同時通訳の神様」と呼ばれる国弘正雄・元外務省参与らは「政府は五条を、反対に取り違えて訳している」と指摘。喜田村氏は「本当は五条は『共謀または犯罪結社に関する法的概念(参加罪)を有しない国においても、これらの概念の導入を強制することなく、組織犯罪集団に対する実効的な措置を可能にする』という意味です」と言う。

 日弁連や野党は「自分の国の法体系を壊すことなく、国際的な組織犯罪を取り締まってくださいという趣旨なら、凶器準備集合罪や組織犯罪処罰法がある日本は、五条を留保して条約批准できる」としている。

 (反論3)弁護士の中からは「百歩譲って、共謀罪か参加罪のどちらかが義務づけられるとしても、なぜ、共謀罪なのか。参加罪でよいではないか」という指摘も出ている。

 参加罪は「犯罪行為でなくても、行為主体が犯罪組織なら、それに参加した市民は罪になる」という「結社罪」のことだ。ただ、「組織犯罪集団への参加自体が罪になる結社罪は、憲法が保障する政治結社の自由に反する」との指摘も。

 この問題に詳しい弁護士が説明する。「たしかに、これでは、まじめな市民まで逮捕されるリスクが大きすぎる。国連審議の際、そうした極めてまっとうな批判を行ったのは、ほかならぬ日本政府だったのです。英国からも類似の修正案が出され、おかげで、条約は、結社罪ほどガチガチでなく、犯罪組織による犯罪行為の手助けになる可能性を認識していた場合のみ罪になる“広義の参加罪”を求める内容になった」

 この弁護士が続ける。「日本では暴力団が組織に入るよう強制すれば摘発できるし(暴力団員による不当な行為の防止に関する法律)、共謀共同正犯理論を広く解釈した結果、既に広範な共犯者逮捕が可能になっている。アメリカと違って銃の所持を禁じ、凶器準備集合罪もあるなど、組織犯罪対策は世界に冠たるものです。条約趣旨を十分に満たしているとして、今のまま堂々と批准すればいい」

■批准は「する」もの「される」もの?

 「共謀罪を導入しないと、国連条約の批准ができない」。共謀罪審議の過程で、こんな論法が広く流布された。

 先の通常国会終盤で自民・公明両党が「民主党案丸のみ」に動いた際もそうだった。丸のみの動きが浮上した翌朝、麻生太郎外相は報道陣を前に「民主党案のままでは条約を批准できない」と切って捨て「丸のみ撤回」の流れを決定づけた。

 ところが、法律家の間では「あの論法はおかしい」という声がもっぱらだ。日弁連関係者が言う。「条約の批准は主権国家からの一方的な意思表示であって、なにも、国連に審査されて『日本は批准させない』とか言われるわけではないのです。だから、条約趣旨に合った法制度が備わっている日本は、胸を張って批准できる。共謀罪を導入する必要などないのです」

■越境性

 「国際組織犯罪防止条約」なのに、なんで窃盗や公職選挙法違反、はたまた道路交通法違反にまで共謀罪を設けるのか不思議に思う人も多い。野党も「仮に導入するにしても、越境犯罪に限定すべきだ」と主張している。しかし、条約三四条二項に「(共謀罪などは)国際的な性質とは関係なく定める」と書いてあるため、政府与党は「法案に越境性を盛り込むことは無理」と突っぱねてきた。

 ところが、同じ条約の三四条一項は「条約は各国の国内法原則に従って実施すればよい」と、別のことを言っている。しかも、国内法原則重視が盛り込まれたのは、日本政府が要求したからだ。また、三条では「越境性のある犯罪が適用対象」とされている。頭がこんがらがってしまうが、実際に、越境犯罪に限定した共謀罪を立法した国もある。先の通常国会後の日弁連の調査によると、セントクリストファー・ネビスというカリブ海に浮かぶ人口約四万六千人の島国が二〇〇二年に越境性を前提とした共謀罪を制定、〇四年に条約を批准した。

■盗聴捜査

 共謀罪は、犯罪の実行、未遂、準備に至る前段階で摘発することになる。このため「共謀罪を活用するには、おのずと謀議を盗聴する捜査が必要になる」との指摘が、共謀罪法案の国会提出前から出ていた。電話盗聴、メールの盗聴、室内盗聴が広範囲に行われるようになるのではないか、というのだ。

 〇二年に森山真弓法相(当時)から共謀罪導入についての諮問を受けた「法制審議会」の刑事法部会でも、共謀罪に批判的な委員が「摘発のために盗聴が必要になるのではないか。また、そういうものがなければ効果のない条文になってしまうのではないか」と疑義を呈したが、政府側が「捜査手法うんぬんは条約上、義務とされているわけではない。今回の諮問は罰則整備であり、捜査手法などは、別途、検討、議論すべきテーマ」と、議論を封じ込めてしまった経緯がある。

 法曹関係者たちが言う。「捜査は犯罪の“可能性”があれば始められ、可能性がなくなった時点で中止され、逮捕もされない。その間に盗聴されても、自分たちには分からない。共謀罪ができたら『やましい点などないから逮捕されない』と、安心していられなくなるでしょう」

   ◇   ◇

 安倍晋三首相も共謀罪法案を優先課題と位置付けている。しかし、野党はおろか与党議員さえも、国連審議の詳細経緯や米国の「留保」の一件を、政府から聞かされていなかったフシがある。根本的な審議やり直しが必要になりそうだ。

<デスクメモ> 開会中の臨時国会に共謀罪法案が四たび提出される。安倍政権の本質を占うには格好のテーマだが、法案創設の根拠の怪しさも増している。「共謀罪は日本の法体系になじまない」と、かつて日本政府が主張していたことも判明し、これまでの答弁との矛盾も露呈した。一貫性がなさすぎるのではないか。 (吉)

■■引用終了■■

なお、東京は、政治部発で【自民、公明両党の幹事長、政調会長、国対委員長は五日、都内のホテルで会談し、教育基本法改正案など五法案を今国会の重点法案として、優先的に成立を目指す方針を決めた。「共謀罪」新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案は含まれておらず、同改正案の今国会成立は見送られる方向が強まった。】という記事(←クリック)も掲載しているが、死んだ振りかもしれないので、まだまだ安心はできない。






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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その5

2006-10-06 02:49:42 | 共謀罪
前回,国際組織犯罪防止条約における「行為への参加罪」の規定は,国内法で十分カバーできており,共謀罪・参加罪の新設をすることなく,批准することができるのではないかと指摘した。今回は,この点を補足したい。

そもそも,国際組織犯罪防止条約とは何を目的とした条約なのか?名称どおり,組織犯罪,つまり,マフィアあるいは暴力団の犯罪を防止するための条約である。

では,日本に組織犯罪対策法は,あるのか?もちろんある。1991年には,「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(いわゆる暴対法)が成立され,寄付金の要求行為など経済的利得をはかる15類型の行為(←クリック)が禁止されたほか,①暴力団への加入強要、離脱の妨害,②暴力団事務所について,組の看板や提灯を掲げ、付近の住民や通行人に不安を与えることなども禁止された。

そして,もう一つ,重要な法律がある。「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(いわゆる組織犯罪処罰法)(←クリック)である。この法律は,「組織的に行われた殺人等の行為に対する処罰を強化し、犯罪による収益の隠匿及び収受並びにこれを用いた法人等の事業経営の支配を目的とする行為を処罰するとともに、犯罪による収益に係る没収及び追徴の特例並びに疑わしい取引の届出等について定めることを目的」としている。このうち,犯罪収益の収受は,たとえば,暴力団に事務所を貸して家賃をとったり,暴力団に出前をもっていって代金をもらったりすることすら取り締まることができる条項になっている。

   【第十一条  情を知って、犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。】


これは非常に重要だ。この法律によって,暴力団との間で取引をした全ての者が処罰されうる。なぜなら,暴力団が持っているお金には犯罪収益が含まれているから,そのお金を受け取ることが犯罪となるのだ。つまり,暴力団であることを知ったら,パンを売ることすらできなくなりうるわけだ。もちろん,現在はそのような運用はされていないが,当局がその気になれば,そのような運用をすることも可能な法律なのだ。

そして,注目すべきは,この法律が成立した日付だ…平成11年8月18日。この日は,日本が第3のオプションを提案した1999年1月の第1回会合と日本が第3のオプションのうち参加罪オプション(共犯理論で対応できるもの)を撤回した2000年1月の中間なのだ。つまり,日本が参加罪オプションを提案したときは,暴力団のあらゆる活動を防ぐ法律はなかったが,撤回したときには,あった。つまり,日本政府は,行為への参加罪は,暴力団処罰法がつくられたことでクリアできると考えたのではないか?

法務省の定訳によると,参加罪の定義はこうだ。

(ii)組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)

aは,日本でも当然処罰される。
問題はbだが,「その他の活動」には当然,対価が伴うわけだから,「その他の活動」を行った者については,組織犯罪処罰法の犯罪収益収受罪が適用されることになる。

つまり,日本には行為への参加罪がすでに犯罪化されているのだ。


そして,実は,条約そのものに,この考え方を裏付け条項がある…。





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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その4

2006-10-05 20:13:15 | 共謀罪
日本が国際組織犯罪防止条約の協議段階で提案した第3のオプションは,日本でも刑法にある幇助,教唆,共同正犯,さらに,判例上認められている共謀共同正犯であり,新たな国内法を不要とする案であった。この案に英米法あるいは大陸法とは体系を異にするタイ,中国,韓国などの国々は歓迎の声を挙げ,米国と日本などが非公式協議をすることになった。その結果,最終案は日本によって,第7回会合(2000年1月,ウィーン)で,発表された。次のとおり(←クリック)であった。直ぐ分かるようにイギリス案がベースとなっている。

■■引用開始■■
※イギリス案と違うところを【 】で示します。

Article 3
Criminalization of participation in an organized criminal group 

1. Each State Party shall establish as criminal offences【, when committed
intentionally】:
(各国政府は,【故意に行われた】次の行為を犯罪化しなければならない)

(a) Either or both of the following as criminal offences distinct from those involving the attempt or completion of the criminal activity:
(未遂あるいは既遂の犯罪とは独立した犯罪として次のうちの一つ以上)


 (i) Agreeing with one or more other persons to commit a serious crime for any purpose relating directly or indirectly to the obtaining of a financial or other material benefit and, where required by domestic law, involving an act undertaken by one of the participants in furtherance of the agreement or involving an organized criminal group;
(金銭的あるいはそのほかの物質的利益を得るために直接的あるいは間接的に関係のある目的のために,重大犯罪を行うことをほかの人と合意すること。ただし,国内法上必要であれば,合意した者の一人が合意内容を推進するために行為を行うこと【あるいは組織犯罪集団の関与】を要件とする)


 (ii) Conduct by a person who, with knowledge of either the aim and general criminal activity of an organized criminal group or its intention to commit the crimes in question, takes active part in:
(組織的犯罪集団の一般的な犯罪目的を推進するか,組織犯罪集団が特定の犯罪を行う意図を有することを知りながら,【故意に→上記に移動された】参加する次の行為)

   a. Criminal activities of an organized criminal group as defined in article 2 bis of this Convention;
(本条役第2条bisに【定義】された組織的犯罪集団の【犯罪】行為)

   b. Other activities of the group in the knowledge that his or her participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim;
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

(b) Organizing, directing, aiding, abetting, facilitating or counselling the commission of serious crime involving an organized criminal group.
(組織的犯罪集団が関与する重大犯罪の実行を組織し,支持し,幇助し,教唆し,助長し,相談すること)


■■引用終了■■

公電によると,米国は,「この案は関係国の調整の結果であり,法制の異なる国の間の真剣な協議により得られた結論であって,very very usefulなものである。)」などと評価したという。

そして,この案が条約になった。

ここで不思議なのは,なぜ,日本が英国丸飲み案と言ってよいような案を飲んだのか?である。

その答えは,実は,政府は明らかにしていない。米国との非公式協議で何があったのか…。ここをまったく明らかにしようとしない政府の姿勢は許し難い。

しかし,大きなヒントが条約(←クリック)及び立法ガイド(←クリック)にある。

まず,条約の34条に「自国の国内法の基本原則に従って」という文言が入ったことだ。

第三十四条 条約の実施
1 締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。

アメリカは,これをもって国内法の範囲で対応できるとささやいたのかも知れない。少なくとも,日本政府はそう考えたのではないだろうか。

次に,立法ガイドに

60. The second option is more consistent with the civil law legal tradition and countries with laws that do not recognize conspiracy or do not allow the criminalization of a mere agreement to commit an offence. (この二つめのオプション=行為への参加罪,上記の1(a)()=は,大陸法系の国や共謀罪を犯罪化していない国,あるいは,犯罪を犯すことを合意するだけでは犯罪にできない国によりふさわしい)

とあることだ。

共謀を国内法上,犯罪化できない国は,行為への参加罪を選択するようにとの指示だ。共謀を国内法上,犯罪化できない国とは,まさに,日本のような国である。したがって,そういう国でも行為への参加罪を選択することができるようにしてあるということだ。

上の二つを合わせて読むと,「行為への参加罪を柔軟に解釈することで,対処できるため新法は必ずし必要ではない」ということになるはずだ。

このような解釈がなされることとなったために,日本がイギリス案を飲むことになった…こう考えるのが合理的だ。

そうでないと,日本を支持したタイ,中国,韓国も納得しなかったはずだ…。




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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その3

2006-10-04 19:28:55 | 共謀罪
日本が国際組織犯罪防止条約の協議段階で提案した第3のオプション,それは,日本でも刑法にある幇助,教唆,共同正犯,さらに,判例上認められている共謀共同正犯だった。条文は,次のとおり。

(iii) Participation in acts of an organized criminal group that has the aim of committing a serious crime, in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the crime.
(重大犯罪を実行することを目的とする組織犯罪集団の行為に,自らの参加がその重大犯罪を実現することに貢献することを知りながら,参加すること)

これに対し,イギリスの条文は,

b. Other activities of the group in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim.
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

である。

違いは,最後が the crime か the above-described criminal aim かだ。

the crimeの場合,組織犯罪集団がまさに行おうとしている犯罪を成し遂げることに貢献することを知りつつ,その集団の行為に参加するのだから,まさに幇助,あるいは共同正犯,共謀共同正犯に該当する。たとえば,抗争相手を殺すという計画を立てているときに,それを知りながら,その殺人計画で使われる包丁を購入するような場合,これに該当する。

これに対し,イギリス案は,組織犯罪集団がいろいろな犯罪をしていることを知りながら,そういう犯罪を助長する行為全てがあたる。特定の犯罪を助長する必要はないのだ。たとえば,ある組織が表面上,合法な団体を装っているが実際には暴力団である場合,その暴力団に事務所を貸すような行為がこれにあたると思われる。日本では,その事務所を利用してある犯罪が現に行われることを認識しているような場合でなければ,犯罪にはならない。イギリス案は,暴力団の役に立つような行為を全て犯罪にしてしまうのだ。

結局,日本の第3のオプションは,日本の現在の刑法体系で十分に対応できる内容のものであったのだ。

この提案は,【日本の国内法の原則では,犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり,共謀や参加については,特に重大な犯罪に限定して処罰される。したがって,すべての重大な犯罪について,共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない。しかも,日本の法律は,具体的犯罪を実行しないである犯罪組織に参加すること自体を犯罪化する規定を有していない。それゆえ,参加行為の犯罪化を実現するためには,国内法システムの基本原則の範囲内で実現化するほかない】(前回紹介した提案理由5項)という考え方に基づいてなされたものだ。

この日本の第3のオプションは,英米法,大陸法以外の国々に歓迎された。このときのやりとりを記した公電文には,タイが日本の提案を支持したことが次のように記載されている。

「日本の提案を支持する。
タイの国内法では,特定の犯罪との関わりがない限り,参加罪のような形態の行為を処罰することはできず,現在のオプション1,2では,条約上の義務を果たすことができない。オプション2は,organized criminal group の重大犯罪への関与に焦点を絞っているので,オプション1よりは良いが,日本の提案の方がさらに良い。」

さらに韓国も「日本の提案を支持する」と賛成し,「オプション1と2では,オプション2の方が好ましいが,韓国では,conspiracyは一部の重大判事にしか規定がなく,criminal associationは,暴力犯罪など特定の犯罪に限って規定がある。したがって,現在のオプション2のように,重大犯罪一般に,conspiracyやcriminal association」を導入することは,我が国の基本的な法制に一致せず,受け入れ難である。その点で,日本の(Ⅲ)の提案は,conspiracyやcriminal associationの概念を合わせた規定であり,韓国としてはもっとも受け入れやすいので,日本の提案を強く支持する」と賛意を表した。

また,中国も「日本と韓国が述べたことはよく検討すべき問題であり,良い指摘であると考える」と日本案を高く評価してした。

他方,米国は,「このような規定は,加(カナダ)が述べたように,処罰化の義務をループホールにしてしまうおそれがある。ただし,参加罪の処罰化については,各国に何らかのflexibilityを持たせる必要があると考えており,この点については,十分に検討したいし,提案をした日本や,それを支持した韓国等との間で十分に話し合い,妥協案を探る必要があると考えている」と表明した。

日本は,米国を相手にした堂々と論陣を張り,他国の賛同を背景にして日本が受け入れられる条約にすることに成功しつつあるように思われた…。





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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~番外編

2006-10-03 22:24:28 | 共謀罪
朝日・東京のアベックスクープは,報道の力を改めて認識させる。各紙がこのスクープをフォローし,廃案方向に向けた流れができつつある。

日経(←クリック)は,【民主党は通常国会からの継続審議となっている組織犯罪処罰法改正案をめぐり、犯罪を謀議しただけで処罰できる「共謀罪」の項目を削除するよう求める方針を固めた。民主党や日本弁護士連合会の調査で、政府が1999年に国連で「共謀罪は日本の法体系になじまない」と主張していたことが判明したためだ。】と民主党の方針をフォローしている。

読売(←クリック)も以下のとおり,書いている。

■■引用開始■■

民主党の高木義明国対委員長は2日の記者会見で、安倍首相が臨時国会の重要法案と位置づける「共謀罪」創設を柱とする組織犯罪処罰法改正案について、「これまでも政府案に反対してきたが、これからも、この問題について反対していく。拙速な与党の国会運営については厳しくチェックしていく」と述べ、全面対決していく方針を示した。

 同改正案について、政府は「テロ犯罪防止のための国際組織犯罪防止条約の批准には、共謀罪の創設が不可欠」と主張している。

 一方、日本弁護士連合会が9月末にまとめた報告書は、同条約に対象犯罪がまだ限定されていなかった1999年3月に、日本政府が国連の起草委員会で「すべての重大犯罪について、共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない」との見解を示していたと指摘。

 高木氏はこの点に触れ、「政府が国連で、日本の法体系になじまないという主張を展開し、国内の国会では(共謀罪創設を目指すという)裏腹なことをやっており、まさに二枚舌ということが浮き彫りになった」と批判した。

■■引用終了■■

今後,メディアが,政府の二枚舌を追求するスクープ合戦を繰り広げることを期待したい。





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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その2

2006-10-03 18:27:15 | 共謀罪
英国がなぜ,参加罪を変容して,行為への参加罪を提案したのか,それは,一つには,英米法系の共謀罪,大陸法系の参加罪いずれをも受け入れられない国があるために何らかの打開策をとらなければ国際組織犯罪防止条約を成立されることができないと踏んだことであり,もう一つには共謀罪の要件を緩和することは自らの国内法についても緩和するようにとの声が出てくることを防ぐためであったと思われる。条約検討過程で,共謀罪,参加罪の要件に関して本格的に検討される前に,先手を打って,参加罪の要件を緩和することで乗り切ろうとしたのであろう。

この英国案が提案されたと同じ日,日本が独自の案を提案している。それがいわゆる第3のオプションだ。

(iii) Participation in acts of an organized criminal group that has the aim of committing a serious crime, in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the crime.
(重大犯罪を実行することを目的とする組織犯罪集団の行為に,自らの参加がその重大犯罪を実現することに貢献することを知りながら,参加すること)

英文なので少しややこしいが,イギリスが提案した行為への参加罪とを比較すると,違いが分かってくる。


イギリスが提案した行為への参加罪の条文は,

b. Other activities of the group in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim.
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

である。

ポイントは,

contribute to the achievement of the crime
(その重大犯罪を実現することに貢献すること)



contribute to the achievement of the above-described criminal aim
(上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献すること)

である。


答えを急ぐ前に,日本の提案全文(一部略)と提案理由を見ておく。

■■日本の提案(←クリック)■■

Article 3(3条)
Participation in a criminal organization
(犯罪組織への参加)

1. Each State Party shall establish as criminal offences the following conduct:
(各国政府は,次の行為を犯罪化しなければならない)

(a) Organizing, directing, aiding, abetting, facilitating or counselling the commission of serious crime involving an organized criminal group;
(組織的犯罪集団が関与する重大犯罪の実行を組織し,支持し,幇助し,教唆し,助長し,相談すること)

and,subject to the fundamental principles of its domestic legal system,
(国内法の基本原則に従いながら)※ここは新設

(b) At least one of the following as criminal offences distinct from those involving the attempt or completion of the criminal activity:
(未遂あるいは既遂の犯罪とは独立した犯罪として次のうちの一つ以上)

(i) Agreeing with one or more other persons to commit a serious crime involving an organized criminal group for any purpose relating directly or indirectly to the obtaining of a financial or other material benefit and, where required by domestic law, involving an act undertaken by one of the participants in furtherance of the agreement;
(金銭的あるいはそのほかの物質的利益を得るために直接的あるいは間接的に関係のある目的のために,組織犯罪集団の関与する重大犯罪を行うことをほかの人と合意すること。ただし,国内法上必要であれば,合意した者の一人が合意内容を推進するために行為を行うことを要件とする)

(ii) Conduct by a person who intentionally, and with knowledge of either the aim and general criminal activity of an organized criminal group or its intention to commit the crimes in question, takes active part in:
(組織的犯罪集団の一般的な犯罪目的を推進するか,組織犯罪集団が特定の犯罪を行う意図を有することを知りながら,故意に参加する次の行為)

a. Activities of an organized criminal group referred to in article 2 bis of this Convention;
(本条役第2条bisに記載された組織的犯罪集団の行為)

b. Other activities of the group in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim;
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

(iii) Participation in acts of an organized criminal group that has the aim of committinga serious crime, in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the crime.
(重大犯罪を実行することを目的とする組織犯罪集団の行為に,自らの参加がその重大犯罪を実現することに貢献することを知りながら,参加すること)※これも当然,新設


■■日本の提案理由(←クリック,7頁以下)■■

Proposals on article 3 (option 2) of the main Convention as presented in document A/AC.254/L.1/Add.2(主たる条約に関する提案)

1. Japan would like to present proposals on article 3, which is one of the most important and challenging articles in the draft Convention: important because this article, by imposing legal obligations on the contracting Parties to criminalize participation in a criminal organization, will provide effective measures in combating organized crime; and challenging because the introduction of the offence of participation is closely related to the basic principles of the domestic legal system of each State. (日本は,最も重要で困難な条約3条について,提案する。(中略)困難というのは,共謀罪・参加罪の導入が各国の国内法システムの基本的原理と関係するからである)

2. The difficulty in introducing an obligation to criminalize the act of participation can be seen in the two options to article 3 themselves. Both provide two options in criminalizing the conduct, one based on the notion of conspiracy in the common law system and the other based on the notion of participation found in the civil law system. (3条が共謀罪と参加罪の二つのオプションを設けていること自体,困難性を示している。二つのオプションによって,英米法系のシステムにおける共謀罪という概念に基づいた犯罪類型と大陸法系のシステムにおける参加罪という概念に基づいた犯罪類型から選択できる)

3. However, in order to make this Convention as global as possible, the obligation stipulated in this article should also be acceptable to other legal systems in the world. In addition, this article should have some nexus to the notion of "organized crime" or "organized criminal group" to be defined in article 2 and article 2 bis. (しかし,この条約を世界各国が締結できるようにするためには,(英米法系,大陸法系以外の)ほかのシステムを持っている国でも受け入れられるようにしなければならない。また,この条項は,2条などに定めた「組織犯罪」や「組織犯罪集団」という概念とも関連している)

4. This proposal is made in the light of the above consideration and based on option 2 of article 3, which was proposed by the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland. Japan believes that the revisions of option 2 presented below are essential and minimum requirements for the obligation in this article to be acceptable to other legal systems in the world.(この提案は,イギリスと北アイルランドが提案した3条のオプション2に関する上記のような観点に基づくものである)

5. Subparagraph 1 (b) of article 3 introduces a legal obligation to criminalize the act of "participation". As stated above, the criminalization of "participation" is closely related to the basic principles of the domestic legal system of each State. For example, under the basic principles of Japanese criminal law, certain acts are punishable only when the crime in question is actually committed or attempted, and conspiracy or preparatory acts are punishable only in certain grave crimes. Thus, it is inconsistent with our legal principle to criminalize the acts of conspiracy and preparation of all serious crimes. Furthermore, our legal system does not have any provision which criminalizes acts of participation in certain criminal groups without any relevance to the commission of a concrete crime. Therefore, the obligation to criminalize the acts of "participation" should be realized within the framework of the fundamental principles of the domestic legal system. (3条1項(b)は,参加罪という概念を導入するものである。上述したとおり,参加罪という概念は,各国の国内法の基本原則と密接に関連する。例えば,日本の国内法の原則では,犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり,共謀や参加については,特に重大な犯罪に限定して処罰される。したがって,すべての重大な犯罪について,共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない。しかも,日本の法律は,具体的犯罪を実行しないである犯罪組織に参加すること自体を犯罪化する規定を有していない。それゆえ,参加行為の犯罪化を実現するためには,国内法システムの基本原則の範囲内で実現化するほかない)

6. Thus we propose to insert the phrase "Subject to the fundamental principles of its domestic legal system" between subparagraphs 1 (a) and (b) of article 3. (そこで,日本は,3条の1項(a)と(b)の間に,「国内法の基本原則に従って」というフレーズを加えることを提案する)

7. Subparagraph 1 (b) (i) of article 3 refers to the criminalization of "conspiracy" to commit a "serious crime", which is defined in subparagraph (b) of article 2 bis as conduct constituting a criminal offence punishable by a maximum deprivation of liberty of at least [...] years. Since the scope of this Convention should include some element related to "organized criminal activity", there should be some limitation to this provision in order to make it relevant to such an element. For the time being, such an element could be found in paragraph 1 of article 2 of the draft Convention, i.e. "serious crime involving an organized criminal group as defined in article 2 bis" as well as in subparagraph 1 (a) of article 3.(3条の1項(b)()は,「重大犯罪」を犯すことを「共謀する」ことを犯罪化するものである。ここでいう重大犯罪とは,2条の2の(b)で「長期●年以上の懲役に処せられる犯罪を構成する行為」と定義されている。この条約の範囲が組織犯罪行為に関連する要素を含まなければならない以上,そのような要素に関連させるためにこの規定は,限定されなければならない。そして,このような要素は,条約案2条1項及び3条の1項(a)に2条の2に定義された組織犯罪集団の関与する重大事件という部分に見られる)

8. Thus, we proposed to insert the phrase "involving an organized criminal group" after the phrase "a serious crime" in the first line of the English text in subparagraph 1 (b) (i) of article 3, with the possibility of changing the phrase in accordance with the future development in the drafting of paragraph 1 of article 2. (そこで,日本は,3条1 項(b) (i)の次に「組織犯罪集団の関与する」というフレーズをいれることを提案する。ただし,もし,2条1項の文言が変わればそれに従うものとする。)

9. Our basic position is that the notion "involving an organized criminal group" should mean activities conducted as part of the activities of a group having as its aim the commission of a serious offence and utilizing the structure of such a group. (日本の基本的立場は,「組織犯罪集団の関与する」という概念は,重大犯罪を実行することを目的とする集団の行為の一部として行われることあるいはそのような集団の組織を拡大する行為の一部として行われることを意味する,というものである)

10. Subparagraphs 1 (b) (i) and (ii) are drafted so as to introduce offences within the framework of either the common law system or the civil law system. In order to make this Convention globally acceptable, we believe that a third option, to criminalize the acts of "participation", should be introduced, taking into account the fact that the legal systems in the world are not limited to these two systems. (3条1項(b)の()と()は,英米法系あるいは大陸法系のシステムのいずれかに合致するものとして導入されるように考案されている。条約をさらに多くの国が受け入れられるようにするためには,世界各国のの法大系が英米法,大陸法という2つのシステムに限定されていないことから,第3のオプション,すなわち「参加して行為する」ことを犯罪化するオプションを考慮に入れなければならない)


11. Thus, we propose, as a basis for discussion, to add the following new subparagraph to subparagraph 1 (b) of article 3: (そこで日本は,3条1項(b)に次のような新しい条項を設け,新たなオプションとするべきだと提案する)
"(iii) Participation in acts of an organized criminal group which has the aim of committing a serious crime, in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the crime." (()その行為に参加することが犯罪を既遂とすることに貢献することを認識しつつ,重大犯罪を実行することを目的とする組織犯罪集団の行為に参加すること)

12. Accordingly, we proposed to change the first three words in the chapeau of subparagraph 1 (b) from "Either or both" to "At least one". (この変更に伴い,3条1項(b)の柱書の文言を「一つあるいは両方」から「少なくとも一つ」に変えるよう提案する)



朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その1

2006-10-03 03:01:15 | 共謀罪
共謀罪新設の根拠とされている国際組織犯罪防止条約の制定過程で,共謀罪(犯罪をしようと話し合っただけで犯罪となる)や参加罪(組織犯罪集団に参加することを犯罪とする)について,各国はいかなる検討をしたのか,最終決戦を前に,じっくりと検討したい。

まず,1999年1月,ウィーンで行われた第1回会合では,次のような案(←クリック)が提案された。

■■引用開始■■

Article 3(3条)
Participation in a criminal organization(犯罪組織への参加)

1. Each State Party shall undertake, in accordance with the fundamental principles of its domestic legal
system, to make punishable one or both of the following types of conduct:
(各国政府は,それぞれの国内法の法原理に従い,次の2つの行為の少なくとも片方を犯罪として罰するようにしなければならない)

(a) Conduct by any person consisting of an agreement with one or more persons that an activity should be
pursued, which, if carried out, would amount to the commission of crimes or offences that are punishable by
imprisonment or other deprivation of liberty of at least [ ] years; or
(●年以上の禁錮若しくは懲役に課せられる犯罪の実行を一人以上の者と合意する行為)

(b) Conduct by any person who participates in a criminal organization, where such participation is intentional
and is either with the aim of furthering the general criminal activity or criminal purpose of the group or made in the
knowledge of the intention of the group to commit offences.
(犯罪組織の一般的な犯罪活動もしくは犯罪組織の犯罪目的を助長することを目的として,あるいは,犯罪組織が犯罪を実行しよういう意図があることを知りながら,故意に犯罪組織に参加した者の行為)


■■引用終了■■


(a)が共謀罪(もともと,英米法系国で設けられている),(b)が参加罪(もともと,大陸法系国で設けられている)である。

ここでいう参加罪は,本来の参加罪とは少し異なるようにも思える。

たとえば,イタリアでは,

Any person participating in a Mafia-type association, which includes three or more persons, shall be punished by a term of imprisonment of three to six years.
(3人以上から成るマフィアタイプの組織に加入した者は3年から5年の懲役に処す)

という条文があり,参加行為自体を犯罪としている。

しかし,上記(b)も参加した者の行為全てを処罰できるのであるから,結局は,参加すること自体が犯罪となるに等しい。

この第1回会合での提案は日本にとっては,まったく受け入れがたいものであった。


第2回会合(1999年3月ウィーン)では,英国からオプション2(←クリック)が提案された。

■■引用開始■■
1. Each State Party shall establish as criminal offences the following conduct:
(各国政府は,次の行為を犯罪化しなければならない)

(a) Organizing, directing, aiding, abetting, facilitating or counselling the commission of serious crime involving an organized criminal group; and
(組織的犯罪集団が関与する重大犯罪の実行を組織し,支持し,幇助し,教唆し,助長し,相談すること)

(b) Either or both of the following as criminal offences distinct from those involving the attempt or completion of the criminal activity:
(未遂あるいは既遂の犯罪とは独立した犯罪として次のうちの一つ以上)

(i) Agreeing with one or more other persons to commit a serious crime for any purpose relating directly or indirectly to the obtaining of a financial or other material benefit and, where required by domestic law, involving an act undertaken by one of the participants in furtherance of the agreement;
(金銭的あるいはそのほかの物質的利益を得るために直接的あるいは間接的に関係のある目的のために,重大犯罪を行うことをほかの人と合意すること。ただし,国内法上必要であれば,合意した者の一人が合意内容を推進するために行為を行うことを要件とする)

(ii) Conduct by a person who intentionally, and with knowledge of either the aim and general criminal activity of an organized criminal group or its intention to commit the crimes in question, takes active part in:
(組織的犯罪集団の一般的な犯罪目的を推進するか,組織犯罪集団が特定の犯罪を行う意図を有することを知りながら,故意に参加する次の行為)

a. Activities of an organized criminal group referred to in article 2 bis of this Convention;
(本条役第2条bisに記載された組織的犯罪集団の行為)

b. Other activities of the group in the knowledge that the person’s participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim.
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

■■引用終了■■

この英国案によって,純粋な参加罪が,行為に参加する罪,いわば行為への参加罪のようなものに変容された。このことは明白だ。

英国はなぜ,このような提案をしたのか…。しかも,なぜ,共謀罪を設けている英米法系である英国が,参加罪(大陸法系)の緩和策を提案したのか?

英国は,その意図を「Other activities」を入れるためだと公式的には説明している。しかし,やはり,共謀罪や純粋な参加罪は,受け入れられない国があることを配慮し,「行為への参加罪」を提案したものと思われる。





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