情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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朝日・東京新聞の共謀罪スクープに関する解説~その4

2006-10-05 20:13:15 | 共謀罪
日本が国際組織犯罪防止条約の協議段階で提案した第3のオプションは,日本でも刑法にある幇助,教唆,共同正犯,さらに,判例上認められている共謀共同正犯であり,新たな国内法を不要とする案であった。この案に英米法あるいは大陸法とは体系を異にするタイ,中国,韓国などの国々は歓迎の声を挙げ,米国と日本などが非公式協議をすることになった。その結果,最終案は日本によって,第7回会合(2000年1月,ウィーン)で,発表された。次のとおり(←クリック)であった。直ぐ分かるようにイギリス案がベースとなっている。

■■引用開始■■
※イギリス案と違うところを【 】で示します。

Article 3
Criminalization of participation in an organized criminal group 

1. Each State Party shall establish as criminal offences【, when committed
intentionally】:
(各国政府は,【故意に行われた】次の行為を犯罪化しなければならない)

(a) Either or both of the following as criminal offences distinct from those involving the attempt or completion of the criminal activity:
(未遂あるいは既遂の犯罪とは独立した犯罪として次のうちの一つ以上)


 (i) Agreeing with one or more other persons to commit a serious crime for any purpose relating directly or indirectly to the obtaining of a financial or other material benefit and, where required by domestic law, involving an act undertaken by one of the participants in furtherance of the agreement or involving an organized criminal group;
(金銭的あるいはそのほかの物質的利益を得るために直接的あるいは間接的に関係のある目的のために,重大犯罪を行うことをほかの人と合意すること。ただし,国内法上必要であれば,合意した者の一人が合意内容を推進するために行為を行うこと【あるいは組織犯罪集団の関与】を要件とする)


 (ii) Conduct by a person who, with knowledge of either the aim and general criminal activity of an organized criminal group or its intention to commit the crimes in question, takes active part in:
(組織的犯罪集団の一般的な犯罪目的を推進するか,組織犯罪集団が特定の犯罪を行う意図を有することを知りながら,【故意に→上記に移動された】参加する次の行為)

   a. Criminal activities of an organized criminal group as defined in article 2 bis of this Convention;
(本条役第2条bisに【定義】された組織的犯罪集団の【犯罪】行為)

   b. Other activities of the group in the knowledge that his or her participation will contribute to the achievement of the above-described criminal aim;
(自らの参加が上述した一般的な犯罪目的を成し遂げることに貢献することを知りつつ行う組織的犯罪集団のそのほかの活動)

(b) Organizing, directing, aiding, abetting, facilitating or counselling the commission of serious crime involving an organized criminal group.
(組織的犯罪集団が関与する重大犯罪の実行を組織し,支持し,幇助し,教唆し,助長し,相談すること)


■■引用終了■■

公電によると,米国は,「この案は関係国の調整の結果であり,法制の異なる国の間の真剣な協議により得られた結論であって,very very usefulなものである。)」などと評価したという。

そして,この案が条約になった。

ここで不思議なのは,なぜ,日本が英国丸飲み案と言ってよいような案を飲んだのか?である。

その答えは,実は,政府は明らかにしていない。米国との非公式協議で何があったのか…。ここをまったく明らかにしようとしない政府の姿勢は許し難い。

しかし,大きなヒントが条約(←クリック)及び立法ガイド(←クリック)にある。

まず,条約の34条に「自国の国内法の基本原則に従って」という文言が入ったことだ。

第三十四条 条約の実施
1 締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。

アメリカは,これをもって国内法の範囲で対応できるとささやいたのかも知れない。少なくとも,日本政府はそう考えたのではないだろうか。

次に,立法ガイドに

60. The second option is more consistent with the civil law legal tradition and countries with laws that do not recognize conspiracy or do not allow the criminalization of a mere agreement to commit an offence. (この二つめのオプション=行為への参加罪,上記の1(a)()=は,大陸法系の国や共謀罪を犯罪化していない国,あるいは,犯罪を犯すことを合意するだけでは犯罪にできない国によりふさわしい)

とあることだ。

共謀を国内法上,犯罪化できない国は,行為への参加罪を選択するようにとの指示だ。共謀を国内法上,犯罪化できない国とは,まさに,日本のような国である。したがって,そういう国でも行為への参加罪を選択することができるようにしてあるということだ。

上の二つを合わせて読むと,「行為への参加罪を柔軟に解釈することで,対処できるため新法は必ずし必要ではない」ということになるはずだ。

このような解釈がなされることとなったために,日本がイギリス案を飲むことになった…こう考えるのが合理的だ。

そうでないと,日本を支持したタイ,中国,韓国も納得しなかったはずだ…。




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