tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

鉄道沿線歩き~西武多摩湖線・山口線・狭山線

2013-03-17 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
10:57 国分寺駅北口。再開発途上といった感じで、駅前の道路は歪な形をしている。通路の真ん中に人だかりができているのは、イチゴを売るリヤカー。ずっと前にこういう「駅前のリヤカー」でみかんを買ったことがあった。見た目のわりに安いなと思って、「これ下さい」と指差したら、売り子はリヤカーの下から、僕が指差したのとは似ても似つかぬ貧相な袋詰めを出して、はいコレ、と渡してきた。僕が指差したのはもっと高い値段のものだという。つまり、リヤカーの上に出してあるのは「おとり」に過ぎなかったというわけだ。あちこちの駅前で見かけるリヤカーのフルーツ販売、見た目通り胡散臭いのでご注意を。

国分寺からは西武線が2本出ている。多摩湖線と国分寺線。同じ会社にもかかわらず、両線のホームは別の場所にある。今見えているこちらは…どっちかわからないが、とりあえずこの線路沿いに歩き出すことにする。全体真っ白の電車が駅に入っていく。西武線といえば黄色い車体だが、なぜよりによって白色で塗りたくったのか。塗装途中の下地の色のような、ヘビとかでよくいる突然変異の変種のような、壊れたカラーテレビ画像のような、あるいは、僕のデジカメは白飛びしがちだが、そういう失敗作のような…とにかくあんまりいいセンスとは思えない。

白い電車を2本見た後、黄色い電車も来た。「色のある世界」にほっとする。歩道橋の上から。

玉川上水を渡る。太宰治も入水自殺した水路だが、見れば、「この水量でどうやって死ぬの?」という小さな流れ。実は、今の玉川上水は実態のある水路として機能しているわけではなく、流れを途絶えさせないように便宜的に下水処理水を流している、いわば「ダミー」に過ぎないのだと。

11:41 一橋学園駅。切符売場の路線図を見て、今歩いているのが「多摩湖線」沿線であることを初めて確認する。道は線路沿いに続いているので線路を見失うことはないけれど、2車線の道路で車通りが鬱陶しくはある。

昇ったり下りたりの橋上駅ではなく、アクセスしやすい地平駅であるのが嬉しい。上下線が行き違う。電車のドアは運転士が開け閉めしており、へえ、ワンマン運転なんだ、と思ったら、つい昨日(3月16日)のダイヤ改正からそうなったのだという。…しかし、「白装束」電車はやっぱり不気味だな。

線路の柵は電車のレールを転用している。断面も、鉄らしいサビも、味がある。

12:02 青梅街道駅。瓦屋根の駅舎って変わっている。

12:26 萩山駅。瓦屋根も住宅建築めいていたが、このレンガ積み装飾も最近の建売住宅っぽい。どちらの駅も、その外装に何かいわれはあるのか。ただの思いつきなのか。お昼をまわったので、美味そうな店でもあれば食事をしたいと思うが、見当たらない。

萩山では多摩湖線と拝島線がクロスする。

12:46 土手の上を走る電車が八坂駅に着く。萩山から先は「多摩湖自転車道」が線路沿いに続いている。国分寺からずっと、線路沿いに道が途切れない。線路をたどって歩こうとする僕のような者には実に都合がいい。自転車道なら車も来ないので、のんびり歩ける。八坂駅の先、自転車道と線路の間は「国有地」の看板が立ち、柵で仕切られているが、おそらくは近隣住民の不法占拠なのだろう、思い思いに畑にされている。物置小屋すら建っている。相当な筋金入りだ。

13:27 武蔵大和駅は土手の上にホームがある。苦心してエレベーターがつけられている。その無骨な塔屋はともかく、自然な地形に逆らわない、「土手の上の小さな駅」は、模型で作ってみたくなるような風情がある。

駅の裏手に公園が。おもわず登りたくなる丘の道。

公園の脇の切り通しを線路は通じる。西武園ゆうえんちの観覧車が見える。

この公園は「狭山公園」。狭山市は埼玉県だがここは東京都。最寄駅は「武蔵大和」で、「武蔵大和市」ってありそうだけど、市の名前は東大和。東大和は神奈川県の大和市より「東」にはない(むしろ「真北」)。東大和の隣には東村山市(ついでに武蔵村山市もあるが東村山とは接していない)、東久留米市があり、これら3つの「東」市のさらに「東」に“西”東京市がある。
多摩湖の堤防が迫る。ちなみに多摩湖の別名は「村山貯水池」だが、湖があるのは東村山でも武蔵村山でもなく東大和で…もう、いいか。

堤防を上がる。遠方に見える市街地は東村山。午後を回ってから風が強くなり、堤防の上はそれをもろに受ける。

湖側の眺め。

14:06 堤防を下り、さらに谷底へ下ったところに西武遊園地駅がある。

遊園地の外側沿いを歩く。白い鉄塔は回転式の展望アトラクションだが、塔を伝うワイヤーが強風に煽られて塔に当たり、カンカーンと音を立てている。

西武遊園地駅と西武球場前駅を結ぶ山口線。

「多摩湖自転車道」を引き続き歩く。多摩湖は東京の通勤圏にあり、風光明媚な「湖畔のニュータウン」でもあれば人気を博しそうなものだが、「水道の貯水池」という性質上、湖の周囲は金網で厳重に囲まれており、木々が鬱蒼と生い茂っていることもあって、あまり湖水の雰囲気は感じられない。左手が湖の金網なら、右手は、遊園地からゴルフ場、球場と続く西武グループの敷地の金網。金網にずっと挟まれて、この遊歩道にはどこか閉塞感が拭えない。西武ドームが見えてくる。山あいに不時着したUFOのようでもある。

さらに球場に近づくと、試合をしているようで、太鼓と楽器の音が聞こえてくる。このドームは側面が開いているんだね。ただ、観客はまったく見えないので、聞こえてくる音もどこか効果音のような嘘っぽさがある。テレビドラマで、ラーメン屋の天井のテレビから殊更に漏れ聞こえてくる野球中継のような。

ドームが見えたら西武球場前駅に着けるかと思いきや、駐車場以外に歩行者の入れるような入口も見つからず、湖畔の自転車道を歩き続けている。公園ではない有料の施設だから、利用者以外がふらっと入れるような構えにはなっていないのだ。

14:57 なぜか観音様に迷い込む。山口観音。

本堂の周りには梵語の経文が刻印された108個の「ベル」があり、カラカラと回しながら歩くと、お経を読んだのと同じことになり、功徳があるという。あ…回すのに夢中で、具体的な願い事をするのを忘れた。まあ、「無心」でよい、ということで。

五重塔と、そこへ続く竜の階段。どことなくキッチュ。

15:15 ぐるっと遠回りして、ようやく西武球場へ。左が駅舎。

なんと6本も乗り場がある。右端の1本以外、4本の電車が待機している。試合が終わるとどっと人が流れ込んで、次々と臨時電車が出て行くのだろうか。16:30過ぎには池袋行きの臨時特急も出ると看板にある。右手には西武遊園地からの山口線のホームもある。野球には興味がないのでドームにも売店にも足は向かわなかったが、この駅の佇まいは面白いなと思って見ている。

いっそこの駅から電車に乗って、今日歩いてきたルートを山口線、多摩湖線と逆にたどり、国分寺まで戻ろうか…とも思ったが、なんとなく所沢の町を見てみたくて、もう少し歩く。駅を横から眺める。

線路際に信号機が置かれている。子どもの頃、地元の私鉄の「資材置場」に勝手に入り込み、おそらくは鉄橋の部材だろう、乗っかって遊んでいて、顎から落ちて、7針縫う怪我をしたことがある。その跡はいまだにうっすらと残っている。

車道が嫌で脇道に入り込んだら、線路も見失った。昔ながらの農家と建売住宅が混在する心細げな住宅街を歩く。ドームの応援の太鼓の音がここまで届く。

交差点に「山口城址」が。古跡めいた土の盛り上がりはあるものの、洗車場の看板やら政治家の看板やらが、歴史なんか糞喰らえとばかり、挑発的に立てられている。振り返るとマクドナルドがあり、そういえば財布にベーコンレタスバーガーセット390円のクーポンがあったと、ふらふらと入り込む。今日初めての食事、初めての休憩。

マクドナルドを出れば、スーパーやドラッグストアなどが並ぶ面白みのない幹線道路沿いを歩く。しかし時折、立派な構えの寺が現れる。この近辺には「狭山三十三観音」というのもあるらしい。勝光寺。今から300年以上前に建てられたという山門。よくぞ残っていてくれました。「楼上より望む狭山丘陵の風光は心を洗う眺めである」と、解説の看板に。

16:43 「げざんぐち」にあらず、「しもやまぐち」駅。

充分な歩道もない幹線道路を歩き続ける。長い渋滞が続いている。原因はこの踏切だろう。17:12 西武球場前からの狭山線と池袋線が合流する西所沢駅。電車の本数がかなり多く、踏切はほとんど鳴りっ放し。

通り過ぎる電車のスピードは速く、今日歩いてきたような「支線」ではなく、「本線」であることを感じさせる。東横線(みなとみらい線)の電車が来たのは驚いた。そう言えばここまで乗り入れているんだな。

多分あのマンション群が所沢中心部なんだと思う。所沢まで大きく迂回する線路を離れて、あちらを目指す。

商店街に入り、駅が近くなってきたことをうかがわせる。ゴールが近づいた余裕なのか、あるいは逆に、疲労で参っているのか、ドラッグストアに入って男性用スキンケアの商品など見たりしている。

17:58 所沢駅着。拠点駅としては意外な佇まいの小さな駅だった印象があるが、新しくなったんだね。今日歩いたのはおよそ21km。

コンコースは広く、改札内外に「駅ナカ」の店もある。

ホームではしばらく行き交う電車を眺めていた。新宿方面と池袋方面、どちらも同じ東京方面なのに、ホームでは逆方向に発着するのが面白い(地図で見れば両線は所沢駅でX型に交わる)。到着直前にホームで発作的に特急券を買って乗ってしまった。18:12発の特急小江戸号。特急料金は350円。コーヒー1杯分の値段の贅沢。

乗ってみれば、「ウー」という昔ながらのモーター音が微笑ましかった。そのモーター音も、所沢を出た直後こそ激しかったが、あとはさほど高まらないまま。各駅停車は何本も抜かしたが、前を走る急行は抜かさない程度のスピード。それでも、1両に数人しか乗っていない車内、うとうと、のんびり寛げた。 18:44 西武新宿着。


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