tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

今月読んだ本と観た映画(2017年9月)

2017-09-30 23:00:00 | 今日の出来事
<今月読んだ本> 4冊

6(水)■村上春樹 『騎士団長殺し:第1部 顕れるイデア編』

13(水)■平野啓一郎 『マチネの終わりに』

15(金)■羽田圭介 『成功者K』

19(火)■夏目漱石 江戸川乱歩 星新一 村上春樹 藤子不二雄Ⓐ 野坂昭如など全90人 『〆切本』


<今月観た映画> 4本

9(土)●パム・グリア サミュエル・L・ジャクソン 『ジャッキー・ブラウン』

10(日)●ベン・アフレック サミュエル・L・ジャクソン 『チェンジング・レーン』

16(土)●ジェット・リー ジェイソン・ステイサム 『ローグ アサシン』

18(月)●ジュディ・デンチ ビル・ナイ 『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』


妙高・戸隠の山 5日目 (高妻山)

2017-09-29 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
5:52 朝風呂に入った頃はまだ真っ暗だったが、支度をして宿の外に出ると、妙高山が朝の柔らかい光に照らし出されていた。

宿から17kmほど移動し、登山口の戸隠キャンプ場へ。
6:44 ひと気のない戸隠牧場の中を進む。

牧場の敷地を出て、沢を登っていく。なかなか傾斜があり、大雨の時は流出物が多いのだろう、道は荒れ気味。

7:35 滑滝。流れの右脇を登っていく。

順調に高度を上げている。振り返ると、輝く雲海が山の端を埋め尽くしていた。

7:53 氷清水。「氷」というほどには冷たくはなかった。しかし、急傾斜を登ってきた先、真夏にはきっとありがたい存在の水場になるだろう。

8:08 尾根上に出る。一不動避難小屋。

一不動。高妻山の登山道には「十三仏」の石仏が順に祀られている。「十三仏」とは?人の死後の初七日から三十三回忌までの忌日を司る13の仏のことで、不動明王、釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩、薬師如来、観世音菩薩、勢至菩薩、阿弥陀如来、阿閦如来、大日如来、虚空蔵菩薩。高妻山頂は10番目の阿弥陀で、以降は山脈を辿って13番目・虚空蔵の乙妻山まで続く。

尾根上を行く。右手、南東側には飯綱山と、その麓に出発地点の戸隠牧場が。

左手、北西方向には、目指す高妻山が見えてきた。

後手、南南東方向に見えるギザギザの山容は八ヶ岳か。その左端には…

富士山が頂を覗かせている。

9:10 五地蔵。紅葉が綺麗だ。今まで北を向いて歩いてきたが、五地蔵山頂(1998m)から西へ進路を変える。

右手に黒姫山が近づく。昨晩はあの山のちょうど反対側の麓に泊まった。

左手にはギザギザの戸隠山も見渡せるようになってきた。

10:00 九勢至。高妻山の峰を正面に捉える。

高度を上げていく。八観音など、歩いてきた尾根を振り返る。

十阿弥陀付近の岩場。巨岩の頭を渡っていく。山頂はもう近い。

10:55 高妻山頂(2353m)。向こう(南西側)は白馬の峰々。

北東側。右手より、妙高山、火打山、焼山と続く峰々。

北西側奥に見えるのが一昨日登った雨飾山だろうか。
山頂の標識から少し離れ、誰もここまでは来ない1畳ほどのてっぺんをもつ巨岩によじ登り、弁当を広げる。雄大な景観を睥睨し、まるで天下統一を果たしたかのような心持ちでいる。おにぎりにガブリと噛みつく。今回の山行で最後の山。30分ほど山頂で過ごす。

山を下りていく。
11:51 実は登りの際、この地点で“滑落”した。2mほど。右手で草の根っこを掴んでよじ登ろうとしたが、その根っこが抜けてバランスを崩し、しかしうまく体勢を立て直した…かと気が抜けたところで足元の引っ掛かりを失い、横向きになって背中から落ちたのだ。途中1バウンドして。もしかしたら1回ロールしたかも知れない。腰と左肘を強打する。幸い頭は打たなかった。自分の体が制御不能になる転落をしたのは、これまでの登山経験の中で初めてだ。下山中、再び通りがかってその「現場」が特定できたので、戒めのために写真を撮っておく。

下山道が稜線上に続いている。

尾根のアップダウンを繰り返しながら、九勢至、八観音、七薬師と、行きとは逆にカウントダウンしていく。高妻山を振り返る。

前方に六弥勒の峰が。山肌を染める赤・黄・そして緑。多彩で繊細な色遣い。

12:57 六弥勒。僕の持っているガイドブック(幾分古い)には記されていなかったが、ここから戸隠牧場へ下りる新道があり、下山はそのルートを推奨します、と看板が出ている。一不動から下の沢は傾斜が急で道も荒れており、登りながら確かに懸念はしていた。今日は“滑落”も経験していることだし。ここから新道で下ることにする。

飯綱山と戸隠牧場を望む。「モ~」という牛の鳴き声が、かすかではあるがここまで聞こえてくる。

行く手の正面に黒姫山の全容を捉える。

新道は実に歩きやすかった。休まず歩き続ける。ブナ林の中を行く。

麓まで下りてきた。山の中では一度も用を足していないが、一昨日の雨飾山と同じく、せせらぎの音を聞いて急に尿意を催してきた。あと少しの我慢。

14:08 戸隠牧場。牛が放牧されている草地のへりを歩く。緑輝く草原となだらかに広がる山が美しい。素敵なエピローグ歩きとなった。

牧場を出て、茶店でソフトクリーム。少しだけ舐め始めた後で気づいて撮った写真なので、山の頭がなくなっているけど。

駐車場に戻り、シャツを着替え、登山靴をサンダルに履き替える。
昼食には遅く夕食には早い中途半端な時間。おやつにちょうどいいかと、この旅2回目の戸隠そばの店へ。
戸隠森林植物園近くの「そばの実」でざるそばをすする。

戸隠からは飯綱高原を経て長野市街へ。
街を見下ろす高台を下りきったと思ったら突如善光寺の参道に出たので驚いた。
長野駅前を通り、犀川を渡り、ロードサイドの西友でアイス
(こういう時に無性に食べたくなる「あいすまんじゅう」)とコカコーラを買って休憩。
西友などにいると、ここが長野なのか埼玉なのか東京なのかわからない。

再び走り出し、上信越道のインターチェンジが近づいてきたものの、
CDをかけながらののんびりドライブが興に乗ってきたのでそのまま一般道を行く。
山の端に沈む夕陽を見ながら千曲、坂城、上田と国道18号線を走り続ける。
明日あさっては土日で休み。急ぐこともない。

なんとなくハンバーグが食べたくなり(そういえばこの4泊の宿の食事はみな和食だった)、
ハンバーグ店があったらそこで食事をして、店を出たら手近なインターから高速に乗ろう
と考えていたものの、小諸を過ぎても目ぼしい店はなく、軽井沢へ突入。
立派な梁が天井を渡る古民家風で、いい選曲のジャズが流れる、
いかにも軽井沢らしい雰囲気の「盛盛亭」でハンバーグ定食にありつく。

店を出て、碓氷軽井沢インターは街から離れているな…と敬遠しているうちに、
ヘアピンカーブが連続する山道で群馬県に入り、結局、横川、安中、高崎と走り続ける。
しかし、さすがに埼玉県に入ったら信号も増え、スイスイとはいかないだろうと、
藤岡インターから関越道に乗って帰途につく。

今回の山行で「日本百名山」登頂は55座となった。

  

妙高・戸隠の山 4日目 (戸隠神社と一茶記念館)

2017-09-28 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
昨夜から雨が降り続いており、当初予定していた今日の高妻山登山は早々に断念していた。近隣の宿を予約してこの地にもう1泊留まり、高妻山は明日挑むことにする。というわけで、今日は「休養日」。眠りたいだけ寝てやろうと思っていたのだが、ここ3日間で早起きの癖がついていたのか、早朝4時頃に目覚めてしまった。布団にもぐったまま、持ってきていた春日武彦『私家版 精神医学事典』を読む。暗がりで雨音を聞きながら読むにふさわしい本だった。この雨のせいか寒さを覚え、時折部屋の暖房を起動させた。朝食後も1時間ほど部屋で本を読んで過ごす。
10:06 戸隠森林植物園に車を停め、林の中を抜けて戸隠神社奥社の参道入口へ。戸隠神社には5つの社があり、今日はそのすべてを回ってみる。

この参道はおよそ2km(半里)もある。車では行けない。生半可な気持ちでは来させないようになっているところがいい。木立ちが雨粒の落下をしのいでくれているのか、傘を差さなくても歩ける。

参道のちょうど真ん中あたり。茅葺きの随神門。

随神門から先は、樹齢400年を超えるという杉並木が続く。

参道は最後に山にさしかかる。

10:37 奥社。祭神は「天手力雄命」というから、あの岩戸を放り投げて戸隠山を作ったという神だな。

奥社の隣、九頭龍社。奥社より歴史は古く、地主神として崇められていたという。

11:05 参道を随神門まで戻り、隣接する戸隠森林植物園の散策路を行く。歩く人は他にいない。木々は雨に濡れ生き生きとしている。戯れにどんぐりを1つ拾った。家で鉢に植えてみようと思う。

森林植物園から中社まで車で移動し、中社から「戸隠古道」を歩き出す。
11:50 門前の街並みはほどなくして途切れ、道は、「熊出没注意」と看板の出る森の中へ。

11:57 宝光社。「パワースポット」を囃し立て崇め奉るのはなんだかさもしい気がして興味はなく、僕は「休養日」の戸隠散歩を楽しんでいるだけだが、この戸隠の五社をこまめに回ってお参りしている人は多いようだ。

12:13 火之御子社。祭神は天宇受売女命というから、岩戸の前で舞を踊って天照大御神を誘い出した神だな。

戸隠神社の参詣道沿いの宿坊群は国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されているということで、その街並みの景観に期待したのだが、残念ながら取り立てて目を奪われるようなものはなかった。ここがいちばん「それらしい」と思えた家屋。

12:48 中社鳥居前の「うずら家」で戸隠そばの昼食。戸隠そばの歴史は、平安時代、山岳修験者の携帯食としてそば粉が珍重されたことに始まるという。根曲がり竹で編まれた円形のざると、ひと口ほどの量で束ねられた「ぼっち盛り」という盛り方が戸隠そばの特徴だそうだ。生わさびをすりおろして食べる。コシのある美味しいそばだった。

13:09 昨日に続き再び中社に参る。社殿の裏手には滝が流れていた。

昨晩観光ガイドマップを見ていて、小林一茶が戸隠の隣町・信濃町の生誕であることを知った。その記念館があったので立ち寄る。宿のチェックインまでの時間潰しのつもりで展示物を丹念に眺めた(上映していたビデオさえ片っ端から見た)ら、思いのほか時間が経った。生涯で遺した俳句は2万句。52歳で一茶については帰宅後にあらためて句集を読んでみようと思う。
15:37 一茶記念館を出ると雨も止んだ。館のほど近くにある旧居を訪ねる。1827年、ここ柏原宿で大火が起き、一茶は家を焼け出される。門人宅を転々とした後、修理を終えたこの土蔵に帰り、その11日後、一茶は65年の生涯を閉じる。すぐ隣には弟(腹違い)の家もある。一茶はこの弟と父親の遺産相続について揉めたらしい。街道側を間口にして、敷地は兄弟で細長く2分割されていた。

途中、黒姫駅前の酒屋で「みぞれりんごの梅酒」をお土産に買い、さらに「道の駅しなの ふるさと天望館」でりんご(シナノゴールド。 引き締まった歯ごたえの瑞々しいりんごだった)の袋詰めを買い、ついでに「黒姫高原牧場」のソフトクリームを舐め、黒姫温泉の宿へ。
17:31 ひとっ風呂浴びた後で外に出ると、夕焼け空を従えた妙高山が。

  

妙高・戸隠の山 3日目 (雨飾山)

2017-09-27 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
5:30 宿から車で10分ほど山を上がり、雨飾高原キャンプ場登山口から歩き出す。まだ日の出前。

登山開始と言いながら、いきなり15mほど下り、沢沿いに歩く。オニシオガマと言うのだろうか、ピンク色の花が咲いている。

サラシナショウマ。きれいなブラシ状。

5:59 登山道は400mごとに11分割されている。その「3/11」。

ブナの大木が見下ろしている。自分よりよっぽど齢を重ねているのだろうと思うと、崇敬の思いに駆られる。

山に囲まれた森の中を歩いているのでただでさえ日の出が遅いが、それでもようやく太陽が姿を見せ始めた。

荒菅沢への下り口に出ると視界が広がる。ダイナミックな山稜が連なる。ここまでせっかく稼いできた標高を、沢に向けて100m以上下げなくてはならないのは惜しいが。

6:58 荒菅沢を渡る。このあたりから見上げたところに「布団菱」なる岩場があるとのことだったが、どれが「布団」を指していたのかはよくわからなかった。

荒菅沢からは急登が続く。息を切らしながら尾根上に出る。

出発点のキャンプ場の建物があんなに小さい。

8:07 「9/11」を過ぎると、傾斜は緩やかになる。笹平と呼ばれる一帯。

つぼみに豊かな膨らみを湛えるオヤマリンドウがそこかしこに。

最後のピークがいよいよ眼前に。

山頂は二手に割れている。その片方には石仏が。北側、奥に見えるのは糸魚川市街と日本海。

8:34 雨飾山頂(1963m)。東側、奥に見えるのは焼山と火打山だろうか?

西側、白馬連峰。天気予報通り天候は下り坂で、風が強まってきた。朝食代わりのお弁当を広げるために、岩陰に身を寄せる。この後、辺り一帯はさーっと流れてきた雲に包まれてしまった。

風が強いので、お弁当を食べ終えると早々に下山。体温もずいぶん奪われた。尾根に広がる笹平を見下ろす。

9:39 ひたすら下山を続ける。風はおさまった。荒菅沢が見えてきた。

10:20 荒菅沢。先ほどは上流の山容ばかりに目を奪われていたが、下流もだいぶ急激に落ち込んでいっている。

荒菅沢から登りきり、下りてきた稜線を振り返る。さっきはあそこに立っていたんだよなあ…と思うのは、やっぱり感慨深い。

ゴールの登山口にほど近い、沢沿いの道を歩く。出発からここまで一度も用を足していないが、水音を聞いた途端、尿意に襲われる。トイレ目指してラストスパート。
11:33 登山口に戻る。

12:00 登山を午前中で終えてしまったので、今日の山歩きのエピローグとして、登山口から車で2km弱移動したところにある鎌池を歩く。一周およそ2kmの静かな池。この後、昨晩泊まった宿へ立ち寄り、露天風呂につかる。

今日の宿の戸隠高原まで、およそ70㎞のドライブ。小谷村、白馬村(ふと思ったのだが、白馬は「日本で一番知名度の高い村」ではないだろうか?)、合併で広大な市域となった長野市に入り、鬼無里(なんとも情緒のある地名だ。ただし、かつてうちの最寄駅そばに同名の小汚い居酒屋チェーンがあったため、その余計なイメージもちらつくが)と走り抜ける。
14:31 途中、唯一車を停めた、大望峠。戸隠のギザギザの山並みを望む。太古の昔、天照大御神が弟神・須佐之男命の度重なる非行に怒って天の岩屋に隠れ、天下は暗闇となった。八百萬の神々は岩戸を開くための策を練っていたが、天宇受売女命(あまのうずめのみこと)の巧みな踊りと八百萬の神々のどよめきに、何事が起こったのかと天照大御神が岩戸を少しだけ開けたその一瞬、怪力無双の天手力男命(あまのたぢからおのみこと)が、岩戸を取り去って遠くへ放り投げた。その岩戸が落ちたのが、宮崎の高千穂と、ここ戸隠だという。この山は千切られた扉の残骸というわけか。下り坂だという天気予報通り、空はすっかり曇ってしまった。

15:03 戸隠神社・中社へ。雨が降り出した。標高1100mを超えるこの辺り、冬季の積雪は2mに及ぶという。

立派な三本杉が。樹齢は800年を超えるという。

1087年創建。天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)を祀る。天照大御神が天岩戸に隠れた時、岩戸神楽を創案し、戸を開くきっかけを作った「知恵の神」だという。16時前に宿に入る。

  

妙高・戸隠の山 2日目 (火打山)

2017-09-26 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
燕温泉の宿をまだ真っ暗なうちに発ち、関温泉、赤倉温泉、池の平温泉と山麓の温泉郷をたどりながら26kmほど車で移動、夜が明けた頃、笹ヶ峰の登山口へ。
5:53 歩き出す。しばらくは平坦な木道が続く。

朝露を帯びた爽やかなブナ林を行く。

6:30 黒沢橋。渓流を渡る。

6:43 その名の通り12個のターンがあるという急登、「十二曲がり」にさしかかる。

十二曲がりを登りきると尾根上に出る。

オオシラビソだろうか、立派なマツが聳え立つ。

太陽が昇ってきた。木々の色づきが明るく照らし出される。

ついに行く手に火打山の峰を捉える。

ベニバナイチゴ。イチゴと言っても春ではなく秋に実をつけるんだね。食用。

8:28 高谷池ヒュッテ。本当は、昨日の妙高山とこの火打山を、この山小屋に泊まって巡ることを考えていたのだが、ネットで宿泊予約状況を確認したところ、すでに満員だった。現在小屋は改装工事中で、定員が限られているという。この小屋に泊まれなかったために2日間とも山麓からの登山を余儀なくされているわけだが、まあ、温泉泊を楽しめるのならそれでもいい。

小屋の前に広がる高谷池。この池の右側を回り込み、正面奥に見える火打山を目指す。

ナナカマドが赤い実をたわわに実らせている。

池を過ぎると、丘を登る。池と小屋を振り返る。

緩やかな丘の上を木道が続く。

8:51 「天狗の庭」とはよく名づけたものだ。本当に手入れの行き届いた庭のように美しいまとまりを持っている。そして静かだ。気品を感じる。

陽当たりが良く風もないので、池に映る「逆さ火打」もバッチリ撮れる。いつまででも立ち尽くしていたいほど素敵な景色だ。

天狗の庭を回り込むと、いよいよ最後のピークの登りにさしかかる。振り返れば、火打山と標高が8mしか変わらない、台形状の妙高山も見えてくる。

木々の色彩のバリエーションがとても豊かだ。

一歩一歩高度を上げていく。曇天で視界がすぐれなかった昨日の妙高山登山と違い、好天で登るほどに様々な見晴らしを楽しめる今日の火打山登山は、疲れを感じさせない。登ってきた稜線を振り返る。天狗の庭も眼下にずいぶん小さくなった。

ラストスパート。

9:56 火打山頂(2462m)。

南側、高妻山・黒姫山方面。

南西側、白馬連峰方面。

西側、噴火警戒レベル1(「活火山であることに留意」)で入山禁止の焼山へと続く尾根。こうして見るとすぐ隣の山だ。焼山の噴火警戒レベルが上がれば、この火打山にも登頂できなくなる。

北西側、糸魚川市街と日本海方面。糸魚川と聞くと昨年末の市街地の大火がまだ記憶に新しい。

宿で作ってもらった特大おにぎりの弁当を食べた後、下山開始。

高度を下げていき、天狗の庭が近づいてくる。

色づいた木々が緩やかな斜面に広がる。

天狗の庭の平坦な湿原を行く。下りてきた火打山を振り返る。

11:24 天狗の庭を展望するベンチで長めの休憩。人もおらず静かだ。

高谷池まで戻ってくる。池畔にはキャンプサイトもある。こういう場所でキャンプをするのは素敵だろう。いつかやってみたい。小屋のそばの水場で水を補給。

ひたすら下山を続ける。ブナの幹に取りついているのはキノコだろうか。鳥の餌台かと思うほど大きい。

13:31 黒沢橋の流れのそばで長めの休憩。こういう沢を見ているといつもながら感じるのだが、とめどなく溢れ続ける水の豊かさに、気が遠くなる。

橋から先は、今日の行程のエピローグといった感じの平坦な木道歩きとなる。

14:18 登山口へ戻る。登山口の小屋はゲートのようになっている。登山靴と靴下を脱ぎ、濡れタオルで足を拭い、汚れたズボンを履き替え、人心地着く。

しかし、登山を終えても今日はまだ緊張のイベントが残っている。新潟・長野県境越えの20kmに及ぶダートの林道走破だ。今日泊まる小谷温泉まではこれが近道なのだ。山麓の一般道を迂回すると100kmを超えてしまうから、このショートカットの意味は大きい。凹凸の激しい道なので、時速20km程度でゆっくり進む。山菜採りでもしているのだろうか、山に入る地元の人の軽トラック、捕虫網を振り回している男2人連れの東京郊外ナンバーの乗用車、「峠狩り」とでも言うのだろうか、この林道を走ること自体が目当てとおぼしきRV車やバイクなどとすれ違う。無論1車線分の幅しかない道だが、幸い行き違い困難な場所はなかった。
15:16 県境の乙見山峠のトンネル入口。向こう側は新潟県。エンジンを喘がせながらも問題なく走ってくれる、今年車歴18年を超える愛車に感謝。

峠を越えると、急峻な谷を下っていく(正面の山腹に道路の行く手の細い筋が見えている)。幸い、長野県に入ってしばらくすると、舗装道路となり走りやすくなった。16時頃、宿に入る。宿は携帯電話がつながらなかった。しかし温泉なのが嬉しい。