ときぶーの時間

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鎖で繋がれたままの犬

2011-11-17 07:00:30 | 日記
彼と再会し、最初に聞かされたのは、避難指示が出てから人間だけが逃げ出し、置き去りにされた動物の話だった。


鎖につながれて何日も、餌も水もない日々を過ごして来た犬の話だが、狂犬病かと思うほど怒り狂い噛み付いてきたそうだ。                                            

本当に、噛まれそうになったらしく、痛い思いをするとこだったと彼は話した。誰かが犬に餌を置いて行ったらしいのだが、あまりにも吠えるのと、憎悪むき出しの噛みつきに、恐怖を感じたのであろう。                                            

その鎖で犬が行動できる範囲、そう犬の鼻先の距離から、約1m先に袋を破って餌を置いて行き、犬にはさらに過酷な地獄の苦しみを与えて行った馬鹿な奴がいたと。                         

犬は餓えに餓え、水も無く数日間を生き抜いていて、体力を振り絞って目の前に置かれた餌に飛びつくのだが、鎖が首に掛けられているから届かない。                                

何度も何度もダッシュして餌に向かうが、その度に首輪と鎖に体を止められ、ひどい時は体が反転するほどで、グッゲホッと声にならない声を出し、苦しみもがいている。                       

犬の目の外輪は完全に充血していて見開き、口の中はカラカラに乾き、よだれも出せずに舌を出し、ゼイゼイヒーハーと息を苦しそうに、荒げながら必死に餌を求めていた。                      

前足も後ろ足も伸ばしきって何とか餌に向かうのだが、その姿を見た彼は、あまりにも可哀相で見ていられず、犬が食べられるようにと、餌に近づいて食べさせようとするが、よけいに興奮し暴れて、うかつに近づけない。


犬が疲れて動けなくなるまで、様子を見ようとしていたら、何日ももがいただろう?犬が、何と餌に頭を向けていては食べられない事を、ついに学習したのか?体を後ろ向きに変え、後ろ足をめいっぱいに伸ばし、後ろ足一本で待望の餌の袋を、たぐり寄せて、やっと餌にありついた。                      

この犬の行動にはかなりびっくりした僕であったが、彼もさすがに驚いていた。数日も餌にありつけなかった犬は、狂ったようにガツガツと食べ口の中に入るだけ、僕の表現的にはほおばれるだけほおばるのだが、人間と同じでのどにつかえるのかゲホッゲホッと、口の中に入れた餌を全部吐き出して、口に入れては、また食べるその繰り返しだった。                         


人間なら完全に脱水状態で乾いた口に、これまた乾燥タイプのドックフード。唾液も出なかっただろうし、食べるにも食べづらかっただろう。

彼は犬を思いやり、結局その日はたっぷりの水を与えて帰ったのだが、次の日、彼の車のエンジン音を聞いて犬が「昨日はごめん」と、おとなしく尻尾を振って。近寄って来たと言う。僕は、やっぱり犬は可愛いと思った。                                 


犬には、昨日彼が与えたたっぷりの水が、命の水になったのだろう。人間の心と、人間の言葉を話せない犬の魂が、交わる瞬間があったのだと僕は思った。やはり犬は従順で付き合いやすい動物だと、痛感した。                         

他の犬も、彼の車のエンジンの音や気配を感じると、喜んで迎えに出て来るという。彼も餌をあげ続けている苦労が、一番報われる瞬間だと言った。  


しかし、見つけるのが遅くなり、事故から一ヶ月もたってから見つけた犬もいて、水も食べ物も一切口にしていなかったのに、骨と皮だけになって歩けなくなってはいたが、生きていた犬もいて、動物の生命力には彼もびっくりしていた。                                           

それでも、全部の犬を助けられた訳でではなく、残念ながら犬小屋の中で、息絶えた犬もいて、「全く、ひでえよな!」と、ある種の怒りを、抑えながら餌を配り回り続けた彼であった。                

しかもたった一人で、回りきれる件数ではなかったため、犬に与える餌を何日分か置いて行こうと試みるが、犬は一度食べる分をお腹に入れると、満足してしまうのか、餌をそのままにしておくから、その餌を今度はカラスが狙い、ほとんどカラスに食べられてしまい彼のスケジュールを台無しにされてしまう事もあり、最初の頃は、本当に大変な作業であった事に間違いなかった。                            

骨が浮き出るほどに痩せこけた、犬や猫などの動物を、彼はどれほど助けた事だろうか?富岡町の一時帰宅で家に戻った飼い主が、何日も何週間も餌をあげられずにいたのに、自分の犬がふっくらしていて「おまえ、餌もなかったのに、こんなに元気でいて何を食べていたの?」と、言った人がいたと一時帰宅の立会いをした役場職員から僕は聞いた。                                          

また、その後その家々の人から彼のところに、涙ながら「本当にありがとうございました」と、お礼を言いに来た人がたくさんいたと聞いて、僕は嬉しく思った。                                               

次回は牛舎に残された牛の話                                                                                                                       
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