tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(21)トラベルライターから見た奈良

2009年02月07日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
2/3(火)、奈良女子大学で興味深い講演会があった。同大学の「平成20年度第5回 なら学談話会」」(主催:奈良女子大学文学部なら学プロジェクト)で、講師は旅行作家の多田みのりさん、演題は「トラベルライターから見た奈良」(15:00~17:00)だった。

ぜひお聞きしたいテーマだったが、あいにく都合がつかず出席できなかった。幸い、会社のN先輩が参加され、レジメと詳細なメモ書きをいただいたので、ここで紹介させていただく。
※奈良のコトナラ(多田さんのブログ)
http://naranokotonara.narasaku.jp/e5836.html 


喜光寺の花々(奈良市菅原町 05.2.6撮影=以下同様)

なお多田さんは『奈良のチカラ』(1890円 現代旅行研究所刊)という本を書いておられ、私も書店で立ち読みしたことがある。彼女のプロフィールは《東京都生まれ。昭和女子大学大学院修了後、さらに研究生として奈良女子大学大学院へと進む。が、研究よりも奈良を知ることに没頭。2000年、東京に戻り一般企業に就職。2002年にトラベルライターへと転職、(中略) 現在、歴史や温泉を中心としたライター活動を行っている》(BOOK著者紹介情報)。

いつもは20~30人の出席だそうだか、多田さんの講演には50人以上が参加され、主催者も驚いていたそうだ。

講演のレジメには《2.私が奈良に魅せられた理由 ●修学旅行で一目惚れ●通い詰めるほどに見えてくる良さ》とある。N先輩のメモによれば、景色は変わらないが自分は変わっていくので、飽きない。1200年前が地の底に眠っていて、イメージがふくらむ。京都に比べると感受性・想像力が試される街。トリビアが満載で、ある種宝探し的な面白さがある。

《3.奈良とほかの場所との違い ●奈良はどれだけ恵まれているか●歴史的に見た奈良という場所》では、地元は知らないし関心を持たないが、切り口が多彩で面白い(寺社詣で、遺跡巡り、むかし町歩き、季節の花、古道歩き、万葉歌碑めぐり、文人・画家・写真家の足跡をたどる など)。国宝建造物は全国213件中64件が奈良にあるし、世界遺産が3つもあるのは奈良だけだ。



《4.奈良に住む方々へのお願い~観光客とどう接してほしいか ●観光客が気づかない奈良の良さをアピール●もっと奈良のことを知り、誇りを持ってほしい》。

多田さんが奈良に住んだ2年間で、いろんなことに気がついたという。明けと暮れの鐘の音、若草山の木々のうつろい、湿度の高さ(うるおい)、大阪・京都に近い、天候に関する知恵(伝統産業とつながっている)、奈良発祥の事物の多さ…。《地元の人から聞いたこと、教わったことは、旅の重要な彩りになる。また来たいという原動力にもつながる》。

傾聴すべきは《・どうせ何もないという自虐的な発言や、何かを見にはるばる来たのに、物好きのように言わないでほしい。→けなす前に、来てくれたことへの感謝を伝える。自分の住む土地への愛や誇りを示して欲しい》。



ここで興味深いエピソードが紹介された。多田さんが「第1回奈良まほろばソムリエ検定」(奈良通2級)を受験しようと、はるばる東京から出てこられた時のことだ。奈良の飲食店で「奈良検定を受けるために東京から来ました」というと「あんたバカじゃない、わざわざそんなものを受けに来て…」と言われたというのだ。

う~ん、これはひどい。私も遠方に住む知人から「奈良検定を受けに来ました、というと、地元の人に『何、それ?』と言われた」という話を聞いたことがあるが、多田さんのケースはもっと悲惨だ。地元民として恥ずかしい。「もてなしの心」が聞いてあきれる。講演の後の質疑応答では、会場から「地元民が奈良の悪口を言うと罰金を取る、という条例を作れば良いのではないか」という提案があり、拍手喝采を浴びたという。

これは極端だとしても、私の経験では、地元の人はよく「奈良には何もない」と言い、わざわざ来てくれる人は「物好き」と見なしているフシがある。これはとてもおかしい。そもそも奈良の人は、あまりにも奈良のことを知らない。それなのに奈良検定受験者は、減少の一途だ。勤勉でお金持ちで教育熱心な奈良県民にとって、地元に関する知識など「想定の範囲外」なのだろうか。



多田さんがタイ旅行をされたとき(06年9月)、たまたま軍事クーデターが勃発した。戒厳令が敷かれ、観光もままならなかった。しかしその時地元の人は、「こんなことになって、申し訳ない。遠くから来てくれて、本当に有難う」と、観光の不足を心で補ってくれたという。これは見習わなければならない。

レジメの最後に多田さんは《・地元の人がいかに奈良ファン作りに貢献するか? それこそが奈良の印象を高めるきっかけになるのではないか》と書いておられるが、全くその通りである。私は著名人たちによる市町村の「観光大使」という代物を全く評価していないし、無用の長物だとさえ思っている。大切なのは地元民たちが地元の良さを知り、それをお客さまに伝えることだろう。


笠置町直送、とれとれの猪肉(08.12.27 魚佐旅館で撮影=以下同様)



昨年末(12/27)、魚佐旅館(奈良市・猿沢池畔)で「奈良を語るオフ会」(第2回)を開催した。当ブログの常連コメンテーターさん8人によるオフ会である。美味しいボタン鍋をいただきながら、地元民に地元の良さを気づかせるため、子供の頃からの教育(歴史、美術、課外活動など)、奈良検定3級の創設、観光ボランティアガイドへの参加などの前向きな意見が出された。以前天川村を訪ねたときは、定期的に勉強会をしている(郷土に伝わる民話などを勉強する)という話も聞いたことがある。





地元民全員が「観光大使」となるためのハードルは、そんなに高いとは思わない。何しろ地元のことだから、少なくとも土地勘はある。多田さんは《・道を尋ねられたりした時に、プラスαの気遣いがあるとうれしい→店が少ないけど、お弁当は準備したか・雨が降るみたいだけど、傘は持っているか・昨日雨が降ったから道が悪いかもしれないので気をつけて》と書いておられるが、この程度の気遣いはできるだろうし、逆に「この程度」でも、観光客はとても喜ぶのだ。

平城遷都1300年祭も近づいている。かけ声だけの「もてなしの心」より、具体的な行動が大切だ。

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11 コメント

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多田さん (かぎろひ)
2009-02-07 20:58:33
多田みのりさんとは1度お会いしたことがあり、真夏に汗をかきかき大仏鉄道跡を一緒に巡りました。
『奈良のチカラ』を出された時、冊子でもHPでも紹介させていただいたのですが、すっかりそれきりになっておりました。
http://www4.kcn.ne.jp/~kagiroi/now/2007/august.html
多田さんの講演会があったことも、ブログのことも知りませんでしたので、教えていただきありがとうございます。
多田さんにご無沙汰のご挨拶をしようと伺ったら、先客がありクスッ(^_-)。というわけで、まずはこちらのブログにお礼を申し上げることにした次第です。

返信する
地元の目、観光客の目 (ikaru(尼御前))
2009-02-08 09:28:49
旅行に出かけると、
その土地土地の考え方に出会ったりします。

北海道帯広で廃止の危機にある
世界で1つしかないばんえい競馬を観戦に行った時、
タクシーの運転手さんに
「全く興味が無い」と言われました。
私たち遠方から高い旅費を支払ってやってきた者には、
あまりに悲しい言葉です。
奈良でも飛鳥が今ほど観光に重点を置かなかったころ、
「何もない所によくやってくる」と言われました。
観光だけが旅の魅力ではなく、
その場所・風景・文化・歴史などに魅力を感じて
足を運ぶ人たちがたくさんいることを知ってほしいです。

私は東京に住みながら、東京が嫌いです。
便利さを求める以上に失うものが多いからです。
今まだ離れることはできませんが、
「住むため」の地方の魅力も探索中です。
返信する
風景・文化・歴史。。。 (南都)
2009-02-08 15:52:32
「何もない」と言われる奈良の方は結局、奈良にこれだけ豊富なコンテンツ(文化、歴史、風景&ヒト)ががあるのにそれに気付かないか関心がないからなのでしょう。

某南都七大寺の和尚さんが仰っておられましが奈良の「民度」を奈良のコンテンツに釣り合うよう引上げていくのが今後の奈良にとっての課題かもしれません。

そのためにはやはり教育が大事なのでしょうね。
21世紀の奈良をよりよくしてくれる次代の世代をしっかり育てていくことが肝要かと。
返信する
奈良の民度 (tetsuda)
2009-02-09 06:36:51
かぎろひさん、ikaru(尼御前)さん、南都さん、コメント有難うございました。

> 1度お会いしたことがあり、真夏に汗をかきかき大仏鉄道跡を一緒に巡りました。

やはり、ご縁がありましたか。

> まずはこちらのブログにお礼を申し上げることにした次第です。

コメント欄に、多田さんからも書き込みいただきましたね。奈良を盛り上げるため、お互い頑張りましょう。

> 飛鳥が今ほど観光に重点を置かなかったころ、「何もない所によくやってくる」と
> 言われました。観光だけが旅の魅力ではなく、その場所・風景・文化・歴史などに
> 魅力を感じて足を運ぶ人たちがたくさんいることを知ってほしいです。

お書きの通りで、全くお恥ずかしい話です。心ない言葉で傷つく旅人の気持ちが分からないのでしょうか。

> 奈良の「民度」を奈良のコンテンツに釣り合うよう引上げていくのが今後の奈良
> にとっての課題かもしれません。そのためにはやはり教育が大事なのでしょうね。

南都さん、魚佐さんでは有難うございました。南都さんのおっしゃるとおりで、まずは教育から始めなければなりませんね。
返信する
ご指摘のとおり (蔵武S7189)
2009-02-09 10:10:35
 この講演会で述べられていることは、そのとおりです。それにしても飲食店での応答、ひどい。「奈良県民マゾ説」は認めるけれど、そこには悪意が無いことが救いなんだが。このケースは奈良に興味を持つ他府県民を攻撃したり、馬鹿にしたりすることにより快感を覚える「奈良県民サド派」がいるということなんだろうか。
 確か小学校や中学校で郷土の歴史を習ったし、教室には仏像の写真が張ってあって(中学校2年の時は三月堂の月光菩薩で、いつも僕はうっとりしていた)、誇りを持たせるような教育環境だったはずだったけれど。奈良検定3級というか、ジュニア版を実施して市町立の学校にはどんどん参加してもらえばいい。受験勉強の邪魔だ、といわれるかな。
返信する
失礼 (蔵武S)
2009-02-09 10:12:57
 前稿発信者欄の7189は、誤操作です。
返信する
再び失礼します (かぎろひ)
2009-02-09 18:59:33
奈良県民の分が悪くなっているせいでもないのですが、ちょっと弁護させてください。
私は奈良へ来て約25年経ちますが、奈良の人は、付き合えば付き合うほど良さがわかる、というか、味が出てくるという感じをもっています。人の財産がいっぱいできました。
でも確かに、初めての人にはなかなか心を開かれませんね。お商売をされているのだから、笑顔ぐらいと思うのですが、無愛想な人が多いですね。馴染みになった私には満面の笑みなのに、観光客らしい人にはニコリともしないで応対している店主を知っていますし、先日ふらりと買物をした商店街の某店の方も、私の問いに冷たい応対でしたね。

しかし実は、決して冷たいわけでも、蔵武Sさんがおっしゃるように悪意はさらさらありません。普段人情味に触れている私にとってはわかっても、初めての人からは誤解を受けやすく、ほんとにもったいないことだと思わずにはいられません。
平城遷都1300年祭に奈良へ来られる多くの方が、1度きりの応対で誤解しないようにと祈るばかりです。
観光地のお店がこうであってはいけないのですけどね。でも京都などへ行くと顔だけ笑っての応対というのが結構ありますし、奈良のほうが好きやわと思ってしまいます。
奈良のお店の人は、商売気がないというか、シャイというか、よく言えば飾らない、おもねらない、そんな感じでしょうか。
『鹿男あをによし』のロケを断ったお店あり、テレビの取材を拒否する人もあり。せっかくのチャンスをなんで? とあきれる声も聞きますが、テレビごときがなんやという、老舗の毅然さが見えたりして、ちょっとカッコエエやんと思ったりもする私はヘソマガリでしょうか。
まあ、奈良全体の観光面から考えると非常なマイナスには違いありませんが。

土地柄なのでしょうか、全体に悲愴感がなく豊かさゆえのような気もします。

観光地奈良の人が今のままでいいとは思いませんが、すぐに意識を変えるのは無理なような気がします。やはり小さい頃からの教育は大事だと思いますね。

奈良の人はとっつきは悪いけれど、実は人情味豊かなんですよ、という25年をかけて体得した私の思いを少しお伝えしてみたかったのでした~。
返信する
奈良人は大好きです (ikaru(尼御前))
2009-02-09 19:34:22
奈良の皆さん、
私は大変お世話になっております。
お付き合いも長いし、
家族でお付き合いさせていただいております。
東京からひょっこり訪れる私に、
いつもお骨折りくださいます。
奈良の皆さんとお付き合いできて、
感謝しております。
京都とも、かなり違いますね。

観光客には刹那が勝負です。
たぶん悪意の無い一言だと思いますが、
それが響いてしまうことがあるのです。
マイナスイメージの言葉を控えていただくだけで、
全く違った印象になると思うのです。
返信する
心をカタチに (tetsuda)
2009-02-11 08:53:28
蔵武Sさん、かぎろひさん、ikaru(尼御前)さん、コメント有難うございました。

> 「奈良県民マゾ説」は認めるけれど、そこには悪意が無いことが救いなんだが。
> このケースは奈良に興味を持つ他府県民を攻撃したり、馬鹿にしたりする
> ことにより快感を覚える「奈良県民サド派」がいるということなんだろうか。

自虐思考のまま外に向けて言葉を発した、という構図ですね。

> 奈良検定3級というか、ジュニア版を実施して市町立の学校にはどん
> どん参加してもらえばいい。受験勉強の邪魔だ、といわれるかな。

昨日も職場で「奈良検定は難しすぎる」という話をしていたばかりです。私学(中・高)では「漢字検定」を受けさせるところがあります。理事長が私腹を肥やす漢検なんかより、奈良検定3級を早く設けて、こちらに誘導しないと…。

> 確かに、初めての人にはなかなか心を開かれませんね。

> 1300年祭に奈良へ来られる多くの方が、1度きりの応対で誤解しないように
> と祈るばかりです。観光地のお店がこうであってはいけないのですけどね。

> 小さい頃からの教育は大事だと思いますね。奈良の人はとっつき
> は悪いけれど、実は人情味豊かなんですよ、という25年をかけて
> 体得した私の思いを少しお伝えしてみたかったのでした~。

全く、付け加えることは何もありません。30年かけて私が体得したことと同じです。長く付き合いたい人ばかりです。

> 観光客には刹那が勝負です。たぶん悪意の無い一言だと思いますが、
> それが響いてしまうことがあるのです。マイナスイメージの言葉を
> 控えていただくだけで、全く違った印象になると思うのです。

県の「もてなしの心」で指導すべきは、これですね。「心をカタチに」。観光客の方に「また来てみたい」と思っていただける言葉を、選んで使いましょう。
返信する
生まれてこの方奈良県人 (金田充史)
2009-02-11 23:43:46
tetsudaさん、こんばんは。宜しくお願いいたします。

いゃあ反省すべき点が多々有り、しかし、ん!?と云う事も有り、だと感じましたので、ちょっと述べさせて下さい。また、12月は御利用有り難うございました。この場をお借りして御礼申し上げます。しかし、自分で言うのもナンですが、シシ鍋美味かったですねぇ。売り物ですが、私も滅多に口に入らないので、こんな時しか食べられません。

自分は、サービス産業をやっていますが、これは空間と時間に付加価値を付けて、それの対価を頂く訳ですが、これも人それぞれで非常に難しいです。同様のサービスをしても、最悪から最高までの評価が有ります。これは、サービスの基準が定まっていないのと、自身が期待した以上のモノ、と云う物差しが売り手に有るのでは無く、買い手側に有り、それが物販なら、その場での判断になりますが、消費してから、と云う業態に因るモノでも有るからです。

ただ言葉は、言い回し一つで誤解も生むし、感謝もされると云う、考え方によっては非常に怖いモノです。インターネットの書き込みも言葉の一つで、ここは、感情の入り込む余地はほとんど無く、もっと大切なツールの一つになっています。

これを踏まえて、まず私も反省・・・「奈良に何も無い」は止めましょう。ただ、私はこの中に「謙遜」と云う感情が入っている、と感じています。「粗茶」、「詰まらぬモノですが、どうぞ」的な言葉は、多用しています。例えば、こう言われた際に、「粗茶」の様な不味いと思っている茶なんぞ出すな!とは言わないでしょう!?頂いて、「美味しい茶ですねぇ」的な言葉を返すのでは無いでしょうか?

相手が謙遜ととってくれるかどうかは、相手次第なので、何とも云えませんが、失われた10年、と言われている平成不況で、何処かへ置き忘れてしまった日本人の感覚の一つでは無いでしょうか。

これが奈良の地では、時間軸が少しずれていて、また、この謙遜が生き残っていて、これを使ってしまうと、「不味い茶を出すな」と云う使い方になり、これが、そのまま受け取られてしまう、と云えるのでは無いか、と感じます。

これが、奈良県民は奈良の悪口、にならない様に、時と場合を考えれば、ちょっとはマシになるのでは無いでしょうか。ただ、これだけ・・・大阪・京都に対するコンプレックスだけは持たない様にしましょう。これが、知事・市長の他府県と比べて、ホテルが無い、産業が無い、等々の事にもつながる訳で、奈良は奈良として、決して他府県のマネなどせずに、奈良でしか出来ない事をしていきましょう。

それは首長・国会、地方議員のビジョンと態度、また、県民の奈良県への愛着度合いにもより、その様なリーダーを選んでいく必要も有る、と感じていますが、如何でしょうか。

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