tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

『増補改訂版 奈良「地理・地名・地図」の謎』が発刊!/奈良新聞「明風清音」第89回

2023年05月20日 | 明風清音(奈良新聞)
昨年のクリスマスイブから取り組んできた『奈良「地理・地名・地図」の謎』の増補改訂版(実業之日本社刊 税込み1,100円)が、刊行された。旧版は、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」が監修した本で、同会としては初の著作である。

私を含め、同会の5人の会員が改訂作業に取り組んだ。コロナ禍のなか、基本的には各自が在宅で作業したが、途中で2回、顔を合わせ、丁丁発止とやり合った。東京書籍の地図帳に約1,200ヵ所の間違いが見つかり、これは「コロナ禍の在宅勤務などの影響」と報じられた(NHKニュースなど)。

自宅作業では、なかなか集中力が保てないし、緊張感もない。やはり、集まって議論を戦わせながら相互チェックするという過程が、どうしても必要なのである。おかげで各自の負担は大きかったものの、良い著作に仕上がったと自負している。先週から県内の書店の店頭にも並んでいるので、ぜひお買い求めいただきたい。では「明風清音」(2023.5.18付)の全文を紹介する。

『奈良の謎』を増補改訂
5月10日、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」が監修した『増補改訂版 奈良「地理・地名・地図」の謎』(実業之日本社刊)が発売された。本書は当会初の著作(監修書)として2014年3月に刊行された旧版の増補改訂版である。このシリーズは各都道府県版が刊行されていて、奈良県版は根強く売れているそうだ。今回、増補改訂の機会をとらえて、中身を全面的に見直すことになった。

見直しの結果、旧版の78本の「謎」のうち12本をまるごと差し替えるとともに、残る66本も、最新の情報にアップデートした。この作業には、私を含め5人の会員が携わった。昨年のクリスマスイブにお話をいただき、正月返上で取り組んだ。

増補改訂版の「まえがき」には、〈「奈良を訪れると変わらない風景に癒やされる」という人は多いが、東京や大阪に比べて変化のスピードは遅いものの、奈良もじわじわと変化してきている。この九年間の変化で奈良の「謎」はさらに増えているように思われる。(中略)根っからの奈良好きが集まって、本書を監修した。ぜひ改訂された本書を携えて、奈良・大和路を巡っていただきたい。そして奈良に興味を持ち、奈良を好きになってもらいたい。ひとりでも多く奈良ファンになっていただきたい。そんな思いを込めた一冊である。〉

本書は五つの章に分かれている。「第一章 奈良の古刹のミステリー地図」「第二章 地図に残された古代王朝の足跡」「第三章 大和に伝わる信仰・伝説の謎」「第四章 古式ゆかしい地名のルーツ」「第五章 奈良の『今』がわかる迷宮地図」。今回、新たに書き下ろした12本のタイトルを紹介する。()内は私の補足である。

(1)興福寺は明治の初め廃寺となり、誰もいなくなった!?(神仏分離令と上知令)
(2)石上神宮に残る巨大寺院・内山永久寺の遺構!(神仏分離令と残された出雲建雄神社拝殿)
(3)江戸時代、ならまちにはもう一基五重塔がそびえていた!(幕末に焼失した元興寺五重塔)
(4)石舞台古墳がもうひとつあった!古墳が語る蘇我氏の飛鳥(小山田遺跡の発掘)
(5)初期ヤマト政権発祥の地、纒向遺跡は邪馬台国であったか?(邪馬台国纒向説)
(6)相撲発祥の地が奈良県に三つある不思議(桜井市、葛城市、香芝市)
(7)なぜ達磨大師が王寺町のお寺の本尊になった!?(『日本書紀』の片岡飢人伝説)
(8)南北朝合一後、奈良の地で起こった再興運動の痕跡とは?(南朝の末裔と川上村の朝拝式)
(9)吉野で作られていた!サンマの丸干し(熊野灘のサンマを吉野で干していた)
(10)有名な柿本人麻呂の歌、「かぎろひ」は「けぶり」だった!(「炎」の訓読・解釈の変更)
(11)「考古学の鬼」と呼ばれた森本六爾(ろくじ)の悲劇的な生涯(早くから弥生時代の水田稲作を主張)
(12)両国の花火、ルーツは五條市にあり!(鍵屋の創業者は同市大塔町の出身)

私は常々「京都は面白くてタメになる解説書がたくさん出ているのに、奈良は小難しい本ばかりだな」と不満に思っていた。本書は、その不満を解消する絶好の手引き書になったと自負している。

よく「奈良県民は、案外奈良のことをよく知らない」と言われる。本書は主として他府県の読者を想定しているが、ぜひ多くの奈良県民に読んでいただきたいと願う。

旧版の刊行時、本紙「國原譜(くにはらふ)」には〈貴重な歴史遺産を有する本県だが、それを十分に生かし切れていない。(中略)県民は地元の魅力を再認識すべきだろう〉(14年4月21日付)とあった。地元の魅力をよく知ることで、地元愛が生まれてくることを大いに期待している。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ご母堂を気遣う 田中利典師の... | トップ | 田中利典師の「地球平穏・世... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
読み応えあり! (井上)
2023-05-22 16:01:46
早速購入させていただきました。手軽に読める新書版ながら内容はとても専門的で勉強になります。さすが「うんちくをラインナップするじっぴコンパクト新書」だけありますね。まだ読み始めたばかりですが、奈良の歴史において西大寺の僧侶が重要な役割を果たしていることを知り、少し驚きました(興福寺再興、法隆寺雷除けなど)。今では大茶盛ぐらいでしか知られていない西大寺、小学生のときに境内の池にザリガニ釣りに行ったことを思い出します(笑)。全国的に有名な人気洋菓子店「ガトー・ド・ボワ」に行きがてら、いつか立ち寄りたいと思いました。
返信する
恐縮です! (tetsuda)
2023-05-23 12:00:25
井上さん、関東からコメント、ありがとうございました。

> 手軽に読める新書版ながら内容はとても専門的で勉強になります。

恐縮です、とても嬉しいです。

> 「うんちくをラインナップするじっぴコンパクト新書」だけありますね。

版元には良い校閲者がいらっしゃいましたので、当方と競い合いながら、作業を進めました。

> 今では大茶盛ぐらいでしか知られていない西大寺、小学生の
> ときに境内の池にザリガニ釣りに行ったことを思い出します(笑)

おお、そうでしたか。西大寺は桜の時期も、いいですよ。
返信する

コメントを投稿

明風清音(奈良新聞)」カテゴリの最新記事